この記事ではサルナシとキウイの違いについてみていきます。キウイには「南国のフルーツ」というイメージがあるよな。日本では「ニュージーランド産」のものが有名です。そんなキウイは、じつは中国原産で「マタタビの仲間」なんです。さらに「キウイの親戚」であるサルナシが、日本に自生しているぞ。今回はそんな「意外と身近な果物」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「マタタビ属の果樹」である、サルナシとキウイの違いについてわかりやすく解説していく。

サルナシとキウイを大まかに比較

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まずはサルナシやキウイの、分類と原産地を紹介していきます。キウイ(キウイフルーツ)というと「南国生まれ」というイメージがありませんか。じつはキウイは「関東以北」でも育つ、「極東生まれのフルーツ」なのです。以下、意外な「キウイのルーツ」からみていきましょう!

キウイは中国生まれ・ニュージーランド育ち

果樹の「キウイ」とは、マタタビ科マタタビ属(Actinidia)の植物のうち一部の種のこと。おもに果肉が緑色の「A.deliciosa」と、果肉が黄色の「A.chinensis」の2種を指します。どちらも雌雄異株の落葉性つる植物で、「マタタビ」同様に猫を酔わせる成分を保有。そして果肉が黄色の種には、「オニマタタビ」という和名が付いています。

そんな「キウイのルーツ」は意外。原産地は「中国の山間部」で、20世紀初頭にニュージーランドに持ち込まれた種子から栽培が始まったのです。1924年に果肉が緑色のA.deliciosaから作出された「グリーンキウイ/ヘイワード種」が初の栽培品種でした。そして果肉が黄色のA.chinensisから「ゴールドキウイ」が作出されたのは1999年。キウイは「歴史の浅いフルーツ」なのです。

サルナシは日本でみられるキウイの仲間

サルナシは日本を含む東アジアの山間部に自生する果樹。マタタビ科マタタビ属に分類される「キウイの親戚」です。サルナシも雌雄異株の落葉性つる植物で、キウイに似た枝葉をもっています。さらに各種キウイとの間に、雑種を残すことも可能です。その果実はキウイと同じく生食に最適。名前通りニホンザルなど哺乳類の大好物なのです。人間が食べても美味なので、「ベビーキウイ」等の呼び名で一部流通しています。

以下この記事では、果物売り場でよく見かける「キウイ」と日本の野山で採れる「サルナシ」の違いについて徹底解説。見た目や栄養、味の違いまで掘り下げていきます。さらに生食以外の食べ方など、「キウイの雑学」についても紹介。この記事を読めば、日々の食卓にキウイを取り入れたくなりますよ。

サルナシとキウイの具体的な違いは4点

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以下サルナシとキウイの「果実」における、具体的な違いを4つ紹介。見分け方はもちろん、味や栄養の違いについても解説していきます。サルナシやキウイが秘める「健康成分」を知れば、日々の食卓に取り入れたくなること間違いなしです。

\次のページで「違い1.実の見た目」を解説!/

違い1.実の見た目

「サルナシ」と「市販のキウイ」は別種の植物。ですので、「果実の見た目」が大きく違います。まず果物売り場で見かけるキウイの果実は「毛が生えた分厚い果皮」に包まれていますよね。対して近縁のサルナシでは「毛のない薄い果皮」が特徴。皮をむかずに、そのまま食べられます。また果皮の色にも違いが。キウイの果皮が褐色であるのに対して、サルナシの果皮は梨に似た「黄緑色」なのです。

さらに「果実の大きさ」もキウイとサルナシとで違います。品種改良を受けてきたキウイと違って、野山に自生するサルナシの果実は小ぶり。長いほうの径で比べるとキウイが6cm、サルナシが3cmほどとなるのです。

違い2.栄養価

じつはサルナシは、キウイよりも栄養豊富。まず抗酸化作用つまり、「老化を抑える成分」を多く含んでいるのです。抗酸化作用と皮膚の再生を助ける効果をもつ「ベータカロテン」は、サルナシでグリーンキウイの3.3倍豊富。抗酸化作用と眼精疲労を抑える効果をもつ「ルテイン」についても、グリーンキウイと比べてサルナシのほうが1.8倍多いのです。

さらに消化を助け、胃もたれや胸焼けを防いでくれる「タンパク質分解酵素」もサルナシのほうが豊富。マタタビ属特有のタンパク質分解酵素「アクチニジン」を、グリーンキウイの1.8倍も含んでいるのです。

違い3.実の味

サルナシは「山で採れる果物」のなかで、最も美味な部類。品種改良を受けた「栽培ものの果物」にも劣らぬ甘さをもっています。具体的には「市販のキウイ」よりも、糖度が2、3度高いのが特徴。さらにクエン酸やキナ酸など酸味成分の含有量がキウイと比べてひかえめなのです。そんなサルナシは「ベビーキウイ」として、アメリカやチリから細々と輸入されています。スーパーでもまれに陳列されているようです。

ただサルナシの食味には、欠点が一つあります。それは多量に食べると「舌がピリピリする」ということ。サルナシでより豊富な「アクチニジン」は、口内を刺激から守る粘膜を分解してしまうのです。

違い4.国内での生産地

サルナシはキウイの生育に適さない「寒冷地」を中心に栽培されています。寒さに強く、山の土でも育つ丈夫な果樹だからです。日本国内でサルナシの出荷量が一番多い地域は福島県。次に香川県、山形県と続きます。じつはサルナシは「地域おこし」の一環で、東北地方を中心に栽培されているのです。

対してキウイの出荷量が一番多いのは愛媛県。次に福岡県、和歌山県と続きます。どの県でもキウイ栽培に適した「温暖・少雨」な気候が特徴的です。この気候条件は「温州みかん」の栽培においても最適。よって「キウイの名産地=みかんの名産地」なのです。

サルナシとキウイについてもっと詳しく

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ここからはサルナシとキウイの、栽培方法や食べ方について掘り下げていきます。じつは強い生命力をもつキウイ・サルナシは、自宅でも簡単に育てられるのです。そして果実には生食以外の食べ方が。以下、キウイやサルナシの「意外な雑学」をみていきましょう!

