受刑者が懲罰を受けるための施設「刑務所」。
ですが近年では「社会復帰促進センター」という施設に入所するケースもあるようです。
今回は「刑務所」と「社会復帰促進センター」の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

刑務所と社会復帰センターの違い

image by iStockphoto

受刑者が懲役刑(身柄を拘束され強制労働をさせられる刑罰)や禁固刑(身柄を拘束される刑罰)を受ける施設が「刑務所」ですね。しかし近年では「社会復帰促進センター」なる施設が設立されはじめ、受刑者はそちらに入所するケースも増えてきました。いったい「刑務所」と「社会復帰促進センター」は何が違うのでしょうか。ここではまず、両者の定義的な違いについて解説していきます。

刑務所:国家が運営

「刑務所」は国家が運営する刑事施設のこと。受刑者を収監し、懲役刑や禁固刑を与えつつ就職訓練などの処遇を行う刑事施設です。国の法律に違反した人物は、国が罰するという基本的なスタンスで運営されています。

社会復帰促進センター:官民協同で運営

「社会復帰促進センター」とは官民協同で運営する刑事施設のこと。海外ではPFI(Private Finance Initiative)という名称で知られる施設形態です。いわゆる第三セクター(国や自治体といった公的機関と、民間事業者が共同で出資)の施設で、運営も官民共同で行われています。

\次のページで「社会復帰促進センターはなぜできたのか?」を解説!/

社会復帰促進センターはなぜできたのか?

image by iStockphoto

「刑務所」は国が、「社会復帰促進センター」は官民協同で運営していることはおわかりいただけたと思います。ここで気になるのは、なぜ「社会復帰促進センター」が設立されたのかということですよね。これまで通り「刑務所」だけでは運営していけなかったのでしょうか。ここでは、なぜ「社会復帰促進センター」ができたのかという理由を解説していきます。

刑務所の過剰収容

理由の一つとして、現在存在している「刑務所」の収容人数を超過しつつある現状を打破するための解決策として設立されたということが挙げられます。これは日本の犯罪数が年々増えているというよりは、長期間に及びがちな受刑者の収容が年々「刑務所」のキャパシティを圧迫してきていたことが原因です。

例えば「懲役30年」という受刑者がいれば、移管などがない限り30年間「刑務所」はその人を管理しなければいけません。こういった長期の受刑者が増えてくると、必然的に施設は手狭になり生活環境は劣悪になりますし、管理する職員の人数も確保しなければなりません。

刑務所の運営費削減

もう一つの理由として、「刑務所」の運営費を削減するためということが挙げられます。日本政府の財政はひっ迫しており、増え続ける受刑者を管理する「刑務所」の予算を無限に増やし続けることは実質的に不可能。そこで民間の資金やノウハウを活用することで、効率的な施設運営を目的とした「社会復帰促進センター」が誕生したのです。

刑務所と社会復帰促進センターの生活の違い

image by iStockphoto

実は「刑務所」と「社会復帰促進センター」は名称だけでなく、受刑者の生活も異なっています。ここでは具体的にこれらの施設でどのような生活を送っているのか見ていきましょう。

刑務所の生活

「刑務所」での生活は懲罰を目的としていることもあり、一般的な生活に比べて厳しいものと言えるでしょう。部屋も簡素な造りで、プライベートのない共同室か、極端に孤独な単独室の二択です。

懲役刑の受刑者は一日の大半を刑務作業に費やすことになる上、常に刑務所の職員に監視されており気を抜くことはできません。逆に禁固刑の受刑者も娯楽はほとんど制限されているため「暇を持て余す」という苦痛を感じることも。その場合みずから進んで刑務作業に参加することもあり、これを請願作業と言います。

\次のページで「社会復帰促進センターの生活」を解説!/

社会復帰促進センターの生活

「社会復帰促進センター」は「刑務所」に比べて充実した生活を送ることができる施設です。テレビやベッド、デスク、冷房など、まるでビジネスホテルのような個室がある施設も少なくありません。また民間の警備会社、施設管理会社、職業訓練会社、健康診断会社、食事・衣類提供・清掃会社などが入っており、非常にサービスが充実しています。

生活環境が充実している分、入所条件は「刑務所」に比べ厳しいです。具体的には刑期が短いかつ初犯、軽度の身体上の疾患または障がいがある、精神障害があるなどの条件を満たさなければ入所できません。

刑務所は国営、社会復帰促進センターは官民協同運営

受刑者であっても人権はありますし、いたずらに肉体的・精神的苦痛を与えてはいけません。しかしあまりに苦痛のない生活も懲罰としての目的を達成できませんし、「もう施設に戻りたくない」という再発防止意識の促進や、「あのような生活は送りたくない」という社会的な予防効果も期待できないでしょう。

私たちは受刑者の生活を自分たちの世界と別世界に考えがちですが、実態として世界はつながっています。一人一人が刑罰とは何なのかを考えることが、より良い社会を形作る一助になるのではないでしょうか。

" /> 3分で簡単にわかる刑務所と社会復帰促進センターの違い!入所条件や生活の違いも雑学好きライターがわかりやすく解説 – Study-Z
言葉雑学

3分で簡単にわかる刑務所と社会復帰促進センターの違い!入所条件や生活の違いも雑学好きライターがわかりやすく解説

受刑者が懲罰を受けるための施設「刑務所」。
ですが近年では「社会復帰促進センター」という施設に入所するケースもあるようです。
今回は「刑務所」と「社会復帰促進センター」の違いについて、雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

刑務所と社会復帰センターの違い

image by iStockphoto

受刑者が懲役刑(身柄を拘束され強制労働をさせられる刑罰)や禁固刑(身柄を拘束される刑罰)を受ける施設が「刑務所」ですね。しかし近年では「社会復帰促進センター」なる施設が設立されはじめ、受刑者はそちらに入所するケースも増えてきました。いったい「刑務所」と「社会復帰促進センター」は何が違うのでしょうか。ここではまず、両者の定義的な違いについて解説していきます。

刑務所:国家が運営

「刑務所」は国家が運営する刑事施設のこと。受刑者を収監し、懲役刑や禁固刑を与えつつ就職訓練などの処遇を行う刑事施設です。国の法律に違反した人物は、国が罰するという基本的なスタンスで運営されています。

社会復帰促進センター:官民協同で運営

「社会復帰促進センター」とは官民協同で運営する刑事施設のこと。海外ではPFI(Private Finance Initiative)という名称で知られる施設形態です。いわゆる第三セクター(国や自治体といった公的機関と、民間事業者が共同で出資)の施設で、運営も官民共同で行われています。

\次のページで「社会復帰促進センターはなぜできたのか?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: