この記事では合鴨と鴨の違いについてみていきます。合鴨や鴨と聞くと、「鴨肉」を連想するよな。鴨肉は狩猟で採れる肉「ジビエ」の代表格です。狩猟肉のイメージが強い「鴨肉」ですが、市販のものは、飼育された合鴨のもの。野生の鴨と合鴨とでは生態が違うので、異なる味の肉が採れるみたいです。今回はそんな「肉が美味しい鴨」の違いを、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「肉が食用となる水鳥」である、合鴨と鴨の違いについてわかりやすく解説していく。

合鴨と鴨を大まかに比較

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まずは大まかに、「鴨」と呼ばれる鳥について解説していきます。そして鴨の一種である、「合鴨」の出自についても紹介。じつは鴨や合鴨は、愛玩鳥としてお馴染みの「ある水鳥」と関係があるのです。以下「鴨肉」の由来も含めて、みていきましょう!

鴨肉は本来「真鴨」から採れる

「鴨」とはカモ目カモ科の「一部の小型水鳥」のこと。とくに「マガモ属」のカルガモやヒドリガモなどを指す呼称です。このマガモ属に限定しても、北極圏から熱帯まで広く分布。鴨は世界中で見かける、一般的な水鳥なのです。そんな鴨の仲間を特徴づけるのは、丸く平らなくちばしと足指の間についた水かき。日本でも、鴨が河川・湖沼の水面を泳ぐ光景を目にします。

そんな各種「鴨」のうち、マガモ属マガモ(真鴨)では肉が美味。「鴨肉」の大半は、この真鴨に由来するものです。かつては猟師が仕留めた「野生の真鴨」から肉を採っていました。しかしこれでは、肉の生産量が限られてしまいますよね。そこで人類は、何世代にも渡って真鴨を飼育。肉がたくさん採れる「アヒル」へと改良しました。このアヒル、つまり「飼い慣らされた真鴨」が現代の「鴨肉」に関わってきます。

市販の鴨肉は「合鴨」に由来

「野生の真鴨」と「家禽のアヒル」はどちらも、生物学上「マガモ」という同一の種。そんな両者を掛け合わせると、中間の性質をもった「合鴨」が生まれます。合鴨はアヒルの性質を受け継いでいるので容易に飼育可能。じつは現在流通している「鴨肉」の大半は、この合鴨から採れるものなのです。その肉は「真鴨ゆずりの風味」と「アヒルゆずりの脂身」を兼ね備えていて、本来の鴨肉より美味とされています。

以下この記事では「野生の真鴨」と「飼育下の合鴨」の違いを具体的に解説。両者は生物学上同じ「マガモ」ですが、その見た目や生態は大きく異なります。さらに「鴨肉」の栄養や調理法についても紹介。ニワトリと並ぶ家禽について、詳しくみていきましょう!

\次のページで「合鴨と真鴨の具体的な違い」を解説!/

合鴨と真鴨の具体的な違い

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合鴨も真鴨も、生物学上は「マガモ」という同一の種に分類されます。しかし両者の間には、具体的な違いが4つ存在。じつは合鴨は、飼い慣らされたアヒルの性質を強く受け継いでいるのです。以下見た目からお肉の味まで、違いを掘り下げていきましょう!

違い1.見た目

鴨というと、公園の池で見かける「緑色の首と黄色のくちばしをもつ水鳥」のイメージがありますよね。これは繁殖期の「真鴨の雄」です。対して「鴨肉」が採れる合鴨の見た目は、鴨らしくありません。完全に家禽化されたアヒルのように、全身が純白の羽毛に包まれています。じつは日本で流通している合鴨は、ペキンダックの子孫。イギリス産の「チェリバレー種」という品種なのです。

違い2.生態や性質

合鴨と真鴨では、生態が異なります。まずは「野生の真鴨」についてみていきましょう。本来真鴨は「渡り鳥」で、冬になるとロシア東部シベリアから日本に飛来します。海を渡るので、体重にして1kgと軽量で「高い飛行能力」をもつのが特徴です。またいち早く天敵に気づくための「強い警戒心」をあわせもちます。このように真鴨は本来、野生で生き抜く術を身につけているのです。

対して「合鴨」は野生では生きていけません。完全に飼い慣らされたアヒルに由来する性質をもつからです。まずアヒルや合鴨は、脂が乗った肉を大量に生産するよう、改良されています。そのため合鴨では体重が1.5kgから2.5kgほどもあり、飛行能力の大半が失われているのです。よって海を渡ることはありません。さらに警戒心が弱い合鴨は、簡単に人馴れします。野生の真鴨と比べて格段に飼育が容易なのです。

違い3.利用

「野生の真鴨」は世界中で、鴨肉を採るために狩猟されています。真鴨の肉はカルガモやヒドリガモなど他の鴨肉よりも、臭みが少なく美味だからです。日本古来の「鴨肉」も、野生の真鴨由来。江戸時代つまり「肉食文化が根付く前」から真鴨は狩猟され、その肉が食されてきました。鴨南蛮や鴨鍋など「鴨肉を使った和食」は、文明開化以前から続いているのです。

対して飼育下の「合鴨」には、鴨肉を採る以外の用途もあります。人馴れしやすいので、農業や狩猟で使役できるのです。なかでも「合鴨農法」が代表的。これは合鴨を水田に放つことで、農薬を減らしつつ稲の収量を増やす手法です。合鴨はタニシや雑草など稲の天敵を食べてくれたり、栄養豊富な糞尿を水田にもたらしてくれます。またかつて合鴨は、野生の鴨を誘き寄せる「おとり」として、狩猟に利用されていました。

違い4.お肉の味

お肉の味については、「天然物の真鴨」よりも「養殖物の合鴨」のほうが美味です。真鴨の肉では身が痩せており、鴨特有の臭みが強いのが特徴。これは野生個体が品種改良を受けておらず、栄養価の低いエサを食べているためです。

対して合鴨はアヒルの性質を受け継いでいて大柄。穀物など上質なエサを食べて育ちます。よって合鴨の肉には脂が乗っていて、鴨特有の臭みが「個性」と呼べる範囲に抑えられているのです。

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アヒルや合鴨など「鴨肉」の食べ方

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ここからは「真鴨/合鴨/アヒル」の肉つまり、マガモから採れる「鴨肉」について掘り下げていきます。鴨肉は高カロリーなのに健康に良いお肉。各種生活習慣病に効く栄養を豊富に含んでいます。さらに調理が簡単なのです。以下を読んで、鴨肉を日々の食卓に取り入れてみましょう!

