この記事では大アサリとホンビノスの違いについてみていきます。2つとも「白色の殻をもつ、大きな二枚貝」というイメージがあるよな。じつは両者では、味や料理法が違うんです。さらに一見そっくりな貝殻についても違う点がいくつかあって、簡単に見分けがつく。今回はそんな「二枚貝」の違いを、見分け方も含めて大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「大きな白い殻をもつ二枚貝」である、大アサリとホンビノスの違いについてわかりやすく解説していく。

大アサリとホンビノスを大まかに比較

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まずは大アサリとホンビノスの、分類や利用法など「大まかな特徴」について解説。どちらも「ピンと来ない名前」をしていますが、じつは「馴染み深い二枚貝」なのです。以下アサリとは無関係な「大アサリ」の正体から、みていきましょう!

大アサリの正式名称は「ウチムラサキ」

「大アサリ」は店頭に並ぶ際に付けられる、いわば「あだ名」のようなもの。正式にはマルスダレガイ科Saxidomus属の「ウチムラサキ」を指します。このウチムラサキは、殻長(貝殻の長さ)にして10cmほどにもなる大型の二枚貝です。

味がよいため、愛知県と三重県では「大アサリ」として食されてきました。「ラッコの大好物」でもあり、水族館ではしばしば餌として供されています。

ホンビノスは「クラムチャウダー」の材料

一方「ホンビノス」は学術的に正式な呼び名。マルスダレガイ科Mercenaria属に分類される「ハードクラム/Hard clam」という貝の和名なのです。こちらも先述のウチムラサキ同様、殻長が最大10cmほどに達する大型の二枚貝。原産地の北米では「クラムチャウダー」の具材として愛されてきました。

じつはこのホンビノス、「大アサリ」という商品名で流通していた過去があります。しかしこちらは北米原産の外来種で、水質汚染への耐性や繁殖力に長けているのが特徴。国産でもなければ希少でもない「安価な貝」なので、「ホンビノスガイ」としての表記が義務付けられるようになったのです。以下この記事では大アサリこと「ウチムラサキ」と、よく似た「ホンビノスガイ」の違いについて解説していきます。

大アサリとホンビノスの具体的な違い

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大アサリとホンビノスとでは、具体的な違いが4つもあります。ともに「大きな白い殻をもつ二枚貝」で一見するとそっくりなのですが、その風味や向く料理が違っているのです。さらに外観のディティールや、貝殻の内側にも相違が。以下目視でわかる違いから、みていきましょう!

違い1.貝殻の形状

大アサリとホンビノスは貝殻の形に着目すれば見分けられます。1枚の貝殻について、蝶番(殻頂)を中心に「左右の形」を比較してみましょう。まず大アサリの貝殻は、ほぼ左右対称でこれといった特徴がありません。対してホンビノスの貝殻では、蝶番が片側に曲がっています。そのため蝶番周りがくぼんでいたり、貝殻の放射模様が左右非対称だったりと「いびつな形」になるのです。

\次のページで「違い2.貝殻の内側」を解説!/

違い2.貝殻の内側

大アサリこと「ウチムラサキ」には、ホンビノスにない特徴があります。それは名前通り、貝殻の内側に「濃い紫色の模様」があるということ。その見た目が京都の天橋立に似ていることから、「橋立貝」という異名で呼ばれることもあります。対してホンビノスの貝殻の内側は、一切模様のない「白色」です。

違い3.原産地

大アサリもホンビノスもしばしば、日本国内の海域や市場で目にします。しかしそれぞれ「原産地」が違っているのです。まず大アサリは、昔から日本近海で採れる在来種。天橋立のある日本海側から、三河湾・伊勢湾など太平洋側まで分布しています。対してホンビノスは北米原産の外来種。生命力が強い彼らは、東京湾や大阪湾など「太平洋側工業地帯の沿岸」へ移入しています。

違い4.風味や向く料理

大アサリとホンビノスとでは風味が違います。まず大アサリは、甘味とうま味が濃い貝です。そのため直火で炙った「焼き貝」や熱湯に通した「湯引き」など、単品で料理が成立します。対してホンビノスの味については、強い塩気が特徴的。それ単体で食べるよりも、クラムチャウダーや味噌汁など「スープの具」に適しています。

大アサリとホンビノスの食べ方

Saxidomus purpurata (2020-05-09).jpg
Lombroso - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

ここからは大アサリとホンビノスの食べ方について掘り下げていきます。それぞれ下処理や保存の方法、向いている料理まで紹介。まずはアサリやハマグリの下処理とは異なる、大アサリ/ホンビノスの「下処理の方法」からみていきましょう!

\次のページで「大アサリ/ホンビノスの下処理」を解説!/

大アサリ/ホンビノスの下処理

大アサリには、アサリやハマグリのような「砂抜き」が通用しません。身が大きく、塩水につけても体内に砂が残ってしまうのです。そこで大アサリでは、解体後に身を洗浄することで砂を除きます。貝の割れ目から包丁を入れて中身ごと切断。蝶番をハサミで断てば解体が完了します。あとは殻から剥がした身を丁寧に水洗いして、砂を除去しましょう。

対して砂を飲み込まないホンビノスでは、「砂抜き」が不要といわれています。とはいえ少量ながら泥を吸い込んでいることも。気になる場合は海水と同濃度の塩水(食塩大さじ2杯/水1リットル)にホンビノスを入れて、1時間暗所でつけ置きしましょう。あとホンビノスでは塩気が強いため、料理前の「塩抜き」も必須。塩水から上げて、30分ほど暗所で放置すれば塩気が抜けます。

大アサリ/ホンビノスの保存方法

余ってしまった大アサリやホンビノスは、下準備をして冷凍庫に入れれば保存が効きます。冷凍庫に入れる前の下準備は簡単で、砂抜きや塩抜きを済ませた大アサリ/ホンビノスの水気を拭き取って袋に入れるだけ。あとは袋ごと冷凍すれば、1ヶ月間も保存できるのです。

大アサリ/ホンビノスを使った料理

火を通した大アサリの身は冷めきってしまうと固くなり、食味が落ちます。そのため大アサリは、調理してすぐ食べる料理にしか向きません。たとえば名産地の愛知・三重ではもっぱら、「バーベキューの具材」として消費されているのです。直火で炙った「焼き貝」や熱湯にくぐらせた「湯引き」、料理酒で蒸して醤油・ネギをかけた「酒蒸し」など単品料理に適しています。

一方塩気の強いホンビノスはスープ料理の具材にうってつけ。牛乳ベースの「ニューイングランドクラムチャウダー」やトマトベースの「マンハッタンクラムチャウダー」はもちろんのこと、和風仕立ての「味噌汁」にも適しているのです。ほかには「ホンビノスの出汁」とトマトジュースを混ぜたものでウォッカを割ると、「ブラッディ・シーザー」というカクテルに。もちろん焼き貝や湯引き、酒蒸しにしても楽しめますよ。

\次のページで「大アサリとホンビノスとでは風味や向く料理が違う」を解説!/

大アサリとホンビノスとでは風味や向く料理が違う

大アサリもホンビノスも一見すると、「大きな白い殻をもつ二枚貝」です。しかし貝殻をよく観察してみると見分けがつきます。ホンビノスは「貝殻がいびつ」だったり、大アサリは「貝殻の内側が紫色」だったりとそれぞれ個性をもつのです。さらに向いている料理が違います。冷めると食味が落ちる大アサリは「バーベキュー」に、塩気の強いホンビノスは「スープ」に適しているのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!大アサリとホンビノスの違いとは?見分け方や下処理・おすすめの食べ方も生物に詳しいライターが詳しく解説

この記事では大アサリとホンビノスの違いについてみていきます。2つとも「白色の殻をもつ、大きな二枚貝」というイメージがあるよな。じつは両者では、味や料理法が違うんです。さらに一見そっくりな貝殻についても違う点がいくつかあって、簡単に見分けがつく。今回はそんな「二枚貝」の違いを、見分け方も含めて大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「大きな白い殻をもつ二枚貝」である、大アサリとホンビノスの違いについてわかりやすく解説していく。

大アサリとホンビノスを大まかに比較

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まずは大アサリとホンビノスの、分類や利用法など「大まかな特徴」について解説。どちらも「ピンと来ない名前」をしていますが、じつは「馴染み深い二枚貝」なのです。以下アサリとは無関係な「大アサリ」の正体から、みていきましょう!

大アサリの正式名称は「ウチムラサキ」

「大アサリ」は店頭に並ぶ際に付けられる、いわば「あだ名」のようなもの。正式にはマルスダレガイ科Saxidomus属の「ウチムラサキ」を指します。このウチムラサキは、殻長(貝殻の長さ)にして10cmほどにもなる大型の二枚貝です。

味がよいため、愛知県と三重県では「大アサリ」として食されてきました。「ラッコの大好物」でもあり、水族館ではしばしば餌として供されています。

ホンビノスは「クラムチャウダー」の材料

一方「ホンビノス」は学術的に正式な呼び名。マルスダレガイ科Mercenaria属に分類される「ハードクラム/Hard clam」という貝の和名なのです。こちらも先述のウチムラサキ同様、殻長が最大10cmほどに達する大型の二枚貝。原産地の北米では「クラムチャウダー」の具材として愛されてきました。

じつはこのホンビノス、「大アサリ」という商品名で流通していた過去があります。しかしこちらは北米原産の外来種で、水質汚染への耐性や繁殖力に長けているのが特徴。国産でもなければ希少でもない「安価な貝」なので、「ホンビノスガイ」としての表記が義務付けられるようになったのです。以下この記事では大アサリこと「ウチムラサキ」と、よく似た「ホンビノスガイ」の違いについて解説していきます。

大アサリとホンビノスの具体的な違い

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大アサリとホンビノスとでは、具体的な違いが4つもあります。ともに「大きな白い殻をもつ二枚貝」で一見するとそっくりなのですが、その風味や向く料理が違っているのです。さらに外観のディティールや、貝殻の内側にも相違が。以下目視でわかる違いから、みていきましょう!

違い1.貝殻の形状

大アサリとホンビノスは貝殻の形に着目すれば見分けられます。1枚の貝殻について、蝶番(殻頂)を中心に「左右の形」を比較してみましょう。まず大アサリの貝殻は、ほぼ左右対称でこれといった特徴がありません。対してホンビノスの貝殻では、蝶番が片側に曲がっています。そのため蝶番周りがくぼんでいたり、貝殻の放射模様が左右非対称だったりと「いびつな形」になるのです。

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