この記事では上院と下院の違いについてみていきます。どちらも二院制という政治制度のなかの議会のことを意味しているな。違いはずばり国民の意見との距離感にあるようです。上院議員と下院議員では選挙で選ばれる方法や、議決の優越にも差が生じてくるぞ。今回は二院制のメリットとデメリット、日本で採用されている二院制の特徴まで政治学科卒ライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

工事会社勤務9年目現役OLライター。法学部政治学科を卒業。大学在学中は近代政治を中心に学んできた。自分の知らないルールのなかで、生きていくということに違和感を持ち、法律や政治制度について学びたいと思ったのが政治学科を選んだ理由。大学4年間での学びを活かしてわかりやすく解説していく。

上院と下院の違いは国民の意見との距離感

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上院と下院の違いは、二院制における国民の意見との距離感にあります。二院制とは、政治における議会を上院と下院に分け、国民の多様な意見を吸い上げ、慎重に審議を進めることを目的に採用される政治制度のこと。日本も二院制を採用していますね。まずは二院制について確認しながら、上院と下院の各々の役割についてもみていきましょう。

政治制度:二院制とは?

日本でも採用している「二院制」とは、上院と下院それぞれが独立した議会で議論を進めていく政治制度のこと。日本でいう上院とは参議院のことで、下院とは衆議院のことです。上院は下院のチェック機能としての役割を持ち、下院には国民の意見を反映されやすいという特徴があるといわれています。ここからくわしくみていきましょう。

上院の役割:下院のチェック機能

上院の役割は下院のチェック機能です。上院議員の選出方法は国によって異なっていますが、一般の国民に直接投票されるとは限りません。例えば、明治憲法下で採用されていた日本の政治制度のもとでは、上院は貴族院と称され、文字通り貴族をはじめ特権階級の者によって構成されていました。貴族院型は、現代でもイギリスなどで採用されているんだそう。「階級の代表」の他にも「職域や集団の代表」「連邦の代表」「地域の代表」といったように、国民の人口に比例せずに選出されるという特徴も。

基本的に下院での議論や議決が「国民の意思」というように扱われますが、その決定を専門家の視点でみて「おかしなところはないか?暴走していないか?」と、一歩引いた立場でチェックする機能が上院にはあると考えられています。

下院の役割:国民の意見を反映する役割

下院は国民の意見を政治に反映させる役割を担い、二院制を採用している国では下院は公選によって選出されるのが基本です。直接国民に選ばれた議員が議論を行うことによって、国民の意見を直接国政に反映させることができます。上院よりも任期が短く、選挙の機会も多いため、時世によって国民の意見が反映されやすいというのも特徴の1つ。

そして下院は上院に対して優越権を持っており、上院と下院での議論が各々で別の決議を行った際には下院で可決された議決が国会の決議として優先されることになります。

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日本の二院制の特徴は?

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日本の議会でも二院制を採用していますね。日本では上院は参議院、下院が衆議院にあたり、内閣総理大臣の指名権の有無や、任期、解散の有無、全体の人数などで、両議院には違いがあります。さらにくわしくみていきましょう。

日本の議会制度:衆議院と参議院

日本の議会における上院、参議院の任期は6年。3年ごとに半数ずつ選挙が行われています。ちなみに解散はありません。衆議院の任期は4年ですが、政治の状況によっては任期の途中でも解散する場合もあり、その場合は衆議院議員は職を失うことなるんだそう。

下院である参議院の定数は242人。そのうち100人が全国比例代表選で選ばれ、146人が選挙区制で選ばれるんだそう。また上院である衆議院の定数は465人で、選挙区制で289人、比例代表制で176人が選出されています。

参議院選挙:選挙区選挙と全国比例代表選挙

参議院議員は選挙区選挙と比例代表選挙の2つの選挙制度を並立して実施する「選挙区比例代表並立制選挙」によって選出されますね。

選挙区選挙とは、都道府県の人口に比例して選出する議員の人数が定められる選挙制度。有権者は立候補者の個人名を記入して投票をします。全国比例代表制選挙とは個人名または政党名を記入して投票をする方法で、政党に属した立候補者でないと選出されることはありません。

衆議院選挙:小選挙区選挙と比例代表選挙

衆議院は小選挙区選挙と比例代表選挙によって選ばれます。衆議院の選挙は総選挙といわれ、衆議院議員の4年の任期満了か衆議院の解散によって選挙が行われますね。前述のとおり、衆議院議員の定数465人のうち289人が小選挙選挙で選ばれ、176人が比例代表選挙で選ばれるんだそう。

小選挙区選挙とは、日本全国を289の小選挙区に分け、1選挙区につき1人の議員を選出する方法。国政調査による都道府県の人口をもとに区割りが決められるのだそう。また、比例代表選挙とは全国を11のブロックに分け、有権者は政党名を書いて投票する方法です。

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二院制のメリットとデメリットは?

