この記事では「年次有給休暇」と「有給休暇」の違いを見ていきます。正社員、パート、アルバイトを問わず、会社に勤務していれば誰でも取れるんですが、法律上のルールがどうなっているのか、休暇を取るのときに注意するポイントが何なのか、また「年次有給休暇」「有給休暇」以外の休暇についても元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「年次有給休暇」と「有給休暇」は違う?

image by iStockphoto

会社に勤務している正社員、パート、アルバイトなどの従業員は仕事を休めば賃金が支払われません。いわゆるノーワーク・ノーペイの原則です。しかし、一定の要件を満たした従業員は、会社が定めた休日とは別に休暇を取ることができる上に、休暇を取っても賃金が支払われます。これが「年次有給休暇」または「有給休暇」と呼ばれるものです。

実は「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じもので、違いはありません。「有給休暇」は「年次有給休暇」を省略しただけなのです。「年次有給休暇」については労働基準法第39条にその規定があります。

しかし、一部の方たちは、会社が法定休暇である「年次有給休暇」とは別に、会社が任意で設定する有給を年次がつかない「有給休暇」とする場合もあるようですが、先に説明している通り、「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じとするのが一般的な考え方です。この記事では「有給休暇」を使うこととします。

労働基準法第39条
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」(e-Gov法令検索)

労働者は勤務開始から6ヶ月間途切れることなく在籍している全労働日の8割以上出勤している、この2つの要件を満たせば、1年で10日以上の「有給休暇」が付与されます。パートやアルバイトについては週当たりの勤務時間数に応じて日数が変わりますが、2つの要件を満たしてさえいれば、会社は「有給休暇」を付与しなければなりません。

「有給休暇」に関するルール

image by iStockphoto

では、「有給休暇」に関する法律上のルールを詳しくみていきましょう。

取得できる日数

労働基準法では、勤務開始から6ヶ月間継続して在籍し、全労働日の8割以上出勤していれば10日間の「有給休暇」が付与されます。それ以降の「有給休暇」の日数ですが、勤務開始から1年6ヶ月を経過すると11日、2年6ヶ月を経過すると12日、以後、1年経過するごとに2日ずつ日数が増えますので、6年6ヶ月を経過すると1年で20日間の有給休暇が付与されるわけです。

しかし、付与される「有給休暇」の上限は1年で20日間ですので、在籍期間が長くなってもこれを超える有給休暇を付与されることはありません。

「有給休暇」の繰り越し

20日間の「有給休暇」が付与されたとはいえ、それを1年で使いきれるとは限りませんよね。国は「有給休暇」を消化することを推奨していますが、会社によってはなかなか「有給休暇」を使えないのが現状ではないでしょうか。では、「有給休暇」を使いきれなかった場合はどうなるのでしょうか。

消化できなかった「有給休暇」は1年に限り繰り越すことができます。例えば10年継続勤務している従業員が「有給休暇」を10日しか使わなかった場合、残りの10日間は次の1年に繰り越すことができますので、次の1年の「有給休暇」は30日となるわけです。

「有給休暇」の義務化

2019年4月から会社が「有給休暇」が10日以上付与される従業員に対して、年5日の「有給休暇」を取得させることが義務化されました。つまり、会社は時季を指定して従業員に最低5日間の「有給休暇」を消化させなければならないうこと。この時季は従業員の希望などを聞き取って決定しなければなりません。

また、「有給休暇の計画的付与」ですが、これは年5日を除いて、会社があらかじめ付与日を決めて従業員に「有給休暇」を消化させることができますが、労使協定の締結や就業規則への明記など必要な手続きを経る必要があります。

\次のページで「「有給休暇」の時季変更権」を解説!/

「有給休暇」の時季変更権

「有給休暇」を取りたいと請求してもできない場合があります。事業の正常な運営を妨げる場合、会社は「有給休暇」を別の日に変更するよう命じることが可能です。つまり、その従業員が事業の運営に不可欠であり、かつ代わりの要員を確保するのが難しいとき、会社は変更を命じることができます。これが「時季変更権」です。

ただし、繁忙期だからという理由や人員不足だからという理由で時季変更権を行使することはできません。繁忙期であれば、代わりの人員を確保する努力が必要となります。その上で、会社側は従業員とよく協議する必要があるということですね。

取得理由・取得日数

「有給休暇」は労働者の権利であり、何のために「有給休暇」を使うのかは労働者の自由です。したがって、「有給休暇」の取得にあたり、理由を会社に知らせる必要はありません。もし尋ねられるようなことがあれば「私用のため」と回答すれば十分でしょう。

また、取得する日数ですが、これも制限はありません。ただし、長期になればなるほど、代わりの人員を確保するのが難しくなりますので、会社が時季変更権を行使する可能性もあるでしょう。

会社への届け出についても、「いつまでに」のような制限はありません。極端な話、前日でもよいということになります。しかし、就業規則等に「有給休暇」の取得は〇日前までに、とあればそれに従うのが一般的でしょう。届け出期限が極端でなければ、適法と言えます。

