この記事では「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違いについてみていきます。どちらも綿が入った和装の防寒着のイメージですが、家屋の断熱材や暖房の発達で近年着用する人は少ないでしょうな。今の若者は何それ?という状態かもしれない。そこで「はんてん」や「ちゃんちゃんこ」とは何か、また、よく似た「どてら」や「丹前」、「はっぴ」と「はおり」の違いまで、長年綿入れはんてんを愛用していた語学系主婦ライター小島ヨウと一緒に解説していく。

ライター/小島 ヨウ

ドイツ語学科卒、英語劇や市民劇団に所属した語学系おばさんライター。漢字や言葉の使い方に興味あり。わかりやすくをモットーに深ぼり解説する。

「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違い

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イメージは女の子は朱色で男の子は紺色、かすりや格子の柄で綿が入った防寒具。そでがあるものないもの、身頃を合わせる否かで名称が違うのですよ。何が「はんてん」で何が「ちゃんちゃんこ」なのか。ひとつずつ確認していきましょう。

「はんてん」:そであり・かけ襟・腰丈の上着

「はんてん」は漢字で「半纏」または「袢纏」と書きます。江戸時代、庶民が着物の上にはおったもので、そでが五分丈から「半丁(はんてん)」といわれました。脇にマチ部分がなく、表地と裏地の「袷(あわせ)」、えりを折り返さない、腰丈のものです。

あわせに綿が入ったものが「綿入れはんてん」、胸で結ぶ紐がついている場合が多いですね。また、はおるだけ、また腰帯で結ぶ薄手のタイプは商人・大工や植木屋など職人の仕事着としておなじみ。屋号や家紋を白抜きで入れたもので「印半纏(しるしばんてん)」といいます。

「ちゃんちゃんこ」:そでなしの羽織

「ちゃんちゃんこ」はそでがないので、着脱が楽、また家事や作業がしやすい特性があります。名称は、江戸時代、チャンチャンとカネを叩いて飴を売っていた清国人の服装由来のようです。

還暦に赤いちゃんちゃんこを着るのはなぜ?

60歳は還暦といわれますが、そもそも「還暦」とは何でしょう。暦は「子丑寅……」の十二支に「甲乙丙……」の十干を組み合わせた60種で構成されているため、数え年61年目にようやく生まれた年の組み合わせになります。赤は魔よけの色で、昔は赤い産着を使っていたようです。そこから、生まれた年(赤子)に戻る「還暦」に赤いちゃんちゃんこがお祝いのアイテムになりました。

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「どてら」は「丹前」?

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「どてら」も昨今あまりなじみのない防寒具かもしれませんが、冬場の旅館、湯上がりに浴衣などの上にはおるものといえばイメージできますね。綿入れでそでが広く丈長で温かいものです。地方によって呼び名が違いますので、くわしくみていきましょう。

「どてら」「丹前」:綿入れ・広いそでの着物

「どてら」の漢字は難しく「褞袍」や「縕袍」と書き、着物の区分なので前で合わせて帯で結ぶことが出来ます。「どてら」はおもに関東の呼び名で、関西では同じもの、もしくは男性用が「丹前(たんぜん)」です。

「丹前」の言葉の由来は諸説ありますが、江戸時代、丹前風呂(女性がサービスする風呂屋)の風俗、通う客人の伊達姿からといわれています。一方、「どてら」は綿入れ襦袢(じゅばん:着物の下着)の北国の方言「ててら」が変化したものといわれますが、ててら自体の語源は不明です。

「かいまき」:そでのある掛け布団

「かいまき」とは「掻巻」と書き、体にかき巻くことが由来。そでがあり綿入れで丈長、どてら・丹前と掛け布団の中間型、室内で使用されます。着ても眠っても温かい便利な防寒グッズですが、近年使用する家庭が少なくなっているそうです。東北地方、北海道地方では「かいまき」を「丹前」と呼ぶこともあります。

「はっぴ」は「はおり」から生まれた!

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和風の上着といえばお祭などで着用する「法被(はっぴ)」。また「羽織(はおり)」は袴(はかま)とワンセット、晴れの日に男性が着用する和服のイメージですね。カジュアルとフォーマルといった違いではありません。また「はっぴ」と「はんてん」の違いは何でしょうか。さっそくチェックしていきましょう。

「はっぴ」:祭や職人が着用する伝統衣装

「はっぴ」は「法被」「半被」と書き、現在の形は単衣(ひとえ)でえりを折り返さず、幅広のそでで胸紐がないものです。江戸時代は職人の正装でした。それが昭和45年の大阪万博で着用されたのをきっかけに、祭時にはおる習慣となったそうです。語源は平安貴族や武士の正装「束帯」の下着「はんぴ」からといわれています。

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「はおり」:礼儀・防寒・おしゃれのために着物の上にはおるもの

「羽織(はおり)」は短い着物の一種で、えりを外側に折り返し、胸紐があります。武士が戦場での防寒着として甲冑の上からはおった「陣羽織」が発達したものといわれ、江戸時代、袴と組み合わせた「羽織袴」が武士の普段着、町人の礼装となりました。

女性が「はおり」を着用するようになったのは明治時代以降です。コートの類ではないので室内で脱ぐ必要はありませんが、フォーマルの場合は着用しません。

「はっぴ」と「はおり」「はんてん」の違い

江戸時代、武士の普段着「はおり」が、家紋を染め抜いた「はっぴ」として庶民の間に広がりました。しかし、武士と同じものを着るのはけしからんということで「羽織禁止令」が発令。そこで生まれたのが、胸紐をなくしえりを返さない「印半纏」です。これは「はっぴ」ではない「はんてん」だと言い逃れして大流行したため、後に「はっぴ」と「はんてん」の区別があいまいになりました。

日本の文化と伝統衣装を大事にしよう

この記事では「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違いを説明しました。どちらも防寒具で、袖がないもの全般が「ちゃんちゃんこ」ということがわかりましたね。

昔は寒い冬になくてはならなかった綿入れの防寒具ですが、現在、残念ながら和装アイテムの使用機会は限定的です。それでも、なくなることはない日本の伝統衣装、大事に継承していかなくてはなりません。

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雑学

3分でわかる「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違い!「どてら」「はっぴ」「はおり」の違いも語学系主婦ライターがわかりやすく解説

この記事では「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違いについてみていきます。どちらも綿が入った和装の防寒着のイメージですが、家屋の断熱材や暖房の発達で近年着用する人は少ないでしょうな。今の若者は何それ?という状態かもしれない。そこで「はんてん」や「ちゃんちゃんこ」とは何か、また、よく似た「どてら」や「丹前」、「はっぴ」と「はおり」の違いまで、長年綿入れはんてんを愛用していた語学系主婦ライター小島ヨウと一緒に解説していく。

ライター/小島 ヨウ

ドイツ語学科卒、英語劇や市民劇団に所属した語学系おばさんライター。漢字や言葉の使い方に興味あり。わかりやすくをモットーに深ぼり解説する。

「はんてん」と「ちゃんちゃんこ」の違い

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イメージは女の子は朱色で男の子は紺色、かすりや格子の柄で綿が入った防寒具。そでがあるものないもの、身頃を合わせる否かで名称が違うのですよ。何が「はんてん」で何が「ちゃんちゃんこ」なのか。ひとつずつ確認していきましょう。

「はんてん」:そであり・かけ襟・腰丈の上着

「はんてん」は漢字で「半纏」または「袢纏」と書きます。江戸時代、庶民が着物の上にはおったもので、そでが五分丈から「半丁(はんてん)」といわれました。脇にマチ部分がなく、表地と裏地の「袷(あわせ)」、えりを折り返さない、腰丈のものです。

あわせに綿が入ったものが「綿入れはんてん」、胸で結ぶ紐がついている場合が多いですね。また、はおるだけ、また腰帯で結ぶ薄手のタイプは商人・大工や植木屋など職人の仕事着としておなじみ。屋号や家紋を白抜きで入れたもので「印半纏(しるしばんてん)」といいます。

「ちゃんちゃんこ」:そでなしの羽織

「ちゃんちゃんこ」はそでがないので、着脱が楽、また家事や作業がしやすい特性があります。名称は、江戸時代、チャンチャンとカネを叩いて飴を売っていた清国人の服装由来のようです。

還暦に赤いちゃんちゃんこを着るのはなぜ?

60歳は還暦といわれますが、そもそも「還暦」とは何でしょう。暦は「子丑寅……」の十二支に「甲乙丙……」の十干を組み合わせた60種で構成されているため、数え年61年目にようやく生まれた年の組み合わせになります。赤は魔よけの色で、昔は赤い産着を使っていたようです。そこから、生まれた年(赤子)に戻る「還暦」に赤いちゃんちゃんこがお祝いのアイテムになりました。

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