この記事では「むべ」と「あけび」の違いについてみていきます。2つとも「日本の野山に自生する果樹」で、果実の見た目が似ている。ともにアケビ科の樹木です。そのうち「あけび」は、熟すと果実の皮が裂けることで有名です。ですがその仲間の「むべ」では果実が熟しても、皮が裂けなのです。今回はそんな「日本古来のフルーツ」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「野山に自生する果樹」である、むべとあけびの違いについてわかりやすく解説していく。

むべとあけびを大まかに比較

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まずはむべとあけびが、どのような樹木なのか大まかに説明します。両者ともに日本の野山に自生する、つる性の果樹。しかし細かな分布は異なります。以下では、図鑑での分類や果実の見た目など、むべ/あけびの基礎知識についてみていきましょう!

あけびの果実は「口を開く」

「あけび」はアケビ科アケビ属に分類される、つる性の果樹。具体的には本州以南の温暖地に自生する「アケビ」と、北海道から九州まで寒冷地に自生する「ミツバアケビ」の2種を指します。どちらも、冬の寒さに耐える「落葉樹」です。そんなあけびのトレードマークは、熟すと口を開く果実。日本の野山で採れる果実のなかで随一の甘さをもつため、昔から食用とされてきました。

「口を開く果実」は、あけびの生存戦略です。ニホンザルや野鳥にとっても、あけびの果肉はごちそう。こういった野生動物に種ごと果肉を食べさせることで、その糞を経由して種を散布していると考えられています。

むべの果実は「口を開かない」

「むべ」は一見するとあけびに似ている、つる性の果樹。同じくアケビ科でも「ムベ属」という別グループに分類されています。その分布は、関東より南側。こちらは温暖な気候を好む「常緑樹」なので、別名で「ときわあけび」と呼ばれます。そんなむべの果実は、あけび同様に食用です。しかしむべでは、熟しても果実の口が開かないのが特徴。ほかにもむべ/あけびでは、細かな違いがいくつか存在します。

この記事では、むべとあけびの見分け方について徹底解説。木そのものの違いを3つ、果実の違いを2つお伝えします。さらにむべ/あけびの栄養や食べ方も紹介。「日本のフルーツ」である、むべとあけびについて詳しくみていきましょう!

むべ/あけびの木の違い

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むべとあけびとでは、果実をつける「木そのもの」の見た目が違います。具体的には以下の3点を覚えておけば、両者の見分けが可能に。果実の違いの前に、野山で役立つ「木の見分け方」について詳しくみていきましょう!

違い1.葉の見た目

むべでもあけびでも一枚の葉は、複数の「小葉」からなり、「手のひら」のような形をしています。つまり大まかな形は一緒。ですがむべとあけびとでは、一枚の葉を構成する「小葉の枚数」が違うのです。むべの小葉は成長にともない、3枚から最大7枚まで増えていきます。対してあけびの小葉は、本家「アケビ」で5枚まで、「ミツバアケビ」で3枚までにしか増えません。

またむべとあけびは、小葉一枚一枚を観察すれば見分けられます。なぜなら両者の小葉で、先端の形状が違うから。まずむべの小葉の先端は尖って、突き出ています。ごくごく一般的な「葉っぱ」の形ですね。対して各種あけびでは小葉の先端が「蛇の舌」のように裂けて、くぼんでいるのです。

違い2.冬場の樹形

むべの木とあけびの木は、冬になると簡単に見分けられます。なぜなら、むべが年中葉をつけている「常緑樹」なのに対して、あけびは冬になると葉を落とす「落葉樹」だから。これは北日本など寒い地域に適応した、あけびならではの特徴です。

違い3.花の見た目

むべとあけびは、花で見分けることもできます。まずむべ/あけびの花には、花びらがありません。代わりに「がく」が発達して、花びらのようになっているのです。

そして両者では「がく」の枚数と色・形が違います。「むべの花」では、薄黄色の細長い「がく」が6枚付属。その見た目は「バナナの皮」にたとえられます。対して「あけびの花」では、紫色で丸い「がく」が3枚付属しているのです。

むべ/あけびの果実の違い

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むべもあけびも、日本の野山でよく見かける果樹。意外にも「日本古来のフルーツ」は、身近にあるのです。ここではむべとあけびの「果実の見分け方」について紹介。ハイキングの際にお役立てください。

