ニュースなどで事件が報道されるときに「告訴」や「告発」といった言葉を耳にすることがあるよな。「告訴」や「告発」はどちらも犯罪を訴えるときに使われる言葉ですが、厳密な意味は違うみたいです。
今回はこの違いについて、言葉の使い方にこだわるビジネス文書熟練者の西風と一緒に解説していきます。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「告訴」と「告発」の違いとは?

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「告訴」と「告発」は、いずれも捜査機関へ犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表す言葉です。しかし、「告訴」と「告発」は意味が似ているため、「ニュースで報道されている正確な意味がわからない」「正しく使い分けができない」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、「告訴」と「告発」の違いについて説明します。また、同じような単語として混同される「被害届」についてもあわせて解説。この記事を読めば、「告訴」と「告発」の違いについて理解でき、ニュースなどの報道からも正確に情報が読み取れるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

「告訴」は犯罪の被害者が犯罪事実を訴えること

「告」という漢字は、訴えることを意味しています。「訴」は裁きを求めるため上に申し出るという意味を持つ漢字です。この2つの漢字から成り立つ「告訴」は、犯罪の被害者が捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表しています。

「告発」は犯罪の被害者に限定せずに犯罪事実を訴えること

「発」は隠れていたものなどを明るみに出す・ひらく・あばくという意味を持つ漢字です。訴えることを表す「告」と組み合わさり成り立つ「告発」は、犯罪の被害者に限定せず、誰しもが捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表しています。

「告訴」とは?

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ここからは、「告訴」と「告発」の違いに着目しながら、それぞれをくわしく見ていきましょう。

「告訴」の定義

「告訴」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

犯罪の被害者、およびそれに準じる者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めること。

引用:デジタル大辞泉

上記のとおり、犯罪の被害者、およびそれに準じるものが実施するのが「告訴」です。これは刑事訴訟法にも以下のように記されています。

\次のページで「「告訴」の方法」を解説!/

第二百三十条 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
第二百三十一条 被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
2 被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。

引用:刑事訴訟法

「告訴」の方法

「告訴」は、捜査と呼ばれる業務をすべてできる警察職員の呼称である司法警察員または検察官に対して、書面または口頭で行います。現実には、「告訴」状を作成して提出することが多いです。なお、「告訴」の方法については、刑事訴訟法に以下のように定められています。

第二百四十一条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。

引用:刑事訴訟法

「告発」とは?

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ここまで「告訴」についてくわしく見てきました。ここからは、「告訴」との違いに着目しつつ、「告発」についてくわしく見ていきます。

「告発」の定義

「告発」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

1.悪事や不正を明らかにして、世間に知らせること。
2.犯罪とは直接関係のない者が、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めること。

引用:デジタル大辞泉

上記のとおり、犯罪の被害者でなくてもできるのが「告発」です。これは刑事訴訟法にも以下のように記載されています。

第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。

引用:刑事訴訟法

\次のページで「「告発」の方法」を解説!/

「告発」の方法

「告発」も司法警察官または検察官に対して、書面または口頭で行います。現実的には、告発状といった書面を作成し、提出することが多いです。「告発」は誰でもできますが、報告罪については「告訴」権者による「告訴」しかできませんので注意しましょう。

なお、報告罪とは、事実が公になることで被害者のプライバシーが侵害されるなどの不利益が生じるおそれのある犯罪被害や親族間の問題など、「告訴」がなければ公訴提起ができない犯罪のことです。たとえば、以下のような犯罪が報告罪に該当します。

・名誉毀損罪・侮辱罪
・ストーカー規制法違反
・過失傷害罪
・夫婦間や直系血族又は同居の親族以外の親族による窃盗罪や詐欺罪など

「被害届」とは?

