この記事では「死亡診断書」と「死亡届」の違いを見ていきます。人が亡くなるといろいろな手続きが必要ですが、どんなことが必要か知っているか。事件や事故に巻きまれたときも、病気で亡くなったときと同じ手続きでいいのでしょうか。「死亡診断書」や「死亡届」は誰がどこに提出するのか、人が亡くなったときの手続きなどを元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「死亡診断書」と「死亡届」の違い

人が亡くなるとさまざまな手続きをしなければなりません。とはいえ、人が亡くなる、特に身内が亡くなり、自分自身がその諸手続きをする立場になることはめったにないので、なじみがあることではないでしょう。ではまず、人が亡くなったときに真っ先に必要となる「死亡診断書」と「死亡届」の違いを見ていきます。

「死亡診断書」:医師が記入

病院や自宅で死亡後、最初に必要なのが「死亡診断書」。「死亡診断書」は医学的かつ法律的に死亡を確認する書類で医師が記入します。病気で入院しその病気が原因で死亡した場合、診察中の病気に関連することが原因で自宅で亡くなった場合は、担当の医師が「死亡診断書」を発行。ただし、後述しますが、事故などで亡くなった場合の手続きは別です。

この「死亡診断書」がなければ、法的には死亡と認められませんので、火葬も葬儀もできません。つまり、「死亡診断書」が発行されなければ、生きているとみなされ、納税の義務なども継続することとなってしまうのです。

ですから、誰かが亡くなったときはまず「死亡診断書」を医師から受け取ることから始まります。この「死亡診断書」の発行を起点に、火葬や葬儀を含めたさまざまな手続きが進んでいくのです。「死亡診断書」には死亡に至った経緯をできるだけ詳しく記入することとなっています。

「死亡届」:親族または同居人が記入

「死亡届」は故人の親族または親族以外の同居人が届出人となります。誰でも届出人になれるいうわけではないのです。たとえ親しい友人であろうと、恋人であろうと同居していなければ届出人にはなれません。届け出先は故人が亡くなった場所の役所、故人の本籍地の役所、届出人の住民票所在地の役所のいずれかです。

また、「死亡診断書」同様、「死亡届」を提出しなければ火葬はできません。実はこの2つ「死亡診断書」と「死亡届(正式には死亡届書)」はA3の1枚の書類となっていますので、医師が記入した後、親族または同居人が死亡届の部分を記入して完成です。

実際に届出を行うのは、親族や同居人でなくても構わず、葬儀社が代わって役所に届け出るケースも多くみられます。届出が受理されると役所が火葬許可書、埋葬許可書を発行。これで、ようやく故人の葬儀を行うことができます。

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戸籍法第86条
「死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
②届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項」(e-Gov法令検索)

通常死以外の死亡の場合

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病気で病院や自宅で亡くなった場合は、故人を担当していた医師が「死亡診断書」を交付できますので、スムーズに火葬、葬儀など、やるべきことを進めていけます。しかし、事故や事件などで亡くなった場合はどうなるのでしょうか。ここでは、故人の担当医師が「死亡診断書」を交付できないケースを見ていきましょう。

1.自宅や施設で死亡した場合

自宅や老人ホームなどの施設で亡くなっても病院で診療を受けていた場合、診療を受けていた病気やけがに関連する死亡であれば、担当医師が「死亡診断書」を交付できましたね。しかし、病院の診療を受けていない、または診療の内容と関連がないことが原因で死亡した場合、「死亡診断書」は交付されません。そのような場合は「死体検案書」を作成します。

かかりつけ医、いなければ救急に連絡するなどして医師の診察を受け、死因に不審な点などがなければ、担当した医師が「死亡診断書」に代わって「死体検案書」を作成。一般的に「死亡診断書」と「死体検案書」は同じ書式ですので、「死亡診断書・死体検案書」のように併記されています。

万が一、死因に不審な点などがあれば、解剖を含めた検死が必要となることもありますね。

2.事故による死亡の場合

事故にあって病院に搬送され、搬送先の病院で亡くなった場合、担当の医師により「死亡診断書」が作成されます。しかし、事故現場や搬送中に死亡した場合は、警察が指定した医師により死因などを判定。不審な点が認められなければ「死体検案書」が作成されます。

3.事件性の疑いがある場合

事故、自殺、他殺など事件性の疑いがあり死因がはっきりしない場合は変死として扱われ、状況次第では司法解剖などが必要となることもあり、遺体が遺族に引き渡されるまでに長い時間を要することもあります。この場合は「死亡診断書」に代わって「死体検案書」を作成。遺族は「死体検案書」を受け取ったうえで諸手続きを進めることとなります。

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刑事訴訟法第229条
「変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」(e-Gov法令検索)

特例:遺体が発見されていない場合

まだ、記憶に新しい東日本大震災。この未曽有の災害ではいまだに行方不明の方々が多くいますよね。そのため遺体が発見されてない方も多いので、「死亡診断書」も「死体検案書」も発行されませんが、特例として「死亡届」は受理されています。

これはあくまで特例ですが、このような手続きが行われていた(行われている)ということは皆さんにも知っておいてほしいですね。

届出後の諸手続き

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死亡後、親族等により役所への届け出の前にコピーを複数枚とっておきましょう。死亡保険金の請求など故人の死亡に伴う手続きで必要となります。また、届出後に「死亡証明書」を申請が必要となるケースもあるでしょう。遺族年金の請求や労災の請求、郵便局簡易保険の死亡保険金の請求などには「死亡証明書」が必要です。

死亡の届け出が終わったあとに必要と考えられる手続きは次を参照ください。

死亡届提出後にやるべきこと
・火葬
・世帯主の変更届(14日以内・世帯主が死亡した場合)
・健康保険の資格喪失届(14日以内)
・年金の資格喪失届(10日以内)
・介護保険の資格喪失届(14日以内)
・銀行口座凍結の手続き
・葬祭費の申請(2年以内・国民健康保険の場合) など

\次のページで「「死亡診断書」と「死亡届」の違いは作成者」を解説!/

「死亡診断書」と「死亡届」の違いは作成者

「死亡診断書」と「死亡届」の違いが誰が作成するかの違いです。「死亡診断書」は医師が作成し遺族に渡します。「死亡届」は親族または同居人が作成。この2つは一体となった書類ですので、最後は親族が役所に「死亡診断書」と「死亡届」を提出すれば、役所が火葬・埋葬の許可書を発行します。事故や事件などによる死亡の場合は「死亡診断書」に代わり「死体検案書」を医師が作成しますが、事件性がなく、死因に不審な点がなければ、病死と同じように役所に「死亡届」を提出するという流れです。

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雑学

簡単で分かりやすい「死亡診断書」と「死亡届」の違い!誰がどこに提出するの?届け出後の手続きも元塾講師が詳しく解説!

この記事では「死亡診断書」と「死亡届」の違いを見ていきます。人が亡くなるといろいろな手続きが必要ですが、どんなことが必要か知っているか。事件や事故に巻きまれたときも、病気で亡くなったときと同じ手続きでいいのでしょうか。「死亡診断書」や「死亡届」は誰がどこに提出するのか、人が亡くなったときの手続きなどを元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「死亡診断書」と「死亡届」の違い

人が亡くなるとさまざまな手続きをしなければなりません。とはいえ、人が亡くなる、特に身内が亡くなり、自分自身がその諸手続きをする立場になることはめったにないので、なじみがあることではないでしょう。ではまず、人が亡くなったときに真っ先に必要となる「死亡診断書」と「死亡届」の違いを見ていきます。

「死亡診断書」:医師が記入

病院や自宅で死亡後、最初に必要なのが「死亡診断書」。「死亡診断書」は医学的かつ法律的に死亡を確認する書類で医師が記入します。病気で入院しその病気が原因で死亡した場合、診察中の病気に関連することが原因で自宅で亡くなった場合は、担当の医師が「死亡診断書」を発行。ただし、後述しますが、事故などで亡くなった場合の手続きは別です。

この「死亡診断書」がなければ、法的には死亡と認められませんので、火葬も葬儀もできません。つまり、「死亡診断書」が発行されなければ、生きているとみなされ、納税の義務なども継続することとなってしまうのです。

ですから、誰かが亡くなったときはまず「死亡診断書」を医師から受け取ることから始まります。この「死亡診断書」の発行を起点に、火葬や葬儀を含めたさまざまな手続きが進んでいくのです。「死亡診断書」には死亡に至った経緯をできるだけ詳しく記入することとなっています。

「死亡届」:親族または同居人が記入

「死亡届」は故人の親族または親族以外の同居人が届出人となります。誰でも届出人になれるいうわけではないのです。たとえ親しい友人であろうと、恋人であろうと同居していなければ届出人にはなれません。届け出先は故人が亡くなった場所の役所、故人の本籍地の役所、届出人の住民票所在地の役所のいずれかです。

また、「死亡診断書」同様、「死亡届」を提出しなければ火葬はできません。実はこの2つ「死亡診断書」と「死亡届(正式には死亡届書)」はA3の1枚の書類となっていますので、医師が記入した後、親族または同居人が死亡届の部分を記入して完成です。

実際に届出を行うのは、親族や同居人でなくても構わず、葬儀社が代わって役所に届け出るケースも多くみられます。届出が受理されると役所が火葬許可書、埋葬許可書を発行。これで、ようやく故人の葬儀を行うことができます。

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