この記事では「贔屓」と「依怙贔屓」の違いについてみていきます。どちらも、自分のお気に入りなどを特別扱いすることなどに対して使われる言葉ですが、なんとなくの意味は知っているつもりでも、いざその違いを問われると、答えに困る人も少なくないでしょう。そこで今回は、それぞれの読みや違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

贔屓と依怙贔屓はなんと読む?

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まずはじめに「贔屓」「依怙贔屓」の読み方について説明しましょう。「贔屓」「ひいき」と読み、「依怙贔屓」「えこひいき」と読みます。常用漢字は「依」だけで、その他は漢字検定の1級で出されるような難しい字ばかりなので、読み方を知らなかったとしても無理はないでしょう。

贔屓と依怙贔屓のざっくりした違いとは

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今度は、「贔屓」「依怙贔屓」のざっくりした違いについて説明しましょう。「贔屓」が「自分が気に入っている人や物などに対して特別可愛がったり、力を入れて応援すること」を広く指すのに対し、「依怙贔屓」は「贔屓」の中でも「自分が気に入っている人や物に対して不公平なまでに特別可愛がったり、力を入れて応援したりすること」を意味します。

つまり不公平感があるかないかという部分が大きなポイントです。

\次のページで「贔屓と依怙贔屓の漢字を説明」を解説!/

贔屓と依怙贔屓の漢字を説明

さきほど、「贔屓」「自分が気に入っている人や物を特に可愛がったりすること」を意味するのに対し、「依怙贔屓」「自分が気に入っている人や物を不公平なまでに特別可愛がったりすること」を意味するという違いがあることを説明しましたね。ここからは両者の言葉の意味について理解を深めるために、それぞれに使われている漢字に着目しながら説明したいと思います。

贔屓の「貝」はお金をあらわす

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まずは「贔屓」に使われている漢字について説明しましょう。「贔」という字は「貝」三つで構成されていますね。古代中国ではきれいで希少な「貝」がお金の代わりとして使われていたので、「金貨」の「貨」や「財宝」の「財」など、「貝」はお金や宝物に関わる字のパーツとして使われることの多い字です。「贔」の「貝」もそれぞれそのようなお宝を指し、お宝三つという「たいへん重いものを背負う」ことをあらわしています。

また、「屓」という字に関しては、もともと「尸(かばね)」の下に「贔」を書いて「財宝を多く抱え込む」ことをあらわす字だったのですが、その財宝を守るためなのか、やがて「鼻息をあらくして力をいれる」という意味に変化したものです。このような意味を持つ「贔」「屓」という字ですので、「贔屓」「特定の人に対して力をいれて応援したり、支えたりする」意味で使われます。

「依怙」は仏教が語源

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今度は「依怙」について説明しましょう。「依」という字は、「依存」や「依頼」といった言葉にも使われるように、「よりかかる」ことや「たよる」ことを意味します。一方の「怙」という字は、「りっしんべん」に「古」という字から成り立っていますね。「古」という字は「祖先の頭蓋骨」をあらわし、祖先に祈る様子から生まれたとされる漢字です。

「りっしんべん」は「心」をあらわす部首ですので、「怙」は「心」で「祖先に祈る」ことから「たよりにする」という意味になったのでしょう。このような「依」「怙」からなる「依怙」はもともと「仏さまが頼ってくる人に目をかけて助けること」を意味する仏教用語でした。それが「贔屓」と結びつき、「自分が気に入っているものを不公平なまでに可愛がったりすること」を意味する「依怙贔屓」になったと考えられています。

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贔屓と依怙贔屓の使い方

ここまで「贔屓」「依怙贔屓」という言葉の意味の違いについて説明しましたが、実際にどう使い分ければいいかわからないという人もいるかと思います。そこで、ここでは具体的な例を紹介しましょう。まずは「贔屓」の例です。

1.この店が、僕の贔屓にしている中華料理店だ。
2.今後ともご贔屓のほど、よろしくお願い申し上げます。

1.では「僕」が気に入って普段利用している店という意味で「贔屓」を使っていますが、気に入った店を利用することというのは個人個人の自由で、他人に文句言われたり、制限されたりすることではありませんよね。

2.の「ご贔屓」については企業やお店が、「これからもうちの商品やお店を他よりも利用してください」というお願いの意味を込めて、取引先やお客様などに対して使う表現です。次に、「依怙贔屓」の例をみていきましょう。

3.同じミスをしたのにあの子には注意しないなんて、これは先生の依怙贔屓だ。

このような場合、「先生」という「本来なら生徒を平等で扱わなければならない立場の人」が、「特定の子だけ注意をしなかった」ということ述べているので、自分が気に入っているものを不公平なまでに可愛がる意味「依怙贔屓」が使われています。また、「贔屓」「依怙贔屓」の意味でも使うことができますので、3.を少し言いかえて

4.同じミスをしたのにあの子には注意しないなんて、先生は贔屓している。

\次のページで「贔屓は特別可愛がることで、依怙贔屓は不公平な贔屓!」を解説!/

のように「贔屓」を使っても問題ありません。ただし、1.や2.を「依怙贔屓」を使って言いかえることはできませんので、そこは気をつけましょう。

贔屓は特別可愛がることで、依怙贔屓は不公平な贔屓!

ここまでの説明で、「贔屓」「自分が気に入っている人や物を特に可愛がったりすること」全般を意味し、その中で「依怙贔屓」「自分が気に入っている人や物を『不公平なまでに』特別可愛がったりすること」だということや、両者の具体的な使い方について知っていただけたかと思います。今回の説明が少しでもみなさんの理解に役立てたなら幸いです。

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簡単でわかりやすい!贔屓と依怙贔屓の違いとは?読み方や使い方も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「贔屓」と「依怙贔屓」の違いについてみていきます。どちらも、自分のお気に入りなどを特別扱いすることなどに対して使われる言葉ですが、なんとなくの意味は知っているつもりでも、いざその違いを問われると、答えに困る人も少なくないでしょう。そこで今回は、それぞれの読みや違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

贔屓と依怙贔屓はなんと読む?

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まずはじめに「贔屓」「依怙贔屓」の読み方について説明しましょう。「贔屓」「ひいき」と読み、「依怙贔屓」「えこひいき」と読みます。常用漢字は「依」だけで、その他は漢字検定の1級で出されるような難しい字ばかりなので、読み方を知らなかったとしても無理はないでしょう。

贔屓と依怙贔屓のざっくりした違いとは

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今度は、「贔屓」「依怙贔屓」のざっくりした違いについて説明しましょう。「贔屓」が「自分が気に入っている人や物などに対して特別可愛がったり、力を入れて応援すること」を広く指すのに対し、「依怙贔屓」は「贔屓」の中でも「自分が気に入っている人や物に対して不公平なまでに特別可愛がったり、力を入れて応援したりすること」を意味します。

つまり不公平感があるかないかという部分が大きなポイントです。

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