この記事では「法衣」と「袈裟」の違いを見ていきます。お寺に行ったときや葬儀・法要などの仏事でお坊さんが着ている服を見たことがあるでしょう。お坊さんによっては着ている服の色が違っていることに気付かなかったか?読み方だけでなく、色に違いが何を表しているのかなどを元塾講師のyêuthuquáと一緒に詳しく解説していきます。

ライター/yêuthuquá

海外在住。現在の仕事を始める前は教育関係の仕事に従事。国内外を問わず身につけた知識や経験をもとにわかりやすくお届けする。

「法衣」と「袈裟」の違い

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まずはそれぞれの読み方を確認しましょう。「法衣」は「ほうえ」または「ほうい」、「袈裟」は「けさ」と読みます。では、「法衣」と「袈裟」にはどのような違いがあるか見てきましょう。

「法衣」:僧侶・尼の衣服

「法衣」は僧侶や尼が着用する衣服のことをいいます。「法衣」は元々、戒律で定められた僧伽梨衣(そうぎゃり)・鬱多羅僧衣(うったらそうえ)・安陀会(あんだえ)の三衣(さんえ)を指していましたが、仏教が中国や日本などに広まるにつれ、後述する「袈裟」の内側に着用する衣服を指すようになったのです。

後述する「袈裟」と区別するため「法服(ほうふく)」「衣(ころも)」と呼ぶこともあります。というのも、広い意味では「袈裟」を含めた僧侶・尼が着用する衣装を「法衣」と呼んでいるからです。この記事では、「袈裟」の内側に着用する衣服を「法衣」と呼ぶことにします。

「袈裟」:僧侶・尼の衣服の一部

「袈裟」は「法衣」の上に着用する衣類で、左肩から下げるように着用し右肩を出すように羽織ります。仏教が中国・日本へと広がっていくにつれて、仏教を象徴するものとなり、次第に装飾的なものへとなっていきました。

「袈裟」はインドの習慣で不浄とされる左手を隠し、右手を出して相手に敬意を示すようつけるのが特徴です。なお、前述の「法衣」と「袈裟」の着用が僧侶にとっての正装と言えます。

「法衣」の色と僧侶の階級

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僧侶が普段から着用している「法衣」には正装用と略装用の2種類があり、正装用の「法衣」の色には意味があります。では、2種類の違いを見ていきましょう。

\次のページで「「正装用」の法衣」を解説!/

「正装用」の法衣

正装用の法衣は葬儀や法事などの儀式や年中行事のときに着用します。正装用は手を覆うぐらい広く、ひだが多いのが特徴ですが、宗派による違いはあまり見られません。また、正装用は僧侶の階級によって着用する法衣の色が異なることも特徴の一つです。多くの宗派で緋色(ひいろ)が最上位を示していますが、それ以外の階級は宗派によってそれぞれ異なっています。

法衣の色分けは古く冠位十二階のころにさかのぼり、当時は紫色が最上位。現在は、先に述べた通り緋色が最上位である宗派が多いようですが、この緋色や紫色の法衣を身につけられるのは僧侶の中でもごく少数の人たちだけなのです。

「略装用」の法衣

僧侶が普段着として着用しているのが略装用です。宗派によっては「改良衣(かいりょうえ)」や「道服(どうふく)」などの呼び方があります。着物のような形ですが、やはり宗派によって異なっており、最近では洋服のような仕立てになっている法衣も見られるようです。

なお、略装用は色のバリエーションは少なく、黒の法衣が一般的に多く使われています。皆さんがお寺などで目にするお坊さんの多くは黒の法衣を着用しているのではないでしょうか。

「袈裟」の起源

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最後に「袈裟」の起源をお伝えします。インドで袈裟は「kasaya(カシャーヤ)」と呼ばれていて、日本語もこの音に漢字を当てて「袈裟」と呼んでいるのです。

元々この袈裟はボロボロの布や死者の衣類、汚物を拭く布などの不用な布を縫い合わせたものを着用したものが「袈裟」の起源で、「糞掃衣(ふんぞうえ)=糞を拭う布で作られた衣服」と呼ばれていました。仏教ではたとえ衣服であっても私有財産とみなされていましたので、不用な布を使っていたのです。

ちなみに、その名残からでしょうか、現在でも新しい小さい布を縫い合わせて仕立てられています。日本の袈裟はきらびやかなものが多く独自の発展を遂げましたが、インドや東南アジアでは褐色の袈裟が今でも多く質素な印象が特徴です。

「法衣」と「袈裟」の違いは内か外か

「法衣」は「袈裟」の内側に着用する衣服で、外側に左肩からかけてまとうのが「袈裟」です。「袈裟」を含めて「法衣」とすることもありますが、あえて「法衣」は内側の衣服、「袈裟」は外側の衣服とします。仏教を開いたときは不用な布を縫い合わせて作っていた衣類ですが、他の国に広がっていくにつれてその形も変遷していき現在の形となったのです。また、正装用「法衣」の色は僧侶の階級に応じて異なっており、宗派により規定の違いはあるものの緋色の「法衣」は最上位の僧侶のみが着用できます

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雑学

簡単で分かりやすい「法衣」と「袈裟」の違い!読み方や色の違いも元塾講師が詳しく解説!

「正装用」の法衣

正装用の法衣は葬儀や法事などの儀式や年中行事のときに着用します。正装用は手を覆うぐらい広く、ひだが多いのが特徴ですが、宗派による違いはあまり見られません。また、正装用は僧侶の階級によって着用する法衣の色が異なることも特徴の一つです。多くの宗派で緋色(ひいろ)が最上位を示していますが、それ以外の階級は宗派によってそれぞれ異なっています。

法衣の色分けは古く冠位十二階のころにさかのぼり、当時は紫色が最上位。現在は、先に述べた通り緋色が最上位である宗派が多いようですが、この緋色や紫色の法衣を身につけられるのは僧侶の中でもごく少数の人たちだけなのです。

「略装用」の法衣

僧侶が普段着として着用しているのが略装用です。宗派によっては「改良衣(かいりょうえ)」や「道服(どうふく)」などの呼び方があります。着物のような形ですが、やはり宗派によって異なっており、最近では洋服のような仕立てになっている法衣も見られるようです。

なお、略装用は色のバリエーションは少なく、黒の法衣が一般的に多く使われています。皆さんがお寺などで目にするお坊さんの多くは黒の法衣を着用しているのではないでしょうか。

「袈裟」の起源

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最後に「袈裟」の起源をお伝えします。インドで袈裟は「kasaya(カシャーヤ)」と呼ばれていて、日本語もこの音に漢字を当てて「袈裟」と呼んでいるのです。

元々この袈裟はボロボロの布や死者の衣類、汚物を拭く布などの不用な布を縫い合わせたものを着用したものが「袈裟」の起源で、「糞掃衣(ふんぞうえ)=糞を拭う布で作られた衣服」と呼ばれていました。仏教ではたとえ衣服であっても私有財産とみなされていましたので、不用な布を使っていたのです。

ちなみに、その名残からでしょうか、現在でも新しい小さい布を縫い合わせて仕立てられています。日本の袈裟はきらびやかなものが多く独自の発展を遂げましたが、インドや東南アジアでは褐色の袈裟が今でも多く質素な印象が特徴です。

「法衣」と「袈裟」の違いは内か外か

「法衣」は「袈裟」の内側に着用する衣服で、外側に左肩からかけてまとうのが「袈裟」です。「袈裟」を含めて「法衣」とすることもありますが、あえて「法衣」は内側の衣服、「袈裟」は外側の衣服とします。仏教を開いたときは不用な布を縫い合わせて作っていた衣類ですが、他の国に広がっていくにつれてその形も変遷していき現在の形となったのです。また、正装用「法衣」の色は僧侶の階級に応じて異なっており、宗派により規定の違いはあるものの緋色の「法衣」は最上位の僧侶のみが着用できます

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