会社を経営する費用に「労務費」や「人件費」といった項目を見ることがあるよな。「労務費」や「人件費」はどちらも従業員に関する費用であることは同じですが、詳細な違いについて知らない人も多いでしょう。
この記事では、「労務費」と「人件費」が表す内容の違いや「労務費」と「人件費」の計算方法、さらに管理や最適化の方法について詳しく解説していきます。この記事を読めば「労務費」と「人件費」の違いがわかるようになり、「労務費」「人件費」それぞれを適切に把握できるようになるので、ぜひ最後まで読んでみてくれ。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「労務費」と「人件費」の違いとは?

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従業員に関する費用を表す「労務費」と「人件費」。ここでは「労務費」「人件費」の意味と、それぞれの明確な違いについて解説します。それでは詳しく見ていきましょう。

「労務費」は製品の製造に直接関わる人的資源の費用

「労務費」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

製造原価のうち、労働力を消費することによって発生する原価。従業員に支払う給与・法定福利費・教育訓練費などの合計。

引用:デジタル大辞泉

「労務費」は製造原価のうち、労働力を消費することによって発生する原価を表します。具体的に表すと、製品を生産するために必要な労働力の原価、つまり製造に携わる従業員の賃金や給与が「労務費」です。

なお、「労務費」は「直接労務費」と「間接労務費」の2つに分類されます。「直接労務費」とは、直接的に製品を生産した従業員が製品の生産に直接関わる作業を行なった際に発生する賃金のことです。「間接労務費」とは間接労務費は製品の製造に間接的に関わって発生する費用で、「労務費」のうち、「直接労務費」以外の費用を指します。

「労務費」は製品の原価計算に直接影響を与えるため、「労務費」の管理は製品の利益率を決定する要素です。

「人件費」は企業が従業員に支払う給与や賞与などの費用

「人件費」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

人の労働に対して支払われる費用。給料・手当など。

引用:デジタル大辞泉

辞書に記載のあるとおり、「人件費」とは企業が従業員に対して支払う給与や賞与、手当などの費用のことです。「人件費」には正社員だけでなく、パートタイムや契約社員など、企業が雇用するすべての人々に対する給与や福利厚生費などが含まれます。「人件費」は企業の経費の中でも大きな割合を占め、その管理は企業の利益を大きく左右する要素です。

「労務費」と「人件費」の違いは対象となる範囲

「労務費」と「人件費」の主な違いは、その対象となる費用の範囲です。「労務費」は製品の製造に直接関わる人的資源の費用に限定されます。一方で、「人件費」は企業全体の人的資源に関わる費用です。つまり、「労務費」は「人件費」の一部分を指す特定の費用項目といえます。

「労務費」と「人件費」の計算方法

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ここまで「労務費」と「人件費」の意味やそれぞれの違いについて解説してきました。ここでは、「労務費」「人件費」それぞれがどのように算出されるかについて解説します。

「労務費」の計算方法

「労務費」は「直接労務費」と「間接労務費」の合算で算出します。「直接労務費」は直接製造に関わる従業員の賃金を直接作業時間で割って算出した賃率に、製品製造にかかる時間をかけて算出するため、計算式は以下のとおりです。

賃率=直接製造に関与する従業員の賃金 / 製品製造の直接作業時間
「直接労務費」=賃率 × 製品製造にかかる総時間

\次のページで「「人件費」の計算方法」を解説!/

また、「間接労務費」は「直接労務費」以外の項目の合算で求められます。合算する項目は主に以下のとおりです。

・間接作業賃金
・間接工賃金
・手待賃金
・給料
・従業員手当
・従業員賞与
・退職給与引当金繰入額
・法定福利費
・休業賃金

「人件費」の計算方法

「人件費」の計算はシンプルです。基本的には、企業が従業員に対して支払うすべての給与や賞与、福利厚生費などを合計します。具体的な計算式は以下のとおりです。

「人件費」 = 基本給 + 時間外労働手当 + 賞与 + 福利厚生費

「労務費」の管理と最適化の方法

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「労務費」と「人件費」は、ともに利益に直結する重要な要素です。ここからは「労務費」と「人件費」の管理と最適化の方法について紹介します。まずは「労務費」。「労務費」の管理と最適化は、製品の原価を適切に把握し、利益率を最大化するために重要です。そのため、以下のような方法を検討しましょう。

1.「労務費」の意義と最適化の視点を持つ

「労務費」は製造やサービスに不可欠なコストであり、付加価値を生む重要な要素です。単純にコストダウンできれば良いというものではありません。労働生産性を高め従業員の士気や給与にも配慮をしつつ、「労務費」比率や労働分配率は最適化しなければなりません。

2.原価低減活動

原価低減活動とは、原材料費や「労務費」、流通費など、商品や製品・サービスの製造過程で発生する費用を抑える活動のこと。この活動は、企業の利益向上を目的として行われるのです。原価低減活動では企業独自の取り組みが可能で、原材料費や「労務費」など、各費用に応じた低減活動を行います。

3.製造原価率の改善

増益を実現するためには、原価を削減して製造原価率を下げることが重要です。原価を大きく占める材料費を見直す、新たな仕入先を探す、仕入れ量を見直す、売値を見直す、製造工程のムダを削減するなどの取り組みがあります。

\次のページで「4.「労務費」を適切に管理」を解説!/

4.「労務費」を適切に管理

「労務費」の適切な管理は、企業の成長と競争力を左右する重要な要素です。「労務費」の適正な管理によって、企業は労働力を最適化し、コスト削減や効率改善を実現できます。製造にかかる適正時間の見直しや時間外労働の削減などで「労務費」を適切に見直しましょう。

