この記事では紫檀と黒檀の違いについてみていきます。2つとも「高級な仏壇に使われる木」というイメージがあるよな。どちらも、中国経由で日本に伝来した「唐木」なんです。ですが両者は、全く別種の樹木。黒檀は「柿の仲間」で、紫檀は「豆の仲間」なんだそう。今回はそんな「唐木」の違いを、材の見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「仏壇に用いられる唐木」である、紫檀と黒檀の違いについてわかりやすく解説していく。

黒檀と紫檀を大まかに比較

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黒檀も紫檀も名前は、「材の色」に木を意味する「檀」を合わせたもの。命名の法則が同じなので、違いが分かりづらいですよね。じつは両者は、全く別の種類の木なのです。以下では、黒檀と紫檀の分類や用途について、軽く触れていきます。「高級仏壇」に用いられる木がどんな植物なのかみていきましょう!

「黒檀」は柿に近縁な銘木

「黒檀」はカキノキ科カキノキ属の樹木のうち、熱帯原産の数種だけを指します。カキノキ属という分類通り、果物が採れる「柿の木」の仲間です。そんな黒檀は「果樹」ではなく、上質な木材が採れる「銘木」のひとつ。黒檀の材は、古くから高価な家具や楽器、仏壇に用いられてきました。英語で「エボニー/Ebony」とも呼ばれ、世界的に価値ある銘木としての地位を確立しています。

マメ科の「紫檀」も銘木

「紫檀」はマメ科マメ亜科ツルサイカチ属のうち、数種の樹木を指す総称。黒檀と同じく熱帯原産の「銘木」で、高価な家具・楽器・仏壇に用いられます。英語では「ローズウッド/Rosewood」と呼称。こちらも世界的に価値が認められています。

以下この記事では、名前が似ている銘木の「紫檀」と「黒檀」の違いを比較。家具や楽器に用いられる「心材」の見分け方などを解説していきます。さらに紫檀/黒檀の「最高級品」や「安価な代替品」についても紹介。この記事を読めば「上質な木材」が見分けられるようになりますよ。

黒檀/紫檀の心材には違いが3つ

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黒檀も紫檀も熱帯原産の樹木。ですので日本で「生きた樹」を目にすることはありません。身近な黒檀/紫檀は「加工済みの幹の部分」で、なかでも幹の中央部「心材」なのです。この心材が「黒檀」または「紫檀」として仏壇や楽器に用いられています。以下では黒檀/紫檀の心材について、具体的な違いを3つみていきましょう!

\次のページで「違い1.心材の色」を解説!/

違い1.心材の色

黒檀と紫檀とでは、幹の中央「心材」の色と質感が違います。まず黒檀の心材は名前通り「黒色」です。上等のものは、黒色が強すぎて木目が見えません。安価なものには、灰色の木目が混じっています。

対して紫檀の心材は、それほど「紫色」ではありません。実際には「ほのかに赤紫を帯びた褐色」をしています。より鮮やかな紫色を知っている現代人にとっては「小豆色」のほうが伝わりやすいでしょう。

違い2.性質

黒檀と紫檀では、心材の物理的/機械的性質が異なります。まず違うのは「気乾比重」こと、材を乾燥させたときの比重です。紫檀は、気乾比重にして1.04。比重1.0の水に沈む重い材です。対して黒檀の気乾比重は最大1.20以上となります。黒檀のほうがより重いのです。

さらに黒檀は紫檀よりも高い耐久性をもっています。乾燥時に割れが生じやすい紫檀に対して、黒檀は乾燥に強く割れません。加えて「虫や菌を寄せ付けない」という強みをもちます。ただ黒檀材はあまりに堅牢。割れてしまうので「釘留め」ができません。黒檀は丈夫であるがゆえに、紫檀よりも加工しづらいのです。

違い3.値段や用途

値段や用途も、黒檀と紫檀とで違います。まず希少かつ加工しづらい黒檀のほうがより高価。バイオリンやチェロなど、格式高い楽器に用いられます。摩耗に強い黒檀は、指板や糸巻きにうってつけなのです。300年以上も前に作られた「ストラディバリウスのバイオリン」が現役で活躍していることからも、黒檀の高い耐久性がうかがい知れます。

黒檀には及ばないものの、紫檀も十分に高価。エレキギターの指板に用いられる材のなかで、最も上等なのです。とくに紫檀の一種「ハカランダ」を用いた指板では、弦の音がよく響きます。なぜなら紫檀材では、木目の詰まり具合が適度なため。対して木目が詰まりすぎている黒檀は、ギターに向きません。このように同じ「弦楽器の指板」でも、求められる性質が異なるのです。

\次のページで「紫檀や黒檀についてもっと詳しく」を解説!/

紫檀や黒檀についてもっと詳しく

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紫檀と黒檀はともに、複数の種をひとまとめにした呼び名。同じ属の異なる種は、すべて一様に「紫檀」または「黒檀」と呼ばれています。しかし「材の質感」は、種ごとに千差万別。そのため紫檀/黒檀は、高価なものから安価なものまで、いくつかの「グレード」に分けられているのです。以下では、両者の大まかなグレードについてみていきましょう!

紫檀のグレードは?

ひとくちに「紫檀」といえど、価格は種によってまちまち。とくにマメ科ツルサイカチ属の3種が、最高級品の「本紫檀」とされています。具体的に「本紫檀」と表記できるのは、インド南部原産「インドローズ」と中米原産「ココボロ」とタイ・ラオス原産「パイオン」だけ。ひときわ油分が多く、「ふつうの紫檀」にはない光沢が本紫檀の特徴です。

ほかのマメ科・ツルサイカチ属の種では、その材が単に「紫檀」と表記されます。例えばタイ原産の「チンチャン」や「カリン」、南米原産の「ハカランダ」が「紫檀」の正体です。さらに本紫檀(インドローズ)をインドネシアで育てた「ソノケリン」も、「ふつうの紫檀」として扱われます。インドローズと比べて流通量が多く、木目の幅が広いため「本紫檀」とならないのです。

「紫檀系」は紫檀に似た木材

マメ科マメ亜科ツルサイカチ属以外の材も、紫檀材に質感が似ていれば「紫檀系」として扱われます。その大半は、マメ科マメ亜科の他属から採れる材。例を挙げると、中南米原産「グラナディロ」やアフリカ原産「パーロッサ」が「紫檀系」として、紫檀の安価な代替品とされています。

さらにアフリカ原産で遠縁の、マメ科ジャケツイバラ亜科「ブビンガ」も「紫檀系」です。ブビンガの樹形は、紫檀と明らかに異なります。幹の直径が3m、樹高が30mにも達するのがその特徴。紫檀系・ブビンガは、幹の直径にして80mの各種紫檀とは比べ物にならないほどの「巨木」なのです。

黒檀のグレードは?

黒檀の価格も、種や産地ごとでまちまち。最高級品の「本黒檀」は、真黒(まぐろ)と縞黒檀の2種です。まず「真黒/Diospyros ebenum」は、インド産「インド黒檀」とスリランカ産「セイロン黒檀」に分かれます。「ふつうの黒檀」と比べて黒みが強く、縞が見えないのが「真黒」の証です。

次に「縞黒檀/Diospyros celebica」では、インドネシア・スラウェシ島産「スラウェシ黒檀」のみが「本黒檀」を名乗れる最高級品。「ふつうの黒檀」は、カリマンタン黒檀やアマラ黒檀など、スラウェシ島以外で採れた「縞黒檀/Diospyros celebica」です。各種「本黒檀」と比べて、黒みが薄いため安価とされています。

同じ「唐木」でも、材質が違う「紫檀と黒檀」

紫檀も黒檀も、上質な材が採れる「銘木」として珍重されています。ともに熱帯原産で、古くから中国を経由して日本に輸入されてきた「唐木」としてもおなじみです。そんな両者では分類が違います。紫檀は豆の仲間で、黒檀は柿の仲間なのです。材質も違っていて、黒檀はより重く堅牢。そのためバイオリンの指板に向くのです。対して紫檀はほどよい密度をもち、ギターの指板に適します。

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雑学

簡単でわかりやすい!紫檀と黒檀の違いとは?木材の見分け方や価値も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では紫檀と黒檀の違いについてみていきます。2つとも「高級な仏壇に使われる木」というイメージがあるよな。どちらも、中国経由で日本に伝来した「唐木」なんです。ですが両者は、全く別種の樹木。黒檀は「柿の仲間」で、紫檀は「豆の仲間」なんだそう。今回はそんな「唐木」の違いを、材の見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「仏壇に用いられる唐木」である、紫檀と黒檀の違いについてわかりやすく解説していく。

黒檀と紫檀を大まかに比較

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黒檀も紫檀も名前は、「材の色」に木を意味する「檀」を合わせたもの。命名の法則が同じなので、違いが分かりづらいですよね。じつは両者は、全く別の種類の木なのです。以下では、黒檀と紫檀の分類や用途について、軽く触れていきます。「高級仏壇」に用いられる木がどんな植物なのかみていきましょう!

「黒檀」は柿に近縁な銘木

「黒檀」はカキノキ科カキノキ属の樹木のうち、熱帯原産の数種だけを指します。カキノキ属という分類通り、果物が採れる「柿の木」の仲間です。そんな黒檀は「果樹」ではなく、上質な木材が採れる「銘木」のひとつ。黒檀の材は、古くから高価な家具や楽器、仏壇に用いられてきました。英語で「エボニー/Ebony」とも呼ばれ、世界的に価値ある銘木としての地位を確立しています。

マメ科の「紫檀」も銘木

「紫檀」はマメ科マメ亜科ツルサイカチ属のうち、数種の樹木を指す総称。黒檀と同じく熱帯原産の「銘木」で、高価な家具・楽器・仏壇に用いられます。英語では「ローズウッド/Rosewood」と呼称。こちらも世界的に価値が認められています。

以下この記事では、名前が似ている銘木の「紫檀」と「黒檀」の違いを比較。家具や楽器に用いられる「心材」の見分け方などを解説していきます。さらに紫檀/黒檀の「最高級品」や「安価な代替品」についても紹介。この記事を読めば「上質な木材」が見分けられるようになりますよ。

黒檀/紫檀の心材には違いが3つ

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黒檀も紫檀も熱帯原産の樹木。ですので日本で「生きた樹」を目にすることはありません。身近な黒檀/紫檀は「加工済みの幹の部分」で、なかでも幹の中央部「心材」なのです。この心材が「黒檀」または「紫檀」として仏壇や楽器に用いられています。以下では黒檀/紫檀の心材について、具体的な違いを3つみていきましょう!

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