
簡単でわかりやすい!殺人と傷害致死の違いとは?刑法を変えた事例まで法学部卒ライターが詳しく説明
尊属殺人罪の廃止
担当弁護士は女性に強く同情し、執行猶予を目指します。しかし心神耗弱と情状酌量での二重軽減を得ても、重罰の尊属殺人罪では執行猶予にはなりません。
同じ殺人と比べ、刑罰の差が激しい尊属殺人罪は、憲法の平等原則の上で合憲かという議論がありました。また本件では、実父を通常の殺人被害者よりも尊重すべき扱いとするのかという論点も加わりました。結果、尊属殺人が違憲のため無効であるとし、そのうえで傷害致死罪や正当防衛を裁判で争うことになりました。
最高裁まで審議を重ね、最終的に違憲と判断した上で、通常の殺人罪を適用し懲役2年6月執行猶予3年の判決を得ました。その後、尊属殺人罪の条文は刑法から削除されています。
法を作るのも、犯すのも、そして裁くのも人
人が殺されたという報道も、その後、殺人罪が適用されない場合は多々あります。これは犯行内容・状況などをもとに課すべき罰の検討・判断が慎重になされるからです。刑罰は、罪を犯した者から国家が一定の法益を剥奪する行為であることを重視しなければなりません。この剥奪行為を決定するには、法解釈を深めながら関連法や判例の適用も検討する必要があります。法を作るのも、犯すのも、そして裁くのも人であるからこそです。