今回のテーマは糖についてです。

みんなはマルトースを知っているか?化学の教科書に登場する糖類は大まかに単糖・二糖・多糖類に分類される。それぞれどんな特徴を持つ糖なのでしょうか?そしてマルトースはどれに該当するのでしょう?

と、いうわけで糖について解説する。担当は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

ダジャレ好きの化学教師に「グルコースふたつでぐるぐるのマルトース」と教え込まれた化学系科学館職員。暗記物はダジャレで覚えている。

これだけは覚えて!糖類

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糖類とはその名の通り砂糖などのことです。日常で目にする機会が多い糖と言えば以下のものでしょう。

・グルコース(ブドウ糖)
・フルクトース(果糖)
・デンプン
・セルロース

名前を見て知ってはいるけど違いはわからない、という人もいるでしょう。今回は単糖類・二糖類・多糖類に分けて解説していきます。

これ以上分類できない単糖類

単糖類にはグルコース(ブドウ糖)フルクトース(果糖)ガラクトースが分類されます。この後紹介する多糖類・二糖類は、この単糖類が集まってできた糖のことです。そのため、これらを加水分解(水と反応して分解すること)すると単糖類になります。一方、これら単糖類はこれ以上分解することができません。

超重要!グルコース

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Yikrazuul - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, リンクによる

分子式 C6H12O6のグルコース。グルコースは光合成によって作られ果物に含まれています。工業的にはデンプンを加水分解して生成しているのです。

グルコースは日本語で言うところのブドウ糖。ブドウは果物の葡萄が由来です。特に熟したブドウの果実に多く含まれているからブドウ糖と名付けられた、といわれています。実際にグルコースが初めて単離されたのは、レーズンからでした。またブドウ糖と名付けられたのは化学式の形状がブドウの房に似ているから、という説もあります。

人の体とグルコース

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グルコースといえば細胞のエネルギー源。血液にも含まれるため血糖とも呼ばれている糖です。体内でグルコースは連なってグリコーゲンとして存在しています。グリコーゲンは通常筋肉や肝臓に貯蔵されていてグルコースが不足すると分解してエネルギー源、反対に過剰になると脂肪となるのです。グリコーゲンについてはこちらの記事でどうぞ。

\次のページで「グルコースの形状」を解説!/

グルコースの形状

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常温では白色の粉末で、水に溶けやすく甘みがあります。水溶液中ではα-グルコースとβ-グルコースの形で存在しているのです。β-グルコースの方が多く6割以上あります。グルコースについては、以下の特徴をしっかりと覚えておきましょう。

・果物に多く含まれている
・水溶液中では37%がα-グルコース、63%がβ-グルコースとなる
・無職の結晶で、水によく溶け軽い甘みを持つ
・還元性を持つ(鎖状構造の時アルデヒド基があるから)
・フェーリング反応、銀鏡反応を起こす
・アルデヒド基ををもつアルドース

もっとも甘~い!フルクトース(果糖)

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フルクトースはグルコースとは異性体の関係にあり、化学式は同じC6H12O6。フルクトースは最も甘い糖で、果物や蜂蜜に含まれています。

ところで果物は冷やすとその甘みが増しますね。これはフルクトースは構造によって甘さが異なるから。冷やすとβ-フルクトースが増えるのですが、α-フルクトースよりもβ-フルクトースの方が甘いのです。だから果物は食べる前に少し冷やしておくといいのですね。

フルクトースについては以下のポイントを押さえておきましょう。

・無色の結晶で水によく溶ける
・もっとも甘味が強い
・還元性を持つ(鎖状構造の時ケトン基があるから)
・ケトン基を持つケトース
・フェーリング反応、銀鏡反応を起こす
・グルコースの構造異性体

牛乳に含まれるガラクトース

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NEUROtiker - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, リンクによる

ガラクトースは牛乳母乳甜菜(テンサイ)に含まれています。白色の粉末で、化学式はC6H12O6 です。

単糖類の組み合わせ!二糖類

単糖類の組み合わせ!二糖類

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単糖類がわかったところで、次はその組み合わせの二糖類について解説していきます。グリコシド結合によって2つの糖の分子が結合したものが二糖類です。普段おなじみの砂糖、スクロースもこの二糖類になります。二糖類の特徴は「人は直接吸収できないから小腸で酵素によって単糖に分解する」ということです。

\次のページで「砂糖の正体スクロース」を解説!/

砂糖の正体スクロース

砂糖の主成分はスクロースです。甜菜やサトウキビなどから得ることができます。スクロースはグルコースとフルクトースが結合した糖です。体内でスクロースはサッカラーザという酵素によってグルコースとフルクトースに分解されます。

