この記事ではハリセンボンとフグの違いについてみていきます。2つとも「丸い体を風船のように膨らませる魚」というイメージがあるよな。見た目が似ている両者は、同じ「フグ目フグ亜目」に分類されているんです。しかしフグの仲間である「ハリセンボン」には毒がないらしいのです。今回はそんな「フグの仲間」の違いを、見分け方を含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「フグ目フグ亜目の魚」である、ハリセンボンとフグの違いについてわかりやすく解説していく。

ハリセンボンとフグを大まかに比較

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まずはハリセンボンとフグを、図鑑の分類にて比較。同じ「フグ目フグ亜目」である両者について、共通点と違いを明らかにしていきます。さらにハリセンボンやフグの仲間についても紹介。両者がどのような魚なのか、イメージを掴んでいきましょう!

毒を持っているのに食べられる「フグ」

「フグ」は「フグ目フグ亜目フグ科」の魚を指す総称。熱帯から温帯にかけて、世界中の沿岸部で見られる魚です。日本にも太平洋側で「ショウサイフグ」、日本海側で「ゴマフグ」など様々な種が生息しています。体内に毒を持っている種が多いのですが、「トラフグ」や「サバフグ」など体の一部が無毒な種は食材として利用されてきました。

そんなフグの見た目は個性的。フグは腹ビレのない、丸みを帯びた体をもちます。さらに厚い皮膚も特徴のひとつ。フグは敵を威嚇するため体を膨張させるのですが、皮膚が破裂することはありません。またフグの口は「くちばし」のように突き出ていて、丈夫な前歯を備えています。フグはこの前歯を使って、貝・ウニ・甲殻類など海底に住まう動物(底生生物)を捕食しているのです。

「ハリセンボン」はフグの仲間

「ハリセンボン」はフグ同様「フグ目フグ亜目」なのですが、フグ科ではなく「ハリセンボン科」の魚。「ハリセンボン」以外にも、「ネズミフグ」や「イシガキフグ」など様々な種を指す総称です。こちらも温帯から熱帯にかけて、世界中の沿岸部に生息。日本では「津軽海峡以南の日本海」と「房総半島以南の太平洋」、そして「琉球列島」の温かい水域で見られます。

そんなハリセンボンは近縁のフグに似ている魚。ハリセンボンにおいても、腹ビレのない「丸いフォルムの体」が特徴的です。そしてフグ同様に厚い皮膚をもっていて、体を膨張させながら敵を威嚇します。餌もフグと同じく硬い殻をもつ底生生物で、突き出した前歯を使って捕食する点も変わりません。この記事ではそんなフグ目フグ亜目の魚の違いについて、詳しく解説していきます。

ハリセンボンとフグの具体的な違い

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ハリセンボンとフグとでは、具体的な違いが3つ存在。じつは両者ではよく知られている「トゲの有無」以外にも、歯や毒性などに違いがみられるのです。まずはハリセンボンのトゲについて、「正確な本数」も含めてみていきましょう!

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違い1.体表の見た目

ハリセンボンとフグとでは、見た目が違います。ハリセンボンの体には、フグにない「鋭いトゲ」が付属。このトゲは鱗が発達したもので、普段は他の魚同様に寝そべっています。ですがひとたび天敵に襲われたハリセンボンは、体を膨らませながらトゲを立てて「いが栗」のような見た目になるのです。ちなみにハリセンボンのトゲは300〜400本程度なので、1000本もありません。

違い2.歯の本数

さらにハリセンボン/フグでは、歯のつくりにも違いがあります。まず両者では甲殻類やウニを捕食するのに適した硬い前歯が発達。そして他の歯をもたないのが共通点です。しかしハリセンボンとフグとでは、歯の本数が違います。ハリセンボンは上下1本ずつで計2本、フグは上下2本ずつで計4本の歯をもっているのです。

違い3.毒性

まずフグは極めて強い毒をもつ魚です。フグは体の各部位に「テトロドトキシン」という、麻痺性の神経毒を保有。フグの有毒部位を食べてこの毒を取り込んでしまうと、全身の麻痺・呼吸困難など致命的な症状をきたすのです。フグの種類により有毒部位は異なり、トラフグなど筋肉が無毒な種は食用に供されます。しかし食用に向く種でも調理・販売には「調理免許」が必要です。

対して「フグに近い魚」であるハリセンボンはほぼ無毒。食品衛生法によると、筋肉など主要な部位は確実に無毒で、肝臓・卵巣だけは他のフグにならって有毒部位になっています。ハリセンボンの有毒部位については、詳しい毒性がわかっていません。研究が進んでいないため、肝臓・卵巣が「有毒である可能性」を否定しきれないということなのです。こちらは後述するように、一部地域で食用とされています。

ハリセンボンとフグの食べ方

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ここからはハリセンボンとフグの食べ方を紹介。本州では馴染みの薄い「ハリセンボンの調理法」や種ごとに違う「フグの有毒部位」など、フグの仲間について雑学をお伝えします。まずは沖縄で食べられているハリセンボンから、みていきましょう!

