この記事では「尊守」と「遵守」の違いについてみていきます。どちらも、何か守るべき規則やルールに従うことを宣言するときに聞くことのある言葉ですが、それぞれの言葉はなんとなく知っているつもりでも、その違いは何かと聞かれると、答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

尊守と遵守の読み方を説明

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まずは、「尊守」「遵守」の読み方がわからない!という人もいるかと思うので、その漢字の読みについてお教えしたいと思います。まず「尊守」という言葉は、実はあくまで間違って使われているものであり、本来存在しない言葉です。ですので、正しい読み方を教えるというのも変な話なのですが、「尊」という字の音読みは「ソン」しか無いので、あえて読み方をお教えするなら、「尊守」「ソンシュ」と読むことが出来るでしょう。

そして、「遵守」に関しては、「遵守」「遵」には「ジュン」という音読みがあるので、「ジュンシュ」と読みます。ちなみに「遵」という字には「シュン」という音読みもあるのですが、常用外の読み方なので知らなくても無理はありませんし、「遵守」を「シュンシュ」とは読むことはありません。

尊守と遵守のざっくりした違い

今度は「尊守」「遵守」のおおまかな違いについて説明しましょう。「尊守」は、さきほども説明したように、あくまで間違った言葉であるのに対し、「遵守」「法律や道徳・習慣など、守るべきルールや規則を守り、従うこと」という意味です。ですから、今回は「尊守」という言葉が間違って使われる理由や、「遵守」という言葉について、ていねいに説明していきたいと思います。

尊守と遵守の漢字を説明

さきほど、「遵守」「守るべきルールや規則を守り従うこと」であり、「尊守」その誤用であることを説明しましたね。そこで、ここからは「尊守」という間違いが広まった理由や「遵守」という言葉について理解を深めるために、それぞれに使われている漢字について説明したいと思います。

「守」は手を使って家を守る様子

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まずは「遵守」「尊守」の両方に使われている「守」という漢字について説明しましょう。「守」は「ウ(うかんむり)」と「寸」を組み合わせて作られた字ですが、「うかんむり」は屋根を、「寸」は手をあらわしていて、そこから「守」という字は、家を手で守る様子から作られたと考えられています。ですから、何かを防衛する意味の「守る」という言葉にこの字が使われるようになったのです。

そして、そこから「守る」の意味は発展していき、単に「防衛する」ことだけでなく、物事やルールなどの決まり事に従う意味に対しても、「ルールを守る」のように「守る」という言葉が使われるようになりました。

「尊」は酒の器を持つ様子

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今度は「尊守」「尊」について説明しましょう。「尊」という字の下の「寸」は、「守」でも説明したように「手」をあらわしています。その上の「酋」は「祭祀(祖先や神々をまつること)のときに使う器」を意味し、「尊」という字は、「祭祀に使う器を手で大切に持つ」様子をあらわすことから、「品物や身分が高い」こと、つまり「とうとい」という意味になりました。

この「尊」という字は、見てのとおり「遵」という字と似ていることから、「遵」という字と間違えたり、「遵」という字を「尊」と同じく、「ソン」と読んでしまう人がいるため「尊守」という誤用が広まったのでしょう。

\次のページで「「遵」は尊い人の後を行くこと?」を解説!/

「遵」は尊い人の後を行くこと?

今度は「遵守」「遵」について説明しましょう。「遵」という字は、「しんにょう」に「尊」を書きますが、「尊」「祭祀の器を手で持つ様子」であることは説明しましたね。実は、祭祀で身分の高い人が前に進むとき、その後には「酒器」を持つ人がそれについていく形で移動していました。ですので、「遵」という字は「尊ぶ人の後を行く」ことから「したがう」という意味になったと考えられているのです。

また、別の説としては、「尊」は「細長いきれいな形の酒樽」を意味し、そこに「しんにょう」をつけることで、「(細長い酒樽のように)細く一線にまとめて、その外にはみ出ないように引き締めていくこと」を意味し、「道筋に沿って行く」ことから「したがう」になったのではないかというものがあります。このような由来を持つ「遵」と、さきほど説明した「守」を組み合わせているので「遵守」「ルールや規則を守り従うこと」を意味するのです。

尊守は間違いで、遵守は決まりをキチンと守ること!

