世界史中東の歴史

簡単にわかる「千夜一夜物語」!物語を武器に戦え!暴君に立ち向かった少女の生存戦略を歴史オタクがわかりやすく解説

よぉ、桜木健二だ。「千夜一夜物語」もしくは「アラビアン・ナイト」は聞いたことがあるか?これはアラビアやインド、ギリシャなんかの説話を集めた物語集だ。「アラジンと魔法のランプ」や「アリババと40人の盗賊」など日本でも知られる昔話が入っている。だがしかし、「千夜一夜物語」には、物語の外にもうひとつ面白い物語も付け加えられているんだ。
今回はそんな「千夜一夜物語」と、ついでに舞台となったサーサーン朝ペルシャについて歴史オタクのライターリリー・リリコと一緒にわかりやすく解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/リリー・リリコ

興味本意でとことん調べつくすおばちゃん。座右の銘は「何歳になっても知識欲は現役」。大学の卒業論文は義経をテーマに執筆。大河ドラマや時代ものが好き。日本伝統芸能や文芸、文化に深い興味を持つ。当然、文化には付き物の物語も大好き。今回はアラビア周辺の物語が集められた「千夜一夜物語」についてまとめた。

1.舞台はここ!古代イランの大王朝「サーサーン朝ペルシャ」

image by PIXTA / 66216658

「千夜一夜物語」の舞台となるのは、226年にイランにあったアルサケス朝(パルティア)を倒し、首都クテシフォンに成立した「サーサーン朝(ササン朝)ペルシャ」。領土が最も広がった時代には、奪ったアナトリア半島東部、エジプトの一部、アラビア半島南部イエメン、さらに中央アジアにまで進出した大国家でした。

初代国王アルデシール1世はゾロアスター教の神官家出身であったためゾロアスター教を国教とします。

古代イランで成立!「ゾロアスター教」ってどんな宗教?

サーサーン朝ペルシャが国教とした「ゾロアスター教」は、最高神アフラ・マズダと、その象徴たる火を崇拝する宗教です。火を崇拝することから中国では「拝火教」とも呼ばれました。

基本的にはアフラ・マズダの一神教ですが、アフラ・マズダと対立する悪神アーリマン(アンラ・マユ)が存在します。アフラ・マズダはアーリマンとの争いのために世界や守護神(霊)を創造しました。ちょっと多神教っぽいですね。また、ゾロアスター教には世界の終末(終末論)と「最後の審判」があり、ユダヤ教、キリスト教へと影響を与えたとされています。

創始者は「ゾロアスター(ツァラトゥストラ)」。彼が実在したことは確かなのですが、ゾロアスター教の成立時期が紀元前1200~1000年、あるいは紀元前7世紀ごろとはっきりしないため、ゾロアスター自体が生まれた年代も定かではありません。

サーサーン朝ペルシャの滅亡!イスラム帝国の台頭

6世紀、ホスロー1世のもとで最盛期を迎えたサーサーン朝ペルシャ。しかし、ホスロー1世死後は西側のビザンツ帝国との抗争が続き、さらにホスロー2世が息子に処刑されてからは没落の一途をたどります。決定的なトドメとなったのは、イスラム帝国の台頭でした。

7世紀当時、イスラム教は周辺地域に対して聖戦(ジハード)を行っていました。指導者は二代目カリフのウマル。疲弊し、不安定になっていたサーサーン朝ペルシャはウマル率いるイスラム勢力に敗れて滅亡。以降、イランはイスラム化し、サーサーン朝ペルシャはゾロアスター教を国教とする最後のペルシャ系国家となったのでした。

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ざっとだが、「千夜一夜物語」の舞台となるサーサーン朝ペルシャの歴史をまとめた。イランと言えばイスラム教のイメージが強いが、この当時、イスラム教は興ったばかりで、サーサーン朝ペルシャはゾロアスター教の国だったんだぞ。

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