今回はDNAと遺伝子の違いについて見ていきます。
生物の特徴や機能はDNAや遺伝子によって決まっており、さらにそれが次の代へと引き継がれたりすることで、そうした特徴や機能が維持されていることは聞いたことがあるでしょう。さらに詳しい内容を雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

DNAと遺伝子の違いをざっくり解説

最初に、DNAと遺伝子の違いをざっくり解説します。両者はよく混同されることがありますが、実際には明確な違いがあり、それをきちんと知るにはDNAと遺伝子の関係を理解しておかなければなりません。DNAと遺伝子はどのような関係にあるのでしょうか。

DNA:デオキシリボ核酸のこと

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DNAもといデオキシリボ核酸は、生物の遺伝情報を記録する分子のことです。A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四種類の塩基からなる単位が長く連なったものをいいます。

この塩基は、AとT、GとCがそれぞれ結合し、二本のDNAが互いにねじれたらせん状の形状になっているのが特徴です。なぜらせん状の形かというと、DNAの安定性や複製性を高める役割を果たしていると考えられています。

DNAが細胞分裂の際に複製され、親から子へと遺伝情報を伝える役割を持っていることは有名です。またDNAは遺伝子と呼ばれる単位に分かれており、遺伝子はタンパク質の合成に必要な情報を持っています。この遺伝子については次項で詳しく説明しましょう。

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遺伝子:DNAに記載されている情報

遺伝子とは、生物の特徴や機能を決めるDNAに記載された情報の一部のことです。ただ、DNAの塩基の並び方が遺伝情報として働きますが、DNAの全ての塩基が遺伝情報を持っているわけではないことに注意しましょう。

つまりDNAには、遺伝情報を持っている部分と持っていない部分があります。遺伝情報を持っている部分が遺伝子と呼ばれる単位に分かれており、ここにタンパク質の合成に必要な情報をコードしているわけです。

タンパク質は生物の構造や活動に関わる重要な分子で、遺伝子はDNAの中で特定の位置にある領域だと考えて下さい。その数や種類は、生物によって異なります。

DNAと遺伝子の仕組みについてもっと詳しく!

前項までで、DNAと遺伝子の関係性と違いについて解説しました。しかし、DNAと遺伝子の仕組みは複雑なので、ざっくりとした説明だけではイメージしきれない事柄も多いでしょう。次は、両者の仕組みについてもう少し詳しく説明します。

1.DNAは四種類の塩基でできている

DNAとはデオキシリボ核酸の略で、長く連なった鎖状の構造をしています。DNAの中で唯一アルカリ性(=塩基性)の部分が塩基と呼ばれており、前述したA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四種類の塩基の性質はそれぞれ次の通りです。

まずA(アデニン)はプリンという構造をしており、チミンと2つの水素結合で対合します。またT(チミン)は6員環のみで構成されるピリミジンという構造です。

次にG(グアニン)はA(アデニン)同様にプリンという構造をしており、DNAではC(シトシン)と3つの水素結合で対合します。そのC(シトシン)はピリミジンという構造で、これらの塩基は遺伝暗号の基礎的な単位として機能していると言えるでしょう。

2.遺伝子はタンパク質作りを行っている

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遺伝子は生物の特徴や機能を決めるDNAの一部ですが、そこにはタンパク質の合成に必要な情報が保存されています。普通、遺伝子は細胞の中にある染色体という構造体に収まっていますが、染色体はDNAが複雑に折りたたまれたものです。

また遺伝子は、生物の形質を決めるだけでなく、生物の進化や多様性にも関わっています。世代を超えて親から子へと受け継がれる遺伝子ですが、その過程で突然変異や組み換えなどの現象が起こることも珍しくありません。

これらは、遺伝子が塩基配列に変化をもたらし、新しい特徴や機能を生み出す可能性があることを示しています。これらの遺伝的変化が生物の適応や分化に影響する仕組みを説明するのが、集団遺伝学という理論です。

3.DNA内には複数の遺伝子がある

遺伝子は特定のタンパク質を作るための指示書のようなもので、タンパク質は私たちの体の構成要素や機能を保つのに欠かせません。

そして、ひとつのDNA内には複数の遺伝子が存在します。その理由は、生物が進化する過程で環境に適応するために、DNAそのものが変化したからです。DNAが変わるとタンパク質も変わり、生物の特徴や機能も変わります。このようにして、生物は新しい特徴や機能を獲得していったのです。

DNAが変化する過程で重要なのは重複と分化の二つでしょう。重複とは、DNAが複製する際に同じ遺伝子が二つ以上できることで、分化とは重複した遺伝子が突然変異や交配などによって元の遺伝子と異なる機能を持つようになることを言います。

\次のページで「DNAと遺伝子の研究はどれくらい進んでいる?」を解説!/

DNAと遺伝子の研究はどれくらい進んでいる?