「人件費」の管理と最適化の方法

「人件費」の管理と最適化は、企業全体の利益を最大化するために重要です。そのため、以下のような方法を検討しましょう。

1.業務の効率化

業務時間によって「人件費」は大きく左右されるため、業務効率を高め、無駄な業務時間を減らすことが「人件費」削減のカギです。新しいオフィス機器やシステムなどを導入することで業務効率が高まれば、「人件費」を削減することにもなります。

2.シフト管理

サービス品質を保ちながら、「人件費」管理を最適化するためにシフト管理を活用できます。1時間単位の客数と売り上げの予測から、必要最小限の「人件費」を計算することが重要です。「人件費」計算は感覚で行うのではなく、過去のデータから計算することが推奨されます。

3.業務の可視化と手順書化

業務を可視化し、手順書化することで、業務の無駄を見つけ出して改善が可能になります。これにより、業務効率が上がり、結果的に「人件費」を削減できるでしょう。

4.人員の最適化

人員の削減や給与の引き下げは短期的な「人件費」削減の手段です。しかし、人員削減はその場しのぎの施策になってしまうため、投資によるシステム導入などにより、中長期的視点での「人件費」最適化について考えることが重要ですね。

対象となる範囲が異なる人的資源の費用と認識しよう

「労務費」と「人件費」の違いについて詳しく解説しました。2つとも人的資源の費用であることは同じですが、「労務費」は製造に関わる人的資源の費用であり、「人件費」は「労務費」を含む会社全体の人的資源に関わる費用です。そのため、「労務費」「人件費」の計算方法がそれぞれで異なります。

また、「労務費」と「人件費」は経営に大きく関わる要素であることから、管理と最適化の方法についても紹介し、その重要性がわかりました。同じような言葉でもそれぞれ詳細な意味は異なる…くわしく調べるほどに日本語の面白さを感じずにはいられませんね。

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3分で簡単にわかる「労務費」と「人件費」の違い!計算方法や管理・最適化の方法もビジネス文書熟練者がわかりやすく解説!

会社を経営する費用に「労務費」や「人件費」といった項目を見ることがあるよな。「労務費」や「人件費」はどちらも従業員に関する費用であることは同じですが、詳細な違いについて知らない人も多いでしょう。
この記事では、「労務費」と「人件費」が表す内容の違いや「労務費」と「人件費」の計算方法、さらに管理や最適化の方法について詳しく解説していきます。この記事を読めば「労務費」と「人件費」の違いがわかるようになり、「労務費」「人件費」それぞれを適切に把握できるようになるので、ぜひ最後まで読んでみてくれ。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「労務費」と「人件費」の違いとは?

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従業員に関する費用を表す「労務費」と「人件費」。ここでは「労務費」「人件費」の意味と、それぞれの明確な違いについて解説します。それでは詳しく見ていきましょう。

「労務費」は製品の製造に直接関わる人的資源の費用

「労務費」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

製造原価のうち、労働力を消費することによって発生する原価。従業員に支払う給与・法定福利費・教育訓練費などの合計。

引用:デジタル大辞泉

「労務費」は製造原価のうち、労働力を消費することによって発生する原価を表します。具体的に表すと、製品を生産するために必要な労働力の原価、つまり製造に携わる従業員の賃金や給与が「労務費」です。

なお、「労務費」は「直接労務費」と「間接労務費」の2つに分類されます。「直接労務費」とは、直接的に製品を生産した従業員が製品の生産に直接関わる作業を行なった際に発生する賃金のことです。「間接労務費」とは間接労務費は製品の製造に間接的に関わって発生する費用で、「労務費」のうち、「直接労務費」以外の費用を指します。

「労務費」は製品の原価計算に直接影響を与えるため、「労務費」の管理は製品の利益率を決定する要素です。

「人件費」は企業が従業員に支払う給与や賞与などの費用

「人件費」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

人の労働に対して支払われる費用。給料・手当など。

引用:デジタル大辞泉

辞書に記載のあるとおり、「人件費」とは企業が従業員に対して支払う給与や賞与、手当などの費用のことです。「人件費」には正社員だけでなく、パートタイムや契約社員など、企業が雇用するすべての人々に対する給与や福利厚生費などが含まれます。「人件費」は企業の経費の中でも大きな割合を占め、その管理は企業の利益を大きく左右する要素です。

「労務費」と「人件費」の違いは対象となる範囲

「労務費」と「人件費」の主な違いは、その対象となる費用の範囲です。「労務費」は製品の製造に直接関わる人的資源の費用に限定されます。一方で、「人件費」は企業全体の人的資源に関わる費用です。つまり、「労務費」は「人件費」の一部分を指す特定の費用項目といえます。

「労務費」と「人件費」の計算方法

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ここまで「労務費」と「人件費」の意味やそれぞれの違いについて解説してきました。ここでは、「労務費」「人件費」それぞれがどのように算出されるかについて解説します。

「労務費」の計算方法

「労務費」は「直接労務費」と「間接労務費」の合算で算出します。「直接労務費」は直接製造に関わる従業員の賃金を直接作業時間で割って算出した賃率に、製品製造にかかる時間をかけて算出するため、計算式は以下のとおりです。

賃率=直接製造に関与する従業員の賃金 / 製品製造の直接作業時間
「直接労務費」=賃率 × 製品製造にかかる総時間

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