みんなの中で裁判を経験したことがある人はいるかな?まぁ、加害者側であっても被害者側であっても、一生で一度も裁判を経験しないという人の方が多いでしょうな。ただ、裁判に関する報道を見ることは多いでしょう。そんな裁判の報道でよく使われる言葉に「上訴」と「控訴」がある。

この2つは判決の不服申し立てであることは共通しているのですが、それ以外の部分では大きな違いもある言葉なんです。

今回はそんな「上訴」と「控訴」の違いについて、言葉の違いに詳しい院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に言葉の違いについて分かりやすく解説していく。

「上訴」と「控訴」、どちらも裁判結果への不服申し立て

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裁判に関する報道でよく耳にする「上訴」と「控訴」という言葉。どちらも判決に納得がいかない場合に、敗訴した側が上級の裁判所に不服を申し立てる時に使われる言葉です。では、その違いは何なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

「上訴」:判決・決定の不服を上級の裁判所に申し立てること

まずは「上訴」の意味について、辞書を参考にしつつ確認していきましょう。「上訴」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.上の者に訴えること。
2.未確定の裁判について、その判決または決定に対する不服を上級の裁判所に申し立てて、再審理を求めること。また、その手続き。
「最高裁判所にーする」
・控訴・上告・抗告の三種がある。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「じょう-そ【上訴】ジャウー」

辞書によると「上訴」には2つの意味があります。今回「控訴」との意味の違いが問題になるのは2番目の意味です。2番目の意味を簡単に言えば、「判決・決定の不服を上級の裁判所に申し立てること」ですね。

日本の裁判は三審制と呼ばれ、仮に1度目の裁判で負けても、要件を満たせば2回目・3回目のチャンスがあります。たとえば一審の地方裁判所で負けても、その不服を一段階上級の高等裁判所に申し立てることができるのです。そして二審の高等裁判所でも負けてしまった場合は、その不服をさらに一段階上級の最高裁判所に申し立てることができます。このように、判決・決定の不服を一段階上級の裁判所に申し立てることを「上訴」というのです。

この「上訴」には3種類があり、そのうちの一つが、今回意味の混乱が問題になっている「控訴」ですね。

「控訴」:一審判決への不服申し立て!「上訴」の1つ

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次に「控訴」の意味について、辞書を参考にしつつ確認していきましょう。「控訴」は次のような意味が国語辞典に掲載されています

\次のページで「「上訴」と「控訴」の類義語をチェック!」を解説!/

第一審の判決を不服として、上級裁判所に再審査を求めること。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「こう-そ【控訴】」

「控訴」は先ほど説明した通り、3種類ある「上訴」のうちの1つです。「控訴」は「一審の判決が不服な場合に、上級裁判所に再審査を申し立てをすること」という意味になります。刑事裁判の場合は一審が簡易裁判所でも地方裁判所でも、高等裁判所に「控訴」を行いますね。一方の民事裁判の場合は、一審の簡易裁判所の判決に不服がある場合は、二審の地方裁判所か家庭裁判所に「控訴」を行うことになります。

3回チャンスがあるうちの1回目のチャンスで敗北。2回目のチャンスを得るための不服申し立てが「控訴」なのです。

「上訴」と「控訴」の類義語をチェック!

さきほど「上訴」には2つの種類があると解説しましたね。そのうちの1つが「控訴」でした。では残りの2つは何なのでしょうか。ここではそれを解説していきます。残りの2つは「上告(じょうこく)」と「抗告(こうこく)」です。

「上告」:二審判決への不服申し立て

「上告」は「二審の判決が不服な場合に、上級裁判所に再審査を申し立てをすること」という意味です。つまり、民事裁判の場合は二審が地方裁判所や家庭裁判所の場合は高等裁判所に、二審が高等裁判所の場合は最高裁判所に「上告」します。一方の刑事裁判では二審が行われるのは必ず高等裁判所です。よって、刑事裁判の「上告」は最高裁判所への不服申し立てを指します

3回チャンスがあるうちの1回目も2回目も敗北。最後の3回目ののチャンスを得るための不服申し立てが「上告」なのです。

\次のページで「「抗告」:判決ではなく裁判所の命令・決定に対する不服申し立て」を解説!/

「抗告」:判決ではなく裁判所の命令・決定に対する不服申し立て

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「抗告」は「裁判所の決定に対する不服申し立て」という意味の言葉です。「控訴」と「上告」は”判決”に対する上級裁判所への異議申し立てでした。この「抗告」は”命令”や”決定”に対する異議申し立て…というところが違いですね。

たとえば裁判所から一審で、ある会社について「新規事業の受注禁止」という命令が判決とともに下されたとしましょう。この「新規事業の受注禁止」という命令の撤回を、「抗告」によって上のランクの裁判所に申し立てができるのです。なお、「抗告」もできるチャンスは最大で2回までですね。

「上訴」には3種類が!そのうちの1つが「控訴」

今回は「上訴」と「控訴」の違いについて解説しました。判決・決定の不服を上級の裁判所に申し立てることを「上訴」といい、その「上訴」には3つの種類があります。3つの種類のうち、一審の判決が不服な場合に、上級裁判所に再審査を申し立てをすることを表すのが「控訴」なのです。ちなみに二審判決に対する不服申し立ては「上告」、判決ではなく裁判所の”命令”や”決定”に対する不服申し立ては「抗告」…ということも、この記事にて解説しました。

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雑学

簡単に分かる「上訴」と「控訴」の違い!「上告」「抗告」との違いも院卒日本語教師が分かりやすく解説

みんなの中で裁判を経験したことがある人はいるかな?まぁ、加害者側であっても被害者側であっても、一生で一度も裁判を経験しないという人の方が多いでしょうな。ただ、裁判に関する報道を見ることは多いでしょう。そんな裁判の報道でよく使われる言葉に「上訴」と「控訴」がある。

この2つは判決の不服申し立てであることは共通しているのですが、それ以外の部分では大きな違いもある言葉なんです。

今回はそんな「上訴」と「控訴」の違いについて、言葉の違いに詳しい院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に言葉の違いについて分かりやすく解説していく。

「上訴」と「控訴」、どちらも裁判結果への不服申し立て

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裁判に関する報道でよく耳にする「上訴」と「控訴」という言葉。どちらも判決に納得がいかない場合に、敗訴した側が上級の裁判所に不服を申し立てる時に使われる言葉です。では、その違いは何なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

「上訴」:判決・決定の不服を上級の裁判所に申し立てること

まずは「上訴」の意味について、辞書を参考にしつつ確認していきましょう。「上訴」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.上の者に訴えること。
2.未確定の裁判について、その判決または決定に対する不服を上級の裁判所に申し立てて、再審理を求めること。また、その手続き。
「最高裁判所にーする」
・控訴・上告・抗告の三種がある。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「じょう-そ【上訴】ジャウー」

辞書によると「上訴」には2つの意味があります。今回「控訴」との意味の違いが問題になるのは2番目の意味です。2番目の意味を簡単に言えば、「判決・決定の不服を上級の裁判所に申し立てること」ですね。

日本の裁判は三審制と呼ばれ、仮に1度目の裁判で負けても、要件を満たせば2回目・3回目のチャンスがあります。たとえば一審の地方裁判所で負けても、その不服を一段階上級の高等裁判所に申し立てることができるのです。そして二審の高等裁判所でも負けてしまった場合は、その不服をさらに一段階上級の最高裁判所に申し立てることができます。このように、判決・決定の不服を一段階上級の裁判所に申し立てることを「上訴」というのです。

この「上訴」には3種類があり、そのうちの一つが、今回意味の混乱が問題になっている「控訴」ですね。

「控訴」:一審判決への不服申し立て!「上訴」の1つ

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次に「控訴」の意味について、辞書を参考にしつつ確認していきましょう。「控訴」は次のような意味が国語辞典に掲載されています

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