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二院制の議会は、互いに独立した2つの会議体が存在し原則は各々の議決の一致によって議会の議決が成立するという制度です。民主主義のもと、国民の意見を政治に反映させやすい制度だといわれていますがメリットとあわせてデメリットが存在していますね。日本の例をあげながら具体的にみていきましょう。

二院制のメリットは?

二院制のメリットは、権力の集中を防ぎ慎重な審議が可能である点や、国民の多様な価値観や意見を政治に反映させることができる点があげられます。

日本の場合は「衆議院の優越」という制度があり、内閣総理大臣の指名や、予算案を先に審議できる権利、内閣不信任決議を行う権利は、直接国民に選ばれる衆議院にのみ与えられているんだそう。このように「衆議院の優越」のもと審議を進めていくため、二院制は国民の意見が反映されやすいと考えられていますね。

二院制のデメリットは?

二院制のデメリットは、一院制に比べると審議に時間がかかる点があげられますね。

特に日本の場合は、しばしば上院と下院で第一政党が異なる「ねじれ」という状態が起きます。「ねじれ」は選挙を行うタイミングによって、国民の選択が変わってくることに由来しており、参議院と衆議院で、異なる議決をする可能性が高まるのです。参議院と衆議院で異なった議決がされた場合は再審議を行う必要があり、議論に時間がかかってくるということですね。

「上院」と「下院」各々の役割を中心に政治制度を理解しよう

政治制度に興味を持つことは、自らの生活に責任を持つことに繋がります。政治は自分とはかけ離れた場所で行われていることではありません。「政治」は身近で私たちの生活に影響を与えるものなのです。ないがしろにせず、まずは「上院」「下院」の存在や役割についてなど、興味をもつところから始めましょう。

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社会雑学

簡単でわかりやすい!上院と下院の違いとは?日本の政治制度から二院制のメリット、デメリットまで政治学科卒ライターがくわしく解説

この記事では上院と下院の違いについてみていきます。どちらも二院制という政治制度のなかの議会のことを意味しているな。違いはずばり国民の意見との距離感にあるようです。上院議員と下院議員では選挙で選ばれる方法や、議決の優越にも差が生じてくるぞ。今回は二院制のメリットとデメリット、日本で採用されている二院制の特徴まで政治学科卒ライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

工事会社勤務9年目現役OLライター。法学部政治学科を卒業。大学在学中は近代政治を中心に学んできた。自分の知らないルールのなかで、生きていくということに違和感を持ち、法律や政治制度について学びたいと思ったのが政治学科を選んだ理由。大学4年間での学びを活かしてわかりやすく解説していく。

上院と下院の違いは国民の意見との距離感

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上院と下院の違いは、二院制における国民の意見との距離感にあります。二院制とは、政治における議会を上院と下院に分け、国民の多様な意見を吸い上げ、慎重に審議を進めることを目的に採用される政治制度のこと。日本も二院制を採用していますね。まずは二院制について確認しながら、上院と下院の各々の役割についてもみていきましょう。

政治制度:二院制とは?

日本でも採用している「二院制」とは、上院と下院それぞれが独立した議会で議論を進めていく政治制度のこと。日本でいう上院とは参議院のことで、下院とは衆議院のことです。上院は下院のチェック機能としての役割を持ち、下院には国民の意見を反映されやすいという特徴があるといわれています。ここからくわしくみていきましょう。

上院の役割:下院のチェック機能

上院の役割は下院のチェック機能です。上院議員の選出方法は国によって異なっていますが、一般の国民に直接投票されるとは限りません。例えば、明治憲法下で採用されていた日本の政治制度のもとでは、上院は貴族院と称され、文字通り貴族をはじめ特権階級の者によって構成されていました。貴族院型は、現代でもイギリスなどで採用されているんだそう。「階級の代表」の他にも「職域や集団の代表」「連邦の代表」「地域の代表」といったように、国民の人口に比例せずに選出されるという特徴も。

基本的に下院での議論や議決が「国民の意思」というように扱われますが、その決定を専門家の視点でみて「おかしなところはないか?暴走していないか?」と、一歩引いた立場でチェックする機能が上院にはあると考えられています。

下院の役割:国民の意見を反映する役割

下院は国民の意見を政治に反映させる役割を担い、二院制を採用している国では下院は公選によって選出されるのが基本です。直接国民に選ばれた議員が議論を行うことによって、国民の意見を直接国政に反映させることができます。上院よりも任期が短く、選挙の機会も多いため、時世によって国民の意見が反映されやすいというのも特徴の1つ。

そして下院は上院に対して優越権を持っており、上院と下院での議論が各々で別の決議を行った際には下院で可決された議決が国会の決議として優先されることになります。

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