ここまでで、DNAと遺伝子のざっくりした概要と双方の仕組みを説明しました。両者はどのような関係にあり、どんな違いがあるのかも理解が深まったと思います。以上の内容を踏まえて、DNAと遺伝子の研究は現在、どれくらい進んでいるのかを見ていきましょう。

DNA:人類の起源を探る手がかりになっている

DNAは、人類の歴史を探る上で貴重な手がかりです。DNAは親から子へと受け継がれることで生物の特徴や機能を決定づけるため、これを研究することで人類の進化や移動の歴史が明らかにされています。

例えば、ミトコンドリアDNAやY染色体DNAによって、母系や父系の祖先をたどることが可能です。実際、これらのDNAの突然変異の頻度やパターンを調べることで、人類の分岐や拡散の時期などを推定するところまで至っています。

また父母両方から受け継がれるオートソームDNAを調べると、人類の遺伝的多様性や混血度も調べることが可能です。

遺伝子:発現する仕組みについて研究されている

遺伝子は、発現の仕組みについても研究が進められています。遺伝子発現とは遺伝子がタンパク質に変換される過程のことで、生物の機能や特徴を決める重要なステップであるとして、その発現する仕組みについて研究されているのです。

遺伝子発現については、大腸菌をモデル生物とした実験から得られてきました。例えば、オペロンと呼ばれる遺伝子の集合体や、リボソーム結合部位やプロモーターと呼ばれる遺伝子発現の制御部位などが発見されています。

また、医学分野での遺伝子発現の応用も見逃せません。遺伝子治療によって欠損や異常な遺伝子を正常な遺伝子で置き換えたり、追加したりすることで病気を治すのに大きく役立っているのです。

DNAと遺伝子の研究がもたらすメリットは?

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前項までで、DNA研究は人類の起源を探るための手がかりになっていること、そして遺伝子研究はその発現する現象を調べることで、特に医学分野で大きく役に立っていることなどが分かりました。最後に、これらの研究は私たちにとってどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

DNA:生命現象への理解が深まった

DNAの全体像を描くゲノム解読によって、生命現象の仕組みや多様性についての理解も深まってきました。ゲノム解読とは、DNAの塩基の並び方を全て調べることで、これによって生命現象を支えるために必要な物質がどのように作られているかがより詳しく分かってきたのです。

例えば、DNAの一部である遺伝子は、タンパク質と呼ばれる分子の構造を決める情報を持っています。先述の通り、タンパク質は、生物の構造や活動に関わる重要な分子ですが、ゲノム解読によって、遺伝子の数・種類・位置・機能が明らかになっているのです。

また、遺伝子以外のDNAも遺伝子発現の調節や染色体の安定性などに関与することが、ゲノム読解によって分かってきました。

遺伝子:健康や生活の質が向上する

遺伝子研究は、健康や生活の質の向上にも貢献しています。例えば医学分野では、欠損や異常な遺伝子を正常な遺伝子で置き換えたり、追加したりすることで病気を治す遺伝子治療が行われており、がんや遺伝性疾患の治療で大いに役立っているのです。

また、ゲノム研究によって育種の高速化・高効率化も実現しています。

生物のDNAの塩基の並び方を全て調べるゲノム研究によって、生物の特徴や機能に関係する遺伝子やその変異を特定することが可能となり、農作物や家畜などの品種改良や、新品種の開発が簡単にできるようになりました。

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「DNA」に記載されている遺伝情報が「遺伝子」

DNAは正式にはデオキシリボ核酸といい、生物の遺伝情報を記録する分子のことです。四種類の塩基で構成され、細胞内で二本のDNAが向き合ったらせん状の形状になっています。

一方、遺伝子は、DNAに記載されている情報のことです。その塩基配列が遺伝情報として機能するわけですが、全ての塩基配列が遺伝情報となるわけではなく、DNAには遺伝情報を持っている部分とそうでない部分が存在することにも注意しましょう。

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簡単でわかりやすい!DNAと遺伝子の違いとは?それぞれの仕組みや研究がもたらすメリットも雑学好きライターが詳しく解説

今回はDNAと遺伝子の違いについて見ていきます。
生物の特徴や機能はDNAや遺伝子によって決まっており、さらにそれが次の代へと引き継がれたりすることで、そうした特徴や機能が維持されていることは聞いたことがあるでしょう。さらに詳しい内容を雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

DNAと遺伝子の違いをざっくり解説

最初に、DNAと遺伝子の違いをざっくり解説します。両者はよく混同されることがありますが、実際には明確な違いがあり、それをきちんと知るにはDNAと遺伝子の関係を理解しておかなければなりません。DNAと遺伝子はどのような関係にあるのでしょうか。

DNA:デオキシリボ核酸のこと

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DNAもといデオキシリボ核酸は、生物の遺伝情報を記録する分子のことです。A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四種類の塩基からなる単位が長く連なったものをいいます。

この塩基は、AとT、GとCがそれぞれ結合し、二本のDNAが互いにねじれたらせん状の形状になっているのが特徴です。なぜらせん状の形かというと、DNAの安定性や複製性を高める役割を果たしていると考えられています。

DNAが細胞分裂の際に複製され、親から子へと遺伝情報を伝える役割を持っていることは有名です。またDNAは遺伝子と呼ばれる単位に分かれており、遺伝子はタンパク質の合成に必要な情報を持っています。この遺伝子については次項で詳しく説明しましょう。

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