
簡単でわかりやすい!追想と追憶の違いとは?漢字の意味や英語表現も現役塾講師がわかりやすく解説

ライター/空野きのこ
大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。
追想と追憶のざっくりした違い

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まず、はじめに「追想」と「追憶」のおおまかな違いについて説明したいと思います。「追想」と「追憶」は、どちらも「過去のことを思い出し、懐かしむこと」を意味し、正直意味の上では違いがなく、同じ意味の言葉と言っていいでしょう。
ただし、使われている漢字は違うだけに、それぞれの言葉が読み手や聞き手に対して与えるニュアンスには微妙な違いが出ることがあります。今回はそのことについてていねいに説明していきましょう。
追想と追憶の漢字を説明
さきほど、「追想」と「追憶」は、どちらも「過去のことを思い出して懐かしむこと」で、意味としては違いがないものの、使われている漢字が違うだけに、微妙なニュアンスの違いがあることを説明しました。そこで、ここからはそれぞれの言葉に対する理解を深めるため、「追想」と「追憶」、それぞれに使われている漢字に着目しながら説明したいと思います。
「追」は重ねて行くから追う?

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まずは「追想」と「追憶」の両方に使われている「追」について説明しましょう。「追」という字の右側の形は「土を積み重ねた様子」をあらわしているのではないかと考えられています。そして、「行く」や「移動する」といった意味を持つ「しんにょう」と組み合わせたことで、「重ねて(一度目のその次に)行く」ということで、前に行くものの後を「追う」ことをあらわしているのかもしれませんね。
そして、「追」という字はそこから単に「追う」ことだけではなく、「追加」や「追試」など、「後から何かをする」ときに対しても使われるようになりました。それがやがて、現時点ではなく、後になってそのことを思い出すということから、今回説明している「追想」や「追憶」、そして「死者の生前を思い出して悲しみにひたること」を意味する「追悼」などで使われるような、「過去をさかのぼる」というニュアンスを持つようになったのでしょう。
「想」はものの形を思い浮かべること
次に、「追想」の「想」の字を説明しましょう。「想」の上にある「相」という字は、「人相」や「手相」などといった単語に使われるように、「ものの見た目や様子」をあらわします。そして、その下に「心」を付けることで、「想」という字は「ものの姿や形を心に思い浮かべること」、つまり「おもう」ということをあらわすようになったのでしょう。
ですから、「過去にさかのぼる」意味を持つ「追」と、このような意味を持つ「想」という字からなる「追想」は、「過去のことを思い出して懐かしむこと」をあらわすのです。
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「憶」は心の深くで思うこと
今度は「追憶」の「憶」という字について説明しましょう。「憶」の右側は「意」という字ですが、この「意」は「心の中の動き」や「思うこと」を意味します。そして、それに「りっしんべん」を加えた「憶」という字は、それよりもさらに「心の奥深くで思うこと」をあらわすのです。ですので、「憶」という字の訓読みには「おもう」や、「記憶」の「憶」でもあるように、「おぼえる」などがあります。
ですから、「過去にさかのぼる」意味を持つ「追」と、このような意味を持つ「憶」という字からなる「追憶」は、「追想」と同じく「過去のことを思い出して懐かしむこと」をあらわすものの、より深く記憶の底にひたるニュアンスを与える言葉です。
追想や追憶は英語で何と言う?

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ここまでは「追想」と「追憶」について日本語の視点から説明してきましたね。しかし、それでは「追想」や「追憶」を英語では何と言うのでしょうか?ズバリ、「追想」や「追憶」を英語で言うときには「memory」、「recollection」、「reminiscence」などが使われます。「memory」は多くの人が知っての通り、「記憶」や「思い出」の意味で、過去や物事を思い出すときにも使われるのです。
また、「recollection」は「過去を懐かしむ」ことも意味しますが、どちらかというと「自力で一生懸命思い出す」イメージが強く、「reminiscence」はすでに無くなってしまったものや切ない過去のことを思い出すときに使われる言葉なので、これらの中では「reminiscence」が日本語の「追想」や「追憶」のニュアンスに一番近いと言えるのではないでしょうか。
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