この記事では「検視」と「検死」の違いについて見ていきます。どちらも「けんし」と読むんですが、その違いは何なのか知っているか。刑事ドラマなどでも「けんし」という言葉が登場するよな。実際の現場ではどんな状況だと「検視・検死」しなければならないのか、「検体」「解剖」などの言葉と併せて、元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「検視」と「検死」の違い

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「検視」も「検死」もどちらも「けんし」と読みますよね。遺体(死体)を調べるときに使うのはどちらが正しいのでしょうか。まずは、「検視」と「検死」の基本的な違いについて見ていきます。

「検視」:法律用語

「検視」は法律用語で、刑事訴訟法に規定されている手続きです。病院で亡くなった場合は、医師診断に基づき死亡診断書が交付されます。しかし、自宅や外出先で亡くなった場合は、医師が死亡診断書を交付することができません。そのようなときに行われるのが「検視」です。

「検視」では、検察官や司法警察員が遺体や周囲の状況を調べ、身元を確認したり犯罪性の有無を確認したりするのですが、事件性があると判断されると、検案や司法解剖を行い死因や死亡推定時刻を明らかにしていきます。

なお、自宅で亡くなった場合、診察に関連のある病気が死因であると確認できれば、かかりつけ医が死亡診断書を交付することができますが、診察と関連がない病気が死因の場合は「検視」が必要です。病院で死亡した場合でも、診療や治療中の病気以外での死亡や不審な点があれば「検視」の対象となります。

刑事訴訟法第229条
「変死者又は変死の疑いのある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」(e-Gov法令検索)

「検視」が行われる死亡を「変死」「異常死」と言い、病院で亡くなった場合でも、不審な点があれば「変死」扱いとなり「検視」の必要があります。「検視」が必要なケースは次のような場合です。

・老衰で亡くなったが死因がはっきりしない。
・交通事故で亡くなった。
・手術ミスなどの医療事故で亡くなった。
・火事で亡くなった。
・おぼれて亡くなった。
・仕事中の労働災害で亡くなった。
・地震や落雷などの自然災害で亡くなった。
・薬物中毒で亡くなった。
・他殺の疑いがある。 など

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「検死」:法律用語ではない

「検死」は法律用語ではなく、明確な定義がありません。「検視」が表面的な調査であるのに対して、「検死」は「検視」「検案」「解剖」と死因などを明らかにするための一連の調査を指すのが一般的のようです。「検案」「解剖」については後述します。

「検視」が必要な例を前述していますが、同様の案件で「検死」が行われるのが一般的です。「検視」は表面的な調査のため半日程度で終わりますが、「検死」は解剖まで含む場合がありますので、犯罪性がなければ1日~2日程度、犯罪性があれば1か月に及ぶ場合もあります。

「検視」の流れ

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医師が死亡診断書を交付できない場合、人が亡くなれば警察などに連絡をしなければなりません。その場合、事件性があるかどうかにかかわらず「検視」が行われます。まず、死亡場所の状況確認や記録、証拠保全を行った上で、警察署の霊安室に遺体を移動。そこで検察官または警察官によって遺体の表面を調査。ここまでが「検視」ですね。

さらに警察が依頼した医師が死因などを明らかにし、事件性がなければ医師が死体検案書を発行し、遺体は遺族に引き渡されます。事件性の疑いがあれば司法解剖に回されますが、司法解剖は死因や死亡推定時刻、死体の損傷などを明らかにすることで事件全体をつかむのが目的です。

なお、刑事訴訟法第229上記に規定されている通り、死因が分からない変死の疑いがあるときは「検視」を行わなければならないとありますので、「検視」は拒否することができません。

「検案」と「解剖」について

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「検死」で行われる手続きの「検案」と「解剖」について解説をしていきます。

「検案」:死因などを判定

「検案」は、医師による死因や死亡推定時刻(死後経過時間)を医学的に判定することです。死体表面の観察、既往症、死亡時の周りの状況などから明らかにしていきます。監察医制度がある地域であれば監察医が、そうでない地域であれば警察から依頼を受けた医師が「検案」を実施。

「検案」も表面的なものであることから限界がありますので、さらに詳しく調べる必要がある場合は「解剖」することとなります。

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「解剖」:検視・検案以外の方法

「検視」「検案」でも死因や事件性の有無が分からないときに、死体を切開してさらに情報を得るために行うのが「解剖」です。死因を特定するための解剖を法医解剖と言います。法医解剖には次の2種類です。

一つ目が「司法解剖」事件性が疑われる死体の解剖で、報道やドラマなどでよく耳にする解剖はこの司法解剖に当たります。司法解剖は遺族が希望しても、検察や警察が不要と判断すれば行われません。逆に裁判所が発行する「鑑定処分許可書」があれば、遺族の同意なしで司法解剖ができます。

もう一つが「行政解剖」事件性がないと断定された死体の解剖で、死因の究明のために行われる解剖です。監察医が行うと規定されていましたが、2013年施行の「死因・身元調査法」により、監察医がいない地域でも遺族の許諾なしで警察署長が解剖を指示できるようになりました。

「検視」と「検死」の違いは法律用語かどうか

「検視」も「検死」も司法機関によって行われるものですが、その違いは法律用語であるかどうかの違いです。「検視」は刑事訴訟法で規定されている手続きであるのに対して、「検死」は死因究明、事件性の有無の判定のための「検視」「検案」「解剖」という手続き全般を指しています。この「検死」によって亡くなった方の死因だけでなく、事件性があるかどうかなどを総合的に判断していくのです。

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雑学

簡単で分かりやすい「検視」と「検死」の違い!どんなときに実施するの?「検案」や「解剖」も元塾講師が詳しく解説!

「検死」:法律用語ではない

「検死」は法律用語ではなく、明確な定義がありません。「検視」が表面的な調査であるのに対して、「検死」は「検視」「検案」「解剖」と死因などを明らかにするための一連の調査を指すのが一般的のようです。「検案」「解剖」については後述します。

「検視」が必要な例を前述していますが、同様の案件で「検死」が行われるのが一般的です。「検視」は表面的な調査のため半日程度で終わりますが、「検死」は解剖まで含む場合がありますので、犯罪性がなければ1日~2日程度、犯罪性があれば1か月に及ぶ場合もあります。

「検視」の流れ

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医師が死亡診断書を交付できない場合、人が亡くなれば警察などに連絡をしなければなりません。その場合、事件性があるかどうかにかかわらず「検視」が行われます。まず、死亡場所の状況確認や記録、証拠保全を行った上で、警察署の霊安室に遺体を移動。そこで検察官または警察官によって遺体の表面を調査。ここまでが「検視」ですね。

さらに警察が依頼した医師が死因などを明らかにし、事件性がなければ医師が死体検案書を発行し、遺体は遺族に引き渡されます。事件性の疑いがあれば司法解剖に回されますが、司法解剖は死因や死亡推定時刻、死体の損傷などを明らかにすることで事件全体をつかむのが目的です。

なお、刑事訴訟法第229上記に規定されている通り、死因が分からない変死の疑いがあるときは「検視」を行わなければならないとありますので、「検視」は拒否することができません。

「検案」と「解剖」について

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「検死」で行われる手続きの「検案」と「解剖」について解説をしていきます。

「検案」:死因などを判定

「検案」は、医師による死因や死亡推定時刻(死後経過時間)を医学的に判定することです。死体表面の観察、既往症、死亡時の周りの状況などから明らかにしていきます。監察医制度がある地域であれば監察医が、そうでない地域であれば警察から依頼を受けた医師が「検案」を実施。

「検案」も表面的なものであることから限界がありますので、さらに詳しく調べる必要がある場合は「解剖」することとなります。

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