この記事ではシャコとエビの違いについてみていきます。2つとも「長く伸びた腹部をもつ甲殻類」というイメージがあるよな。じつは「エビ」はカニやヤドカリと同じグループ。そして、「シャコ」だけ仲間はずれなんです。今回はそんな甲殻類の違いを、見分け方も含めて、大学で生物学を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「長い体をもつ甲殻類」である、シャコとエビの違いについてわかりやすく解説していく。

シャコとエビを大まかに比較

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まずは硬い殻に覆われた「甲殻類」である、シャコとエビについて基礎知識から解説。ここでは図鑑での分類を掘り下げていきます。普段から甲殻類の分類を意識することなんてありませんよね。というわけで、はじめにエビやカニなど「ポピュラーな甲殻類」からみていきましょう!

「エビ」は甲殻類の一大グループ

ひとくちに「エビ」といえど、その見た目や生態は千差万別。甲殻類のなかでも、「エビ目」こと軟甲綱十脚目は一大グループだからです。

じつはクルマエビやイセエビなど「エビ」も、ズワイガニや上海ガニなど「カニ」もひっくるめて、「エビ目」と呼んでいます。なかでも一般に「エビ」と呼ばれるのは、「エビ目」からカニ下目とヤドカリ下目を差し引いた「その他大勢」。つまり、厳密な分類ではないのです。

エビといえば、「長く延びた腹部」が特徴的。この特徴のため、かつてエビの仲間は「長尾目」とも呼ばれていました。ですが腹部以外では、エビ同士でも違う点のほうが多くなります。たとえばハサミが発達したロブスターとヒゲが発達したイセエビ、小さな体のサクラエビが、同じ「エビ」として扱われるのは信じ難いですよね。このように「エビ」は、大まかなカテゴリーにすぎないのです。

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エビやカニとはかけ離れた「シャコ」

シャコは、エビ同様に「長く伸びた腹部」をもつ甲殻類。別名で「シャコエビ」や「ガサエビ」とも呼ばれます。しかしながら、先述の「エビ」には含まれません。シャコは分類上、軟甲綱トゲエビ亜綱口脚目(シャコ目)なので、エビ目ですらないのです。

そんな「エビのそっくりさん」であるシャコは、日本で古くから食用とされてきました。たとえば東京では、「江戸前」や「天ぷら」の高級食材として珍重されています。

じつは「シャコの江戸前」は、元々「庶民の味」でした。かつては東京湾でも、シャコが大量に水揚げされていたのです。しかし年々、東京湾での漁獲量は減少。全盛期の水揚げ量が1,000トンだったのに対し、平成17年には50トンと「20分の1」を切ってしまいました。今となっては伊勢湾と瀬戸内海に、「シャコの名産地」の座を譲っています。

シャコとエビの具体的な違い

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シャコとエビは、以下の3点で大きく違います。とくに「脚のつくり」と「顔つき」の違いを知っておけば、両者を見間違えることはないでしょう。以下、個性的なシャコに焦点を当てて、エビと比較していきます。

違い1.脚のつくり

シャコとエビは、脚をみれば判別可能。エビが「ハサミのついた脚」をもっているのに対して、シャコは鎌状の「捕脚」をもっているのです。捕脚の使い方は千差万別。たとえばモンハナシャコなど一部のシャコでは、捕脚を使った打撃で貝類を砕いて食べます。また食用のシャコでは、捕脚に付いたトゲが発達。柔らかい獲物を突き刺して捕食するのです。

違い2.顔つき

シャコとエビとでは「顔つき」も違います。エビでは頭部と胸部が一体となった、「大きな頭」が特徴的。対してシャコでは、頭部が胸部から分かれています。シャコはエビよりも、「小顔」なのです。そんなシャコの顔には、飛び出した2つの複眼が付属。エビよりも、個性的な顔をしています。

さらにシャコとエビとでは、顔の周りの「触角」にも違いが。エビが第二触角からなる「長いひげ」をもっているのに対して、シャコではひげが目立ちません。その代わりにシャコの第二触角では、付属物(鱗片)が発達。顔の周りに色鮮やかな「へら」が1対、伸びています。

違い3.味や食感

シャコとエビとでは、食感が違います。エビの身といえば「プリプリの食感」でおなじみですよね。これは外敵から逃げるため、腹部の筋肉を発達させているからです。対してシャコでは、身の食感がより柔らかいのが特徴。エビほど腹部の筋肉は発達していません。

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シャコの食べ方

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ここからは、海の珍味「シャコ」の食べ方について紹介していきます。エビと比べてなじみの薄いシャコは、意外にも親しみやすい食材です。凝った調理をしなくても、その味わいが活かせます。とはいえ、賞味するうえで「下ごしらえ」のひと手間が必須です。以下「食材としてのシャコ」について、詳しくみていきましょう!

シャコの旬は年に2回

シャコの旬は年に2回。産卵前の5月〜6月と、産卵後の11月〜12月です。産卵前の雌シャコでは、腹の中に赤い卵(カツブシ)がびっしり詰まっています。この子持ちのシャコは、卵のプチプチとした食感と濃厚な旨味が楽しめる、ひときわ高級な食材です。また産卵後の雌シャコでは、身そのもののボリュームと甘みが増します。年に2度も楽しめるなんて、お得ですね。

シャコは下ごしらえが肝心

シャコでは水揚げ後から、急激に鮮度の低下が進みます。放置しておくと、身が痩せてしまうのです。これは死後、脱皮に使われるはずだった酵素がシャコの身を消化してしまうから。そんなシャコでは、新鮮な状態での「下茹で」が必須なのです。スーパーでは、たいてい加熱が済んだ状態で売られています。自分でシャコの下ごしらえをする場合は、以下を参照ください。

シャコの下ごしらえ
1.シャコを氷で冷やす
2.大鍋に1%の食塩水を入れて、沸騰させる
3.冷やしたシャコを、沸騰した食塩水に入れる
4.再び沸騰してから、4分ゆでる
5.シャコの胸部と尾をハサミで切り落とす
6.腹部の両サイドを切り落とす
7.手で腹部の殻を剥く

シャコを使った料理

茹でたシャコはそのまま食用に。わさび醤油やマヨネーズにつけることで、身の甘みが楽しめますよ。また江戸っ子にならって、「お寿司」や「天ぷら」のネタにしてもよいでしょう。ほかには砂糖醤油で煮つけた、あるいは卵とじにしたシャコをご飯に乗せて「品川めし」とするのもおすすめです。

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「シャコ」はエビと似て非なる珍味

シャコもエビも「長く延びた腹部をもつ甲殻類」です。しかし両者では「分類」が違います。具体的にエビ・カニ・ヤドカリは「エビ目」なのですが、シャコだけ「シャコ目」で仲間はずれなのです。そんな異端の甲殻類「シャコ」は、銃弾並みの打撃を生み出す「捕脚」と飛び出た「複眼」がチャームポイント。古くから「お寿司」や「天ぷら」のネタとして、江戸っ子に愛されてきました。

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雑学

簡単でわかりやすい!シャコとエビの違いとは?見分け方やシャコの食べ方も大学で生物を学んだライターが詳しく解説

この記事ではシャコとエビの違いについてみていきます。2つとも「長く伸びた腹部をもつ甲殻類」というイメージがあるよな。じつは「エビ」はカニやヤドカリと同じグループ。そして、「シャコ」だけ仲間はずれなんです。今回はそんな甲殻類の違いを、見分け方も含めて、大学で生物学を学んだライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「長い体をもつ甲殻類」である、シャコとエビの違いについてわかりやすく解説していく。

シャコとエビを大まかに比較

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まずは硬い殻に覆われた「甲殻類」である、シャコとエビについて基礎知識から解説。ここでは図鑑での分類を掘り下げていきます。普段から甲殻類の分類を意識することなんてありませんよね。というわけで、はじめにエビやカニなど「ポピュラーな甲殻類」からみていきましょう!

「エビ」は甲殻類の一大グループ

ひとくちに「エビ」といえど、その見た目や生態は千差万別。甲殻類のなかでも、「エビ目」こと軟甲綱十脚目は一大グループだからです。

じつはクルマエビやイセエビなど「エビ」も、ズワイガニや上海ガニなど「カニ」もひっくるめて、「エビ目」と呼んでいます。なかでも一般に「エビ」と呼ばれるのは、「エビ目」からカニ下目とヤドカリ下目を差し引いた「その他大勢」。つまり、厳密な分類ではないのです。

エビといえば、「長く延びた腹部」が特徴的。この特徴のため、かつてエビの仲間は「長尾目」とも呼ばれていました。ですが腹部以外では、エビ同士でも違う点のほうが多くなります。たとえばハサミが発達したロブスターとヒゲが発達したイセエビ、小さな体のサクラエビが、同じ「エビ」として扱われるのは信じ難いですよね。このように「エビ」は、大まかなカテゴリーにすぎないのです。

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