この記事ではシュロチクとカンノンチクの違いについてみていきます。2つとも「裂けた葉をもつ観葉植物」というイメージがあるよな。その通りで両者は分類上、同じ「ヤシの仲間」なんです。ですが葉の見た目など違う点がいくつかあるので、見分けがつきやすい。今回はそんな「鉢植えのヤシ」の違いや育て方を、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ヤシ科の観葉植物」である、シュロチクとカンノンチクの違いについてわかりやすく解説していく。

シュロチクとカンノンチクを大まかに比較

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まずはシュロチク・カンノンチクの分類や原産地など、概要を紹介していきます。以下を読めば両者がどのような植物か、イメージがつかめるはず。花は無くとも個性的な「観葉植物」について、理解を深めていきましょう!

「シュロチク」は中国原産の観葉植物

シュロチク(棕櫚竹)は中国南部原産で、暖かい気候を好む観葉植物です。その見た目は「竹」の字を冠するだけあって、タケの仲間に似ています。

しかしシュロチクはイネ科タケ亜科とは無関係で、ヤシ科ラピス属に分類される「ヤシの仲間」なのです。そして名に「シュロ」が付くのは、その茎にヤシ科シュロ属のシュロのような繊維の網がつくから。紛らわしいことにシュロチクは、シュロでもタケでもないのです。

同属の「カンノンチク」は沖縄でもみられる

同じくヤシ科ラピス属のカンノンチク(観音竹)も、中国南部原産の観葉植物。こちらは沖縄で庭木として愛されており、リュウキュウシュロチクの異名をもちます。そんなカンノンチクは江戸時代に伝来して以降、本土でも「鉢植え用の観葉植物」として根強く愛されてきました。結果として改良が進み、葉の外観が異なる品種が多数作出されてきたのです。

以下この記事では、同ヤシ科ラピス属のシュロチクとカンノンチクの違いについて徹底解説。見た目から性質まで、具体的な違いをみていきます。さらに育てるうえでの注意点も紹介。自宅に緑が欲しいなら、ぜひ最後までお付き合いください。

シュロチクとカンノンチクの具体的な違い

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ここからはシュロチクとカンノンチクの、具体的な違いを4つ紹介。とくに葉の見た目や樹高など、「目視でわかる違い」に重点を置いてみていきます。以下を読むだけで、一見無個性な「ヤシの仲間」が見分けられるようになりますよ。

違い1.葉の見た目

シュロチクもカンノンチクも同じヤシ科ラピス属の植物なのですが、葉の見た目が大きく違っています。より「ヤシの仲間」らしさがるのはシュロチクのほう。シュロチクの葉には切り込みが多く入っていて、葉身が細く裂けているのです。

対してカンノンチクの葉は、「クマザサ」そっくり。切り込みの数は少なく、裂けた葉身の1つ1つは幅広で丸みを帯びています。さらに一部品種で葉の色が抜けているのも、カンノンチクならではの特徴。そういった品種は「斑入り(ふいり)」といって、葉に黄色や白色の縞模様が走っています。

\次のページで「違い2.樹高」を解説!/

違い2.樹高

シュロチク・カンノンチクでは、樹の背丈も違います。シュロチクが最大5m程度に成長するのに対して、カンノンチクは最大でも3mほどにしかならないのです。とくに斑入りのカンノンチクでは葉緑体が少ないので、樹高はより小さくなります。カンノンチクはその立ち姿においても、タケ科の「クマザサ」にそっくりなのです。

違い3.成長速度

シュロチク・カンノンチクにおける葉の形状の違いは、成長速度に影響を与えます。葉に光がよく当たる形状であればあるほど、成長速度が向上するのです。そのうえで、より成長が速いのはカンノンチク。カンノンチクの葉は幅広なので、光を無駄なく受け取るのに適しています。さらに葉身が細かく裂けていないので、葉同士が重なりにくいという利点も。結果として全ての葉で、効率よく光合成ができるのです。

対してシュロチクの成長速度は、カンノンチクに劣ります。まずシュロチクでは個々の葉が細かく分裂しており、光が葉の一部にしか当たりません。加えて葉同士が重なり合っているので、下の葉には影ができているのです。

違い4.頑強さ

一方「寒さ」や「日光不足」への耐性に優れるのは、シュロチクのほう。観葉植物なのに、本州でも屋外で越冬できるのです。具体的にシュロチクの地植えに適しているのは「無霜地帯」とよばれる、気温が0度を下回らない地域。本州では紀伊半島や伊豆半島、房総半島など南端の地域が該当します。

対してカンノンチクは少しデリケート。鉢植えにして、冬場だけカーテン付の窓際に移動させる必要があるのです。

シュロチクとカンノンチクの育て方

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この記事ではさらに踏み込んで、シュロチクとカンノンチクの育て方についても紹介していきます。両者はともに熱帯生まれの観葉植物なのですが、意外にも日本の気候で容易に育てられるのです。自宅に「南国風の植物」が欲しいという人はぜひ、以下もお読みくださいね。

春から秋までのお世話

シュロチクもカンノンチクも成長には日光が必要。とはいえ葉の表面がデリケートなので、直射日光に当てられると「葉焼け」が起きてしまいます。そのためシュロチク・カンノンチクの生育に適しているのは「明るい日陰」と呼ばれる条件。具体的に屋外なら直射日光が当たらない程度に明るい場所、屋内ならレースカーテンの付いた窓辺に鉢を置くとよいでしょう。

春から秋にかけて気温が10℃を上回る時期なら、シュロチク・カンノンチクは成長のための水と栄養を欲しています。とくに水やりの徹底が大事。土が乾くたび、鉢底から漏れる量の水をあげてください。また可能であれば、スプレーで葉に水を吹きかける「葉水」もしたいところ。この葉水は水分補給だけでなく、病害虫対策にもなるのです。そして真夏日以外は「固形肥料」を土の上に置くと、成長が早くなりますよ。

\次のページで「夏場の植え替え」を解説!/

夏場の植え替え

シュロチク・カンノンチクでは数年に一度、5〜9月ごろに「植え替え」を実施します。これは古い土や痛んだ根を取り除くため。植え替えをしないと、「根腐れ」によって株が枯れてしまうおそれがあるのです。シュロチク・カンノンチクの株は根に付いたゴミを除いたら、下記の水はけのよい「混合土」に植え替えてしまいましょう。植木鉢に入れる順番は以下の通りになります。

植木鉢に入れる資材と鉢底からの順番
1.資材の流出を防ぐ「鉢底ネット」
2.ゼオライトや軽石など「底石」
3.赤玉土・鹿沼土・腐葉土を4:3:3の比率で混ぜた「混合土」
4.シュロチク・カンノンチクの「根の部分」
5.根にかぶせるための「混合土」

なお株がたくさん芽を出して大きく成長してしまった場合、5・6月ごろに植え替えも兼ねた「株分け」が必要です。取り出したシュロチク・カンノンチクの根から株を複数に分けると「株分け」ができます。あとは分けた株ごとに植木鉢を用意して、先述の手順で植え替えてしまいましょう。

冬場のお世話

冬場はシュロチク・カンノンチクの成長が止まります。そのため必要な水の量が減り、肥料は要らなくなるのです。冬になったら根腐れを防ぐため、水やりの頻度は「3〜4日に1回」のペースにとどめておきましょう。また気温が0℃を下回る場合、屋内での保管が必須。日当たりのよい窓辺に鉢を置いて、レースカーテンで直射日光を遮ってしまいしょう。

シュロチク・カンノンチク最大の違いは葉の見た目

シュロチクとカンノンチクはともに、中国南部原産で「ヤシ科ラピス属」の観葉植物。そんな「ほぼ同じ植物」である両者では、樹の見た目が違っています。まずカンノンチクでは、裂けた葉の1枚1枚が幅広。さらに品種改良が盛んで、斑入りの葉をもつ個体が存在するのです。対してシュロチクでは葉が細かく分裂。さらに樹の背丈がカンノンチクより高くなります。

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雑学

簡単でわかりやすい!シュロチクとカンノンチクの違いとは?見分け方から育て方まで農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではシュロチクとカンノンチクの違いについてみていきます。2つとも「裂けた葉をもつ観葉植物」というイメージがあるよな。その通りで両者は分類上、同じ「ヤシの仲間」なんです。ですが葉の見た目など違う点がいくつかあるので、見分けがつきやすい。今回はそんな「鉢植えのヤシ」の違いや育て方を、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「ヤシ科の観葉植物」である、シュロチクとカンノンチクの違いについてわかりやすく解説していく。

シュロチクとカンノンチクを大まかに比較

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まずはシュロチク・カンノンチクの分類や原産地など、概要を紹介していきます。以下を読めば両者がどのような植物か、イメージがつかめるはず。花は無くとも個性的な「観葉植物」について、理解を深めていきましょう!

「シュロチク」は中国原産の観葉植物

シュロチク(棕櫚竹)は中国南部原産で、暖かい気候を好む観葉植物です。その見た目は「竹」の字を冠するだけあって、タケの仲間に似ています。

しかしシュロチクはイネ科タケ亜科とは無関係で、ヤシ科ラピス属に分類される「ヤシの仲間」なのです。そして名に「シュロ」が付くのは、その茎にヤシ科シュロ属のシュロのような繊維の網がつくから。紛らわしいことにシュロチクは、シュロでもタケでもないのです。

同属の「カンノンチク」は沖縄でもみられる

同じくヤシ科ラピス属のカンノンチク(観音竹)も、中国南部原産の観葉植物。こちらは沖縄で庭木として愛されており、リュウキュウシュロチクの異名をもちます。そんなカンノンチクは江戸時代に伝来して以降、本土でも「鉢植え用の観葉植物」として根強く愛されてきました。結果として改良が進み、葉の外観が異なる品種が多数作出されてきたのです。

以下この記事では、同ヤシ科ラピス属のシュロチクとカンノンチクの違いについて徹底解説。見た目から性質まで、具体的な違いをみていきます。さらに育てるうえでの注意点も紹介。自宅に緑が欲しいなら、ぜひ最後までお付き合いください。

シュロチクとカンノンチクの具体的な違い

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ここからはシュロチクとカンノンチクの、具体的な違いを4つ紹介。とくに葉の見た目や樹高など、「目視でわかる違い」に重点を置いてみていきます。以下を読むだけで、一見無個性な「ヤシの仲間」が見分けられるようになりますよ。

違い1.葉の見た目

シュロチクもカンノンチクも同じヤシ科ラピス属の植物なのですが、葉の見た目が大きく違っています。より「ヤシの仲間」らしさがるのはシュロチクのほう。シュロチクの葉には切り込みが多く入っていて、葉身が細く裂けているのです。

対してカンノンチクの葉は、「クマザサ」そっくり。切り込みの数は少なく、裂けた葉身の1つ1つは幅広で丸みを帯びています。さらに一部品種で葉の色が抜けているのも、カンノンチクならではの特徴。そういった品種は「斑入り(ふいり)」といって、葉に黄色や白色の縞模様が走っています。

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