今回のテーマは「ひっつみ」と「すいとん」の違いです。どちらも郷土料理として有名ですが、ひっつみは岩手県名物とされており、すいとんは全国各地で食べられている。また、具材や作り方が似ている郷土料理は他にもたくさんあるんです。
ひっつみの最大の特徴は、小麦粉を水で練った生地を「手でちぎる」点です。では、すいとんや他の料理はどうなのか、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

ひっつみとすいとんの違いをざっくり解説

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まず最初に「ひっつみ」と「すいとん」がどのような料理なのかを説明します。どちらも水で練った小麦粉を、味をつけただし汁で具材と一緒に煮て味わう郷土料理です。よって主な材料や作り方は同じなのですが、それぞれ地域色や独自の歴史があります。

ひっつみ:岩手県の郷土料理

岩手県の名物料理といえば、盛岡冷麺やわんこそばなどが有名ですが、もうひとつ忘れてはならないのが郷土料理の「ひっつみ」です。ひっつみとは、小麦粉を水でこねて薄くのばした生地を手でちぎって煮込んだ汁物のことで、岩手県の北上盆地を中心とした地域で古くから食べられています。

ひっつみの名前の由来は、「手でちぎる」という意味の方言「ひっつまむ」からきているという説が有力です。手でちぎった生地は、餃子の皮やワンタンに似た特徴的な食感で、コシがあります。

具材は、鶏肉や根菜、きのこなどが一般的ですが、地域によって川ガニや川魚などを入れるなどの違いが見られることも珍しくありません。味付けは醤油ベースが多いです。

すいとん:全国的に知られた郷土料理

一方「すいとん」も、小麦粉に水を加えてこねた生地を、野菜や肉などと一緒に煮込んで作る料理です。日本各地で古くから食べられており、地方によって呼び名や作り方が異なります。

すいとんの歴史は古く、南北朝時代には「水団」という名前で記録が残っていますが、当時の具体的な姿は不明です。今日のように、手びねりした小麦粉の形式が出現したのは江戸時代後期のこととされています。

江戸時代から戦前にかけては、すいとん専門の屋台や料理店が存在しており、庶民の味として親しまれていました。調理方法は、練った小麦粉を湯に落とすシンプルなものから、味噌汁やすまし汁での雑煮のようなものなど、多くのバリエーションがあります。

ひっつみとすいとんの材料の違いは?

ここまでで、「ひっつみ」と「すいとん」はそれぞれどのような地域色や歴史を持つ郷土料理なのかを説明しました。次は、それぞれの材料の違いを見ていきますが、実際にはひっつみとすいとんの材料に大きな違いはありません。

ひっつみは、岩手県の郷土料理としてブランド化しているところもあり、材料はある程度決まっています。しかしほうとうは全国各地の地域や家庭でバリエーションが豊富なため、ひっつみと同じ材料を使いながら「すいとん」を名乗っても問題はないと言えるでしょう。

\次のページで「ひっつみ:水と小麦粉・肉類・根菜など」を解説!/

ひっつみ:水と小麦粉・肉類・根菜など

岩手県で愛されている郷土料理「ひっつみ」の基本的な材料は、小麦粉と水です。一般的には中力粉や薄力粉などが使われ、生地をこねる際は耳たぶ程度の硬さになるように調整します。そして生地をいったん寝かせますが、これは薄く伸ばしやすくするためです。

汁に使われる具材は地域や家庭によってさまざまですが、鶏肉や根菜、きのこなどが一般的でしょう。先述の通り、地域によっては川ガニや川魚などを入れることもあります。また、出汁は川魚や昆布などからとり、味付けには味噌やしょうゆなどを用いることが多いようです。

すいとん:水と小麦粉・肉類や油揚げなど

一方、「すいとん」の生地も、小麦粉に水と塩を加えてこねて作るので、生地に関しては基本的な材料は同じと言えるでしょう。ただ、場合によっては生地に塩を入れることもあり、これによって生地の味やコシが変わることもあるようです。

すいとんの具材は、豚肉や鶏肉などの肉類や、大根やにんじんなどの根菜類、油揚げやまいたけなどがよく使われます。ひっつみでは、油揚げが使われることは多くないようです。

汁はひっつみと似たところがあり、出汁をとってしょうゆなどで味付けをします。生地の材料と汁の味付けについては、ひっつみとすいとんの間に大きな違いはないと言えるでしょう。

ひっつみとすいとんの作り方の違いは?

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次に、ひっつみとすいとんの作り方の違いを見ていきましょう。作り方についても両者に大きな違いはないのですが、強いて言えば、小麦粉を水で練った生地を「手でちぎるか」「手でちぎるとは限らないか」という点が異なると言えます。

ひっつみ:生地を手でちぎる

ひっつみという料理名は「手でちぎる」という意味の方言「ひっつまむ」からきていると言われています。この点に、ひっつみの最大の特徴が表れていると言えるでしょう。ひっつみの作り方のポイントは、まさにこの生地を手でちぎる点にあります。

先述した通り、生地を適当な大きさにちぎって、沸騰した出汁に入れるというのがひっつみの作り方です。手でちぎるのは昔ながらの慣習的な技法と思われますが、この作り方には、生地の厚みや形が不揃いになることで出汁の味がしみ込みやすくなるというメリットがあります。

生地の大きさが不揃いになることで味がしみる、あるいは味がからみやすくなるというメリットは、ラーメンやうどんなど他の料理でも見られるものです。

すいとん:生地をまとまった形にする

一方、すいとんの作り方の大きな特徴は、生地をまとまった形にして煮汁に入れるという点です。

ただし、ひと口に「生地をまとまった形にする」と言っても、そのやり方は一概には言えません。例えば小麦粉を水で練った生地をスプーンですくい取って煮汁に入れることもありますし、団子状に丸めて入れることもあります。

すいとんという料理が全国規模で作られているものなので、地域や家庭でやり方が異なってくるのは仕方ないと言えるでしょう。中には、生地を手でちぎる作り方でも「すいとん」と呼んでいる事例があるかも知れません。

\次のページで「ひっつみとすいとんに似ている料理は?」を解説!/

ひっつみとすいとんに似ている料理は?

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ここまでで、ひっつみとすいとんの共通点と相違点を見てきましたが、全国的に見ると、材料や作り方が似通っている郷土料理はたくさんあります。最後に、その一部として山梨名物として有名な「ほうとう」と、東北地方で食べられている「はっと」を紹介しましょう。

ほうとう:山梨県の郷土料理

ひっつみやすいとんと似ている、有名な郷土料理に「ほうとう」があります。ほうとうは小麦粉を練って平らに切った麺を、味噌仕立ての汁で野菜と一緒に煮込んだ山梨県の郷土料理です。平安時代から貴族が食べていた「餺飥(はくたく)」の名前が変化したものと言われています。

また、麺をかの武田信玄が「宝刀」で切ったからという説や、江戸時代に麺類を禁止されたことで「御法度」が名前の由来になった、といった説もあるようです。

ほうとうの大きな特徴は、麺に塩を入れないことや、麺を茹でずに生のまま煮込むため汁にとろみがつき、麺と具材の味が一体化するという点でしょう。カボチャを入れることも多く、甘味と味噌の塩気が絶妙な味わいを生み出します。

はっと:東北地方の郷土料理

もうひとつ、ひっつみやすいとんと似た郷土料理に「はっと」があります。はっともまた、小麦粉を水で練って煮るもので、ひっつみやすいとんとほぼ変わりません。違うのは、生地を薄い紙状にして煮ることが多い点で、岩手・宮城・山形などで食べられています。

はっとは、生地を煮汁で煮るとは限らず、「ずんだはっと」「小豆はっと」のように、生地に餡をからめて食べることも珍しくありません。例えばずんだはっとは、茹でた枝豆を砂糖と一緒に混ぜた餡を、さっと茹でた生地にからめるという食べ方です。

また変化形として、山形県では蕎麦の一種を「はっと」と呼ぶこともあります。水で練ったそば粉を手で握り、餃子のような形にまとめたものをそばつゆに入れて食べる「にぎりはっと」が一部地域で有名です。

ひっつみとすいとんは生地の扱いが違う

ひっつみとすいとんは、どちらも小麦粉を使った料理ですが、作り方に違いがあります。岩手県の郷土料理として有名なひっつみは、小麦粉を水で練った生地を手でちぎる点が特徴的です。一方、全国的な郷土料理であるすいとんは手でちぎるとは限らず、スプーンですくったり団子状にまとめたりします。

小麦粉を水で練った生地を煮る料理は「ほうとう」「はっと」など全国各地に存在しており、煮汁や具材の内容も千差万別です。

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簡単でわかりやすい!ひっつみとすいとんの違いは?ほうとう・はっととの違いも雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマは「ひっつみ」と「すいとん」の違いです。どちらも郷土料理として有名ですが、ひっつみは岩手県名物とされており、すいとんは全国各地で食べられている。また、具材や作り方が似ている郷土料理は他にもたくさんあるんです。
ひっつみの最大の特徴は、小麦粉を水で練った生地を「手でちぎる」点です。では、すいとんや他の料理はどうなのか、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

ひっつみとすいとんの違いをざっくり解説

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まず最初に「ひっつみ」と「すいとん」がどのような料理なのかを説明します。どちらも水で練った小麦粉を、味をつけただし汁で具材と一緒に煮て味わう郷土料理です。よって主な材料や作り方は同じなのですが、それぞれ地域色や独自の歴史があります。

ひっつみ:岩手県の郷土料理

岩手県の名物料理といえば、盛岡冷麺やわんこそばなどが有名ですが、もうひとつ忘れてはならないのが郷土料理の「ひっつみ」です。ひっつみとは、小麦粉を水でこねて薄くのばした生地を手でちぎって煮込んだ汁物のことで、岩手県の北上盆地を中心とした地域で古くから食べられています。

ひっつみの名前の由来は、「手でちぎる」という意味の方言「ひっつまむ」からきているという説が有力です。手でちぎった生地は、餃子の皮やワンタンに似た特徴的な食感で、コシがあります。

具材は、鶏肉や根菜、きのこなどが一般的ですが、地域によって川ガニや川魚などを入れるなどの違いが見られることも珍しくありません。味付けは醤油ベースが多いです。

すいとん:全国的に知られた郷土料理

一方「すいとん」も、小麦粉に水を加えてこねた生地を、野菜や肉などと一緒に煮込んで作る料理です。日本各地で古くから食べられており、地方によって呼び名や作り方が異なります。

すいとんの歴史は古く、南北朝時代には「水団」という名前で記録が残っていますが、当時の具体的な姿は不明です。今日のように、手びねりした小麦粉の形式が出現したのは江戸時代後期のこととされています。

江戸時代から戦前にかけては、すいとん専門の屋台や料理店が存在しており、庶民の味として親しまれていました。調理方法は、練った小麦粉を湯に落とすシンプルなものから、味噌汁やすまし汁での雑煮のようなものなど、多くのバリエーションがあります。

ひっつみとすいとんの材料の違いは?

ここまでで、「ひっつみ」と「すいとん」はそれぞれどのような地域色や歴史を持つ郷土料理なのかを説明しました。次は、それぞれの材料の違いを見ていきますが、実際にはひっつみとすいとんの材料に大きな違いはありません。

ひっつみは、岩手県の郷土料理としてブランド化しているところもあり、材料はある程度決まっています。しかしほうとうは全国各地の地域や家庭でバリエーションが豊富なため、ひっつみと同じ材料を使いながら「すいとん」を名乗っても問題はないと言えるでしょう。

\次のページで「ひっつみ:水と小麦粉・肉類・根菜など」を解説!/

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