この記事ではタンチョウと鶴の違いについてみていきます。2つとも「同じ鳥」というイメージがあるよな。ですがタンチョウは、あくまで「鶴の一種」に過ぎない。じつは日本に限っても、タンチョウ以外の鶴が多数飛来しているんです。今回はそんな「鶴の仲間」の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ツル目ツル科の鳥」である、タンチョウと鶴の違いについてわかりやすく解説していく。

タンチョウと鶴を大まかに比較

image by iStockphoto

まずはタンチョウと鶴における「分類上の違い」から解説していきます。みなさんは鶴と聞いて、「首と脚が長い鳥」というイメージを抱くはず。そんな彼らが具体的にどのような鳥なのか、気になりますよね。以下鶴の大まかな特徴や、その一種「タンチョウ」についてみていきましょう!

世界中の湿地に生息する鶴

鶴は「ツル目ツル科」に分類される鳥の総称です。ユーラシア大陸を中心に、オーストラリア・アフリカ・北米など世界中の湿地帯に分布。水辺で生活するため、ぬかるみでの歩行に適した「長い脚」と魚を獲るのに適した「長い首・くちばし」が発達しています。

そんな鶴は鳥類のなかでも、大柄な体をもつ部類。最大種のオオヅルで全長150cmほど、最小種のナベヅルでも全長90cmほどに達します。

タンチョウは北海道に生息する鶴の一種

タンチョウは「ツル目ツル科ツル属」に分類される鶴の一種。一般に呼ばれるタンチョウヅルは誤りで、「タンチョウ」が正式な和名です。このタンチョウは全長が140cm、広げた両翼の長さが250cmにも達する大型の鶴。漢字表記で「丹頂」となるように、頭頂部の赤い模様が特徴的です。そんなタンチョウは鶴の中で唯一、日本国内で繁殖を行います。その生息地である北海道にて、「道鳥」として愛されてきました。

以下この記事では、日本に定着している「タンチョウ」とその他の「鶴」における違いを徹底解説。彼らの見分け方やライフスタイルの違いをみていきます。さらに日本に2つある「鶴の名所」についても紹介。タンチョウはもちろん、他の鶴についても理解を深めていきましょう。

タンチョウと鶴の具体的な違い

image by iStockphoto

タンチョウと他の鶴とでは、2点だけ違いがあります。どれも「ツル目ツル科」なので、見た目はほぼ同じ。しかしタンチョウにだけ、「ある特徴」があるのです。さらに日本国内で見られるタンチョウと他の鶴とでは、ライフスタイルが決定的に違います。以下両者の見分け方から、みていきましょう!

\次のページで「違い1.見た目」を解説!/

違い1.見た目

数ある鶴の中で、タンチョウを特徴付けるのは「頭頂部の模様」でしょう。「タンチョウ/丹頂」という名前通り、頭の頂点が赤色(丹)になっているのです。この赤い部分はいわば「タンチョウのトサカ」で、皮膚が剥き出しになっています。その証拠に頭部を拡大してみると、「赤いブツブツ」が無数についているのです。他の特徴としては、「全身が白色・首と風切羽だけが黒色」となっていることが挙げられます。

対して他の鶴の頭頂部は、タンチョウほど赤くなりません。黒い羽毛が赤い皮膚を覆っているので、タンチョウと見間違うことはないでしょう。その上で頭頂部が比較的赤い鶴として、ナベヅルとクロヅルが挙げられます。ですがナベヅルでは「首が白色・胴が灰色」で、クロヅルでは「首が黒色・胴が灰色」なので、タンチョウとは容易に見分けがつくはずです。

違い2.日本国内での分布や生態

鶴は基本的に「渡り鳥」なのですが、日本で見られるタンチョウは違います。国産タンチョウは一年中、北海道東部の「釧路・根室」で生活している「留鳥」です。彼らは繁殖から越冬まで、北海道の中で済ませてしまいます。なお国外(極東ロシア・中国北東部)のタンチョウは厳冬期のみ、長江河口部・朝鮮半島に移動する「渡り鳥」です。

一方日本国内で見られる他の鶴は、すべて渡り鳥。冬になるとシベリア・中国北部から、九州は「鹿児島県の北西部」などに飛来するのです。その他「島根県の北東部」や「高知県の南西部」でも、鶴が飛来・越冬した記録があります。北海道に年中定着しているタンチョウと違って、他の鶴は冬の西日本でしか見られないのです。

タンチョウなど「鶴がいる名所」は日本に2つ

image by iStockphoto

日本国内では「鶴が観察できるスポット」が2つあります。それは「釧路湿原」と「出水平野」です。それぞれ「タンチョウの生息地」、「各種鶴の飛来地」として「国の天然記念物」に指定されています。以下そんな「鶴の名所」2つについて、詳しくみていきましょう!

