今回は安倍川餅ときなこ餅の違いがテーマです。甘いものが好きなら、きっとどちらも一度は食べたことがあるでしょう。しかしよく思い返してみると、どちらも材料はほとんど同じことに気づくはずです。では安倍川餅ときなこ餅の違いは何なのか? 両者はどのような関係にあるのか? 雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に、この疑問について解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

安倍川餅ときなこ餅の特徴・由来

最初に、安倍川餅ときなこ餅の両者の特徴と由来を解説します。安部川餅は静岡県の安部川にちなんだ和菓子で、基本的な材料は餅・きな粉・砂糖です。一方のきなこ餅は安倍川餅から派生して誕生した和菓子で、よって材料も大きな違いはありません。

安倍川餅の特徴・由来

安倍川餅は、静岡県静岡市の安倍川にちなんだ和菓子です。餅にきな粉と砂糖をまぶしたもので、こしあんをからめた餅とワンセットになっている商品が有名ですが、この餅・きな粉・砂糖の組み合わせによって作られたものが基本形だと言えます。

その由来には諸説あり、かの徳川家康が茶屋でこの餅を食べて大変気に入り、安倍川餅と名付けたという説が最も有名です。あるいは、家康がこの菓子を献上されて大変喜んだことからこの名前をつけたともいわれています。

昔から東海道を旅する人々に親しまれており、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも登場。現在も、静岡市内には安倍川餅を販売する店があり、おやつや軽食としてはもちろん、お茶請けにも最適とあって、お土産として観光客の間でも高い人気を誇っています。

きなこ餅の特徴・由来

image by iStockphoto

きなこ餅は、大豆を粉にした「きな粉」を餅にまぶした和菓子です。外見は餅の形によって四角形だったり丸型だったりしますが、できたての餅を使っている場合は、形が定まっていないこともあります。

色合いは、きな粉の味付けによって異なり、砂糖と塩を混ぜたものが加わっている場合は黄色っぽく、あるいは砂糖だけであれば真っ白になったりするでしょう。好みで黒蜜やあんこをかけて食べることもあり、そのバリエーションはさまざま。シンプルなので、これが安倍川餅の原型のように思われがちですが、実は反対で、安倍川餅がきなこ餅の源流だといわれています。

安倍川餅ときなこ餅の違いをざっくり解説

まずは安部川餅ときなこ餅の特徴と由来を見てきました。次に、両者の工程と材料の違いについて解説しますが、そもそも安部川餅ときなこ餅に大きな違いはありません。先述した通り、きなこ餅が安部川餅から派生して生まれたものなのでそれは当然と言えるでしょう。ただ、全く同じものでもありません。双方の微妙な違いについて、以下で確認していきましょう。

\次のページで「違いその1.工程」を解説!/

違いその1.工程

安倍川餅ときなこ餅は、いずれも餅・きな粉・白砂糖の組み合わせで作られます。その意味ではどちらも同じものだと言えるでしょう。

しかし、安倍川餅は「餅にきな粉をまぶして、その上から白砂糖をかける」というのが本来の作り方なのに対し、きな粉餅は「餅にきな粉と白砂糖を混ぜたものをまぶす」という工程で作られます。つまり、きな粉にあらかじめ砂糖を混ぜておくかどうかが違うといえるでしょう。

また現代では、安倍川餅といえば、きな粉をからめた餅と、こしあんをからめた餅の二種類がセットになっている商品として広く知られています。この点も、きな粉餅との大きな違いでしょう。

違いその2.材料

前項で説明した通り、安倍川餅ときなこ餅は、どちらも餅・きな粉・白砂糖を材料として使用しています。この三つの材料をどのような順序で使用するかによって、安倍川餅ときなこ餅の違いが出てくるのです。

ただ、正式には、安倍川餅は柏餅・ういろうなどでよく使われる上新粉によって作られます。上新粉はうるち米を原材料としたもので、これを使うとモチモチとした歯ごたえのある食感になることから、好きな人も多いでしょう。一方のきなこ餅は、餅米を原材料としたお餅を使います。

また、これも前項で述べましたが、現代では安倍川餅といえばこしあんをからめた餅がワンセットになっているイメージが強いです。よって今は、こしあんも安倍川餅に欠かせない材料だと言えるでしょう。

安倍川餅ときなこ餅が有名な地域

ここまでで、安倍川餅ときなこ餅の特徴と由来、そして両者の違いを見てきました。ところで、材料や工程の違いの他にも、安倍川餅ときなこ餅はそれぞれ有名な地域が異なっています。