\次のページで「どちらも簡単に栽培できる」を解説!/

どちらも簡単に栽培できる

サルナシとキウイはどちらも栽培が容易な果樹。害虫を寄せ付けず、プランターや植木鉢でも十分に育ってくれます。ただ「雌雄異株」なので、一本の樹だけでは実らないのが難点です。

果実を楽しみたいなら実を結ぶ「メス木」に加えて、花粉用で品種が異なる「オス木」も必要となります。オス木が1本あれば、メス木6本分の授粉が可能。秋になるとメス木1本あたりで、果実が100個ほど採れますよ。

生食以外の食べ方

サルナシもキウイも、果実は生食に適します。ですが生食以外に、果実酒やジャムなど加工食品にもうってつけなのです。ただどちらも「ゼリー」には不向き。なぜならタンパク質分解酵素「アクチニジン」が動物性タンパク質の「ゼラチン」を分解してしまうためです。サルナシやキウイのゼリーを作りたいなら、食物繊維からなる「寒天」を使いましょう。

じつはサルナシでは、若芽/つるも「山菜」として食べられています。茹でてアク抜きしたサルナシの若芽は、酢味噌和えやバター炒め、汁の実にうってつけ。生のまま天ぷらにしても楽しめます。

サルナシもキウイも東アジア出身のフルーツ

サルナシとキウイはどちらも、マタタビ科マタタビ属のつる植物。ともに東アジア原産で「食べられる果実」をつけます。ただ両者の果実には外見上の違いが。サルナシの果皮は「無毛・黄緑色」ですが、キウイの果皮は「有毛・褐色」なのです。またキウイと比べて、サルナシの果実では甘味が強く、酸味がひかえめ。皮付きのまま食べられて味もよいサルナシは「ベビーキウイ」として、一部流通しています。

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雑学

簡単でわかりやすい!サルナシとキウイの違いとは?大きさ・味・栽培方法も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではサルナシとキウイの違いについてみていきます。キウイには「南国のフルーツ」というイメージがあるよな。日本では「ニュージーランド産」のものが有名です。そんなキウイは、じつは中国原産で「マタタビの仲間」なんです。さらに「キウイの親戚」であるサルナシが、日本に自生しているぞ。今回はそんな「意外と身近な果物」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「マタタビ属の果樹」である、サルナシとキウイの違いについてわかりやすく解説していく。

サルナシとキウイを大まかに比較

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まずはサルナシやキウイの、分類と原産地を紹介していきます。キウイ(キウイフルーツ)というと「南国生まれ」というイメージがありませんか。じつはキウイは「関東以北」でも育つ、「極東生まれのフルーツ」なのです。以下、意外な「キウイのルーツ」からみていきましょう!

キウイは中国生まれ・ニュージーランド育ち

果樹の「キウイ」とは、マタタビ科マタタビ属(Actinidia)の植物のうち一部の種のこと。おもに果肉が緑色の「A.deliciosa」と、果肉が黄色の「A.chinensis」の2種を指します。どちらも雌雄異株の落葉性つる植物で、「マタタビ」同様に猫を酔わせる成分を保有。そして果肉が黄色の種には、「オニマタタビ」という和名が付いています。

そんな「キウイのルーツ」は意外。原産地は「中国の山間部」で、20世紀初頭にニュージーランドに持ち込まれた種子から栽培が始まったのです。1924年に果肉が緑色のA.deliciosaから作出された「グリーンキウイ/ヘイワード種」が初の栽培品種でした。そして果肉が黄色のA.chinensisから「ゴールドキウイ」が作出されたのは1999年。キウイは「歴史の浅いフルーツ」なのです。

サルナシは日本でみられるキウイの仲間

サルナシは日本を含む東アジアの山間部に自生する果樹。マタタビ科マタタビ属に分類される「キウイの親戚」です。サルナシも雌雄異株の落葉性つる植物で、キウイに似た枝葉をもっています。さらに各種キウイとの間に、雑種を残すことも可能です。その果実はキウイと同じく生食に最適。名前通りニホンザルなど哺乳類の大好物なのです。人間が食べても美味なので、「ベビーキウイ」等の呼び名で一部流通しています。

以下この記事では、果物売り場でよく見かける「キウイ」と日本の野山で採れる「サルナシ」の違いについて徹底解説。見た目や栄養、味の違いまで掘り下げていきます。さらに生食以外の食べ方など、「キウイの雑学」についても紹介。この記事を読めば、日々の食卓にキウイを取り入れたくなりますよ。

サルナシとキウイの具体的な違いは4点

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以下サルナシとキウイの「果実」における、具体的な違いを4つ紹介。見分け方はもちろん、味や栄養の違いについても解説していきます。サルナシやキウイが秘める「健康成分」を知れば、日々の食卓に取り入れたくなること間違いなしです。

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