この記事では「乳牛」と「肉牛」の違いを見ていきます。文字通り、何のために飼育されている牛なのかの違いだというのは簡単に想像がつくでしょう。見た目の違いや品種だけでなく、和牛の種類についても元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「乳牛」と「肉牛」の違い

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牛乳やチーズ、焼き肉など、私たちの食生活に牛は欠かすことができませんよね。では、牛にはどのような品種があるのでしょうか。まずは、「乳牛」と「肉牛」の違いについて説明します。

「乳牛」:生乳生産用に飼育される牛

「乳牛」は文字通り、生乳を生産するために飼育されている牛のことです。日本国内で飼育されている「乳牛」は約136万頭。この「乳牛」ですが、日本で一番多く飼育されているのはホルスタイン種と呼ばれる牛で、白黒のまだらな毛を持っています。原産はオランダ

他にもイギリス原産のジャージー種もいますね。小型の「乳牛」で赤褐色の毛を持っています。粗飼料でも乳がよく出る品種です。ジャージー乳の乳脂肪分はホルスタイン種のよりも多く、バターやクリームの製造によく使われていますね。

日本国内で飼育されている「乳牛」の頭数はホルスタイン種が多く98パーセント以上ジャージー種はわずか0.8パーセントと希少ですが、すでに述べた通り、バターやクリームの製造に適したジャージー乳を使ったデザートは濃厚でコクがあるということで、味の評価が高いのは皆さんがご存じの通りです。

「肉牛」:食肉生産用に飼育される牛

次に「肉牛」ですが、これも文字通り、食肉を生産することを目的に飼育されている牛。元々、田畑で役牛として働いていたのが、その必要がなくなったため「肉牛」として飼育されるようになったのです。国内で飼育されている「肉牛」は大きく3つに分類されます。「和牛」、「乳用種」、「交雑種」ですね。

まず「和牛」は農林水産省が定めた4つの品種のみ。これはのちほど詳しく説明しますね。「乳用種」とは「乳牛」の雄を去勢して「肉牛」として飼育された牛、また生乳生産後の雌を食肉用に経産牛として再飼育された牛のことです。

「交雑種」は後述する黒毛和種の雄と「乳用種」の雌を交配させたもので、「F1牛」とも呼ばれます。「交雑種」の一部は和牛にも劣らない格付がされることもあり、ブランド牛もありますね。

「和牛」の種類

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「和牛」と聞くと、「松阪牛」「神戸ビーフ」「近江牛」などを思い浮かべるのではないでしょうか。まずこの「和牛」ですが、現在4つの品種のみが「和牛」と呼ぶことができます。その4つは「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」「日本短角種」。それぞれを詳しくみていきましょう。

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1.「和牛」の9割を占める黒毛和種

国内で飼育されている「和牛」の9割を占めるのがこの「黒毛和種」。やや褐色を帯びた黒い毛を持っています。肉質が優れているのが特徴ですね。サシや霜降りが優れているのも特徴。元々は在来の和牛(農耕用)にブラウンスイス種、デボン種、エアシャー種、シンメンタール種などの外国種を交配させ改良を重ねた役肉兼用種でしたが、戦後、食肉専用主として改良されてきた品種です。

松阪牛、神戸ビーフ、近江牛、米沢牛などをはじめ、国内のブランド牛の多くはこの「黒毛和種」に該当します。

余談ですが、「神戸牛」というのは厳密には存在しません。知ってましたか。「但馬牛」の内、さまざまな基準をクリアした牛肉を「神戸肉」「神戸ビーフ」と呼んでいるのです。現在では、他のブランド牛に合わせて「神戸牛」も正式名称となりましたが、元々の正式名称は違っていました。

2.熊本県・高知県を中心に飼育される褐毛和種

「褐毛(あかげ)和種」は熊本県を中心に飼育される熊本系と高知県を中心に飼育される高知系があります。熊本系は阿蘇牛や矢部牛などの土着した朝鮮牛にシンメンタール種を交配し改良したもの、高知系は朝鮮牛にシンメンタール種の雑種を交配して改良したもの。

熊本系はやや淡い褐色の毛を持っており、「熊本あか牛」と呼ばれ、肉質は黒毛和種に近いのが特徴です。高知系は鼻、口、目のまわりや四肢の先端、尾が濃い黒褐色で、「土佐あかうし」「土佐和牛」と呼ばれています。高知系の一部は徳島や宮城、北海道でも飼育。「褐毛和種」は国内の「和牛」生産の約5パーセントを占めています。

3.山口県を中心に飼育される無角和種

「無角和種」は山口県を中心に飼育されている品種で、真黒の毛で、角がないのが特徴。最初は黒毛和種にアバディーンアンガス種を交配し角がない品種ができたのですが、その後、アンガス種を交配し改良したのが現在の「無角和種」ですが、飼育頭数は減っていますね。

4.南部牛とショートホーン種を交配した日本短角種

「日本短角種」は東北地方の北部原産の南部牛にショートホーン種を交配させ改良した品種。褐色の経路で、岩手、青森、秋田、北海道で主に飼育されています。手間がかからず成長が早いのが特徴。他の品種と比較すると肉質はやや劣ります。

外国産「和牛」=「WAGYU」

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最後に「WAGYU」についてお話します。「和牛」は日本で生産されたもの、と考えてしまいがちですが、実は「アメリカ産WAGYU」や「オーストラリア産WAGYU」があるのはご存じですか。「和牛」は研究用として生体、精子がアメリカに輸出されていました。1988年以降は輸出されていませんが、この「和牛」の遺伝子はアメリカを経由してオーストラリアに渡り、現在では外国産「和牛」も多く生産されているのです。

というわけで、海外でも「黒毛和種」が多く飼育されています。「和牛」はあくまで品種ですので、生産地が日本である必要はないということなのですね。

ちなみに日本産「和牛」も多く輸出されていますが、現在の世界市場では外国産「和牛」=「WAGYU」のシェアが大きいうえ、昨今の海外での日本食ブームの影響を受け、アメリカ、オーストラリアだけでなく、カナダや中国でも「WAGYU」の生産が進んでいます。

\次のページで「「乳牛」と「肉牛」の違いは飼育の目的」を解説!/

「乳牛」と「肉牛」の違いは飼育の目的

「乳牛」と「肉牛」の違いは飼育の目的です。「乳牛」は生乳の生産を目的に飼育された牛、「肉牛」は食肉の生産を目的に飼育された牛、ということ。また、皆さんも知っている「和牛」は「肉牛」の品種であり、日本で生産されたものだけではないというのには驚いたのではないでしょうか。外国産「和牛」が世界市場では大きなシェアを占めていますが、日本産「和牛」をどのようにして守っていくか、というのはこれからの課題でもあるようですね。

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雑学

簡単で分かりやすい「乳牛」と「肉牛」の違い!和牛の種類も元塾講師が詳しく解説!

この記事では「乳牛」と「肉牛」の違いを見ていきます。文字通り、何のために飼育されている牛なのかの違いだというのは簡単に想像がつくでしょう。見た目の違いや品種だけでなく、和牛の種類についても元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「乳牛」と「肉牛」の違い

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牛乳やチーズ、焼き肉など、私たちの食生活に牛は欠かすことができませんよね。では、牛にはどのような品種があるのでしょうか。まずは、「乳牛」と「肉牛」の違いについて説明します。

「乳牛」:生乳生産用に飼育される牛

「乳牛」は文字通り、生乳を生産するために飼育されている牛のことです。日本国内で飼育されている「乳牛」は約136万頭。この「乳牛」ですが、日本で一番多く飼育されているのはホルスタイン種と呼ばれる牛で、白黒のまだらな毛を持っています。原産はオランダ

他にもイギリス原産のジャージー種もいますね。小型の「乳牛」で赤褐色の毛を持っています。粗飼料でも乳がよく出る品種です。ジャージー乳の乳脂肪分はホルスタイン種のよりも多く、バターやクリームの製造によく使われていますね。

日本国内で飼育されている「乳牛」の頭数はホルスタイン種が多く98パーセント以上ジャージー種はわずか0.8パーセントと希少ですが、すでに述べた通り、バターやクリームの製造に適したジャージー乳を使ったデザートは濃厚でコクがあるということで、味の評価が高いのは皆さんがご存じの通りです。

「肉牛」:食肉生産用に飼育される牛

次に「肉牛」ですが、これも文字通り、食肉を生産することを目的に飼育されている牛。元々、田畑で役牛として働いていたのが、その必要がなくなったため「肉牛」として飼育されるようになったのです。国内で飼育されている「肉牛」は大きく3つに分類されます。「和牛」、「乳用種」、「交雑種」ですね。

まず「和牛」は農林水産省が定めた4つの品種のみ。これはのちほど詳しく説明しますね。「乳用種」とは「乳牛」の雄を去勢して「肉牛」として飼育された牛、また生乳生産後の雌を食肉用に経産牛として再飼育された牛のことです。

「交雑種」は後述する黒毛和種の雄と「乳用種」の雌を交配させたもので、「F1牛」とも呼ばれます。「交雑種」の一部は和牛にも劣らない格付がされることもあり、ブランド牛もありますね。

「和牛」の種類

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「和牛」と聞くと、「松阪牛」「神戸ビーフ」「近江牛」などを思い浮かべるのではないでしょうか。まずこの「和牛」ですが、現在4つの品種のみが「和牛」と呼ぶことができます。その4つは「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」「日本短角種」。それぞれを詳しくみていきましょう。

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