今回は「筑前煮」と「がめ煮」の違いを見ていきます。どちらも福岡県の郷土料理で、全国的には筑前煮の名前の方が知られているな。この2つの料理、実はほぼ同じものだって知っていたか?使用する鶏肉に少し違いがある場合もありますが、具材はほぼ同じ。福岡県以外では筑前煮と呼ばれている料理を、地元民はがめ煮と呼ぶようです。この先は外食好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

食べることが大好きな主婦ライター。週に2回は外食を楽しみ、近隣のお店を開拓している。高級料理よりも庶民派の手軽なものが好み。

「筑前煮」と「がめ煮」の違いとは?

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筑前煮とがめ煮はどちらも福岡県の郷土料理で、全国的にもよく知られています。特にお正月などのハレの日に食べるものとして親しまれているこの2つの料理、実は材料も味付けもほぼ同じ。なぜ別の名前で呼ばれているのでしょうか。

かつてのもっとも大きな違いは、筑前煮に使用する鶏肉には骨がなく、がめ煮の鶏肉には骨が付いている、という点でした。しかし現在ではがめ煮に骨付き肉を使用することも少なくなり、2つの境目がなくなりつつあります。

「筑前煮」ってどんな料理?

筑前煮は、明治初期まで「筑前国」と呼ばれた福岡県の郷土料理で、鶏肉・しいたけ・にんじん・れんこん・ごぼう・里芋・こんにゃくなどの具材を使用した煮物です。栄養が豊富なことから全国の学校給食に取り入れられるようになり、その名が知れ渡りました。

「筑前煮」の名前の由来

筑前煮の調理は、下ごしらえした具材を油で炒めることからスタート。最初に油で炒める調理法が筑前国(福岡県)でよく行われていたことから、この煮物が全国的に「筑前煮」という名前で呼ばれ、広がったといわれています。

福岡県では「筑前煮」と呼ばれない? 

筑前煮の名前は、福岡県以外の人々から「筑前(福岡)の調理法の煮物」という意味で呼ばれた表現です。そのため地元の福岡県では「筑前煮」とは呼ばれません。福岡県の人々は、筑前煮のことを「がめ煮」と呼んでいます。

「がめ煮」ってどんな料理?

がめ煮は福岡県での郷土料理で、全国的には筑前煮のことを指します。人気の郷土料理を選ぶ「農山漁村の郷土料理百選」というイベントでは、福岡県の人気郷土料理として選ばれたほどに知名度が高く愛されている料理です。

\次のページで「「がめ煮」の名前の由来」を解説!/

「がめ煮」の名前の由来

がめ煮の名前の由来には諸説あり、ここでは特に知られている2つの説をご紹介しましょう。1つ目は博多弁で「寄せ集める」を意味する「がめくりこむ」に由来するという説。2つ目はかつて博多湾で多く取れたカメを具材に使ったことに由来するという説です。

かつての「がめ煮」の姿

現在は鶏肉が使われるがめ煮。しかし昔は別の肉が使われていました。カメ・スッポン・カジキマグロ・ウサギ・クジラなど、その時々で手に入る肉が使用されたといいます。また動物性の食品が使用できない精進料理では、肉の代わりに油揚げを使うこともありました。

お正月に食べる筑前煮・がめ煮の具材の意味

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お正月などのハレの日の定番料理である筑前煮やがめ煮。使用される以下の具材は縁起物とされ、さまざまな願いが込められています。それぞれの具材に込められた願いを確認していきましょう。

・しいたけ
・にんじん
・れんこん
・ごぼう
・里芋
・こんにゃく

しいたけ:長寿を願って

かつて高級品であったしいたけは、お正月やお祝いごとなどの日に食べる特別な食べ物と考えられていました。お正月に食べる筑前煮(がめ煮)に入れるしいたけは、傘に飾り切りを施して亀の甲羅に見立て、長く生きられるようにと願いが込められています

にんじん:生活の豊かさを願って

にんじんに込められた意味は、にんじんそのものではなく、にんじんを使って作る梅の花の飾り切りにありました。梅の花は冬を超えて、他のどんな花よりも早く花を咲かせることから縁起物と考えられています。生活が豊かになるようにという願いが込めて、梅に似せたにんじんを筑前煮に入れるようになりました。

れんこん:先を見通せるように

れんこんには2つの願いが込められています。1つ目は、れんこんの穴から向こう側が見えることにちなんだ「先の見通せるように」という願い。2つ目は、れんこんが種を多くつくる植物であることにちなんだ「子孫繁栄」という願いです。

ごぼう:一族の繁栄を願って

地中に太い根を伸ばすごぼうの姿は、「土地に根を張る」ことから「受け入れられ、安定する」という意味に重なります。「土地に根を張り、一族や家業が繁栄するように」という縁起を担ぎ、お正月などのハレの日に食べられるようになりました。

里芋:子孫繁栄を願って

種芋から多くの芋ができる里芋は子孫繁栄の象徴です。特に「八つ頭(やつがしら)」という里芋の高級品種は、末広がりで縁起のいい「八」の文字が付くことから縁起物として珍重され、お正月によく食べられています。

こんにゃく:縁結びを願って

こんにゃくの真ん中に切れ込みを入れ、そこからくるっとねじった「ねじりこんにゃく」には、「良縁」や「夫婦円満」の願いが込められています。ねじった部分がまるで「結び目」のように見えることから、「結び目」と「縁結び」をかけた言葉あそびです。