\次のページで「違い1.果実の見た目」を解説!/

違い1.果実の見た目

むべもあけびも、果実の形は楕円型。しかし熟れると、見た目に違いが現れます。印象的なのは「あけびの果実」のほう。熟すと果皮が裂けて、筒状の果肉が露出します。例えるなら、口を開けたような見た目になるのです。対してあけびに似た形の「むべの果実」は、熟しても裂けません。

また同じ地域に自生するむべとあけびは、果皮の色で見分けられます。まず関西に多く分布する「むべ」の果皮は赤紫色。対して「関西のあけび」である本家「アケビ」では、黄緑色の果皮をもつ個体が多いのです。わたしたちが一般に思い浮かべる「むべに似たあけび」は、北日本のミツバアケビ。寒冷地を好むため、むべと同じ地域に自生することは稀です。

違い2.旬

むべとあけびとでは「旬」つまり、果実が採れる時期が違います。あけびの旬が「8月〜10月」の初秋なのに対し、むべの旬は「10月〜12月」の晩秋。むべの果実が熟しきった頃、あけびでは果実も葉も落ちて木が丸裸になっているのです。

むべ/あけびの食べ方

むべやあけびでは、その果実や新芽が食用となります。とくにその果実は絶品。温室育ちのメロンに勝るとも劣らぬ、強い甘みをもっているのです。さらにむべ/あけびの果実には、美容やアンチエイジングに効く栄養素が豊富に含まれています。以下「日本古来のフルーツ」である、むべ/あけびの魅力をみていきましょう!

むべ/あけびの果実の食べ方

むべ/あけびの果実では、ごくわずかな果肉の部分が可食部です。種の部分は強いアクをもつので、食べずに吐き出します。間違えて種を噛んでしまった場合、のどの奥に渋みが残り続けるのでご注意を。むべ/あけびの食べ頃は、果実が熟してからの数日間だけです。熟すと果皮が柔らかくなり、あけびの場合は自然に口を開きます。熟した果実は冷蔵庫で保管して、速やかに食べてしまいましょう。

むべとあけびは、日本古来のフルーツ。野山で採れたものでも、品種改良を重ねた海外のフルーツ以上の甘さをもっています。果肉100gあたりに含まれる糖質はあけびで20.9g、むべで18.26gほど。これはなんと、メロンの2倍の糖度なのです。

むべ/あけびは他の部位も食用できる

むべ/あけびでは、果実以外も可食部です。おもに春先に採れる新芽が「山菜」として利用されています。むべ/あけびの新芽は強い苦味をもつので、調理する場合「アク抜き」が必須。塩を入れた熱湯で新芽をゆでればアク抜き完了です。アクを抜いたむべ/あけびの新芽はそのまま、おひたしや和え物に使えます。

また「あけび」では、果皮の部分も食用に。「ピーマンの肉詰め」よろしく、中身に詰め物をして加熱調理します。詰め物はひき肉やきのこ、味噌など。具材を詰めて「かんぴょう」でしばった果皮は、フライパンで焼いたり、油で揚げたりして火を通せば調理完了です。果皮の苦味がアクセントとなって、ご飯やお酒がすすみますよ。

\次のページで「むべ/あけびの栄養」を解説!/

むべ/あけびの栄養

あけびは栄養豊富。果肉には「ビタミンC」が65mgと、温州みかんの2倍も含まれています。このビタミンCは、メラニン色素の沈着を防いだり、コラーゲンの合成を助けたりと「美肌効果」をもつ成分です。

さらにあけびの果皮や新芽には、利尿作用やむくみ・高血圧の予防効果がある「カリウム」が豊富に含まれています。このようにあけびでは、全草が美容に効き目をもっているのです。

一方むべには、アンチエイジングの効果があります。その果実は、植物ステロールの一種「βシトステロール」を豊富に含有。コレステロールの吸収を防いだり、免疫力を高めたりする効果が期待できます。むべのアンチエイジング効果は、古くから経験則として知られていた様子。そのため「不老長寿の果実」として語り継がれてきました。

口が開くのは「あけび」の果実だけ

むべもあけびも日本の野山に自生する、アケビ科の果樹。どちらも楕円形の、食べられる果実をつけます。むべとあけびとで違うのは、熟した果実の見た目。あけびでは果皮が裂けるのですが、むべでは裂けません。ほかにも花や小葉など、両者を見分けるポイントがいくつか存在するのです。そんなむべ/あけびでは、新芽も食用となります。果実も新芽も栄養豊富ですので、ぜひ食べてみてください。

