3分でわかる生物兵器と化学兵器の違い!危険性と禁止条約についても軍事史に精通する高校教師がくわしく解説!
今回はそんな人体にとって非常に有害な両者について、定義から確認しつつ、軍事史に興味がある高校教師ライターの源シタゴウと一緒に解説していきます。
ライター/源シタゴウ
近現代史を学ぶ過程で軍事史にも興味を持ち、関連する書籍を読んでいる。特に1995年に起きた地下鉄サリン事件以降、サリンの歴史を調査中。
生物兵器
細菌兵器とも呼ばれる。微生物,生物学的毒素,植物の生長調整剤などを利用して,戦争あるいは謀略工作において人畜,植物の加害殺傷に使用される兵器。いわゆるABC兵器のB兵器にあたる。
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
化学兵器
化学反応を利用する兵器。化学兵器は古くから用いられたが,一般的には 20世紀以後に化学工業の発達とともに生まれた毒ガス,煙幕,焼夷弾,枯葉剤などをさす。核兵器とともに大量破壊兵器として,通常兵器から区別されている。
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
違い1.感染か毒か
生物兵器と化学兵器の定義でわかるのは、どちらも人体の内面に被害を及ぼす危険な兵器であるということですが、違いとしては、生物兵器が細菌による感染症を引き起こすことを目的とする一方で、化学兵器は毒物を散布することで、人間の神経などに影響を与える兵器だということです。
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違い2.被害区域
続いての違いとして挙げられるのは、被害が及ぶ範囲の違いです。生物兵器は、簡単に人から人へ感染がうつるので、被害がかなり広範囲に及ぶことが考えられます。このことから、バイオテロの危険性が指摘されているのです。一方の化学兵器は、使用される兵器の種類によっても異なりますが、生物兵器ほど被害範囲は広がらないと考えられています。
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製造は簡単で低コスト
一般的に生物兵器を製造することは容易であり、しかもコストを低く抑えることができます。そのため、「貧者の核兵器」と呼ばれ、世界各国から警戒されているのです。日本でもかつてのオウム真理教という団体が、長野県松本市、東京都の地下鉄でサリンを散布し、多くの死傷者を出しました。
様々な種類と強さがある
一口に生物兵器と言っても様々な種類と強さの違いがありますので、主な生物兵器をあげておきましょう。
1位 エボラウイルス
2位 HIV
3位 ペスト
4位 炭疽菌
5位 天然痘
いずれも非常に危険なウイルス・細菌であり、生物兵器として意図的に使用されれば、計り知れない数の死傷者が出ることが予想されます。
殺傷能力が高い
化学兵器の特徴としてまず挙げられるのは、殺傷能力の高さです。マスタードガスやサリン、VXガスなどがよく知られていますが、防護が不十分である場合は致死性が高いと言えます。各国の正規軍は化学兵器が使用された場合に備えて、十分な装備がされていますが、民間人や民兵などの不十分な装備の相手には高い威力を発揮するでしょう。
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検地と分析が難しい
一般的に化学兵器が使用された痕跡を検知することは困難とされています。地中に残留する細菌やウイルスが検知されることはほとんどありません。被害者の受けた被害が化学兵器によるものと断定することも容易ではありません。
生物・化学兵器に対する世界の取り組み
今まで見てきたように、生物兵器と化学兵器は通常兵器と異なる大量破壊兵器であり、人道上使用してはならないものです。そこで、国連のもと世界各国は使用を禁止する取り組みを続け、条約が発効しています。それぞれ見ていきましょう。
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