この記事では江戸切子と薩摩切子の違いについてみていきます。どちらも美しい日本の工芸品というイメージがあるよな。違いはずばり産地や作風のようですが、歴史背景など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんな切子の違いを、定義から確認しつつ、大学時代に文化学などを学んだライターさやかと一緒に解説していきます。

ライター/さやか

現在、4歳の娘を育てながらライターとして活動中。伝統的工芸品を見るのも好き。美しい切子のグラスをいつか両親にプレゼントしてみたいと思っている。

江戸切子と薩摩切子の違いとは?

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日本の伝統的工芸品に「切子」という美しい工芸品がありますが、大きく分けると江戸切子薩摩切子という2種類の切子が代表的であることを知っていますか?この記事では、江戸切子と薩摩切子の違いについて解説していきます。

そもそも「切子」って何?

「切子(きりこ)」というのは、ガラスの表面をカットして装飾・加工する技法のことです。また、そのような装飾が施されている食器・酒器などそのものを指して使われることも多いですね。ガラスを切った時に出る「切粉」が由来であるとか、立方体の角を切り落とした形をさす「切籠形(きりこがた)」から来ているなど、様々な説があります。

違い1.作風

江戸切子と薩摩切子の違いとして、まずはその見た目や作風が挙げられます。

江戸切子は、カットされた部分が透明になっているものが多く、色のついている部分カット装飾の部分コントラストがはっきりしているのが特徴的。薄いガラスが使われており、全体として江戸切子は軽くてシャープな印象のものが多いようです。

薩摩切子色のついた厚いガラスを使うため、カットした部分にも色が残ってグラデーションで彩られるものが多く、それが薩摩切子の魅力となります。全体的に、幻想的で繊細、重厚感のある雰囲気のものが多いようです。

違い2.価格

全体としては、薩摩切子の方が江戸切子よりも高めの価格設定になることが多いです。薩摩切子は高価なクリスタルガラスを厚くして作られていることや、色によって使う鉱物が違うことから材料費がとてもかかるということ、そしてそれを加工するには高い技術と手間ひまを必要とすること、製造拠点が少ないことなどがその理由として挙げられます。

\次のページで「違い3-1.歴史【江戸切子】」を解説!/

違い3-1.歴史【江戸切子】

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江戸切子の歴史は、1834年に江戸伝馬町のビイドロ屋である加賀屋久兵衛が創始したとされています。

元々は「皆川文次郎」という名前でしたが、ガラス問屋で働いていた職人時代に、大阪に出向いて和泉屋嘉兵衛という人物のもとで近代的な切子技術を習得し、暖簾分けをして江戸にて「加賀屋久兵衛」を名乗ったそうです。

その後、江戸の庶民に向けてガラス製の日用品が生み出されるようになりました。酒器、食器、重箱、墨置き、風鈴などは江戸の庶民に愛され、今の時代にもその伝統は生き続け、国・東京都指定の「伝統的工芸品」として認められています。

違い3-2.歴史【薩摩切子】

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薩摩切子の歴史は江戸時代の後期の頃から始まります。薩摩藩の島津家28代・島津斉彬の頃には、海外の交易も視野に入れた美術工芸品として「薩摩切子」の生産が大変盛んになりました。

特に、ガラスの着色の研究は非常に先進的で、「紅」の発色は当時の日本では初の快挙であり「薩摩の紅ガラス」と呼ばれ全国各地で称賛されたそうです。

しかし1858年に斉彬が急逝、1863年の薩英戦争で工場は焼失し、産業は一気に縮小していきました。西南戦争前後に薩摩切子の製造は途絶えたとされています。

その後約100年以上経った1985年、薩摩ガラス工芸株式会社(現在は株式会社島津興業に統合)が設立され、薩摩切子の復元事業が始まりました。大変な努力の末、1986年より本格的な製造が開始され、現在では一般でも買うことができるようになっています。

薩摩切子は、一度歴史が途絶えているため国指定の「伝統的工芸品」としては登録されていません。登録の用件として「100年以上の伝統があること」が必要になるからです。ただし、鹿児島県の県指定伝統的工芸品には認定されています。

薩摩切子は謎が多い?

実は、薩摩切子を復刻させる際には多くの謎が生まれたという話があります。

復刻のための資料を集めている過程で、薩摩切子は「多くの贈答品として贈られたはずなのに、現存しているものがほとんどない」という状態でした。製法に関する文書は一部残っていましたが、それでも詳細にはまだ謎に包まれている部分も多いそう。

例えば、今の時代の大阪のガラス企業の高い技術を持ってしても、厚い色付きガラスにカットを施すのはかなり難しかったという話があります。当時の工場の中は今よりも暗かったはずで、しかも職人たちが技を身につけた期間はわずか20年ほど。そんな条件下でどうやってあのような高い技術のカットを職人たちが施していたのか、それほどまでに職人たちの技術をどうやって高められたのか、いまだにわかっていないことも多いようです。

\次のページで「それぞれの歴史や特徴を知って、異なる美しさを楽しもう」を解説!/

それぞれの歴史や特徴を知って、異なる美しさを楽しもう

日本を代表する伝統工芸品である「切子」。とても素晴らしい美しさに圧倒されますが、その歴史や作風の違いなどにも想いを馳せると、ますます魅力が増すような気がしますね。

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3分でわかる!江戸切子と薩摩切子の違いとは?いまだに残る謎も文化学系学部卒ライターが簡単にわかりやすく解説!

この記事では江戸切子と薩摩切子の違いについてみていきます。どちらも美しい日本の工芸品というイメージがあるよな。違いはずばり産地や作風のようですが、歴史背景など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんな切子の違いを、定義から確認しつつ、大学時代に文化学などを学んだライターさやかと一緒に解説していきます。

ライター/さやか

現在、4歳の娘を育てながらライターとして活動中。伝統的工芸品を見るのも好き。美しい切子のグラスをいつか両親にプレゼントしてみたいと思っている。

江戸切子と薩摩切子の違いとは?

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日本の伝統的工芸品に「切子」という美しい工芸品がありますが、大きく分けると江戸切子薩摩切子という2種類の切子が代表的であることを知っていますか?この記事では、江戸切子と薩摩切子の違いについて解説していきます。

そもそも「切子」って何?

「切子(きりこ)」というのは、ガラスの表面をカットして装飾・加工する技法のことです。また、そのような装飾が施されている食器・酒器などそのものを指して使われることも多いですね。ガラスを切った時に出る「切粉」が由来であるとか、立方体の角を切り落とした形をさす「切籠形(きりこがた)」から来ているなど、様々な説があります。

違い1.作風

江戸切子と薩摩切子の違いとして、まずはその見た目や作風が挙げられます。

江戸切子は、カットされた部分が透明になっているものが多く、色のついている部分カット装飾の部分コントラストがはっきりしているのが特徴的。薄いガラスが使われており、全体として江戸切子は軽くてシャープな印象のものが多いようです。

薩摩切子色のついた厚いガラスを使うため、カットした部分にも色が残ってグラデーションで彩られるものが多く、それが薩摩切子の魅力となります。全体的に、幻想的で繊細、重厚感のある雰囲気のものが多いようです。

違い2.価格

全体としては、薩摩切子の方が江戸切子よりも高めの価格設定になることが多いです。薩摩切子は高価なクリスタルガラスを厚くして作られていることや、色によって使う鉱物が違うことから材料費がとてもかかるということ、そしてそれを加工するには高い技術と手間ひまを必要とすること、製造拠点が少ないことなどがその理由として挙げられます。

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