ここまでの説明で、「尊守」という言葉が間違いであることや、「遵守」「法律や道徳・習慣などをキチンと守り、従うこと」であることについて知っていただけたかと思います。今回の説明が皆さんの理解に少しでも役立てたなら幸いです。

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簡単でわかりやすい!尊守と遵守の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「尊守」と「遵守」の違いについてみていきます。どちらも、何か守るべき規則やルールに従うことを宣言するときに聞くことのある言葉ですが、それぞれの言葉はなんとなく知っているつもりでも、その違いは何かと聞かれると、答えに困る人も少なくないでしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

尊守と遵守の読み方を説明

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まずは、「尊守」「遵守」の読み方がわからない!という人もいるかと思うので、その漢字の読みについてお教えしたいと思います。まず「尊守」という言葉は、実はあくまで間違って使われているものであり、本来存在しない言葉です。ですので、正しい読み方を教えるというのも変な話なのですが、「尊」という字の音読みは「ソン」しか無いので、あえて読み方をお教えするなら、「尊守」「ソンシュ」と読むことが出来るでしょう。

そして、「遵守」に関しては、「遵守」「遵」には「ジュン」という音読みがあるので、「ジュンシュ」と読みます。ちなみに「遵」という字には「シュン」という音読みもあるのですが、常用外の読み方なので知らなくても無理はありませんし、「遵守」を「シュンシュ」とは読むことはありません。

尊守と遵守のざっくりした違い

今度は「尊守」「遵守」のおおまかな違いについて説明しましょう。「尊守」は、さきほども説明したように、あくまで間違った言葉であるのに対し、「遵守」「法律や道徳・習慣など、守るべきルールや規則を守り、従うこと」という意味です。ですから、今回は「尊守」という言葉が間違って使われる理由や、「遵守」という言葉について、ていねいに説明していきたいと思います。

尊守と遵守の漢字を説明

さきほど、「遵守」「守るべきルールや規則を守り従うこと」であり、「尊守」その誤用であることを説明しましたね。そこで、ここからは「尊守」という間違いが広まった理由や「遵守」という言葉について理解を深めるために、それぞれに使われている漢字について説明したいと思います。

「守」は手を使って家を守る様子

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まずは「遵守」「尊守」の両方に使われている「守」という漢字について説明しましょう。「守」は「ウ(うかんむり)」と「寸」を組み合わせて作られた字ですが、「うかんむり」は屋根を、「寸」は手をあらわしていて、そこから「守」という字は、家を手で守る様子から作られたと考えられています。ですから、何かを防衛する意味の「守る」という言葉にこの字が使われるようになったのです。

そして、そこから「守る」の意味は発展していき、単に「防衛する」ことだけでなく、物事やルールなどの決まり事に従う意味に対しても、「ルールを守る」のように「守る」という言葉が使われるようになりました。

「尊」は酒の器を持つ様子

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今度は「尊守」「尊」について説明しましょう。「尊」という字の下の「寸」は、「守」でも説明したように「手」をあらわしています。その上の「酋」は「祭祀(祖先や神々をまつること)のときに使う器」を意味し、「尊」という字は、「祭祀に使う器を手で大切に持つ」様子をあらわすことから、「品物や身分が高い」こと、つまり「とうとい」という意味になりました。

この「尊」という字は、見てのとおり「遵」という字と似ていることから、「遵」という字と間違えたり、「遵」という字を「尊」と同じく、「ソン」と読んでしまう人がいるため「尊守」という誤用が広まったのでしょう。

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