この記事では「批評」と「批判」の違いについてみていきます。どちらも、作品や物事に評価をくだすことを意味する言葉ですが、どちらも「批」という字が使われていて意味も似ているだけに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

批評と批判のざっくりした違い

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まずは「批評」と「批判」のおおまかな違いについて説明しましょう。「批評」も「批判」も物事や作品などの良い点や悪い点を見極めて、それを指摘したり、価値判断をしたりすることを言うのですが、「批評」よりも「批判」の方が、その判定や評価をよりハッキリさせるニュアンスが強い言葉になります。

批評と批判の漢字を説明

さきほど、「批評」と「批判」は、どちらも物事や作品などの良い点や悪い点を指摘したり、価値判断をしたりすることを言うものの、「批評」よりも「批判」の方がより強い言葉だという違いを説明しましたが、今度はそれぞれの言葉に対する理解を深めるため、「批評」と「批判」、それぞれに使われている漢字について説明していきたいと思います。

「批」は手で強く打つこと

まずは、「批評」と「批判」の両方に使われている「批」という字について説明しましょう。「批」という字は「手へん」に「比」という字で構成されていますね。「比」というと、我々は第一に「くらべる」というイメージが思い浮かぶかと思いますが、この「比」は「くらべる」意味ではなく、物を強くたたいた時にする音をあらわしているのです。

ですので、強く物をたたく音を意味する「比」と「手へん」を組み合わせた「批」という字は、もともとは「物を強くたたく」という意味でした。よって、「批」訓読み「批つ(うつ)」と読むことができます。そこから、欠点を指摘して「ただす」という意味や、さきほど言ったように「比」が使われていることから「くらべる」イメージがついたのか、「比べて良し悪しを判断する」といった意味も持つようになったようです。

「評」は平等に言い分を聞いて判断すること

次は「批評」の「評」について説明しましょう。「評」という字は「言(ごんべん)」「平」から構成されていますが、その見た目のとおり、両者の「言い分」を、「平等」に聞いて議論したり、善悪を判断したりするところから生まれたとされています。ですので、「評」の字は「ものごとの善悪や良し悪しを判断したり、品定めする」ということを意味するのです。

さきほど説明したように、「批」という字は「比べて良し悪しを判断する」という意味を持ち、「評」という字には「ものごとの善悪や良し悪しを判断したり、品定めする」意味があるので、「批評」という言葉も、単に良いところだけ、あるいは悪いところだけに着目するのではなく、できるだけ公平に良い点、悪い点を見定めて評価することを意味するのでしょう。

\次のページで「「判」は牛を刀で切り分ける様子」を解説!/

「判」は牛を刀で切り分ける様子

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今度は「批判」の「判」について説明しましょう。まず、「判」という字は「半」「刂(りっとう)」で構成されていますね。左側の「半」の上にある二つの点は、「ものを二つに分けること」を意味し、その下の形は「牛」をあらわしています。ですので、「半」という字は牛を二つに、半分に分けるところを字にしたものなのです。


また、右側の「刂」は「刀」をあらわします。そして、「ものごとを刀で二つに切り分ける」ところから転じて、「判」という字は「ものごとをはっきりと区別したり、判断する」という意味を持つようになりました。このように「判」には「はっきりと区別する」というニュアンスがあるので、「批判」という言葉も、「批評」と比べると判定や評価をはっきりさせるニュアンスがより強いのです。

批判と中傷の違いとは?

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ここまでは「批評」と「批判」の違いについて説明してきましたが、ネット上を見てみると、どうやら「批判」については「中傷」との違いもわからないという方もいるようです。そこで、今度は「中傷」という言葉について説明しましょう。

「命中」という単語にも使われるように、「中」という字には「あたる」という意味があります。「中傷」の「中」も、まさにその使い方であり、「中傷」とは「根拠のないことや悪口を中(あて)て傷をつけること」という意味です。ですので、「批判」はあくまで物事や作品などの良い点や悪い点をはっきりと指摘したり、価値判断をしたりすることなのでしっかりとした根拠が必要ですが、「中傷」相手のことを単に悪く言うことで、根拠が一切ないという違いがあります。

批判は批評よりも、よりはっきりと評価すること!

今回、それぞれの漢字の成り立ちや意味から説明したことで、「批評」と「批判」どちらも物事の価値判断をしたりすることを意味するものの、「批評」よりも「批判」の方がよりはっきりさせるニュアンスの強い言葉だということを理解していただけたかと思います。また、「批評」や「批判」をするつもりが、冷静さを忘れて根拠のない「中傷」になってしまわないよう、お気をつけください。

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雑学

簡単でわかりやすい!批評と批判の違いとは?中傷との違いも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「批評」と「批判」の違いについてみていきます。どちらも、作品や物事に評価をくだすことを意味する言葉ですが、どちらも「批」という字が使われていて意味も似ているだけに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

批評と批判のざっくりした違い

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まずは「批評」と「批判」のおおまかな違いについて説明しましょう。「批評」も「批判」も物事や作品などの良い点や悪い点を見極めて、それを指摘したり、価値判断をしたりすることを言うのですが、「批評」よりも「批判」の方が、その判定や評価をよりハッキリさせるニュアンスが強い言葉になります。

批評と批判の漢字を説明

さきほど、「批評」と「批判」は、どちらも物事や作品などの良い点や悪い点を指摘したり、価値判断をしたりすることを言うものの、「批評」よりも「批判」の方がより強い言葉だという違いを説明しましたが、今度はそれぞれの言葉に対する理解を深めるため、「批評」と「批判」、それぞれに使われている漢字について説明していきたいと思います。

「批」は手で強く打つこと

まずは、「批評」と「批判」の両方に使われている「批」という字について説明しましょう。「批」という字は「手へん」に「比」という字で構成されていますね。「比」というと、我々は第一に「くらべる」というイメージが思い浮かぶかと思いますが、この「比」は「くらべる」意味ではなく、物を強くたたいた時にする音をあらわしているのです。

ですので、強く物をたたく音を意味する「比」と「手へん」を組み合わせた「批」という字は、もともとは「物を強くたたく」という意味でした。よって、「批」訓読み「批つ(うつ)」と読むことができます。そこから、欠点を指摘して「ただす」という意味や、さきほど言ったように「比」が使われていることから「くらべる」イメージがついたのか、「比べて良し悪しを判断する」といった意味も持つようになったようです。

「評」は平等に言い分を聞いて判断すること

次は「批評」の「評」について説明しましょう。「評」という字は「言(ごんべん)」「平」から構成されていますが、その見た目のとおり、両者の「言い分」を、「平等」に聞いて議論したり、善悪を判断したりするところから生まれたとされています。ですので、「評」の字は「ものごとの善悪や良し悪しを判断したり、品定めする」ということを意味するのです。

さきほど説明したように、「批」という字は「比べて良し悪しを判断する」という意味を持ち、「評」という字には「ものごとの善悪や良し悪しを判断したり、品定めする」意味があるので、「批評」という言葉も、単に良いところだけ、あるいは悪いところだけに着目するのではなく、できるだけ公平に良い点、悪い点を見定めて評価することを意味するのでしょう。

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