この記事ではターコイズとトルコ石の違いについて掘り下げていきます。結論から言うと両者は全く同じもので、英語名がターコイズ、日本語名がトルコ石というだけですが、その名の由来には諸説あるようです。そのほか、ターコイズの特徴や人工処理などについて、工学系院卒ライターthrough‐timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、ターコイズとトルコ石の違いについて詳しく解説していく。

ターコイズとトルコ石の違い

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「ターコイズブルー」「ターコイズグリーン」と色の名前にもなるほど独特かつ印象的な色が魅力で、12月の誕生石にもなっている宝石ターコイズトルコ石はその別名であり、両者に違いはありませんどちらも「水酸化銅アルミニウムリン酸塩」という鉱物を指しており、英語名がターコイズ、日本語名がトルコ石というだけです

ここからは名称をターコイズに統一し、どのような宝石なのかを解説していきましょう。

ターコイズとトルコ石の名前の由来

ターコイズ(turquoise)の語源は、フランス語で「トルコの石」を意味する「pierre turquoise(ピエール・チュルクワーズ)」です。日本語名のトルコ石もそこから来ています

主要な産地であったペルシア(現在のイラン周辺)で産出したターコイズが、トルコを経由してヨーロッパにもたらされたのがその名の由来です。また、ターコイズがヨーロッパに持ち込まれた当時、ターコイズ鉱山のある地域がトルコ系王朝の支配下にあったからという説もあります。

現在のターコイズ産地は、イランやアメリカ南西部、中国(チベット自治区を含む)などです。なお、トルコでは産出されません。

ターコイズの特徴

微細結晶の集合体であり、不透明な色合いを呈します。化学組成はCuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O。銅採掘の際、副産物として採取されることが多い鉱物です。

青色は銅によるもので、純度の高いものは鮮やかなスカイブルーですが、不純物の鉄の量が増えると徐々に緑がかっていきます。また水分を多く含むため、熱や日光によって脱水すると変色してしまうことも。

パイライト(黄鉄鉱)やマーカサイト(白鉄鉱)などの鉱物や、母岩の一部などがターコイズの内部に入り込んで模様を形成するものを「マトリックス・ターコイズ」といいます。中でも、蜘蛛の巣状の模様を持つものは「スパイダーウェブ・ターコイズ」と呼ばれ、特にアメリカで人気です。

母岩(マトリックス、Matrix)は、特定の鉱物や化石などを含んでいる岩石のことです。

ターコイズとラピスラズリとの違い

ターコイズと同じく12月の誕生石(日本のみ)で、不透明かつ鮮やかな青を呈する半貴石に、ラピスラズリ(lapis lazuli)があります。

ターコイズと異なり、ラピスラズリは単一の鉱物ではありません。方ソーダ石グループに属する4種類の鉱物が混じったもので主な成分はラズライト(青金石、(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2)です。また、金色の細かい粒状のパイライトや、白い筋状のカルサイト(方解石)を内包することもあります。

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ターコイズの歴史

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ターコイズは多くの古代文明で愛された宝石ですイラクで発見された紀元前5000年前ごろのターコイズのビーズは、古代メソポタミア文明のもので、人類によって採掘・加工された最古の宝石の1つとされています

ターコイズの産地である古代ペルシアでは国家の石とされ、装飾品のみならず、武器や道具、重要な建物の内や外を飾るために使われました。エジプトでも多用され、ツタンカーメン王の墓所からは、ターコイズやラピスラズリで飾られた副葬品が多数発見されています。そのほかの文明においても、装飾品のほかお守りのような使い方をしていたようです。

ターコイズの人工処理

ターコイズは比較的硬度が低く、傷つきやすい宝石です。その上、微細結晶の間にすき間がある多孔質物質であるため、汚れや人の皮脂などを吸着してしまう欠点がありますが、これを逆に生かし、樹脂や水ガラスなどを含侵して耐久性をあげる処理や、人工的な着色が一般的に行われています現在市場に出回っているターコイズは、高品質な一部を除きほとんどが人工処理されたものです

21世紀に入ってからは、細かく砕いたターコイズを樹脂などで固めて着色し再構築した「コンポジット・ターコイズ」なるものも登場しています。

市販の宝石の大部分が、その美しさを引き出すために何らかの人工処理がなされていますが、ターコイズはその最たるものといっていいでしょう。

ターコイズによく似た鉱物

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近年は良質なターコイズの産出が少なくなり、ターコイズによく似た鉱物や人工処理して似せたものが、ターコイズの名で売られていることが多くなっています。そのうちのいくつかを紹介しましょう。

カルコシデライト、ファウスタイト:ターコイズの仲間

カルコシデライト(チャルコシデライト、鉄トルコ石)は、ターコイズのアルミニウム成分が鉄に置き換わったもので、化学組成はCuFe6(PO4)4(OH)8・4H2Oです。ロイヤルウェブと呼ばれる、黒く細かい蜘蛛の巣模様が特徴のカルコシデライトを、鉱山の名前をとってニューランダーターコイズと呼ぶことも。

鉄とアルミニウム両方を含むカルコシデライトもあり、この場合は見た目だけでなく化学的にもターコイズと区別するのが容易ではありません。

美しい緑色を呈するファウスタイト(ファウスト石)は、ターコイズの銅成分が亜鉛に置き換わったもので、化学組成はZnAl6(PO4)4(OH)8・4H2Oです。ファウスタイトも亜鉛と銅両方を含むものがあり、ターコイズとの判別がしづらくなっています。

バリサイト:緑のターコイズ?

バリサイト(バリシア石、バリッシャー石)は、柔らかな緑色が特徴の半貴石です。ターコイズから銅を抜いたような化学組成(AlPO4・2H2O)で、不純物のクロムにより緑に発色します。

アメリカで産出されることが多い鉱物で、特にネバダ産のものは蜘蛛の巣模様が入っていることから、緑系のターコイズと混同されることが少なくありません。ターコイズかバリサイトか判別がつかない石は、かつてバリコイズ(variquoise=turquoise+variscite)と呼ばれていました。

ターコイズより希少で入手が難しい鉱物ですが、一般的には知られていないため、比較的安価です。ただし近年、その優しく美しいアップルグリーンに注目が集まっています。

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ハウライト:白いターコイズ?

ハウライト(ハウ石)もまた、ターコイズによく似た蜘蛛の巣模様を持っています。化学組成はCa2B5SiO9(OH)5です。基本的な色は白ですが、ターコイズ同様多孔質で人工着色がしやすく、ターコイズブルーで着色するとターコイズそっくりになります。硬度が低いためターコイズとの判別は可能なものの、耐久性を上げる処理がされていると困難なことも。

未着色のものが「ホワイト・ターコイズ」の名で売られていることがありますが、現在はハウライト自体が希少になっており、実際は後述のマグネサイトであることがほとんどです。

マグネサイト:代用品の代用品

現在市場に出回っているハウライトの大部分が、より安価で産出量の多いマグネサイト(菱苦土石、りょうくどせき)です。化学組成もMgCO3とハウライトとは全く異なりますが、見た目が酷似しているため、本来の鉱物名とは異なる名で浸透してしまったと考えられます。天然の炭酸マグネシウムであり、工業原料として用いられることの多い鉱物です。

マグネサイトもまた多孔質で加工がしやすく、ターコイズのほかラピスラズリの代用品としても使われています。

ターコイズとトルコ石は全く同じだが、似て非なる石はたくさん!

ターコイズとトルコ石は英語名か日本語名かという違いだけで全く同じであることのほか、ターコイズの名前の由来や、似た鉱物について解説しました。ターコイズは模造品のみならず本物も人工処理されていることがほとんどで、見分けは容易ではありません。本物のターコイズを手に入れたいという人は、信頼のおける店から購入するのが賢明でしょう。

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3分で簡単にわかるターコイズとトルコ石の違い!名前の由来やラピスラズリとの違いについて工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事ではターコイズとトルコ石の違いについて掘り下げていきます。結論から言うと両者は全く同じもので、英語名がターコイズ、日本語名がトルコ石というだけですが、その名の由来には諸説あるようです。そのほか、ターコイズの特徴や人工処理などについて、工学系院卒ライターthrough‐timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代の経験と知識を生かし、ターコイズとトルコ石の違いについて詳しく解説していく。

ターコイズとトルコ石の違い

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「ターコイズブルー」「ターコイズグリーン」と色の名前にもなるほど独特かつ印象的な色が魅力で、12月の誕生石にもなっている宝石ターコイズトルコ石はその別名であり、両者に違いはありませんどちらも「水酸化銅アルミニウムリン酸塩」という鉱物を指しており、英語名がターコイズ、日本語名がトルコ石というだけです

ここからは名称をターコイズに統一し、どのような宝石なのかを解説していきましょう。

ターコイズとトルコ石の名前の由来

ターコイズ(turquoise)の語源は、フランス語で「トルコの石」を意味する「pierre turquoise(ピエール・チュルクワーズ)」です。日本語名のトルコ石もそこから来ています

主要な産地であったペルシア(現在のイラン周辺)で産出したターコイズが、トルコを経由してヨーロッパにもたらされたのがその名の由来です。また、ターコイズがヨーロッパに持ち込まれた当時、ターコイズ鉱山のある地域がトルコ系王朝の支配下にあったからという説もあります。

現在のターコイズ産地は、イランやアメリカ南西部、中国(チベット自治区を含む)などです。なお、トルコでは産出されません。

ターコイズの特徴

微細結晶の集合体であり、不透明な色合いを呈します。化学組成はCuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O。銅採掘の際、副産物として採取されることが多い鉱物です。

青色は銅によるもので、純度の高いものは鮮やかなスカイブルーですが、不純物の鉄の量が増えると徐々に緑がかっていきます。また水分を多く含むため、熱や日光によって脱水すると変色してしまうことも。

パイライト(黄鉄鉱)やマーカサイト(白鉄鉱)などの鉱物や、母岩の一部などがターコイズの内部に入り込んで模様を形成するものを「マトリックス・ターコイズ」といいます。中でも、蜘蛛の巣状の模様を持つものは「スパイダーウェブ・ターコイズ」と呼ばれ、特にアメリカで人気です。

母岩(マトリックス、Matrix)は、特定の鉱物や化石などを含んでいる岩石のことです。

ターコイズとラピスラズリとの違い

ターコイズと同じく12月の誕生石(日本のみ)で、不透明かつ鮮やかな青を呈する半貴石に、ラピスラズリ(lapis lazuli)があります。

ターコイズと異なり、ラピスラズリは単一の鉱物ではありません。方ソーダ石グループに属する4種類の鉱物が混じったもので主な成分はラズライト(青金石、(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2)です。また、金色の細かい粒状のパイライトや、白い筋状のカルサイト(方解石)を内包することもあります。

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