鴨肉は栄養豊富、高カロリーだが健康に良い

合鴨やアヒルなど「鴨肉」は、脂肪分を多量に含んでいます。とくに合鴨の肉は100g換算で333kcalと、鶏肉の1.5倍ほど高カロリーです。しかし各種「鴨肉」は、健康志向のお肉。その脂肪分の大半はα-リノレン酸やリノール酸など「不飽和脂肪酸」となっています。よって鴨肉には血中コレステロールを下げ、動脈硬化を予防する働きが期待できるのです。

また鴨肉では、ビタミンAとビタミンB群が豊富。ビタミンAには抗酸化作用があり、動脈硬化・がんの予防作用が期待できます。さらにビタミンB群は、脂質や糖質の代謝を促進。不飽和脂肪酸や各種ビタミンを豊富に含む鴨肉を食べれば、太るどころか健康になれるでしょう。

鴨肉を使った料理を紹介

「鴨料理」というと料亭で出てくるような、敷居が高いものだと思っていませんか?意外にも鴨肉は調理が簡単。世界中で食べられてきたので、和洋問わず幅広い料理に馴染みますよ。

たとえばフライパンで「ローストした鴨肉」に、マーマレードで作った「オレンジソース」を合わせるだけで「本格フレンチ」の一品になります。また日本古来の「鴨そば/鴨南蛮」や「鴨鍋」にもうってつけです。

本来の鴨肉より「合鴨のお肉」のほうが美味

多種多様な鴨のうち、美味しい鴨肉が採れるのは「真鴨/マガモ」です。人類は鴨肉のために真鴨を狩るだけでなく、飼い慣らして「アヒル」としました。このアヒルを野生の真鴨と掛け合わせたのが「合鴨」です。合鴨の肉は「真鴨ゆずりの風味」と「アヒルゆずりの脂身」を兼ね備えていて、真鴨/アヒルの肉より美味。市販の鴨肉の大半は、この「合鴨」のものなのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!合鴨と鴨の違いとは?見た目や味・鴨肉を使った料理も大学で生物を学んだライターが詳しく解説

この記事では合鴨と鴨の違いについてみていきます。合鴨や鴨と聞くと、「鴨肉」を連想するよな。鴨肉は狩猟で採れる肉「ジビエ」の代表格です。狩猟肉のイメージが強い「鴨肉」ですが、市販のものは、飼育された合鴨のもの。野生の鴨と合鴨とでは生態が違うので、異なる味の肉が採れるみたいです。今回はそんな「肉が美味しい鴨」の違いを、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「肉が食用となる水鳥」である、合鴨と鴨の違いについてわかりやすく解説していく。

合鴨と鴨を大まかに比較

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まずは大まかに、「鴨」と呼ばれる鳥について解説していきます。そして鴨の一種である、「合鴨」の出自についても紹介。じつは鴨や合鴨は、愛玩鳥としてお馴染みの「ある水鳥」と関係があるのです。以下「鴨肉」の由来も含めて、みていきましょう!

鴨肉は本来「真鴨」から採れる

「鴨」とはカモ目カモ科の「一部の小型水鳥」のこと。とくに「マガモ属」のカルガモやヒドリガモなどを指す呼称です。このマガモ属に限定しても、北極圏から熱帯まで広く分布。鴨は世界中で見かける、一般的な水鳥なのです。そんな鴨の仲間を特徴づけるのは、丸く平らなくちばしと足指の間についた水かき。日本でも、鴨が河川・湖沼の水面を泳ぐ光景を目にします。

そんな各種「鴨」のうち、マガモ属マガモ(真鴨)では肉が美味。「鴨肉」の大半は、この真鴨に由来するものです。かつては猟師が仕留めた「野生の真鴨」から肉を採っていました。しかしこれでは、肉の生産量が限られてしまいますよね。そこで人類は、何世代にも渡って真鴨を飼育。肉がたくさん採れる「アヒル」へと改良しました。このアヒル、つまり「飼い慣らされた真鴨」が現代の「鴨肉」に関わってきます。

市販の鴨肉は「合鴨」に由来

「野生の真鴨」と「家禽のアヒル」はどちらも、生物学上「マガモ」という同一の種。そんな両者を掛け合わせると、中間の性質をもった「合鴨」が生まれます。合鴨はアヒルの性質を受け継いでいるので容易に飼育可能。じつは現在流通している「鴨肉」の大半は、この合鴨から採れるものなのです。その肉は「真鴨ゆずりの風味」と「アヒルゆずりの脂身」を兼ね備えていて、本来の鴨肉より美味とされています。

以下この記事では「野生の真鴨」と「飼育下の合鴨」の違いを具体的に解説。両者は生物学上同じ「マガモ」ですが、その見た目や生態は大きく異なります。さらに「鴨肉」の栄養や調理法についても紹介。ニワトリと並ぶ家禽について、詳しくみていきましょう!

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