その他の休暇について

image by iStockphoto

「有給休暇」以外に、労働者が取得できる休暇を紹介しておきましょう。法律で定められた法定休暇なのか、法律の定めがない法定外休暇なのかで有給か無給かなどが決まります。

1.法定休暇

法律で定められている休暇が法定休暇です。「有給休暇」が代表的な休暇。それ以外にも産前休業、産後休業、育児休業、介護休業などがあります。

産前・産後休業は妊娠している女性が出産予定日を基準に産前6週間、産後8週間の休業できるもの、育児休業は1歳未満の子どもがいる父親、母親が最長1年間休業できるもの、介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日休業できるものです。休業期間中は会社からの給与支給はありませんが、一定の割合でハローワークなど国から経済的な支援が受けられます。

2.法定外休暇

法定外休暇とは法律で定められた休暇ではなく、会社が任意で設けている休暇のことです。したがって、会社によっていろいろな休暇があるということになります。よく見られるのは、慶弔休暇、病気休暇、夏季休暇、年末年始休暇などですね。法律で付与が義務付けられた休暇ではないため、有給か無給かは会社の裁量となります。

「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じもの!

言い方の違いはありますが、「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じものです。「有給休暇」は労働者の権利であり、消化できなかった「有給休暇」は繰り越しができるなど、法律でルールが明確にされています。日本はまだまだ「有給休暇」の取得率が高いわけではありませんが、ここ数年は50パーセント超え。政府の目標は70パーセントとなっていますが、皆さんの勤務先ではどうでしょうか。

" /> 簡単で分かりやすい「年次有給休暇」と「有給休暇」の違い!法律上のルールや取得する際のポイントも元塾講師が詳しく解説! – ページ 2 – Study-Z
雑学

簡単で分かりやすい「年次有給休暇」と「有給休暇」の違い!法律上のルールや取得する際のポイントも元塾講師が詳しく解説!

「有給休暇」の時季変更権

「有給休暇」を取りたいと請求してもできない場合があります。事業の正常な運営を妨げる場合、会社は「有給休暇」を別の日に変更するよう命じることが可能です。つまり、その従業員が事業の運営に不可欠であり、かつ代わりの要員を確保するのが難しいとき、会社は変更を命じることができます。これが「時季変更権」です。

ただし、繁忙期だからという理由や人員不足だからという理由で時季変更権を行使することはできません。繁忙期であれば、代わりの人員を確保する努力が必要となります。その上で、会社側は従業員とよく協議する必要があるということですね。

取得理由・取得日数

「有給休暇」は労働者の権利であり、何のために「有給休暇」を使うのかは労働者の自由です。したがって、「有給休暇」の取得にあたり、理由を会社に知らせる必要はありません。もし尋ねられるようなことがあれば「私用のため」と回答すれば十分でしょう。

また、取得する日数ですが、これも制限はありません。ただし、長期になればなるほど、代わりの人員を確保するのが難しくなりますので、会社が時季変更権を行使する可能性もあるでしょう。

会社への届け出についても、「いつまでに」のような制限はありません。極端な話、前日でもよいということになります。しかし、就業規則等に「有給休暇」の取得は〇日前までに、とあればそれに従うのが一般的でしょう。届け出期限が極端でなければ、適法と言えます。

その他の休暇について

image by iStockphoto

「有給休暇」以外に、労働者が取得できる休暇を紹介しておきましょう。法律で定められた法定休暇なのか、法律の定めがない法定外休暇なのかで有給か無給かなどが決まります。

1.法定休暇

法律で定められている休暇が法定休暇です。「有給休暇」が代表的な休暇。それ以外にも産前休業、産後休業、育児休業、介護休業などがあります。

産前・産後休業は妊娠している女性が出産予定日を基準に産前6週間、産後8週間の休業できるもの、育児休業は1歳未満の子どもがいる父親、母親が最長1年間休業できるもの、介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日休業できるものです。休業期間中は会社からの給与支給はありませんが、一定の割合でハローワークなど国から経済的な支援が受けられます。

2.法定外休暇

法定外休暇とは法律で定められた休暇ではなく、会社が任意で設けている休暇のことです。したがって、会社によっていろいろな休暇があるということになります。よく見られるのは、慶弔休暇、病気休暇、夏季休暇、年末年始休暇などですね。法律で付与が義務付けられた休暇ではないため、有給か無給かは会社の裁量となります。

「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じもの!

言い方の違いはありますが、「年次有給休暇」と「有給休暇」は同じものです。「有給休暇」は労働者の権利であり、消化できなかった「有給休暇」は繰り越しができるなど、法律でルールが明確にされています。日本はまだまだ「有給休暇」の取得率が高いわけではありませんが、ここ数年は50パーセント超え。政府の目標は70パーセントとなっていますが、皆さんの勤務先ではどうでしょうか。

1 2
Share: