この記事では「せろん」「よろん」の違いについてみていきます。どちらも「世論」という漢字で表記されているイメージがあるよな。違いはずばり古い時代に書き分けられていた頃の意味のようですが、その歴史的な背景など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんな「せろん」「よろん」の違いを、言語文化学部卒ライターさやかと一緒に解説していきます。

ライター/さやか

現在4歳の娘を育てながらライターとして活動中。自身はその昔、学校などで「せろん」と読むことを教えられたような記憶があったが、現在は「よろん」という言葉の方が圧倒的に耳にすることが多いことに気づかされた。

「せろん」「よろん」の違いとは?

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「世論」。この漢字の読み方として「せろん」「よろん」どちらが正しいのかご存知でしょうか。

実は、1946年に政府によって当用漢字表というものが告示された際、「世論」「せろん・せいろん」「よろん」として読む漢字であるとされました。つまり、読み方としてはどちらも正しいのです。それまでは「せろん」は「世論」「よろん」は「輿論」書き分けられていましたが、当用漢字表の告示以降は「世論」に統一されました。

当用漢字表告示以前のそれぞれの意味は?

「世論」に統一される前のそれぞれの言葉の持つ意味は、少し異なっていたことがわかっています。「世論」は、「世間一般の感情または国民の感情から出た意見」のことであるとされ、一方「輿論」「人々の議論または議論に基づいた意見」であるとされていました。

【「輿論」について】
「輿論」の「輿」=「神輿(みこし)」の「こし」を意味する

「こし」は「車軸の上に置いて、その上に人や物をのせる台」「人や物を載せてかついで運ぶ乗り物」のこと。そこから「みんなの」といった意味が生じたと考えられます。

中国では「輿論」という用語が古くより存在したことがわかっており、明代の『類書纂要』にはその語義を「輿論とは、輿は衆なり、衆人の議論を謂うなり」とする記述が残されているのです。

社会学者・歴史学者・経済学者の中には、

「輿論」理性的・公的関心にあるもの、歴史に裏打ちされたもの
「世論」情緒的・私的なもの、一時の流行に過ぎないもの

として定義づけて論じている方もいます。

\次のページで「当用漢字表告示後の「世論」」を解説!/

当用漢字表告示後の「世論」

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当用漢字告示後には、「輿論」の「輿」の文字が消え「よろん」は「世論」という書き方に統一されるようになりました。そういった経緯で、意味も「世論」の方に統一されていったと考えられます。結果、「世論」の文字は元々の「せろん」という読み方も残り、「せろん」「よろん」という両方の読み方で読まれるようになりました。

ある社会の問題について世間の人々の持っている意見。よろん。せいろん。「世論を反映させる」「世論の動向」
補説「輿論」の書き換えとして用いられ、「よろん」とも読まれる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「世論」

現在の読み方としてはどちらが正解?

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読み方としては「せろん」「よろん」どちらも間違いではないことがわかりましたが、現在の社会ではどちらを使う方がよいのでしょうか。データなどを使って考えてみましょう。

現在は「よろん」を使う方が無難

平成15年度に文化庁が行った調査では、「世論」の文字を「よろん」と読む人が73.8%「せろん」と読む人が18.9%であったという報告があります。この結果は「よろん」の方が浸透していることを表していると言ってもいいのではないでしょうか。

また、NHKによる放送で使う言葉のガイドラインを示した書籍には、「世論」の読み方は「〇ヨロン ×セロン」としているそうです。このことからも、「よろん」の読み方の方が人々に浸透しており情報が届きやすいことを示していると考えられます。

【新聞各紙の「世論」】
当用漢字表の告示以降、新聞各紙はそれまで「輿論」としていたものを「世論」の表記に統一したが、新聞は文字情報のみであるため、この時点では読み方については読者の判断にゆだねられていた。

【放送業界の「世論」】
当時はまだラジオしかなかったため、より一般的だった「よろん」という読み方を使っていた。しかし、テレビが普及した後は字幕で漢字を表記する必要が生じるようになり「よろん」と読み上げる音声の字幕を「世論」と表記するようになったとされる。

\次のページで「どちらも間違いではないが「よろん」の方が一般的」を解説!/

どちらも間違いではないが「よろん」の方が一般的

「世論」について見てきましたが、「せろん」「よろん」のどちらも間違いではなく意味も使い分けることはほぼなくなってきているということがわかりました。現在の社会では「よろん」と読む方が意味は通りやすいということを覚えておけば大丈夫そうです。言葉に歴史あり、ですね。

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3分でわかる!「せろん」「よろん」の違いとは?「世論」の読み方はどちらが正しい?言語文化学部卒ライターが簡単にわかりやすく解説!

この記事では「せろん」「よろん」の違いについてみていきます。どちらも「世論」という漢字で表記されているイメージがあるよな。違いはずばり古い時代に書き分けられていた頃の意味のようですが、その歴史的な背景など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんな「せろん」「よろん」の違いを、言語文化学部卒ライターさやかと一緒に解説していきます。

ライター/さやか

現在4歳の娘を育てながらライターとして活動中。自身はその昔、学校などで「せろん」と読むことを教えられたような記憶があったが、現在は「よろん」という言葉の方が圧倒的に耳にすることが多いことに気づかされた。

「せろん」「よろん」の違いとは?

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「世論」。この漢字の読み方として「せろん」「よろん」どちらが正しいのかご存知でしょうか。

実は、1946年に政府によって当用漢字表というものが告示された際、「世論」「せろん・せいろん」「よろん」として読む漢字であるとされました。つまり、読み方としてはどちらも正しいのです。それまでは「せろん」は「世論」「よろん」は「輿論」書き分けられていましたが、当用漢字表の告示以降は「世論」に統一されました。

当用漢字表告示以前のそれぞれの意味は?

「世論」に統一される前のそれぞれの言葉の持つ意味は、少し異なっていたことがわかっています。「世論」は、「世間一般の感情または国民の感情から出た意見」のことであるとされ、一方「輿論」「人々の議論または議論に基づいた意見」であるとされていました。

【「輿論」について】
「輿論」の「輿」=「神輿(みこし)」の「こし」を意味する

「こし」は「車軸の上に置いて、その上に人や物をのせる台」「人や物を載せてかついで運ぶ乗り物」のこと。そこから「みんなの」といった意味が生じたと考えられます。

中国では「輿論」という用語が古くより存在したことがわかっており、明代の『類書纂要』にはその語義を「輿論とは、輿は衆なり、衆人の議論を謂うなり」とする記述が残されているのです。

社会学者・歴史学者・経済学者の中には、

「輿論」理性的・公的関心にあるもの、歴史に裏打ちされたもの
「世論」情緒的・私的なもの、一時の流行に過ぎないもの

として定義づけて論じている方もいます。

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