ここまで「告訴」や「告発」についてくわしく見てきました。「告訴」や「告発」と似たように使われる言葉に「被害届」もあります。ここからは、「被害届」について解説しますので、「告訴」や「告発」との違いについて理解を深めていきましょう。

「被害届」の定義

「被害届」を調べると、以下のように定義されています。

犯罪被害者支援・刑事手続に関わる用語
犯罪行為により被害を受けた者が、被害を受けた事実を捜査機関に届け出るために作成する書面。被害届の提出は、捜査機関の犯罪捜査の端緒となる。

引用:法律関連用語集

「被害届」とは、被害者が捜査機関に対して犯罪にあった被害の事実を申告するための書面です。「告訴」と意味が似ているように見えますが、以下2点が大きく異なります。

\次のページで「「被害届」提出の方法」を解説!/

・「被害届」は被害者本人のみが、「告訴」は被害者本人を含めた告訴権者が行う点
・「被害届」は犯罪事実の申告、「告訴」は犯罪事実の申告と犯人の訴追を求める意思表示を行う点

「被害届」提出の方法

「被害届」は捜査機関に提出します。実際には、管轄する警察に行って提出するのが基本です。「被害届」が口頭であるならば、書面への記入を求める、または警察官が話を聞きながら作成します。なお、「被害届」の提出について、犯罪捜査規範に以下のように記載されているので確認しましょう。

第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

引用:犯罪捜査規範

訴えを起こす人が異なると認識しよう

「告訴」と「告発」の違いについてくわしく見てきました。2つとも犯罪事実を申告して犯人を訴求するという意味は同じですが、「告訴」は被害者または「告訴」権者に限定して行えるのに対し、「告発」は誰でも行える点が異なります。また、「被害届」を提出できるのは被害者のみに限定され、犯罪事実の申告のみで犯人の訴追は含まないこともわかりました。同じような意味の言葉でもそれぞれ詳細は異なる…くわしく調べるほどに日本語の面白さを感じずにはいられませんね。

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3分で簡単にわかる「告訴」と「告発」の違い!定義や手続き・「被害届」との違いもビジネス文書熟練者が詳しく解説!

ニュースなどで事件が報道されるときに「告訴」や「告発」といった言葉を耳にすることがあるよな。「告訴」や「告発」はどちらも犯罪を訴えるときに使われる言葉ですが、厳密な意味は違うみたいです。
今回はこの違いについて、言葉の使い方にこだわるビジネス文書熟練者の西風と一緒に解説していきます。

ライター/西風

企業にて10年以上にわたりビジネスパーソンとの交流や企画書・論文作成を経験。現在は後進育成にも注力。文章のわかりやすさはもちろん、言葉の意味や使い方にもこだわり、わかりやすく正確な情報をお届け。

「告訴」と「告発」の違いとは?

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「告訴」と「告発」は、いずれも捜査機関へ犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表す言葉です。しかし、「告訴」と「告発」は意味が似ているため、「ニュースで報道されている正確な意味がわからない」「正しく使い分けができない」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、「告訴」と「告発」の違いについて説明します。また、同じような単語として混同される「被害届」についてもあわせて解説。この記事を読めば、「告訴」と「告発」の違いについて理解でき、ニュースなどの報道からも正確に情報が読み取れるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

「告訴」は犯罪の被害者が犯罪事実を訴えること

「告」という漢字は、訴えることを意味しています。「訴」は裁きを求めるため上に申し出るという意味を持つ漢字です。この2つの漢字から成り立つ「告訴」は、犯罪の被害者が捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表しています。

「告発」は犯罪の被害者に限定せずに犯罪事実を訴えること

「発」は隠れていたものなどを明るみに出す・ひらく・あばくという意味を持つ漢字です。訴えることを表す「告」と組み合わさり成り立つ「告発」は、犯罪の被害者に限定せず、誰しもが捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示を表しています。

「告訴」とは?

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ここからは、「告訴」と「告発」の違いに着目しながら、それぞれをくわしく見ていきましょう。

「告訴」の定義

「告訴」を辞書で調べると、以下のように記載されています。

犯罪の被害者、およびそれに準じる者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めること。

引用:デジタル大辞泉

上記のとおり、犯罪の被害者、およびそれに準じるものが実施するのが「告訴」です。これは刑事訴訟法にも以下のように記されています。

\次のページで「「告訴」の方法」を解説!/

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