実は食べられる「ハリセンボン」

じつはハリセンボンは、沖縄にて「アバサー」という名前で流通、食用とされています。現地ではぶつ切りにしたハリセンボンを味噌汁(アバサー汁)や唐揚げとして食べているようです。

また沖縄では昔から、有毒部位の「肝臓」もアバサー汁に入れてきたそう。それでも中毒例が出なかったことから、沖縄近海のハリセンボンは「完全に無毒」ともいわれています。ですが詳細については、さらなる調査を待つべきでしょう。

種類によって可食部が違う「フグ」

フグは致死性の毒をもつにも関わらず、「高級食材」です。とくに大阪では「毒に当たると命を落とす」という意を込めた、「てっぽう」というあだ名で愛されてきました。その名残でフグ料理店では、フグのちり鍋を「てっちり」、フグの刺身を「てっさ」と呼んでいるのです。

そんな「高級食材・フグ」では、種ごとに可食部・有毒部位が異なります。まずポピュラーな「トラフグ」では筋肉に加え、精巣と皮膚(ヒレを含む)が可食部。とくオス限定の精巣(白子)は、フグ本体よりも高値で取引されます。また乾燥させたヒレは「ひれ酒」に、皮(てっぴ)も「皮刺し」として食されているのです。対して全身に毒をもつ「クサフグ」や「ヒガンフグ」は、食用に適しません。

ハリセンボンは「トゲ」を、フグは「猛毒」をもつ

ハリセンボンもフグも、同じフグ目フグ亜目の魚。ともに丸みを帯びた体と突き出た口をもち、よく似た見た目をしています。しかし体の表面にトゲがついているのは、「ハリセンボン」ことハリセンボン科の魚だけ。対してフグ科の魚はトゲをもちません。その代わりに多くのフグでは、体内に神経毒・テトロドトキシンが蓄積。免許をもった料理人がいる、専門の「フグ料理店」があるのはこのためです。

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簡単でわかりやすい!ハリセンボンとフグの違いとは?見分け方や食べ方も生物系ライターが詳しく解説

この記事ではハリセンボンとフグの違いについてみていきます。2つとも「丸い体を風船のように膨らませる魚」というイメージがあるよな。見た目が似ている両者は、同じ「フグ目フグ亜目」に分類されているんです。しかしフグの仲間である「ハリセンボン」には毒がないらしいのです。今回はそんな「フグの仲間」の違いを、見分け方を含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「フグ目フグ亜目の魚」である、ハリセンボンとフグの違いについてわかりやすく解説していく。

ハリセンボンとフグを大まかに比較

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まずはハリセンボンとフグを、図鑑の分類にて比較。同じ「フグ目フグ亜目」である両者について、共通点と違いを明らかにしていきます。さらにハリセンボンやフグの仲間についても紹介。両者がどのような魚なのか、イメージを掴んでいきましょう!

毒を持っているのに食べられる「フグ」

「フグ」は「フグ目フグ亜目フグ科」の魚を指す総称。熱帯から温帯にかけて、世界中の沿岸部で見られる魚です。日本にも太平洋側で「ショウサイフグ」、日本海側で「ゴマフグ」など様々な種が生息しています。体内に毒を持っている種が多いのですが、「トラフグ」や「サバフグ」など体の一部が無毒な種は食材として利用されてきました。

そんなフグの見た目は個性的。フグは腹ビレのない、丸みを帯びた体をもちます。さらに厚い皮膚も特徴のひとつ。フグは敵を威嚇するため体を膨張させるのですが、皮膚が破裂することはありません。またフグの口は「くちばし」のように突き出ていて、丈夫な前歯を備えています。フグはこの前歯を使って、貝・ウニ・甲殻類など海底に住まう動物(底生生物)を捕食しているのです。

「ハリセンボン」はフグの仲間

「ハリセンボン」はフグ同様「フグ目フグ亜目」なのですが、フグ科ではなく「ハリセンボン科」の魚。「ハリセンボン」以外にも、「ネズミフグ」や「イシガキフグ」など様々な種を指す総称です。こちらも温帯から熱帯にかけて、世界中の沿岸部に生息。日本では「津軽海峡以南の日本海」と「房総半島以南の太平洋」、そして「琉球列島」の温かい水域で見られます。

そんなハリセンボンは近縁のフグに似ている魚。ハリセンボンにおいても、腹ビレのない「丸いフォルムの体」が特徴的です。そしてフグ同様に厚い皮膚をもっていて、体を膨張させながら敵を威嚇します。餌もフグと同じく硬い殻をもつ底生生物で、突き出した前歯を使って捕食する点も変わりません。この記事ではそんなフグ目フグ亜目の魚の違いについて、詳しく解説していきます。

ハリセンボンとフグの具体的な違い

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ハリセンボンとフグとでは、具体的な違いが3つ存在。じつは両者ではよく知られている「トゲの有無」以外にも、歯や毒性などに違いがみられるのです。まずはハリセンボンのトゲについて、「正確な本数」も含めてみていきましょう!

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