この記事では「送別会」と「歓送会」の違いについてみていきます。どちらも社会人になると耳にすることのある言葉で、同じ職場の人が、その職場から離れるときに開かれる会合を意味しますが、どちらも「送」という字が使われているだけに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

送別会と歓送会のざっくりした違い

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はじめに「送別会」と「歓送会」の違いを説明しましょう。「送別会」は、職場から他の部署への異動や転勤、あるいは転職、退職などをする人を送り出す会であるのに対し、「歓送会」同じ会社内での異動で、栄転や出世という場合に行われる会であるという違いがあります。

つまり、「送別会」その人との別れを惜しむ会ですが、「歓送会」は別れを惜しむだけでなく、その人の出世を祝うという意味合いも持っているのです。

送別会と歓送会の漢字を説明

さきほど、「送別会」は単にその職場から離れる人を送る会であるのに対し、「歓送会」は職場から離れる人を見送るだけでなく、その人の出世を祝う意味を含んでいることを説明しましたね。ここからはそれらの違いについての理解を深めるため、「送別会」と「歓送会」にそれぞれ使われている漢字について説明したいと思います。

「送」は両手で物を持って移動する様子

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まずは両方に使われている「送」という字について説明しましょう。「送」は「しんにょう」の漢字ですよね。この「しんにょう」は「移動する」ことなどをあらわす漢字に使われる部首です。

そして「しんにょう」の上にのっているパーツは「両手をそろえて物を押しあげたりしている様子」が元となっていると考えられています。このようなパーツで構成されているので、「送」という字は、物を移動させる「おくる」という意味があるのです。

「別」は刃物で肉をそぎとる様子

次に「送別」の「別」について説明しましょう。右側の「りっとう」は刃物を意味しており、左側の形は「人の骨から肉を削ぎ落した様子」から作られたとされています。ですので、「別」という字は肉を刃物でそぎ取る、つまり骨と肉とを「わける」ところから、やがて「わかれる」などの意味も加わっていったと考えられているのです。

「別」という字は、わたしたちは普段から何気なく使っている字ですが、このように、漢字には調べてみると意外と恐ろしかったり、おどろおどろしい成り立ちのものが少なくありません。

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「歓」は人々がよろこぶ様子

「歓送」の「歓」について説明しましょう。「歓」という字の成り立ちについては、例えば「右側の『欠』は大きく口をあける様子で、左側の形は『カン』という音だけをあらわし、口を大きくあけてさけび喜ぶさまをあわらしている」という説や、「『欠』は祈る様子をあらわし、左側はその儀式における捧げもので、その祈りが成就して喜ぶところから生まれた」という説など、解釈も大きくわかれています。

とはいえ、「歓」という字が「よろこぶ」という意味であることは確かなので、「歓送会」は「送別会」と違って、ただ人との別れを惜しむだけでなく、送る人の出世を祝って「歓ぶ」ニュアンスを含んでいるのです。

「送別」……別れていく人を送り出す。
「歓送」……歓んで人を送り出す。

よろこばしい時に開くのは必ず「歓送会」?

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さきほど「歓送会」は「送別会」と違い、別れを惜しむだけでなく、よろこんで送り出すというニュアンスを含んでいることを説明しました。しかし、よろこばしい時に開かれるのは必ず「歓送会」なのでしょうか?いいえ、答えは違います。

たとえば、結婚を機に退職する寿退社なども一般的にはよろこばしい出来事かと思いますが、そのような時に開かれるのは「送別会」であり、「歓送会」ではありません。「歓送会」あくまでも、同じ会社内での栄転や出世をよろこんで祝うものであるということに注意しましょう。

送別会の別の言い方は何がある?

ここからは、「送別会」という定番の言い方以外に、もっと良い呼び方を探している方も少なくないようなので、違った言い回しをいくつか紹介したいと思います。例えば、会社に長年勤めていた方が定年退職する際などには「慰労会」「お疲れ様会」など、その人をねぎらうフレーズを用いるといいかもしれませんね。

また、転職や寿退職などの場合「おくる会」や「おわかれ会」など、みんなで送り出すニュアンスが伝わりやすいものはいかがでしょうか。いずれにせよ、そういった会の名称については、今回説明している「送別会」と「歓送会」の違いなど一般的な言葉の定義は別として、「こうでなくてはいけない」という厳格なルールはありませんので、送り出す相手と自分たちとの関係を考え、自分たちなりの名前や呼び方をつけてかまいません。

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送別会は別れて送り出し、歓送会は歓んで送り出す!

今回の説明で、「送別会」単に同じ職場の人を送り出す会であることに対し、「歓送会」同じ会社内での栄転や出世による異動のときに行われる会であるという違いがあることをわかっていただけたかと思います。また、さきほども言いましたが、会の名前自体については厳格な名付けのルールなどありませんので、送り出す相手や、その人と自分たちとの関係性などを考慮した上で自由につけてかまいません。

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簡単でわかりやすい!送別会と歓送会の違いとは?漢字の意味や言い換えも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「送別会」と「歓送会」の違いについてみていきます。どちらも社会人になると耳にすることのある言葉で、同じ職場の人が、その職場から離れるときに開かれる会合を意味しますが、どちらも「送」という字が使われているだけに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

送別会と歓送会のざっくりした違い

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はじめに「送別会」と「歓送会」の違いを説明しましょう。「送別会」は、職場から他の部署への異動や転勤、あるいは転職、退職などをする人を送り出す会であるのに対し、「歓送会」同じ会社内での異動で、栄転や出世という場合に行われる会であるという違いがあります。

つまり、「送別会」その人との別れを惜しむ会ですが、「歓送会」は別れを惜しむだけでなく、その人の出世を祝うという意味合いも持っているのです。

送別会と歓送会の漢字を説明

さきほど、「送別会」は単にその職場から離れる人を送る会であるのに対し、「歓送会」は職場から離れる人を見送るだけでなく、その人の出世を祝う意味を含んでいることを説明しましたね。ここからはそれらの違いについての理解を深めるため、「送別会」と「歓送会」にそれぞれ使われている漢字について説明したいと思います。

「送」は両手で物を持って移動する様子

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まずは両方に使われている「送」という字について説明しましょう。「送」は「しんにょう」の漢字ですよね。この「しんにょう」は「移動する」ことなどをあらわす漢字に使われる部首です。

そして「しんにょう」の上にのっているパーツは「両手をそろえて物を押しあげたりしている様子」が元となっていると考えられています。このようなパーツで構成されているので、「送」という字は、物を移動させる「おくる」という意味があるのです。

「別」は刃物で肉をそぎとる様子

次に「送別」の「別」について説明しましょう。右側の「りっとう」は刃物を意味しており、左側の形は「人の骨から肉を削ぎ落した様子」から作られたとされています。ですので、「別」という字は肉を刃物でそぎ取る、つまり骨と肉とを「わける」ところから、やがて「わかれる」などの意味も加わっていったと考えられているのです。

「別」という字は、わたしたちは普段から何気なく使っている字ですが、このように、漢字には調べてみると意外と恐ろしかったり、おどろおどろしい成り立ちのものが少なくありません。

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