この記事ではと「縁側」と「濡縁」の違いについてみていきます。どちらも和風住宅の中の場所を指ししめす言葉ですが、「濡縁」という言葉の方は、そもそも馴染みがなく、読み方すらわからないという人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

濡縁は「ぬれえん」と読む!

image by iStockphoto

まずはじめに、「濡縁」の読み方について説明しましょう。「濡縁」「ぬれえん」と読みます。昔と比べると最近では和風の住宅も減り、「濡縁」などのない家も多いことからか、耳なじみのない言葉かもしれませんね。ちなみに、表記の仕方については、「濡縁」以外に「濡れ縁」「ぬれ縁」などと書かれることもあります。

縁側と濡縁のざっくりした違い

image by iStockphoto

今度は「縁側」「濡縁」のざっくりした違いについて説明しましょう。「縁側」部屋と庭との間にある、日本建築特有の板張りでできた通路全般を指すのに対して、「濡縁」は「縁側」の中でも、建物からせり出すかたちで作られたもの、つまり建物の外にある縁側のことです。といっても、これだけの説明では理解するのが難しいと思うので、今回はそれをていねいに説明していきたいと思います。

縁側と濡縁の語源を説明

さきほど、「縁側」は日本家屋において、部屋と庭との間にある通路全般のことを指すのに対し、「濡縁」「縁側」の中でも、建物からせり出すかたちで作られたもののことだと説明しましたが、ここからは「縁側」と「濡縁」について、より理解を深めるためにそれぞれの語源について説明したいと思います。

「縁側」は部屋の「ふち」のこと

まずは「縁側」の語源について説明しましょう。「縁側」「縁」は、物の「ふち」や「へり」を意味する漢語(中国由来の日本語のこと)で、平安時代までは、今で言う「縁側」のことを家、あるいは座敷の「ふち」ということで、単に「縁(えん)」と呼んでいました。

やがて室町時代に、物のふちや側面のことを「側(がわ)」と言うようになり、江戸時代になって、この「縁」と「側」が結びついて「縁側」と言うようになったと言います。また、一般的に「縁側」と言うと、雨戸や窓の内側につくられている「くれ縁(くれえん)」とも呼ばれるかたちのものを指すことが多く、国民的アニメ「サザエさん」の磯野家の縁側もこのタイプです。

「濡縁」は濡れる縁側

つづいて「濡縁」について説明したいと思います。「濡縁」とはさきほど説明したとおり、建物からせり出すかたちで作られ、建物の外にある縁側です。ですので、雨が降ったときにはそれを避ける壁などがなく、当然雨に濡れてしまいますよね。そこから、「濡れてしまう縁側」ということで、「濡縁」と呼ぶようになったのです。

\次のページで「テラスやベランダ、バルコニーとの違い」を解説!/

テラスやベランダ、バルコニーとの違い

image by iStockphoto

建物の外に作られたスペースとして、「縁側」「濡縁」は、ときに「テラス」「ベランダ」「バルコニー」などと混同されてしまうことがありますが、その違いについてはご存じでしょうか?

使い分けるポイントとしては、和風か洋風か一階にあるのか二階以上なのか屋根があるのか無いのかという三点が重要です。

まず、和風建築で一階にあるものは「縁側」「濡縁」、二階以上にあって屋根のあるものは「ベランダ」、無いものは「バルコニー」と呼びます。一方、これが洋風建築の場合では、一階だと屋根が付いている、付いていないに関わらず「テラス」と呼びますが、 マンションなどの集合住宅の場合は、屋根がない場合に「テラス」、屋根が付いている場合には「ベランダ」と呼ぶことが多いです。

また、二階以上は、洋風の場合も和風建築と同じように屋根があれば「ベランダ」、無ければ「バルコニー」と呼びます。

【一階にあるもの】
和風建築……縁側濡縁
洋風建築……テラス
集合住宅……ベランダ(屋根あり)、テラス(屋根なし)

【二階以上にあるもの】
和風建築……ベランダ(屋根あり)、バルコニー(屋根なし)
洋風建築……ベランダ(屋根あり)、バルコニー(屋根なし)
集合住宅……ベランダ(屋根あり)、バルコニー(屋根なし)

縁側とは部屋と庭との間の通路で、濡縁は縁側の一種!

今回の説明で、「縁側」とは部屋と庭との間にある、日本建築特有の板張りでできた通路全般のことを指すのに対し、「濡縁」建物の外にある縁側のことだということや、「テラス」「ベランダ」「バルコニー」などとの違いについて知っていただけたかと思います。

また、さきほども言いましたように、単に「縁側」というと、「濡縁」ではなく建物の中に作られているタイプのもののことを指していることが多いということも、ぜひ覚えておいてください。

" /> 簡単でわかりやすい!縁側と濡縁の違いとは?語源やテラス・ベランダとの違いも現役塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!縁側と濡縁の違いとは?語源やテラス・ベランダとの違いも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事ではと「縁側」と「濡縁」の違いについてみていきます。どちらも和風住宅の中の場所を指ししめす言葉ですが、「濡縁」という言葉の方は、そもそも馴染みがなく、読み方すらわからないという人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

濡縁は「ぬれえん」と読む!

image by iStockphoto

まずはじめに、「濡縁」の読み方について説明しましょう。「濡縁」「ぬれえん」と読みます。昔と比べると最近では和風の住宅も減り、「濡縁」などのない家も多いことからか、耳なじみのない言葉かもしれませんね。ちなみに、表記の仕方については、「濡縁」以外に「濡れ縁」「ぬれ縁」などと書かれることもあります。

縁側と濡縁のざっくりした違い

image by iStockphoto

今度は「縁側」「濡縁」のざっくりした違いについて説明しましょう。「縁側」部屋と庭との間にある、日本建築特有の板張りでできた通路全般を指すのに対して、「濡縁」は「縁側」の中でも、建物からせり出すかたちで作られたもの、つまり建物の外にある縁側のことです。といっても、これだけの説明では理解するのが難しいと思うので、今回はそれをていねいに説明していきたいと思います。

縁側と濡縁の語源を説明

さきほど、「縁側」は日本家屋において、部屋と庭との間にある通路全般のことを指すのに対し、「濡縁」「縁側」の中でも、建物からせり出すかたちで作られたもののことだと説明しましたが、ここからは「縁側」と「濡縁」について、より理解を深めるためにそれぞれの語源について説明したいと思います。

「縁側」は部屋の「ふち」のこと

まずは「縁側」の語源について説明しましょう。「縁側」「縁」は、物の「ふち」や「へり」を意味する漢語(中国由来の日本語のこと)で、平安時代までは、今で言う「縁側」のことを家、あるいは座敷の「ふち」ということで、単に「縁(えん)」と呼んでいました。

やがて室町時代に、物のふちや側面のことを「側(がわ)」と言うようになり、江戸時代になって、この「縁」と「側」が結びついて「縁側」と言うようになったと言います。また、一般的に「縁側」と言うと、雨戸や窓の内側につくられている「くれ縁(くれえん)」とも呼ばれるかたちのものを指すことが多く、国民的アニメ「サザエさん」の磯野家の縁側もこのタイプです。

「濡縁」は濡れる縁側

つづいて「濡縁」について説明したいと思います。「濡縁」とはさきほど説明したとおり、建物からせり出すかたちで作られ、建物の外にある縁側です。ですので、雨が降ったときにはそれを避ける壁などがなく、当然雨に濡れてしまいますよね。そこから、「濡れてしまう縁側」ということで、「濡縁」と呼ぶようになったのです。

\次のページで「テラスやベランダ、バルコニーとの違い」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: