今回のテーマはラクーンとたぬきの違いについてです。ラクーン(racoon)とはアライグマのことで、言われてみるとたぬきとそっくりです。アニメの影響で「アライグマはかわいい」というイメージもあるため、そういう意味でもたぬきと似通っている印象です。
ですが、実際には両者は全く異なる動物と言ってもいい。雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

ラクーンとたぬきの違いをざっくり解説

まず最初に、ラクーンとたぬきの違いについてざっくり説明します。ラクーンはアライグマと呼ばれることもあり、どちらも毛皮が茶色や黒色で、顔に縞模様がある動物です。たぬきも「ラクーンドッグ」と呼ばれることがあります。しかし実は両者は別の種類で、外見が似ているだけで分類上は全く異なる動物なのです。

ラクーン:アライグマのこと

image by iStockphoto

まず最初に、ラクーン(racoon)とはアライグマのことを指します。アライグマは北米やヨーロッパに住む動物で、灰褐色の毛皮に、目の周りの黒色と尻尾の横縞が特徴です。アライグマ科アライグマ属の食肉類として分類されています。

ラクーンことアライグマはさまざまな環境に適応する雑食性の動物です。食べ物を水で洗ったり、水辺で魚を捕ったりする習性があり、この行動が手を洗っているように見えることから「アライグマ」という名前がつきました。

日本では1970年代にアニメの影響でペットとして輸入されるようになり、その後、野生化していきます。現在は日本全国に分布しており、特定外来生物として厄介者扱いされることもしばしばです。

たぬき:「ラクーンドッグ」と呼ばれることも

次に、私たちにとってなじみ深い「たぬき」ですが、これは英語ではラクーンドッグ(racoondog)と呼ばれています。日本や中国に生息しており、茶褐色の毛皮に、黒い足先などが特徴的な動物です。イヌ科タヌキ属として分類されています。

たぬきは雑食性で、果実や昆虫を主に食べますが、哺乳類や鳥類、魚類・甲殻類なども食べることも珍しくありません。その食性は季節ごとに変化し、秋には果実や哺乳類を多く食べて脂肪を蓄えますが、特に積雪の多い地域では、冬になると穴ごもりすることもあります。

そしてたぬきは一夫一妻制です。ペアになって行動圏を持つという特徴があり、行動圏の面積は地域と季節によっても変わります。

ラクーンとたぬきはどう見られている?

ここまでで、ラクーンとたぬきの違いをざっくり解説しました。次に、ラクーンとたぬきがそれぞれどういうイメージで、どのように扱われているかを見ていきましょう。

ラクーンは日本ではペットとして扱われる一方、害獣として扱われることも少なくなく、野生化した個体も存在します。一方、たぬきは日本では昔から民話などに登場する動物であり、縁起物や芸術作品のモチーフとしても親しまれているのは、皆さんもご存知の通りです。

ラクーン:ペットでも害獣でもある

ラクーンすなわちアライグマは、日本ではペットとして人気があります。しかしそもそもアライグマは外来種であり、場合によっては日本の自然や生態系に悪影響をもたらすことを忘れてはいけません。

アライグマは雑食性なので、野に放たれると農作物や家畜を食べたり、建物や施設を破壊することもあります。また、病気や寄生虫を媒介することで、人間やペットの健康にも危険を及ぼすことがあるので注意が必要です。

こうした被害を防ぐためには駆除や管理が必要ですが、一方でアライグマは繁殖力が高く適応力が強いため簡単ではありません。駆除をする場合は専門家に任せることになります。もちろん、餌付けや放獣などの行為は法律で禁止されているので気を付けましょう。

\次のページで「たぬき:日本では「おなじみ」だが海外では珍獣」を解説!/

たぬき:日本では「おなじみ」だが海外では珍獣

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たぬきは私たちにとって「おなじみ」の動物です。たぬきは漢字では「狸」と書きますが、この字はもともと大陸ではヤマネコを意味していました。たぬきは古くから民話や民間伝承にもよく登場し、「狸寝入り」や「狸の皮算用」などの言葉があるほどです。

しかし、海外ではたぬきは珍しい動物として注目されています。最近では、たぬきをペットとして飼っている日本人男性のSNSアカウントが海外メディアに取り上げられ、その可愛らしさに世界中の人が夢中になったこともありました。

たぬきは英語ではラクーンドッグ(raccoondog)と呼ばれますが、もともとは極東にのみ生息する動物であり、アライグマとは別の種類の動物です。

ラクーンとたぬきの種的な関係は?