筑前煮(がめ煮)の簡単レシピ

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筑前煮(がめ煮)の簡単なレシピを紹介します。材料の飾り切りは行わないシンプルな準備の方法で、ハレの日でなくても気軽に楽しめるレシピです。野菜をたくさん食べたいときや、筑前煮の味が恋しくなったときに作ってみてはいかがでしょうか

【材料】4人分
・干ししいたけ…4枚
・水…250cc(干ししいたけをもどすのに使用)
・にんじん…1/2本
・れんこん…1/2節
・ごぼう…1/2本
・里芋…3個
・こんにゃく…80g
・絹さや…4枚(なくても可)
・鶏モモ肉…150g
・サラダ油…大さじ1
・酒…大さじ1
・みりん…大さじ2.5
・砂糖…大さじ1
・しょうゆ…大さじ3

【作り方】
1.干ししいたけを水でもどす。もどし汁は200cc分をとっておき、あとの工程で使用する。もどした干ししいたけは4等分に切る。
2.にんじんを乱切りにする。レンコンを乱切りにして水にさらす。ごぼうを乱切りにして水にさらす。
3.里芋の皮を厚めにむき、塩で揉んでから水にさらす。その後に食べやすい大きさに切る。
4.こんにゃくをスプーンで食べやすい大きさにちぎって鍋に入れ、水を入れて加熱する。沸騰したら3分湯でてザルに取る。
5.絹さやの筋を取り、沸騰した湯でさっとゆでて粗熱をとり、斜め半分に切る。
6.鶏モモ肉を食べやすい大きさに切り、サラダ油を熱したフライパンで加熱する。
7.鶏モモ肉の表面の色が変わったら、絹さや以外の具材をすべて入れ、全体に油がまわるまで炒める。
8.干ししいたけのもどし汁200ccと、醤油以外の調味料をすべて入れて加熱する。あくが出る場合は取り、落し蓋をして中火で10分煮る。
9.時間がきたら醤油を入れ、また落し蓋をして5分煮る。
10.時間がきたら落し蓋を外して強火にし、好みの味の濃さになるまで水分を飛ばす。途中、煮汁が絡むように全体を何度か混ぜる。
11.器に盛り、絹さやを彩りよく飾ったら完成。

筑前煮(がめ煮)を作って食べてみよう!

筑前煮とがめ煮はともに福岡県の郷土料理。使用する鶏肉に違いがある場合もありますが、味付けや具材はほとんど同じです。普段の食卓はもちろん、お正月やお祝いごとなどのハレの日に食べる料理としても愛されています。手が込んでいるように見えますが、実は簡単に作れるのが嬉しいポイント。ぜひご自身でもトライして、好みの味加減を見つけてみてくださいね。

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雑学食べ物・飲み物

簡単でわかりやすい!「筑前煮」と「がめ煮」の違いは鶏肉の骨が付いているかどうか?名前の由来や簡単レシピも外食好きライターが詳しく解説

今回は「筑前煮」と「がめ煮」の違いを見ていきます。どちらも福岡県の郷土料理で、全国的には筑前煮の名前の方が知られているな。この2つの料理、実はほぼ同じものだって知っていたか?使用する鶏肉に少し違いがある場合もありますが、具材はほぼ同じ。福岡県以外では筑前煮と呼ばれている料理を、地元民はがめ煮と呼ぶようです。この先は外食好き主婦ライターのスズキアユミと一緒に詳細を解説していきます。

ライター/スズキアユミ

食べることが大好きな主婦ライター。週に2回は外食を楽しみ、近隣のお店を開拓している。高級料理よりも庶民派の手軽なものが好み。

「筑前煮」と「がめ煮」の違いとは?

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筑前煮とがめ煮はどちらも福岡県の郷土料理で、全国的にもよく知られています。特にお正月などのハレの日に食べるものとして親しまれているこの2つの料理、実は材料も味付けもほぼ同じ。なぜ別の名前で呼ばれているのでしょうか。

かつてのもっとも大きな違いは、筑前煮に使用する鶏肉には骨がなく、がめ煮の鶏肉には骨が付いている、という点でした。しかし現在ではがめ煮に骨付き肉を使用することも少なくなり、2つの境目がなくなりつつあります。

「筑前煮」ってどんな料理?

筑前煮は、明治初期まで「筑前国」と呼ばれた福岡県の郷土料理で、鶏肉・しいたけ・にんじん・れんこん・ごぼう・里芋・こんにゃくなどの具材を使用した煮物です。栄養が豊富なことから全国の学校給食に取り入れられるようになり、その名が知れ渡りました。

「筑前煮」の名前の由来

筑前煮の調理は、下ごしらえした具材を油で炒めることからスタート。最初に油で炒める調理法が筑前国(福岡県)でよく行われていたことから、この煮物が全国的に「筑前煮」という名前で呼ばれ、広がったといわれています。

福岡県では「筑前煮」と呼ばれない? 

筑前煮の名前は、福岡県以外の人々から「筑前(福岡)の調理法の煮物」という意味で呼ばれた表現です。そのため地元の福岡県では「筑前煮」とは呼ばれません。福岡県の人々は、筑前煮のことを「がめ煮」と呼んでいます。

「がめ煮」ってどんな料理?

がめ煮は福岡県での郷土料理で、全国的には筑前煮のことを指します。人気の郷土料理を選ぶ「農山漁村の郷土料理百選」というイベントでは、福岡県の人気郷土料理として選ばれたほどに知名度が高く愛されている料理です。

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