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雑学

簡単でわかりやすい!むべとあけびの違いとは?見分け方や食べ方も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では「むべ」と「あけび」の違いについてみていきます。2つとも「日本の野山に自生する果樹」で、果実の見た目が似ている。ともにアケビ科の樹木です。そのうち「あけび」は、熟すと果実の皮が裂けることで有名です。ですがその仲間の「むべ」では果実が熟しても、皮が裂けなのです。今回はそんな「日本古来のフルーツ」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「野山に自生する果樹」である、むべとあけびの違いについてわかりやすく解説していく。

むべとあけびを大まかに比較

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まずはむべとあけびが、どのような樹木なのか大まかに説明します。両者ともに日本の野山に自生する、つる性の果樹。しかし細かな分布は異なります。以下では、図鑑での分類や果実の見た目など、むべ/あけびの基礎知識についてみていきましょう!

あけびの果実は「口を開く」

「あけび」はアケビ科アケビ属に分類される、つる性の果樹。具体的には本州以南の温暖地に自生する「アケビ」と、北海道から九州まで寒冷地に自生する「ミツバアケビ」の2種を指します。どちらも、冬の寒さに耐える「落葉樹」です。そんなあけびのトレードマークは、熟すと口を開く果実。日本の野山で採れる果実のなかで随一の甘さをもつため、昔から食用とされてきました。

「口を開く果実」は、あけびの生存戦略です。ニホンザルや野鳥にとっても、あけびの果肉はごちそう。こういった野生動物に種ごと果肉を食べさせることで、その糞を経由して種を散布していると考えられています。

むべの果実は「口を開かない」

「むべ」は一見するとあけびに似ている、つる性の果樹。同じくアケビ科でも「ムベ属」という別グループに分類されています。その分布は、関東より南側。こちらは温暖な気候を好む「常緑樹」なので、別名で「ときわあけび」と呼ばれます。そんなむべの果実は、あけび同様に食用です。しかしむべでは、熟しても果実の口が開かないのが特徴。ほかにもむべ/あけびでは、細かな違いがいくつか存在します。

この記事では、むべとあけびの見分け方について徹底解説。木そのものの違いを3つ、果実の違いを2つお伝えします。さらにむべ/あけびの栄養や食べ方も紹介。「日本のフルーツ」である、むべとあけびについて詳しくみていきましょう!

むべ/あけびの木の違い

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むべとあけびとでは、果実をつける「木そのもの」の見た目が違います。具体的には以下の3点を覚えておけば、両者の見分けが可能に。果実の違いの前に、野山で役立つ「木の見分け方」について詳しくみていきましょう!

違い1.葉の見た目

むべでもあけびでも一枚の葉は、複数の「小葉」からなり、「手のひら」のような形をしています。つまり大まかな形は一緒。ですがむべとあけびとでは、一枚の葉を構成する「小葉の枚数」が違うのです。むべの小葉は成長にともない、3枚から最大7枚まで増えていきます。対してあけびの小葉は、本家「アケビ」で5枚まで、「ミツバアケビ」で3枚までにしか増えません。

またむべとあけびは、小葉一枚一枚を観察すれば見分けられます。なぜなら両者の小葉で、先端の形状が違うから。まずむべの小葉の先端は尖って、突き出ています。ごくごく一般的な「葉っぱ」の形ですね。対して各種あけびでは小葉の先端が「蛇の舌」のように裂けて、くぼんでいるのです。

違い2.冬場の樹形

むべの木とあけびの木は、冬になると簡単に見分けられます。なぜなら、むべが年中葉をつけている「常緑樹」なのに対して、あけびは冬になると葉を落とす「落葉樹」だから。これは北日本など寒い地域に適応した、あけびならではの特徴です。

違い3.花の見た目

むべとあけびは、花で見分けることもできます。まずむべ/あけびの花には、花びらがありません。代わりに「がく」が発達して、花びらのようになっているのです。

そして両者では「がく」の枚数と色・形が違います。「むべの花」では、薄黄色の細長い「がく」が6枚付属。その見た目は「バナナの皮」にたとえられます。対して「あけびの花」では、紫色で丸い「がく」が3枚付属しているのです。

むべ/あけびの果実の違い

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むべもあけびも、日本の野山でよく見かける果樹。意外にも「日本古来のフルーツ」は、身近にあるのです。ここではむべとあけびの「果実の見分け方」について紹介。ハイキングの際にお役立てください。

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