甘味控えめラクトース

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ガラクトースとグルコースが結合したラクトース。化学式で書くとC12H22O11です。哺乳類の母乳に含まれる糖で、母乳や牛乳に5%程度含まれています。ラクトースはラクターゼによって分解されるのです。

ぐるぐるマルトース

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マルトース麦芽糖とも呼ばれる糖です。麦芽糖という名の通り大麦に多く含まれています。甘さは砂糖(スクロース)の1/3ほどです。マルトースはグルコース2つが結合しています。マルトースは体内に入ると小腸から分泌されるマルターゼによってグルコースに分解されるのです。

長く連なった多糖類

多糖類とは、いくつもの単糖類が重合したものです。多糖類には消化できないものも多くあります。たとえばデンプンはとろみ付けなどでおなじみですが、セルロースはできませんね。

台所にある多糖類、デンプン

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(C6H10O5)n で表されるデンプン。植物はグルコースをデンプンの形で保存しています。芋などの多く含まれていますね。デンプンには直鎖状につながったアミロースと、枝分かれしたアミロペクチンがあります。デンプンを食べるとまず唾液のアミラーゼによってマルトースに、そしてマルトースは省庁から分泌されるマルターゼでグルコースに分解されるのです。

デンプンといえばヨウ素デンプン反応がおなじみですね。ジャガイモなどデンプンを置く含むものにヨウ素(うがい薬でOK)をかけると…どうなるか実際にやってみるといいですね。

地球で最も多い炭水化物セルロース

(C6H10O5)n で表されるセルロース。植物の細胞壁などにも含まれ、地球で最も多い炭水化物です。β-グルコース分子がグリコシド結合によっていくつも連なっています。

化学式を見るとデンプンと同じですね。しかしセルロースには水に溶けづらく人体で分解できいとデンプンとは大きな違いがあるのです。セルロースは分解が困難でセルラーゼという酵素で分解します。分解が困難なことからセルロースをどう活用するかが今後のバイオマス活用の鍵となっているのです。

糖の仲間達

糖というと砂糖のイメージが強いですが、単糖類・二糖類・多糖類と様々な種類があります。化学式だけ見ると同じものにも見えますが、立体構造や性質を見ると違う物質であることがわかりますね。まずは単糖類を覚え、次にその組み合わせでどんな二糖類、多糖類になるのかを覚えていきましょう。

" /> マルトースとはどんな糖?単糖・二糖・多糖類の特徴も化学系科学館職員が簡単にわかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

マルトースとはどんな糖?単糖・二糖・多糖類の特徴も化学系科学館職員が簡単にわかりやすく解説!

今回のテーマは糖についてです。

みんなはマルトースを知っているか?化学の教科書に登場する糖類は大まかに単糖・二糖・多糖類に分類される。それぞれどんな特徴を持つ糖なのでしょうか?そしてマルトースはどれに該当するのでしょう?

と、いうわけで糖について解説する。担当は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

ダジャレ好きの化学教師に「グルコースふたつでぐるぐるのマルトース」と教え込まれた化学系科学館職員。暗記物はダジャレで覚えている。

これだけは覚えて!糖類

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糖類とはその名の通り砂糖などのことです。日常で目にする機会が多い糖と言えば以下のものでしょう。

・グルコース(ブドウ糖)
・フルクトース(果糖)
・デンプン
・セルロース

名前を見て知ってはいるけど違いはわからない、という人もいるでしょう。今回は単糖類・二糖類・多糖類に分けて解説していきます。

これ以上分類できない単糖類

単糖類にはグルコース(ブドウ糖)フルクトース(果糖)ガラクトースが分類されます。この後紹介する多糖類・二糖類は、この単糖類が集まってできた糖のことです。そのため、これらを加水分解(水と反応して分解すること)すると単糖類になります。一方、これら単糖類はこれ以上分解することができません。

超重要!グルコース

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Yikrazuul投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, リンクによる

分子式 C6H12O6のグルコース。グルコースは光合成によって作られ果物に含まれています。工業的にはデンプンを加水分解して生成しているのです。

グルコースは日本語で言うところのブドウ糖。ブドウは果物の葡萄が由来です。特に熟したブドウの果実に多く含まれているからブドウ糖と名付けられた、といわれています。実際にグルコースが初めて単離されたのは、レーズンからでした。またブドウ糖と名付けられたのは化学式の形状がブドウの房に似ているから、という説もあります。

人の体とグルコース

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グルコースといえば細胞のエネルギー源。血液にも含まれるため血糖とも呼ばれている糖です。体内でグルコースは連なってグリコーゲンとして存在しています。グリコーゲンは通常筋肉や肝臓に貯蔵されていてグルコースが不足すると分解してエネルギー源、反対に過剰になると脂肪となるのです。グリコーゲンについてはこちらの記事でどうぞ。

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