この記事では食塩と塩化ナトリウムの違いについて掘り下げていきます。全く同じものと思われがちですが、実は食塩には塩化ナトリウム以外のものも含まれている。また、さまざまな種類や製法があるようです。今回は2つの「塩」について、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、食塩と塩化ナトリウムの違いについて詳しく解説していく。

食塩と塩化ナトリウムの違い

素材のうまみを引き出す調味料である食塩塩化ナトリウムそのものだと思われがちですが、実は同一のものではありません。

食塩とは

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食塩は食用に調製された塩です。塩化ナトリウムは主成分であり、ほかにも原料由来のカリウムマグネシウムカルシウムが含まれています。また、湿気で固まるのを防いだり、うまみを加えたりするために、添加物が入ることも。英語でsaltもしくはtable salt

人の生命維持に欠かせない塩はかつて専売制が導入されていましたが、1997年に廃止され、2002年からは販売が完全自由化しました。現在、塩に関する事業は塩事業センターが行っています。

食塩の定義

日本では「食塩」「並塩(なみしお)」「精製塩」の種類があり、まとめて「食塩類」と称しています。塩事業センターおよび日本塩工業会などが定める「食塩」は塩化ナトリウム含有量99%以上のもの、「並塩」は95%以上のものです。また、「精製塩」は塩化ナトリウム含有量99.5 %以上と定められています。

国際的な機関CODEXが定める食用塩の規格は、以下の通りです。

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塩化ナトリウム純度:97%以上(添加物を除く乾物基準)
水銀:0.1mg/kg以下
ヒ素、カドミウム:0.5mg/kg以下
鉛:1mg/kg以下
銅:2mg/kg以下

なお、アメリカでは甲状腺障害予防のためヨウ素添加が義務付けられていますが、日本ではヨウ素が豊富な海藻を普段から摂取しているため、添加物として認められていません。

CODEX(コーデックス委員会)は国際食品規格の策定等を行う政府間機関で、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)によって1963年に設置されました。2018年5月現在、加盟国は188カ国、加盟機関は1(EU)です。

塩化ナトリウムとは

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食塩の主成分である塩化ナトリウムについても解説しましょう。

金属ナトリウムの塩化物で、化学式NaClで表されます。常温、大気圧下で無色透明ないし白色の固体です。強酸の塩酸と強アルカリの水酸化ナトリウムの中和によって得られますが、水溶液は中性を示します。融点800.4 ℃、沸点1413 ℃、分子量58.44で、英語ではsodium chloride

塩化物イオンとナトリウムイオンから成るイオン結晶で、立方体の形をとります。固体は電気を通さない絶縁体ですが、水に溶かすとナトリウムイオンと塩化物イオンに分離し、導電性に。このほか、特定方向に割れやすいへき開性、空気中の水分を取り込んで自ら溶ける潮解性を有します。

ナトリウム量と食塩相当量

かつて食品の栄養成分表示において、塩分は「ナトリウム」と表示されていました。2020年以降は「食塩相当量」と表示することが法律で義務付けられていますが、一部の食品についてはナトリウムの量が表示されていることも。ナトリウムと食塩相当量の換算式は、以下の通りです。

食塩相当量(g)ナトリウム(mg)× 2.54 ÷ 1000
ナトリウム(mg)食塩相当量(g)÷ 2.54 × 1000

日本人の食事摂取基準(2022年版)における塩分目標量は「18歳以上の男性で7.5g未満」「18歳以上の女性で6.5g未満」です。塩分の取り過ぎは、高血圧を始め脳卒中や心臓病、腎臓疾患の原因、胃がんや骨粗しょう症のリスク要因になることが分かっています。

塩の原料と製塩方法

世界の塩の生産量は2020年で約2億8000万トンで、岩塩を原料とした塩が約3分の2、天日塩など海塩を原料とした塩が3分の1です。原料や製塩方法について詳しく解説しましょう。

塩の原料について

岩塩(rock salt, halite)は、大昔の地殻変動で海水が内陸に閉じ込められ、そこに含まれていた塩分が結晶化したものです。岩塩の多くは無色または白ですが、地中で結晶になる過程で鉄やマンガンなどの不純物を取り込んだり、放射線の影響を受けたりすることで、茶色や青、ピンク、紫、黄色などの色がつくことがあります。一方、海塩(sea salt)はその名の通り海水から取り出した塩です。

このほか、ボリビアのウユニ湖など、塩湖が干上がって出来た塩類平原から採る湖塩や、塩を含んだ温泉や地下水から作る井塩(せいえん)、塩分を含んだ海藻や植物を焼いてその灰から採取する灰塩などがあります。

世界の製塩方法

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岩塩が採れる場所はヨーロッパ・北アメリカを始め世界中にあり、掘り出した岩塩をそのまま細かく砕く乾式採掘法のほか、地上から井戸のような細い穴を掘って水や海水を注ぎ、いったん溶かしてからくみ上げて煮詰める溶解採掘法で塩にします。なお、岩塩は日本では採れません