例えば安部川餅は、先に述べた通り静岡銘菓として有名ですが、きなこ餅はそれ以外の多くの地域で販売されているのが実情です。ただ、特にきなこ餅にはさまざまなバリエーションがあり、地域ごとに独自の名称をもつ銘菓として売り出されているので注意しましょう。

それらは、どれも材料や工程が似通っていながら、安倍川餅ともきなこ餅とも言えない独自色の濃い商品として定着しています。このあたりが、安倍川餅ときなこ餅の境界線が分かりにくくなっている要因のひとつと言えるでしょう。

安倍川餅は静岡

先述した通り、安倍川餅は静岡市の安倍川にちなんだもので、現在も静岡名物として親しまれています。明治初年には安倍川手前の街道沿いに茶店が複数件ありましたが、明治22年の鉄道開通にともない、街道をゆく旅人も激減。茶店を訪れる客も減ってしまい、昔ながらの安倍川餅を扱っているのは、現在では数店舗のみです。

そのうちの一軒である石部屋は最も歴史が古く、今でも古い面影を残した安倍川餅を食べることができます。小豆餡、黄粉の安倍川餅をはじめ、山葵醤油をつけて食べる辛味餅も楽しめるのが特徴です。

\次のページで「きなこ餅は山梨・大阪など」を解説!/

きなこ餅は山梨・大阪など

きなこ餅が有名なのは山梨県や大阪府などです。ただ、ひと口にきなこ餅と言っても、地域ごとに商品名や食べ方が異なっており、さらにインターネットの商品説明などでは安倍川餅と同じものとして説明されていることがあるので注意しましょう。

山梨県のきなこ餅と言えば、後述しますが山梨銘菓として有名な「桔梗信玄餅」です。また大阪では、黒蜜をかけるきなこ餅を思い出す人も多いでしょう。いずれもお土産品としても高い人気を誇っています。

安倍川餅ときなこ餅のバリエーション

前項までで、安倍川餅ときなこ餅が有名である地域をざっくりと説明しました。次はさらに具体的に、安部川餅ときなこ餅のバリエーションとしてどのような商品が販売されているかを見ていきましょう。いずれも有名なものなので、皆さんも食べたことがあるかも知れません。

信玄餅・桔梗信玄餅

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まず、安倍川餅のバリエーションとして、どちらも山梨銘菓である「信玄餅」「桔梗信玄餅」が挙げられるでしょう。

「信玄餅」は、国産もち米粉をベースに砂糖・黒蜜・きなこなどを使っており、山梨でお盆に食べる安倍川餅に由来すると言われています。または、かの武田信玄が非常食として戦に持っていったお餅が由来と言われることもあるようです。

「桔梗信玄餅」も安倍川餅をヒントに生み出された和菓子で、もともと山梨県には古くからお盆の時期に、餅にきな粉と黒蜜をかけた安倍川餅を食べる習慣がありました。桔梗信玄餅は、この安倍川餅を現代風にアレンジし、風呂敷で包んで販売するものです。

筑紫もち・出陣餅・大風呂敷

安倍川餅やきなこ餅と同様に、筑紫餅・出陣餅・大風呂敷も有名です。まず筑紫餅は、福岡県福岡市の銘菓で、筑紫平野のヒヨク米というもち米を練り上げてきな粉をまぶした餅で、黒蜜をかけて食べます。

次に出陣餅は、新潟県上越市の銘菓で、新潟県産のこがね餅を使用したよもぎ餅です。黒豆、青豆、大豆のきな粉をまぶしてあり、黒蜜をかけて食べます。出陣餅は、桔梗信玄餅と同様に、小さな包み紙で包装されているのも大きな特徴です。

また大風呂敷は、鳥取県産餅米と鳥取名産二十世紀梨を使用した和菓子で、鳥取県琴浦町の銘菓として知られています。良質の餅米を使ったやわらかいきな粉餅に、鳥取名産の二十世紀梨で作った特製の梨みつをかけるのが定番の食べ方です。

安倍川餅ときなこ餅の作り方・活用法

ここまでで、安倍川餅ときなこ餅の特徴と違いなどを解説してきました。最後に、両方のレシピをご紹介します。安部川餅もきなこ餅も、本来は上新粉やもち米を材料として作るものですが、家庭で楽しむ分には、出来合いの餅でも十分でしょう。

安倍川餅の作り方

先述の通り、安倍川餅は、本来なら上新粉を主な材料としています。しかし、一般家庭では上新粉から餅を作るのは難しいので、ここでは切り餅を使った簡単なレシピをご紹介しましょう。

材料として、切り餅3個に対してしょうゆ小さじ1、きな粉大さじ2、砂糖大さじ1を用意してください。そして餅は半分に切って熱湯で約3分ゆで、水気を切ってからしょうゆをからめましょう。最後に、餅にきな粉をまぶして、さらに砂糖をまぶしてできあがりです。

分量は目安なので、お好みで調整してください。ちなみに、きな粉と砂糖を先に合わせたものをまぶすと、きなこ餅の工程に近くなります。本来の安倍川餅のレシピに近い作り方を楽しみたいなら、両者は別々にまぶしましょう。

きなこ餅の作り方とアレンジレシピ

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きなこ餅は安倍川餅を原型としているので、材料はほとんど同じです。ここでは、出来合いの餅と電子レンジを使ったレシピをご紹介します。

材料として、丸餅2個に対して、きな粉大さじ2、砂糖大さじ1を用意してください。そして丸餅を耐熱ボウルに入れて、ひたるくらいの水を入れます。ラップはせずに電子レンジで600Wで温め、丸餅が柔らかくなったら取り出してください。温める時間の目安は2分30秒程度です。

この、柔らかくなった丸餅の水気を切っておき、あらかじめきな粉と砂糖を合わせておいたものを振りかけてください。これできなこ餅の完成です。

きなこ餅はシンプルなので、アレンジも難しくありません。例えば信玄餅のように黒蜜をかけてもいいですし、フルーツをトッピングしたり、アイスクリームに添えるのもいいでしょう。

きなこ餅は安倍川餅がもとになって生まれた

安部川餅ときなこ餅は、主な材料が餅・きな粉・砂糖という点が共通しています。それもそのはずで、きなこ餅は安倍川餅がもとになって生まれたというのが定説です。

ただ異なっている点も多く、餅の材料が安倍川餅は上新粉なのに対しきなこ餅はもち米ですし、餅にきな粉と砂糖をまぶす時に最初から混ぜ合わせておくか、別々にまぶすかの違いもあります。また、安倍川餅はこしあんをからめた餅とワンセットになっているイメージが強いです。

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雑学

簡単でわかりやすい!安倍川餅ときなこ餅の違いとは?特徴や由来・作り方も雑学好きライターが詳しく解説

今回は安倍川餅ときなこ餅の違いがテーマです。甘いものが好きなら、きっとどちらも一度は食べたことがあるでしょう。しかしよく思い返してみると、どちらも材料はほとんど同じことに気づくはずです。では安倍川餅ときなこ餅の違いは何なのか? 両者はどのような関係にあるのか? 雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に、この疑問について解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

安倍川餅ときなこ餅の特徴・由来

最初に、安倍川餅ときなこ餅の両者の特徴と由来を解説します。安部川餅は静岡県の安部川にちなんだ和菓子で、基本的な材料は餅・きな粉・砂糖です。一方のきなこ餅は安倍川餅から派生して誕生した和菓子で、よって材料も大きな違いはありません。

安倍川餅の特徴・由来

安倍川餅は、静岡県静岡市の安倍川にちなんだ和菓子です。餅にきな粉と砂糖をまぶしたもので、こしあんをからめた餅とワンセットになっている商品が有名ですが、この餅・きな粉・砂糖の組み合わせによって作られたものが基本形だと言えます。

その由来には諸説あり、かの徳川家康が茶屋でこの餅を食べて大変気に入り、安倍川餅と名付けたという説が最も有名です。あるいは、家康がこの菓子を献上されて大変喜んだことからこの名前をつけたともいわれています。

昔から東海道を旅する人々に親しまれており、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも登場。現在も、静岡市内には安倍川餅を販売する店があり、おやつや軽食としてはもちろん、お茶請けにも最適とあって、お土産として観光客の間でも高い人気を誇っています。

きなこ餅の特徴・由来

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きなこ餅は、大豆を粉にした「きな粉」を餅にまぶした和菓子です。外見は餅の形によって四角形だったり丸型だったりしますが、できたての餅を使っている場合は、形が定まっていないこともあります。

色合いは、きな粉の味付けによって異なり、砂糖と塩を混ぜたものが加わっている場合は黄色っぽく、あるいは砂糖だけであれば真っ白になったりするでしょう。好みで黒蜜やあんこをかけて食べることもあり、そのバリエーションはさまざま。シンプルなので、これが安倍川餅の原型のように思われがちですが、実は反対で、安倍川餅がきなこ餅の源流だといわれています。

安倍川餅ときなこ餅の違いをざっくり解説

まずは安部川餅ときなこ餅の特徴と由来を見てきました。次に、両者の工程と材料の違いについて解説しますが、そもそも安部川餅ときなこ餅に大きな違いはありません。先述した通り、きなこ餅が安部川餅から派生して生まれたものなのでそれは当然と言えるでしょう。ただ、全く同じものでもありません。双方の微妙な違いについて、以下で確認していきましょう。

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