この記事では「児童自立支援施設」と「少年院」の違いを見ていきます。「少年院」と聞くと、罪を犯した未成年を処罰する施設と思っている人も多いと思うが、本当にそうなのか。「児童自立支援施設」と「少年院」の違いだけではなく、「少年刑務所」との違いについても元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「児童自立支援施設」と「少年院」の違い

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少年審判というのを聞いたことはありますか。法律上、20歳に満たない者を指す「少年」の非行事実に対して、家庭裁判所が非行事実があったかどうかを確認したうえで処分を下す手続きのことです。

この少年審判において下される処分は「保護処分」「都道府県知事または児童相談所送致」「検察官送致」「試験観察」「不処分」の5つあります。処分の1つである「保護処分」には3つあり、そのうちの2つが「児童自立支援施設」への送致と「少年院」への送致でどちらも身体の収容をともなう処分です。ちなみにもう1つは「保護観察」ですが、これは施設への収容はありません。

ではまず、少年の身体を収容する「児童自立支援施設」と「少年院」の違いを見ていきましょう。

「児童自立支援施設」:自立を支援する施設

「児童自立支援施設」は、児童福祉法44条で定められた施設。18歳未満の少年で不良行為をした場合、そのおそれがある場合、また家庭環境などから生活指導が必要な場合に入所します。比較的年齢が低い中学生以下の児童が入所することが多く、「児童自立支援施設」で生活しながら自立を支援する施設です。

「児童自立支援施設」は開放的な施設で、収容されている少年は容易に出入りができます。施設内の小学校や中学校で勉強したり、クラブ活動をしたり、他の児童と共同作業をしたりする生活です。少年審判の保護処分の一つではあるものの、少年審判を経ず、児童相談所の措置として入所する少年も多くいます。

児童福祉法第44条
「児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。」(e-Gov法令検索)

「児童自立支援施設」に送致されるのは18歳未満となってはいますが、実際には中学卒業時までに退所する少年が多いのが現状です。

「少年院」:矯正教育を施す施設

「少年院」は少年院法第1条で規定されている施設ですが、その目的は刑務所のように刑罰を与えるのではなく、少年の矯正教育を行い更生を目指すことにあります。刑務所のような施設だと勘違いされている人も多いのではないでしょうか。

「児童自立支援施設」と異なり、「少年院」は再非行のおそれが大きい少年が送致されます。刑罰は科されないものの、少年を収容し更生を目的としていますので、自由に外出することもできませんし、学校に通うこともできません。

\次のページで「「少年院」の種類と矯正教育について」を解説!/

少年院法第1条
「この法律は、少年院の適正な管理運営を図るとともに、在院者の人権を尊重しつつ、その特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的とする。」(e-Gov法令検索)

「少年院」に収容される少年の年齢はおおむね12歳から最長で26歳までとされています。おおむね12歳と聞いて驚く人も多いと思いますがどうでしょうか。14歳未満の少年が犯した罪は犯罪になるのかどうか、という点で引っかかっているはずです。ちなみに「おおむね」は2歳ぐらいの差は許容範囲ですので、10歳でも「少年院」に入ることもあります。

次に「少年院」について詳しくみていきましょう。

「少年院」の種類と矯正教育について

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刑法では14歳未満の少年については罰さないこととなっていますが、たとえ14歳未満でも不良行為を行えば、何かしらの処分を受けるものです。罰せられることはなくても自らの行為を反省し更生しなければなりません。

そのような不良行為を審理する場が少年審判。そして少年審判の処分の一つが少年院送致でしたね。しかし、「少年院」と一口に言っても、その種類は5つあります。矯正教育の内容もどのようなものなのか気になりますよね。ここでは「少年院」をさらに詳しくみていきましょう。

「少年院」の種類その1:第1種~第3種・第5種

「少年院」には第1種から第5種の5つがあります。第1種少年院は心身に著しい障害がなく、犯罪傾向が「進んでいない」おおむね12歳以上23歳未満、第2種少年院は心身に著しい障害がなく、犯罪傾向が「進んでいる」おおむね16歳以上23歳未満を対象とした少年院です。第3種少年院は「心身に著しい障害がある」おおむね12歳以上26歳未満が対象で、医療措置や治療的処遇が特徴で、旧法の医療少年院がこれに当たります。

第5種少年院は特定少年(18歳・19歳の犯罪少年)で2年の保護観察処分を受け、かつ保護観察の遵守事項に重大な違反があり、更生を図る必要がある少年を収容する施設です。

なお、少年審判で保護処分を受けた少年が入院するのがこの第1種~第3種・第5種少年院で、更生を目的とした処分ですので、前科はつきません

「少年院」の種類その2:第4種

第4種少年院は少年院で刑の執行を受ける少年を収容する施設です。第1種~第3種少年院との違いは、少年審判による保護処分ではなく、刑事裁判による刑事処分である点。

皆さんもご存じのとおり、少年は罪を犯しても原則として刑事罰に処されることはありませんが、少年審判で検察官送致の処分となると刑事裁判が開かれるケースがあります。裁判で禁固以上となると第4種少年院に収容することになっているのです。

第4種少年院に収容されるのは14歳以上16歳未満の少年で、皆さんが「少年院」と聞いて思い浮かべるのは、おそらくこの第4種少年院でしょう。そして、第4種少年院は矯正教育を目的とした他の少年院とは違い、実刑判決を受けた少年が刑に服すための少年院です。

\次のページで「「少年院」における矯正教育」を解説!/

「少年院」における矯正教育

「少年院」における矯正教育は大きく分けて5つあります。まず「生活指導」。自立した生活のための基本的な知識や生活態度を身につけるための指導です。2つ目が「職業指導」で職業上、役に立つ知識や技術を身につけるための指導が行われます。また、義務教育だけでなく、高校卒業程度認定試験の受験に向けた指導を受ける「教科指導」が3つ目です。

4つ目が「体育指導」で、健康管理や体力の向上を目的とした指導が行われています。最後が「特別活動指導」。社会貢献活動や野外活動、音楽活動などを通して情操を豊かにし、自主性や自律性、協調性を育てる指導です。

「少年刑務所」との違い

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少年審判において検察官送致処分を受けると刑事裁判を受ける場合があります。裁判で実刑判決を受けた少年が14歳以上16歳未満であれば「第4種少年院」へ、16歳以上20歳未満であれば「少年刑務所」へ収容されるのです。

更生のための教育を目的とした「少年院」とは異なり、「少年刑務所」は少年であることは考慮されつつも、通常の刑務所と同じように刑罰として刑務作業に従事しなければなりません。

「児童自立支援施設」と「少年院」の違いは目的

少年審判の保護処分のうちの2つが「児童自立支援施設」送致と「少年院」送致。「児童自立支援施設」は問題を抱えた少年が開放的な施設で生活をしながら自立するための支援を受け、「少年院」では罪を犯した少年や罪を犯す恐れのある少年が更生のための矯正教育を受ける施設で、目的は違いますが、どちらも少年たちの将来のためにある施設だと言っても差し支えないでしょう。

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簡単で分かりやすい「児童自立支援施設」と「少年院」の違い!「少年院」の種類や「少年刑務所」との違いも元塾講師が詳しく解説!

この記事では「児童自立支援施設」と「少年院」の違いを見ていきます。「少年院」と聞くと、罪を犯した未成年を処罰する施設と思っている人も多いと思うが、本当にそうなのか。「児童自立支援施設」と「少年院」の違いだけではなく、「少年刑務所」との違いについても元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「児童自立支援施設」と「少年院」の違い

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少年審判というのを聞いたことはありますか。法律上、20歳に満たない者を指す「少年」の非行事実に対して、家庭裁判所が非行事実があったかどうかを確認したうえで処分を下す手続きのことです。

この少年審判において下される処分は「保護処分」「都道府県知事または児童相談所送致」「検察官送致」「試験観察」「不処分」の5つあります。処分の1つである「保護処分」には3つあり、そのうちの2つが「児童自立支援施設」への送致と「少年院」への送致でどちらも身体の収容をともなう処分です。ちなみにもう1つは「保護観察」ですが、これは施設への収容はありません。

ではまず、少年の身体を収容する「児童自立支援施設」と「少年院」の違いを見ていきましょう。

「児童自立支援施設」:自立を支援する施設

「児童自立支援施設」は、児童福祉法44条で定められた施設。18歳未満の少年で不良行為をした場合、そのおそれがある場合、また家庭環境などから生活指導が必要な場合に入所します。比較的年齢が低い中学生以下の児童が入所することが多く、「児童自立支援施設」で生活しながら自立を支援する施設です。

「児童自立支援施設」は開放的な施設で、収容されている少年は容易に出入りができます。施設内の小学校や中学校で勉強したり、クラブ活動をしたり、他の児童と共同作業をしたりする生活です。少年審判の保護処分の一つではあるものの、少年審判を経ず、児童相談所の措置として入所する少年も多くいます。

児童福祉法第44条
「児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。」(e-Gov法令検索)

「児童自立支援施設」に送致されるのは18歳未満となってはいますが、実際には中学卒業時までに退所する少年が多いのが現状です。

「少年院」:矯正教育を施す施設

「少年院」は少年院法第1条で規定されている施設ですが、その目的は刑務所のように刑罰を与えるのではなく、少年の矯正教育を行い更生を目指すことにあります。刑務所のような施設だと勘違いされている人も多いのではないでしょうか。

「児童自立支援施設」と異なり、「少年院」は再非行のおそれが大きい少年が送致されます。刑罰は科されないものの、少年を収容し更生を目的としていますので、自由に外出することもできませんし、学校に通うこともできません。

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