この記事では「修行」と「修業」の違いについてみていきます。どちらも、何かを身につけたりするために努力を重ねることに対して使う言葉ですが、「ギョウ」の漢字が違うことで、意味にも何か違いがあるのかと問われると、答えに困るという人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

修行と修業のざっくりした違い

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まずはじめに「修行」「修業」のざっくりした違いについて説明したいと思います。「修行」は、「仏教または武道において、悟りや武芸における境地にいたるために精神的・肉体的な苦行をつみ重ねること」を意味するのに対し、「修業」「学問や特定の技術などを習得するために努力すること」を指す言葉です。

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修行と修業を漢字から説明

さきほど、「修行」主に仏教や武道において努力を重ねることを意味し、「修業」何か特定の技術を得るために努力を重ねることだと説明しましたが、ここからはこれらの言葉に対する理解を深めるために、「修行」「修業」、それぞれに使われている漢字に着目しながら説明したいと思います。

「修」は洗い清めてきれいになること

まずはじめに、両方に使われている「修」という字について説明しましょう。

「修」の「攸」という形は「人の背中に水がさらさらと流れて洗い清められている様子」をあらわしていると考えられています。右下の「彡」は「うつくしい様子」を指すと考えられ、これらを組み合わせた「修」「洗い清められて姿かたちがととのった様子」をあらわし、「形などを正しく整えること」を指す「おさめる」という意味になりました。

「修」はこのような成り立ちをもつ字なので、見た目を美しくととのえる「修飾」や、手を加えて直す意味としての「修理」や「修正」、学問や技術を身につけて人としての磨きをかけることを意味する「修学」や「研修」といった言葉に使われるのです。そして、今回説明している「修行」「修業」において「修」という字は最後に説明した学問や技術を身につけて人としての磨きをかけることという意味で使われています。

「行」の由来は十字路の形

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つぎに、「修行」「行」について説明しましょう。「行」という字は、四方に道がのびていく十字路を上から見た形が元になっていて、その道を人が「いく」ことを意味する字となり、やがて「いく」という移動する動作だけでなく、さまざまな動作を「おこなう」ことに対して使われるようになりました。

「修行」とは、もともとは仏教において使われていた言葉であり、「修」「人としての磨きをかけること」という意味でしたね。ですので、「悟りをひらくために磨きをかける行い」をすることから「修行」になったのかもしれません。そして、悟りにいたる過程を「仏道」というのと同じように、究める過程が「道」にたとえられる「武道」においても、その道を究める行いとして「修行」が使われるようになったのでしょう。

「業」は楽器をかざる棚のこと

今度は「業」について説明しましょう。「業」という字のかたち自体は、鐘や太鼓などの楽器をつるしておく飾り棚(かざりだな)が元になっているのですが、それとは別に、城壁を作るときに土をたたいて固めるための板がその棚に似ていたため、「城を作る『作業』に使う板に似ている」ところから、「業」という字は仕事をする意味の「わざ」や、その仕事をなしとげる「技術」などを意味するようになったと考えられています。

ですから、さきほど説明した「人としての磨きをかけること」を意味する「修」と、「技術」という意味を持つ「業」を組み合わせた「修業」は、「学問や特定の技術を身につけるために努力を重ねること」を意味するのです。

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「修行」と「修業」の使いわけ

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ここまでは、「修行」「修業」の意味について説明してきましたが、ここでは「修行」「修業」の使いわけについて、具体的な例をあげて説明したいと思います。

1.彼は会社の研修で、仏道修行を体験した。
2.多様性が進んだ現代では、花嫁修業に対する価値観も変わってきている。

まず、1.については「仏道」つまり仏教における修行を体験したということなので「修行」が使われています。2.に関しては、「花嫁修業」という言葉自体、最近では聞く機会が少なくなっていますが、「女性が結婚するときに備えて、料理や家事など、妻として必要な技術を身につけること」を意味する言葉です。ですから「修業」の方を使います。

これらの使いわけに関しては、「修業」「仏道(仏教)」「武道」などの「道を行く」から「行」「修業」「「技術(業)」を身につけるためにするから「修業」などと意識しておくと、迷うこともなくなるのではないでしょうか。

修行は仏道や武道、修業は技術を身につけることに使う!

ここまでの説明で、「修行」「仏教や武道において、悟りや武芸における境地にいたるために精神的・肉体的な苦行をつみ重ねること」を意味し、「修業」「学問や特定の技術などを習得するために努力すること」だということを知っていただけたかと思います。今回の説明が、みなさんの理解に少しでも役立てたなら幸いです。

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簡単でわかりやすい!修行と修業の違いとは?漢字の意味や使いわけも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「修行」と「修業」の違いについてみていきます。どちらも、何かを身につけたりするために努力を重ねることに対して使う言葉ですが、「ギョウ」の漢字が違うことで、意味にも何か違いがあるのかと問われると、答えに困るという人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

修行と修業のざっくりした違い

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まずはじめに「修行」「修業」のざっくりした違いについて説明したいと思います。「修行」は、「仏教または武道において、悟りや武芸における境地にいたるために精神的・肉体的な苦行をつみ重ねること」を意味するのに対し、「修業」「学問や特定の技術などを習得するために努力すること」を指す言葉です。

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