\次のページで「1.タンチョウの住まう釧路湿原」を解説!/

1.タンチョウの住まう釧路湿原

北海道の東部に位置する「釧路湿原」は日本最大の湿地で、タンチョウやイトウなど希少動物の宝庫です。そのためラムサール条約や国の天然記念物に指定されてきました。

そんな釧路は「絶滅寸前のタンチョウが再発見された土地」でもあります。度重なる乱獲によって1924年には、タンチョウの個体数が10羽ほどにまで減少していました。しかし現在は、保護政策のおかげで1500羽まで回復しているのです。

2.鹿児島県の出水平野は鶴の飛来地

鹿児島県の北西にある「出水平野」は、世界有数の「鶴の飛来地」として国の特別天然記念物に指定されています。冬になると極寒のユーラシア大陸から、ナベヅルやマナヅルなど数種類の鶴が出水平野に飛来。その個体数はナベヅルで9000羽、マナヅルで3000羽ほどに達します。なんとナベヅルでは全世界の8割が、マナヅルでは全世界の5割がここに飛来するのです。

出水平野の魅力は鶴の数だけではありません。出水の鶴は人家の近くにて越冬するので、間近で観察できるのです。そんな「鶴の名所・出水平野」は、地元の人々の努力のうえに成り立っています。有志が餌を与えたり、ねぐらを整えたりと、鶴を手厚く保護しているのです。

タンチョウは「赤い頭」が特徴的な鶴の仲間

タンチョウはツル目ツル科の鳥、つまり「鶴の一種」です。北海道は釧路湿原の名物として知られてきました。そんなタンチョウには2点、他の鶴との違いがあります。それは「頭頂部が赤色である点」と「年中日本国内に留まる点」です。まず他の鶴では、頭頂部が薄く羽毛に覆われています。さらに日本にいる他の鶴は、国外から飛来した「渡り鳥」なのです。

" /> 簡単でわかりやすい!タンチョウと鶴の違いとは?見分け方や国内の名所も生物系ライターが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!タンチョウと鶴の違いとは?見分け方や国内の名所も生物系ライターが詳しく解説

この記事ではタンチョウと鶴の違いについてみていきます。2つとも「同じ鳥」というイメージがあるよな。ですがタンチョウは、あくまで「鶴の一種」に過ぎない。じつは日本に限っても、タンチョウ以外の鶴が多数飛来しているんです。今回はそんな「鶴の仲間」の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ツル目ツル科の鳥」である、タンチョウと鶴の違いについてわかりやすく解説していく。

タンチョウと鶴を大まかに比較

image by iStockphoto

まずはタンチョウと鶴における「分類上の違い」から解説していきます。みなさんは鶴と聞いて、「首と脚が長い鳥」というイメージを抱くはず。そんな彼らが具体的にどのような鳥なのか、気になりますよね。以下鶴の大まかな特徴や、その一種「タンチョウ」についてみていきましょう!

世界中の湿地に生息する鶴

鶴は「ツル目ツル科」に分類される鳥の総称です。ユーラシア大陸を中心に、オーストラリア・アフリカ・北米など世界中の湿地帯に分布。水辺で生活するため、ぬかるみでの歩行に適した「長い脚」と魚を獲るのに適した「長い首・くちばし」が発達しています。

そんな鶴は鳥類のなかでも、大柄な体をもつ部類。最大種のオオヅルで全長150cmほど、最小種のナベヅルでも全長90cmほどに達します。

タンチョウは北海道に生息する鶴の一種

タンチョウは「ツル目ツル科ツル属」に分類される鶴の一種。一般に呼ばれるタンチョウヅルは誤りで、「タンチョウ」が正式な和名です。このタンチョウは全長が140cm、広げた両翼の長さが250cmにも達する大型の鶴。漢字表記で「丹頂」となるように、頭頂部の赤い模様が特徴的です。そんなタンチョウは鶴の中で唯一、日本国内で繁殖を行います。その生息地である北海道にて、「道鳥」として愛されてきました。

以下この記事では、日本に定着している「タンチョウ」とその他の「鶴」における違いを徹底解説。彼らの見分け方やライフスタイルの違いをみていきます。さらに日本に2つある「鶴の名所」についても紹介。タンチョウはもちろん、他の鶴についても理解を深めていきましょう。

タンチョウと鶴の具体的な違い

image by iStockphoto

タンチョウと他の鶴とでは、2点だけ違いがあります。どれも「ツル目ツル科」なので、見た目はほぼ同じ。しかしタンチョウにだけ、「ある特徴」があるのです。さらに日本国内で見られるタンチョウと他の鶴とでは、ライフスタイルが決定的に違います。以下両者の見分け方から、みていきましょう!

\次のページで「違い1.見た目」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: