この記事では「はちく」と「たけのこ」の違いについてみていきます。「はちく」は名前通り竹の一種。新芽の部分が「たけのこ」として食用になるんです。ですが「市販のたけのこ」とは、見た目や味などが違うらしいのです。今回はそんな「たけのこ」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「山菜の仲間」である、「はちく」と「たけのこ」の違いについてわかりやすく解説していく。

「はちく」と「たけのこ」を大まかに比較

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スーパーで見かける「たけのこ」は具体的に、どのような竹から採れるのでしょうか。まずは「たけのこ」の定義から、詳しく解説していきます。さらに竹の仲間「はちく」のたけのこについても、大まかに紹介。以下、普段は意識しない「たけのこ」の正体についてみていきましょう!

「たけのこ」はタケ類の新芽全般を指す

「たけのこ」は、おもに「イネ科タケ亜科マダケ属のタケ類から採れる新芽」の総称。厳密には、地中に埋まった茎(地下茎)から伸びてきた「芽の部分」だけを指します。このたけのこは食味が良いため、山菜採りの対象として愛されてきました。そんな「たけのこ」が採れるタケ類は、中国原産の「モウソウチク/孟宗竹」や「ハチク/淡竹」、日本原産の「マチク/真竹」など様々な種に分かれているのです。

そのうちスーパーや八百屋で見かける「生たけのこ」は、「モウソウチク/孟宗竹」のもの。みなさんがイメージする「大ぶりなたけのこ」が取れます。ほかにもマチク属の「マチク/麻竹」がメンマに、マダケ属の「ホテイチク/布袋竹」が水煮缶として少数ながら流通。このように身近な「たけのこ」だけでも、数種類に分けられるのです。

「はちく」のたけのこは変わり種

「はちく/淡竹」は、イネ科タケ亜科マダケ属の「ハチク」という竹の仲間。こちらも食用に適した「たけのこ」が採れます。しかし「はちくのたけのこ」の場合、孟宗竹よりも鮮度の低下が急激。長野県など一部地域でのみ、消費されてきました。ちなみに「破竹の勢い」という言葉がありますが、「はちく/淡竹」とは無関係。こちらは「とめどない勢い」を「竹をすんなり割ってしまう刃物」に例えた言葉なのです。

以下この記事では、普段見かけない「はちくのたけのこ」と孟宗竹など「その他たけのこ」を徹底比較。見た目や味など具体的な違いを紹介していきます。さらに各種たけのこの下処理や料理法についても解説。たけのこを自分で採って食べたいなら、この記事が役に立つはずです。

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「はちく」と「たけのこ」の具体的な違い

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「はちくのたけのこ」とポピュラーな「孟宗竹のたけのこ」とでは、具体的な違いが5つもあります。じつは「たけのこ」こと新芽の状態でも、成長した「竹」の状態でも見た目が違っているのです。

さらに「はちく」や「真竹」、「寒竹」など「変わり種のたけのこ」には、一般的な「孟宗竹のたけのこ」にない特徴がいくつか存在。以下「はちく」や「孟宗竹」以外のタケ類も含めて、比較していきましょう!

違い1.若芽の見た目

普段スーパーで見かける「たけのこ」と「はちく」とでは「たけのこ本体」つまり、若芽のシルエットが違います。まず「普通のたけのこ」こと、孟宗竹の若芽は大ぶりですよね。実際に各種たけのこの中では最大級で、直径にして20cm、高さ30cmとなっています。対して「はちく」では、細長い若芽が特徴的。高さは同じ30cmなのに、直径がたったの7〜8cmしかありません。

さらに若芽の細部にも違いが。孟宗竹では芽を覆う皮に産毛が生えているのですが、ハチクでは皮の表面が滑らかなのです。さらにハチクの若芽でのみ、伸びた葉の先端が縮れています。

違い2.成長した茎の見た目

「はちく」も「孟宗竹のたけのこ」も成長後の茎は、竹らしくありません。

まず竹と聞くと、みなさんは「緑色で艶のある茎」と「2本線が入った節」をもつ植物を思い浮かべるかと思います。これは日本古来の竹こと、「マダケ/真竹」の特徴。じつは中国原産の「孟宗竹」と「はちく」の茎は白い粉を被っていて、くすんでいるのです。そして節の線は孟宗竹で1本、はちくで2本となっています。

違い3.アクと味

「たけのこ」は種類によって、アクの強さが違います。そのため「アク抜きが必要なもの」と「生食できるもの」に大別できるのです。まずスーパーに売っている「孟宗竹のたけのこ」は、アク抜きが必要。アクが残った状態だとえぐみが強く、とても食べられたものではありません。その他「真竹のたけのこ」もアクが強いので、下処理が必須。これらのたけのこでは、調理後も「喉がイガイガするえぐみ」が残ります。

対してなじみの薄い「はちくのたけのこ」には、ほとんどアクがありません。そのため採れたてのたけのこなら、生食も可能。収穫から時間がたったものでも、下処理を済ませれば「さっぱりとした味わい」が楽しめます。その他「根曲がり竹」や「寒竹」、「四方竹」でも、アク抜きが不要です。

違い4.旬

「たけのこの旬」といえば、春のイメージがありますよね。その通りもっともメジャーな「孟宗竹のたけのこ」は、3〜4月に流通します。しかし「はちく」など、他のたけのこの旬はバラバラ。まず「はちく」と「根曲がり竹」は孟宗竹のシーズンが終わった後、5〜6月に収穫できます。そして「寒竹」と「四方竹」ではなんと、10月が旬にあたるです。

違い5.採り方

孟宗竹など一般的な竹では、たけのこを採取する際に土を掘り起こす必要があります。なぜならたけのこ(若芽)の根元の部分が、地下深くに埋まった茎にあるからです。まず「一般的なたけのこ」では、食べごろになると「芽の先端」のみが地上に顔を出します。これをクワで掘り取って採取するので、「たけのこ掘り」と言うのです。

対して茎が地上近くに埋まっている「はちく」では、土を掘らずにたけのこが採れます。そのため「淡竹採り」や「淡竹刈り」などと呼ばれているのです。はちくの場合は、地面から高さ30cmほどに伸びたものが食べごろ。手で折ったり、鎌で刈り取ったりするだけで採取が可能です。

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「はちく」と「たけのこ」の食べ方

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ここからは「はちく」など、各種たけのこの食べ方について徹底解説。「孟宗竹のたけのこ」のアクを抜く方法から、新鮮な「はちくのたけのこ」でしかできない料理まで詳しくみていきます。採ってきた「たけのこ」を楽しみたいなら、こちらもご参考にどうぞ。

「一般的なたけのこ」の料理法

一般的な「孟宗竹のたけのこ」の場合、アク抜きに手間がかかります。以下の通り多大な時間を要するので、下処理済みのものを買った方が早いでしょう。ただ自分で下処理を済ませた、新鮮なたけのこの味は格別。炊き込みご飯や煮物、天ぷらなど様々な料理で、香りと食感が楽しめますよ。

たけのこの「アク抜き」
1.たけのこの「先端から5cmまでの部分」を斜めに切り落とす
2.残った本体の上部に「垂直方向の切れ込み」を入れる
3.根元の硬い部分を切り落とす
4.鍋にたけのこ本体/米ぬか60g/唐辛子1本と水を入れて沸騰させる
5.沸騰したら落し蓋をして、弱火で1時間茹でる
6.一晩放置して鍋全体が冷めてから、皮を剥いて下処理完了

「はちく」ならではの調理法

対して「はちく」では、アク抜きに手間がかかりません。新鮮なものなら10分間、水で茹でるだけで下処理が完了。炊き込みご飯・煮物・天ぷらはもちろん、そのまま生姜醤油をかけて「刺身」にするという楽しみ方が可能です。

また採ってから時間がたったはちくでも、米ぬかと一緒に10分茹でればアク抜きが完了します。とはいえ鮮度の低下が早いので、採ってきたはちくは速やかに消費してしまいましょう。

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「はちく」のたけのこは細長い

「はちく」は、たけのこが採れる竹の仲間。しかし「市販のたけのこ」こと、孟宗竹とは別物です。「はちくのたけのこ」は、われわれがよく知る「たけのこ」と比べて細長い形になっています。同じ長さでも、その太さは半分以下なのです。さらに「はちく」は、手で折るだけで採取可能。面倒なアク抜きも要りません。近くに「はちく」の竹林があるならぜひ、新芽を採取してみてくださいね。

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雑学

簡単でわかりやすい!はちくとたけのこの違いとは?見分け方やアク抜きも農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では「はちく」と「たけのこ」の違いについてみていきます。「はちく」は名前通り竹の一種。新芽の部分が「たけのこ」として食用になるんです。ですが「市販のたけのこ」とは、見た目や味などが違うらしいのです。今回はそんな「たけのこ」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「山菜の仲間」である、「はちく」と「たけのこ」の違いについてわかりやすく解説していく。

「はちく」と「たけのこ」を大まかに比較

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スーパーで見かける「たけのこ」は具体的に、どのような竹から採れるのでしょうか。まずは「たけのこ」の定義から、詳しく解説していきます。さらに竹の仲間「はちく」のたけのこについても、大まかに紹介。以下、普段は意識しない「たけのこ」の正体についてみていきましょう!

「たけのこ」はタケ類の新芽全般を指す

「たけのこ」は、おもに「イネ科タケ亜科マダケ属のタケ類から採れる新芽」の総称。厳密には、地中に埋まった茎(地下茎)から伸びてきた「芽の部分」だけを指します。このたけのこは食味が良いため、山菜採りの対象として愛されてきました。そんな「たけのこ」が採れるタケ類は、中国原産の「モウソウチク/孟宗竹」や「ハチク/淡竹」、日本原産の「マチク/真竹」など様々な種に分かれているのです。

そのうちスーパーや八百屋で見かける「生たけのこ」は、「モウソウチク/孟宗竹」のもの。みなさんがイメージする「大ぶりなたけのこ」が取れます。ほかにもマチク属の「マチク/麻竹」がメンマに、マダケ属の「ホテイチク/布袋竹」が水煮缶として少数ながら流通。このように身近な「たけのこ」だけでも、数種類に分けられるのです。

「はちく」のたけのこは変わり種

「はちく/淡竹」は、イネ科タケ亜科マダケ属の「ハチク」という竹の仲間。こちらも食用に適した「たけのこ」が採れます。しかし「はちくのたけのこ」の場合、孟宗竹よりも鮮度の低下が急激。長野県など一部地域でのみ、消費されてきました。ちなみに「破竹の勢い」という言葉がありますが、「はちく/淡竹」とは無関係。こちらは「とめどない勢い」を「竹をすんなり割ってしまう刃物」に例えた言葉なのです。

以下この記事では、普段見かけない「はちくのたけのこ」と孟宗竹など「その他たけのこ」を徹底比較。見た目や味など具体的な違いを紹介していきます。さらに各種たけのこの下処理や料理法についても解説。たけのこを自分で採って食べたいなら、この記事が役に立つはずです。

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