この記事では「硬質ケース」と「硬貨ケース」の違いについてみていきます。どちらもトレーディングカード、つまりトレカなどを保護するためのケースについて調べるときに、ネットなどで目にすることのある言葉ですが、両者の言葉の違いは何かと聞かれると、答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

硬質ケースと硬貨ケースのざっくりした違い

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まずは「硬質ケース」「硬貨ケース」の違いについて説明しましょう。「硬質ケース」主にトレカやアイドルの写真などを始め、領収書や取り扱い説明書などまで、サイズに合ったものを使うことでさまざまなものを収納できる、硬さのあるケースです。

一方の「硬貨ケース」はおそらく「硬質ケース」と間違えて使われた言葉であり、普通は使われることがありません。ですので、今回は「硬質ケース」の意味や、なぜ「硬質ケース」という間違った言葉が使われているかについて説明したいと思います。

硬質と硬貨について漢字を説明

さきほど、「硬質ケース」トレカやアイドルの写真などを収納できる硬いケースで、「硬貨ケース」は「硬質ケース」の誤用であることを説明しましたが、ここからはその違いについて理解を深めるために、それぞれに使われている「硬質」「硬貨」という言葉について、漢字の意味を中心に説明していきたいと思います。

「硬」は石のようにかたく張りつめること

まずは、「硬質」「硬貨」の両方に使われている「硬」という字について説明しましょう。「硬」の右側の「更」という字は、ものを左右に引っぱって張りつめる様子をあらわしていると考えられています。ですので、「石(いしへん)」に「更」を組み合わせた「硬」という字は、「石のようにかたく張りつめていること」つまり、「かたい」ことを意味するようになりました。

「質」は神様が保証するもの?

つぎに、「質」という字について説明しましょう。「質」の下にある「貝」は、海の「貝」とは別のもので、祭祀(宗教的な儀式)などで使われる器ではないかと考えられています。その器には、神様との約束などが彫られていたりしたのですが、上に二つある「斤」はその文字を彫るのに使った「刃物」のことで、「質」という字は「神様との約束を彫った器」をあらわすことから「誓い」「保証」という意味になりました。

また、「質」には「もともと持っている性質や資質」など内面的なものを指すものがありますが、「質」がもともと祭祀の器のことで、「保証」という意味もあることを考えると、そういった内面的なものを指す意味は、「『質』という器に入っている、神様から保証されているもの」というところからきているのかもしれません。ですので、さきほどの「硬」と今回説明した「質」からなる「硬質」は、「かたい性質を持った」という意味なのです。

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「貨」はお金に化ける貝

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今度は、「貨」という字について説明しましょう。「貨」は「貝」の上に「化」と書きますよね?実は、古代では「子安貝(こやすがい)」という貝をお金として使っていました。そこから、お金として使うことができる(つまり「化ける」)貝ということで、「貝」と「化」を組み合わせた「貨」は、「価値や値打ちのあるもの」「お金」を意味するようになったのです。

ですので、「硬貨」とは、「金属という硬いものでできているお金」のことを意味しますし、「硬貨ケース」というと、多くの人は「硬貨を入れるケース」をイメージするのではないでしょうか。ただし、硬貨を入れるためのケースというと、一般的には「硬貨ケース」ではなく「コインケース」と呼ぶ場合がほとんどです。また、「硬貨ケース」「硬質ケース」の誤用として使われる原因としては、どちらも「硬」から始まり、二文目も「貝」が共通していてパッと見が似ているからではないでしょうか。

やわらかいケースのことは何と言う?

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さきほどまでは、トレカなどを保護するのに使う「硬質ケース」「硬貨ケース」という言葉の意味や違いについて説明してきましたが、トレカなどを入れるケースには、硬いものだけではなく、やわらかいものもありますね。そのようなやわらかいケースのことは「軟質カードケース」あるいは「ソフトカードケース」などと呼ぶのです。

また、「硬質カードケース」「軟質カードケース」ほどしっかりしたものではなく、大量のカードを1枚1枚入れる、簡単なキズから守るうすいフィルムのようなものは「カードスリーブ」「トレカ用スリーブ」などと言います。

硬質ケースは「硬いケース」で「硬貨ケース」はその誤用!

ここまでの説明で、「硬質ケース」トレカやアイドルの写真などを収納するための硬いケースのことで、「硬貨ケース」は、その字面が似ていることから誤用されたものであることなどについて知っていただけたかと思います。今回の説明がみなさんの理解に少しでも役立てたなら幸いです。

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簡単でわかりやすい!硬質ケースと硬貨ケースの違いとは?やわらかいケースは何と言う?現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「硬質ケース」と「硬貨ケース」の違いについてみていきます。どちらもトレーディングカード、つまりトレカなどを保護するためのケースについて調べるときに、ネットなどで目にすることのある言葉ですが、両者の言葉の違いは何かと聞かれると、答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

硬質ケースと硬貨ケースのざっくりした違い

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まずは「硬質ケース」「硬貨ケース」の違いについて説明しましょう。「硬質ケース」主にトレカやアイドルの写真などを始め、領収書や取り扱い説明書などまで、サイズに合ったものを使うことでさまざまなものを収納できる、硬さのあるケースです。

一方の「硬貨ケース」はおそらく「硬質ケース」と間違えて使われた言葉であり、普通は使われることがありません。ですので、今回は「硬質ケース」の意味や、なぜ「硬質ケース」という間違った言葉が使われているかについて説明したいと思います。

硬質と硬貨について漢字を説明

さきほど、「硬質ケース」トレカやアイドルの写真などを収納できる硬いケースで、「硬貨ケース」は「硬質ケース」の誤用であることを説明しましたが、ここからはその違いについて理解を深めるために、それぞれに使われている「硬質」「硬貨」という言葉について、漢字の意味を中心に説明していきたいと思います。

「硬」は石のようにかたく張りつめること

まずは、「硬質」「硬貨」の両方に使われている「硬」という字について説明しましょう。「硬」の右側の「更」という字は、ものを左右に引っぱって張りつめる様子をあらわしていると考えられています。ですので、「石(いしへん)」に「更」を組み合わせた「硬」という字は、「石のようにかたく張りつめていること」つまり、「かたい」ことを意味するようになりました。

「質」は神様が保証するもの?

つぎに、「質」という字について説明しましょう。「質」の下にある「貝」は、海の「貝」とは別のもので、祭祀(宗教的な儀式)などで使われる器ではないかと考えられています。その器には、神様との約束などが彫られていたりしたのですが、上に二つある「斤」はその文字を彫るのに使った「刃物」のことで、「質」という字は「神様との約束を彫った器」をあらわすことから「誓い」「保証」という意味になりました。

また、「質」には「もともと持っている性質や資質」など内面的なものを指すものがありますが、「質」がもともと祭祀の器のことで、「保証」という意味もあることを考えると、そういった内面的なものを指す意味は、「『質』という器に入っている、神様から保証されているもの」というところからきているのかもしれません。ですので、さきほどの「硬」と今回説明した「質」からなる「硬質」は、「かたい性質を持った」という意味なのです。

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