この記事ではオキアミとエビの違いについてみていきます。オキアミは「磯釣りに使うエサ」というイメージがあるよな。その見た目においては、長い尾が特徴的で、エビに似ている。そんなオキアミは、エビと全く別の生き物なんです。今回はそんな「小さな甲殻類」の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では、ともに「長い尾をもつ甲殻類」である、オキアミとエビの違いについてわかりやすく解説していく。

オキアミとエビの分類を比較

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オキアミとエビはともに、「大きな頭の殻」と「長い尾」をもつ甲殻類。シルエットが酷似しています。しかし分類上は全くの別物で、「エビとオキアミ」よりも「エビとカニ」のほうが近い間柄なのです。まずは似て非なる、オキアミとエビの分類についてみていきましょう!

エビは「十脚目」でヤドカリやカニの仲間

エビ・カニ・ヤドカリはすべて、合計5対10本の脚をもつ甲殻類。ホンエビ上目十脚目(エビ目)に分類されます。この「エビ目」の中で、カニ・ヤドカリ以外を「エビ」と総称。そのすべてが「大きな頭の殻」と「長い尾」をもちます。とはいえ「エビ」の分類はアバウト。イセエビやクルマエビ、ザリガニなど見た目も生態も違うものを、ひとまとめに「エビ」と呼んでいるのです。

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オキアミは「オキアミ目」という独自グループ

「大きな頭の殻」と「長い尾」をもつオキアミは一見、一部のエビに似ています。しかし「オキアミ」と総称されるのは、ホンエビ上目オキアミ目の甲殻類。ホンエビ上目十脚目のエビとは別物なのです。そんなオキアミは「動物性プランクトン」の一種としても知られています。シロナガスクジラからイワシまで、オキアミを捕食する生き物は数知れず。海の生態系を支えているのは、彼らオキアミなのです。

以下この記事では、似て非なる甲殻類である十脚目「エビ」とオキアミ目「オキアミ」の、具体的な違いを3つ紹介。釣り人以外にはなじみの薄い、「オキアミの雑学」についても掘り下げていきます。世界最大の哺乳類・シロナガスクジラの主食である、オキアミの栄養についてもみていきましょう!

オキアミがエビと違う点は3つ

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単に「分類が違う」といわれただけでは釈然としませんよね。じつはオキアミとエビの間には、具体的な違いが3つ存在。両者は見た目から生き様まで全くの別物なのです。まずはその見分け方からみていきましょう!

違い1.見た目

「オキアミ」をエビと見分けるうえで、注目したいのは「頭の殻」こと頭胸部の外骨格。オキアミでは頭の殻がエビほど発達していません。ですので頭の殻の付け根から、胸脚と一緒に「羽毛状のエラ」が露出。さらに小さなプランクトンを濾過して食べるため、胸脚にも毛が生えているのです。以上よりオキアミの頭の殻は、エビにない「羽毛」が飛び出した見た目をしています。

違い2.住んでいる場所

「オキアミ」はその名の通り「沖合」、つまり海のなかでも大陸棚の外側に住んでいます。より詳しく説明すると沖合の至る所、表層から深層まで、広く分布しているのです。対してほとんどの「エビ」が生息しているのは「浅瀬」から「淡水」まで、つまり大陸棚の内側になります。

違い3.生態

活発に泳ぎまわるエビの成体と違って、「オキアミの成体」はただ水中に浮遊するだけ。水流に逆らえるほどの遊泳能力をもたないため、「プランクトン」に分類されています。そんなオキアミには、餌を捕まえる能力もありません。エビのような「はさみ脚」をもたないからです。代わり先述の「毛の生えた胸脚」を使い、小さなプランクトンだけを濾しとって食べています。

以上の通りオキアミは貧弱な生き物。なのですが、地球上で最も繁栄している生き物でもあります。たとえば南極海に生息する「ナンキョクオキアミ」で推定されている総重量(バイオマス)は、最大で4億2,000万トンほど。この一種だけで、人類の総重量(4億トン)と並ぶ値なのです。この物量の多さによって、オキアミを食べる「シロナガスクジラ」や「コウテイペンギン」の命を繋いでいます。

オキアミについてもっと詳しく

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エビと違って「オキアミ」は、食卓で見かけませんよね。多くの人にとって「釣りのエサ」という印象のほうが強いはずです。これは一体、なぜなのでしょうか。以下ではオキアミが釣りに用いられるようになった経緯と、食用にならない理由について解説していきます。

オキアミは「釣りエサ」の代表格

オキアミは各種「磯釣り」で用いられるエサの代表格。釣り用品店では大きさの異なる2種が、販売されています。まず釣りバリに刺す「付けエサ」となるのは、ナンキョクオキアミです。体長6cmほどと大型で、マダイやクロダイを釣るときに活躍します。そして魚を集める「撒きエサ」となるのは、ツノナシオキアミ。体長3cmほどと針には刺せませんが、アジやサバを狙う「サビキ釣り」で活躍します。

じつは各種オキアミは、歴史の浅い「釣りエサ」です。オキアミが利用されるようになったのは1970年代以降。クロダイ釣りやサビキ釣りで高い集魚力を発揮する「撒きエサ」として、一躍人気となりました。そのため一部では。「エサの革命児」とも称されています。

じつは栄養豊富なオキアミ

オキアミはタンパク質を中心に、ミネラルやビタミンなど、さまざまな栄養を含んでいます。なかでも骨の材料「カルシウム」と、血液の材料「銅&ビタミンB12」が豊富です。

このように健康に良いオキアミですが、なぜか食卓では見かけませんよね。じつはオキアミでは、水揚げ後から急速に鮮度が低下していきます。そのため魚肉ソーセージや塩辛など「加工食品の材料」として、人知れず活躍しているのです。

食用オキアミといえば、サプリメントに入っている「クリルオイル」でしょう。これはナンキョクオキアミから取れる油分で、オメガ3系脂肪酸のDHAとEPAとを豊富に含んでいます。2つとも脳を若返らせたり、血液をサラサラにしたりする油の仲間。「食べると頭が良くなる」魚の成分として有名ですよね。じつはクリルオイルのDHA/EPAは、魚由来のものよりも人体に吸収されやすいことが分かっています。

オキアミは海の生態系を支える「浮遊生物」

オキアミもエビも「長い尾」をもつ甲殻類で、しばしば混同されます。しかし両者は分類や見た目、生き様が違う別物。「オキアミ」はエビ・カニ・ヤドカリからなる「十脚目」に入りません。じつは「オキアミ目」という独自のグループに分類されているのです。そんなオキアミは「露出した羽毛状のエラ」をもっていて、成長しても「プランクトン」であるという点でエビと違います。

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雑学

簡単でわかりやすい!オキアミとエビの違いとは?見分け方から釣りエサの雑学まで生物系ライターが詳しく解説

この記事ではオキアミとエビの違いについてみていきます。オキアミは「磯釣りに使うエサ」というイメージがあるよな。その見た目においては、長い尾が特徴的で、エビに似ている。そんなオキアミは、エビと全く別の生き物なんです。今回はそんな「小さな甲殻類」の違いを、見分け方も含めて、大学で生物を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では、ともに「長い尾をもつ甲殻類」である、オキアミとエビの違いについてわかりやすく解説していく。

オキアミとエビの分類を比較

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オキアミとエビはともに、「大きな頭の殻」と「長い尾」をもつ甲殻類。シルエットが酷似しています。しかし分類上は全くの別物で、「エビとオキアミ」よりも「エビとカニ」のほうが近い間柄なのです。まずは似て非なる、オキアミとエビの分類についてみていきましょう!

エビは「十脚目」でヤドカリやカニの仲間

エビ・カニ・ヤドカリはすべて、合計5対10本の脚をもつ甲殻類。ホンエビ上目十脚目(エビ目)に分類されます。この「エビ目」の中で、カニ・ヤドカリ以外を「エビ」と総称。そのすべてが「大きな頭の殻」と「長い尾」をもちます。とはいえ「エビ」の分類はアバウト。イセエビやクルマエビ、ザリガニなど見た目も生態も違うものを、ひとまとめに「エビ」と呼んでいるのです。

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