この記事では「寂寥」と「寂寞」の違いについてみていきます。どちらも、ものさみしい様子をあらわすときに使われる言葉ですが、難しい漢字で構成されているだけに、読み方すらわからないという人も少なくないでしょう。また、どちらも「寂」という字が使われていて意味も似ているだけに、その使い分けに迷う人もいて当然です。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

寂寥と寂寞の読み方を説明

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まずは、「寂寥」「寂寞」のそれぞれの読み方について説明したいと思います。「寂寥」の読みは「せきりょう」あるいは「じゃくりょう」です。一方、「寂寞」「せきばく」、あるいは「じゃくまく」と読みます。このように複数の読み方がある理由としては、これらの単語には「漢音で読む読み方」「呉音で読む読み方」があるからです。

漢字には音読みが複数あるものがありますよね?漢字はもともと中国から伝わってきたもので、音読みは中国の発音が元になっているということはご存じかと思いますが、音読みの中でも古い読み方は呉音、それより新しい読み方は漢音というように、同じ漢字でも時代によって違った読み方が伝わってきました。そのため、一つの漢字でも複数の音読みを持っていることがあるのです。

「寂寥」……「せきりょう(漢音)」「じゃくりょう(呉音)」
「寂寞」……「せきばく(漢音)」「じゃくまく(呉音)」

寂寥と寂寞のざっくりした違いを説明

つぎに「寂寥」「寂寞」のおおまかな違いを説明しましょう。「寂寥」「寂寞」どちらも、「ものさみしい様子」や、あるいは「心が満たされないでさみしい様子」などを意味する言葉であり、正直、どうしても使い分けなくてはいけないほどの大きな意味の違いはありません。

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寂寥と寂寞の漢字を説明

さきほど、「寂寥」「寂寞」はどちらも「ものさみしい様子」「心が満たされないでさみしい様子」を意味する言葉で大きな違いがないことを説明しましたが、それぞれに使われている漢字に着目すると、やはり微妙なニュアンスの違いは存在します。そこで、ここからは「寂寥」「寂寞」の漢字について見ていきましょう。

「寂」は音が無くてさびしい様子

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まずは「寂寥」と「寂寞」の両方に使われている「寂」について説明しましょう。「寂」という字の、下にある「叔」の左側の形は枝についている豆を、右側の「又」はそれを拾う手をあらわしていると考えられ、「細く小さい」などといった意味を持つ字です。

それに、家や屋根などをあらわす「ウかんむり」とを組み合わせることで、「寂」という字は、家の中で小さい音しかしない様子、つまり「さびしい」ことを意味すると考えられています。ですので、「寂」という字は訓読みで「寂(さび)しい」「寂(しず)か」などと読むのでしょう。

「寥」は広々としていてさびしい様子

つぎに「寥」という字について説明します。「寥」の下側にある「翏」は鳥が空高く飛ぶ様子をあらわす字です。そのような「翏」に、家や屋根などをあらわす「ウかんむり」を組み合わせたことで、「寥」という字には「何もなく広々としている」という意味があります。そのような何もなく広々としたところに一人でいるのはさみしいですよね?ですから、「寥」という字は「何もなく、ものさみしい様子」という意味も持つのです。

ですから「寂寥」とは「さびしい」意味を持つ「寂」という字と、「何もなく、ものさみしい様子」という意味を持つ「寥」という字を組み合わせているので、「寂寞」と比べると「何もない虚しさ」、つまり「空虚感」「虚無感」のニュアンスをより強く持っています。

「寞」は静かでひっそりとしている様子

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今度は「寞」について説明しましょう。「寞」という字の中の「莫」は、「草かんむり」と下にある「大」が「草むら」を、間にはさまれている「日」が太陽をあらわすので、「日暮れ」「夜」を意味する字です。そんな「莫」に家や屋根などをあらわす「ウかんむり」を組み合わせたことで、「寞」という字は、夕暮れどきの部屋の様子のイメージからか、「静か」「ひっそりしている」「さびしい」などの意味で使われるようになりました。

ですから「寂寞」とは、「さびしい」意味を持つ「寂」という字と、「しずか」や「ひっそりとしている」などの意味を持つ「寞」という字を組み合わせているので、「寂寥」と比べると「音がしなくてさみしい」ニュアンスをより強く持っています。

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寂寥は空虚、寂寞は静かでものさみしい様子のこと!

今回の説明で、「寂寥」「寂寞」は同じように「ものさみしさ」をあらわす言葉でも、「寂寥」空虚でものさみしい様子をあらわし、「寂寞」静かでひっそりとしたものさみしさであるという違いがあることを知っていただけたかと思います。ただし、はじめに言ったように、これらはほんのわずかなニュアンスの違いであり、実際に使う上でそこまでの厳密さを求められることはないでしょう。

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雑学

簡単でわかりやすい!寂寥と寂寞の違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師が詳しく解説

この記事では「寂寥」と「寂寞」の違いについてみていきます。どちらも、ものさみしい様子をあらわすときに使われる言葉ですが、難しい漢字で構成されているだけに、読み方すらわからないという人も少なくないでしょう。また、どちらも「寂」という字が使われていて意味も似ているだけに、その使い分けに迷う人もいて当然です。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

寂寥と寂寞の読み方を説明

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まずは、「寂寥」「寂寞」のそれぞれの読み方について説明したいと思います。「寂寥」の読みは「せきりょう」あるいは「じゃくりょう」です。一方、「寂寞」「せきばく」、あるいは「じゃくまく」と読みます。このように複数の読み方がある理由としては、これらの単語には「漢音で読む読み方」「呉音で読む読み方」があるからです。

漢字には音読みが複数あるものがありますよね?漢字はもともと中国から伝わってきたもので、音読みは中国の発音が元になっているということはご存じかと思いますが、音読みの中でも古い読み方は呉音、それより新しい読み方は漢音というように、同じ漢字でも時代によって違った読み方が伝わってきました。そのため、一つの漢字でも複数の音読みを持っていることがあるのです。

「寂寥」……「せきりょう(漢音)」「じゃくりょう(呉音)」
「寂寞」……「せきばく(漢音)」「じゃくまく(呉音)」

寂寥と寂寞のざっくりした違いを説明

つぎに「寂寥」「寂寞」のおおまかな違いを説明しましょう。「寂寥」「寂寞」どちらも、「ものさみしい様子」や、あるいは「心が満たされないでさみしい様子」などを意味する言葉であり、正直、どうしても使い分けなくてはいけないほどの大きな意味の違いはありません。

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