海塩は主に天日採塩法で採取されます。海水を塩田(天日塩田)に引込み、太陽熱と風によって塩を結晶化させるもので、1~2年程かけてゆっくりと水分を蒸発・濃縮していく方法です。天日塩を作る条件として「雨が少ない」「気温が高く湿度が低い」「風が強い」「広くて平らで地盤がしっかりとした土地がある」などがあり、条件に見合うメキシコやオーストラリアが主要な生産国となっています。

日本の製塩方法

日本では主に海水から塩を作ります。海水を塩田に引き込んで2年ほど放置する天日塩のような作り方は、雨の多い日本ではできません。しかし塩分わずか3%の海水を一から煮詰めるのは手間もコストもかかるため、まず海水を濃い塩水(鹹水、かんすい)に濃縮してから、それを煮詰めて塩の結晶を取り出す煎熬(せんごう)採塩法という方法が古くから用いられてきました。

鹹水の作り方をいくつか紹介しましょう。

\次のページで「塩田法:古代から続く製塩法」を解説!/

塩田法:古代から続く製塩法

塩田を使って鹹水を作る方法です揚浜式塩田・入浜式塩田・流下式塩田があります。

揚浜式塩田は中世ごろから始まった手法です。人力でくんだ海水を塩田の砂にまき、太陽熱と風で水分を蒸発させた後、塩のついた砂を海水で洗って鹹水を作ります。江戸時代になると、人力の代わりに潮の干満を利用する入浜式塩田が発達しました。そして戦後、ゆるやかな斜面を流して濃縮した海水を竹の小枝を階段状につるした枝条架に滴下し、より濃い鹹水を作る流下式塩田の仕組みが確立されます。

効率の良い流下式塩田も、1972年に後述のイオン交換膜式に取って代わられましたが、2002年に塩の製造販売が完全自由化されると、過去に行われていた塩田法が日本各地で復刻しました。

イオン交換膜法:電気の力を利用

イオン交換膜を利用する方法ですイオン交換膜は、非常に小さな孔(あな)が開いた厚さ0.1~0.2mmの特殊な膜で、異符号のイオンの通過を阻止し、同符号のイオンのみを通過させる性質を持っています。天候に左右されることなく、純度の高い塩を作ることができる方法です。

まず、陽イオンを通す陽膜陰イオンを通す陰膜を交互に並べてたくさんの部屋を作ります。そこに海水を入れて電気を通すと、濃い塩水の部屋と薄い塩水の部屋がひとつおきにできるので、濃い塩水のみを鹹水とするのです。

海外の大規模塩田で作られた天日塩を使う方法もあります。メキシコなどから輸入した天日塩を日本の海水で溶かし、砂などの不純物を取り除いてきれいな鹹水を作るもので、代表的なものが「伯方の塩」です。

にがりについて

海水から塩を作ると、まず塩化ナトリウムが結晶化します。塩化ナトリウムを取り除いた後に残る液体が、豆腐の原料にもなるにがり(苦汁)です。主な成分は塩化マグネシウムで、そのほか塩化カリウム塩化カルシウム硫酸マグネシウムなどが含まれます。

味は文字通り苦いですが、塩にほどよく残るにがり成分は塩辛さをまろやかにし、複雑なうまみを与えてくれるのです。

食塩の主成分が塩化ナトリウム

食塩は食用に調整された塩で、その主成分が塩化ナトリウムであること、ほかにもさまざまな成分も含まれていることを説明しました。

筆者は学生時分、純度が非常に高い塩化ナトリウム単結晶を研究に使っていました。誤って割ってしまった結晶のかけらをなめたことがあるのですが、ほんの少しの量でも大変塩辛く、とがった味だったことをいまだに覚えています。食塩にほんのわずかしか含まれていない成分が、味に奥行きや深みを出しているのです。

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雑学

簡単にわかる「食塩」と「塩化ナトリウム」の違い!塩の種類やナトリウム量も工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では食塩と塩化ナトリウムの違いについて掘り下げていきます。全く同じものと思われがちですが、実は食塩には塩化ナトリウム以外のものも含まれている。また、さまざまな種類や製法があるようです。今回は2つの「塩」について、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

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工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、食塩と塩化ナトリウムの違いについて詳しく解説していく。

食塩と塩化ナトリウムの違い

素材のうまみを引き出す調味料である食塩塩化ナトリウムそのものだと思われがちですが、実は同一のものではありません。

食塩とは

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食塩は食用に調製された塩です。塩化ナトリウムは主成分であり、ほかにも原料由来のカリウムマグネシウムカルシウムが含まれています。また、湿気で固まるのを防いだり、うまみを加えたりするために、添加物が入ることも。英語でsaltもしくはtable salt

人の生命維持に欠かせない塩はかつて専売制が導入されていましたが、1997年に廃止され、2002年からは販売が完全自由化しました。現在、塩に関する事業は塩事業センターが行っています。

食塩の定義

日本では「食塩」「並塩(なみしお)」「精製塩」の種類があり、まとめて「食塩類」と称しています。塩事業センターおよび日本塩工業会などが定める「食塩」は塩化ナトリウム含有量99%以上のもの、「並塩」は95%以上のものです。また、「精製塩」は塩化ナトリウム含有量99.5 %以上と定められています。

国際的な機関CODEXが定める食用塩の規格は、以下の通りです。

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