ここまでで、ラクーンとたぬきの違いや、国によってどのように扱われているかを解説しました。次に、ラクーンとたぬきが種的にはどのような関係にあるかを見ていきましょう。ラクーンはアライグマ科に属する動物であり、近縁種にパンダやコアラなどがいます。たぬきはイヌ科に属する動物であり、近縁種で代表的なのはキツネやオオカミなどです。

ラクーン:アライグマ科

まず、ラクーンすなわちアライグマは「アライグマ科」の動物です。アライグマ科はパンダやコアラなどを含む食肉目の一群で、これらの動物は歯や骨格、遺伝子などに共通の特徴を持っています。もちろんアライグマもこれらの特徴を備えており、当グループの仲間として分類されているのです。

また一方で、アライグマはアライグマ科の中でも「アライグマ属」という独自のグループに属しています。厳密にいえば哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属となり、アライグマ属に属する動物のうち最も広く分布している種だと言えるでしょう。

これらのアライグマ属は、雑食性で水辺や森林、都市部などさまざまな環境に適応しやすいという特徴があります。

たぬき:イヌ科タヌキ属

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次に、たぬきは「イヌ科」にあたり、このことから、アライグマとたぬきは全く別種の動物だと分かります。イヌ科とは、犬や狼、キツネなどを含む食肉目の一群です。

たぬきは、イヌ科の中でもタヌキ属というグループに属します。この分類が示す通り、たぬきは原始的なイヌ科の特徴である胴長短足水辺での生活に適した体型などが残っており、大昔のイヌ科の動物の姿がそこに見られると言えるでしょう。

たぬきは他のイヌ科の動物とは近縁ではありません。かろうじて最も近いと言える親戚は、アジアに生息するニホンイタチやテンなどのイタチ亜科の動物でしょう。イヌ・オオカミ・キツネなどはカニス亜科やウルスス亜科などに属し、かなり遠い関係です。

\次のページで「ラクーンとたぬきの生息分布と食性の違いは?」を解説!/

ラクーンとたぬきの生息分布と食性の違いは?

ここまでで、ラクーンとたぬきの違いや関係を解説しました。最後に、ラクーンとたぬきがどのような場所に生息しているか、そしてどのようなものを食べているかを見ていきましょう。ラクーンもたぬきも雑食性であり、果物や昆虫、魚や小動物などを食べます。当然、生息分布もそうした食性に即したものとなるでしょう。

ラクーン:北米~中米に生息

ラクーンすなわちアライグマは、北米から中米にかけて生息しています。カナダ南部からパナマ、乾燥地帯から山岳地帯までと、さまざまな環境に適応していますが、毛皮産業やペットにする用途などで20世紀にヨーロッパや日本などに移入されました。

そして、これらの地域でも野生化して定着し、外来種として問題を引き起こしています。ラクーンは雑食性で、非常に幅広い食物を摂取するのも、容易に野生化して定着した理由のひとつです。

ラクーンは両生類や爬虫類、魚類や鳥類、哺乳類や昆虫類、甲殻類や無脊椎動物、果実や種子などを食べます。特にザリガニ類が好みで、海岸沿いに生息する個体は二枚貝やエビ、カニ、ウニなども食べるでしょう。

たぬき:日本国内に生息

たぬきは、基本的に日本国内のみに生息しています。日本では北海道のエゾたぬき本州・四国・九州のホンドたぬきの2亜種が存在しており、一部の島々やヨーロッパに移入されてたのは近年のことです。

たぬきはさまざまな環境に適応しており、都市近郊や農業地域でもその姿を見かけることがあります。日本の里山やその付近を走る道路などで、道路を横切ったりするのが目撃されるのも珍しくありません。

たぬきは雑食性で、果実や昆虫のほか哺乳類や鳥類なども食べることがあります。季節によって食性は変化し、秋には果実などを多く食べて脂肪を蓄えるのが特徴です。冬には食べ物が少なくなるのもあり、積雪の多い地域では穴ごもりすることもあります。

「ラクーン」はアライグマとたぬきを指すが、たぬきは「ラクーンドッグ」と呼ばれることも

ここでのキーワードである「ラクーン(racoon)」は、アライグマを指す言葉です。一方で、同じラクーンという言葉でたぬきのことを指すこともありますし、さらにたぬきは英語で「ラクーンドッグ(racoon dog)」と呼ばれることもあるので注意しましょう。

このように少しややこしいのは、もともとたぬきが英語圏ではなじみの薄い動物であるため、厳密な分類と英語名の命名がなされなかったのが原因だと言えるでしょう。

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簡単でわかりやすい!ラクーンとたぬきの違いは?種的な関係や生息分布も雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマはラクーンとたぬきの違いについてです。ラクーン(racoon)とはアライグマのことで、言われてみるとたぬきとそっくりです。アニメの影響で「アライグマはかわいい」というイメージもあるため、そういう意味でもたぬきと似通っている印象です。
ですが、実際には両者は全く異なる動物と言ってもいい。雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

ラクーンとたぬきの違いをざっくり解説

まず最初に、ラクーンとたぬきの違いについてざっくり説明します。ラクーンはアライグマと呼ばれることもあり、どちらも毛皮が茶色や黒色で、顔に縞模様がある動物です。たぬきも「ラクーンドッグ」と呼ばれることがあります。しかし実は両者は別の種類で、外見が似ているだけで分類上は全く異なる動物なのです。

ラクーン:アライグマのこと

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まず最初に、ラクーン(racoon)とはアライグマのことを指します。アライグマは北米やヨーロッパに住む動物で、灰褐色の毛皮に、目の周りの黒色と尻尾の横縞が特徴です。アライグマ科アライグマ属の食肉類として分類されています。

ラクーンことアライグマはさまざまな環境に適応する雑食性の動物です。食べ物を水で洗ったり、水辺で魚を捕ったりする習性があり、この行動が手を洗っているように見えることから「アライグマ」という名前がつきました。

日本では1970年代にアニメの影響でペットとして輸入されるようになり、その後、野生化していきます。現在は日本全国に分布しており、特定外来生物として厄介者扱いされることもしばしばです。

たぬき:「ラクーンドッグ」と呼ばれることも

次に、私たちにとってなじみ深い「たぬき」ですが、これは英語ではラクーンドッグ(racoondog)と呼ばれています。日本や中国に生息しており、茶褐色の毛皮に、黒い足先などが特徴的な動物です。イヌ科タヌキ属として分類されています。

たぬきは雑食性で、果実や昆虫を主に食べますが、哺乳類や鳥類、魚類・甲殻類なども食べることも珍しくありません。その食性は季節ごとに変化し、秋には果実や哺乳類を多く食べて脂肪を蓄えますが、特に積雪の多い地域では、冬になると穴ごもりすることもあります。

そしてたぬきは一夫一妻制です。ペアになって行動圏を持つという特徴があり、行動圏の面積は地域と季節によっても変わります。

ラクーンとたぬきはどう見られている?

ここまでで、ラクーンとたぬきの違いをざっくり解説しました。次に、ラクーンとたぬきがそれぞれどういうイメージで、どのように扱われているかを見ていきましょう。

ラクーンは日本ではペットとして扱われる一方、害獣として扱われることも少なくなく、野生化した個体も存在します。一方、たぬきは日本では昔から民話などに登場する動物であり、縁起物や芸術作品のモチーフとしても親しまれているのは、皆さんもご存知の通りです。

ラクーン:ペットでも害獣でもある

ラクーンすなわちアライグマは、日本ではペットとして人気があります。しかしそもそもアライグマは外来種であり、場合によっては日本の自然や生態系に悪影響をもたらすことを忘れてはいけません。

アライグマは雑食性なので、野に放たれると農作物や家畜を食べたり、建物や施設を破壊することもあります。また、病気や寄生虫を媒介することで、人間やペットの健康にも危険を及ぼすことがあるので注意が必要です。

こうした被害を防ぐためには駆除や管理が必要ですが、一方でアライグマは繁殖力が高く適応力が強いため簡単ではありません。駆除をする場合は専門家に任せることになります。もちろん、餌付けや放獣などの行為は法律で禁止されているので気を付けましょう。

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