今回は高炉と電炉の違いについて紹介していきます。高炉も電炉もあまり馴染みのない言葉だよな?どちらも日常生活に欠かせない鉄を作る工場の設備なんです。一方でそれぞれが難題に直面していることがわかった。鉄は日本の重要な基幹産業だから、社会に及ぼす影響も非常に大きい。高炉と電炉の違いは何か、どのような課題を抱えているのかを元鉄鋼マンのホンゴウ・タケシと一緒に解説していきます。

ライター/ホンゴウ・タケシ

九州の高炉メーカーのある街に生まれ育ち、大学卒業後は別の高炉メーカーで勤務経験をもつビジネスライター。日々変化する経済動向をわかりやすく解説していく。

高炉も電炉も「鉄」を作る主要な設備

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高炉は溶鉱炉とも呼ばれ、鉄を取り出すための工程である製銑(せいせん)を行う設備です。製銑工程のあと転炉という設備で、粘りや硬さなど鉄の基本的な性能を決める製鋼を行います。この工程のあと、板や棒に整形して出荷です。

一方、電炉は原料から製鋼工程まで行う設備。正確には「電気炉」といいますが、「電炉」という言葉で説明を続けますね。

溶鉱炉と転炉の設備を合わせて「高炉」と呼ぶことが多いので、これ以降は、この意味で「高炉」という言葉を用います。また高炉で鉄鋼製品を作る会社が高炉メーカー、電炉を用いる会社が電炉メーカーです。

高炉と電炉では、「鉄」を作る原料が違う

高炉と電炉では製鋼するまでの工程や設備が違うため、その原料が異なります。それぞれの違いや各メーカーについて見ていきましょう。

高炉:主原料は鉄鉱石

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溶鉱炉では鉄鉱石を溶かし、銑鉄(せんてつ)いう中間製品を製造。このとき石炭を加熱処理したコークスを入れて炉内温度を高め、不純物除去のため石灰石も用います。この銑鉄には多くの不純物が含まれ硬くて脆い状態のため、転炉で成分調整を行って様々な鉄鋼製品にするのです。高炉製品にはハイブリッドカーのモーター部品に使われる電磁鋼や自動車の軽量化や衝突安全に寄与するハイテン材(高強度鋼)など高い技術力を要する製品が多くあります。

日本には、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社しか高炉メーカーはありません。

電炉:主原料は鉄スクラップ

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電炉は高い電気エネルギー用いて放電現象(アーク放電)を人工的に発生させるのです。そのとき生じる放電熱が原料のスクラップ鉄を融解させます。融解後に炉内で成分調整を行い、鉄鋼製品となるのです。電炉メーカーは自動車部品向け鋼材や建材を得意とし、前者を得意とする企業を特殊鋼メーカー、後者を普通鋼電炉メーカーとも呼びます。

電炉メーカーは国内に60社ほどあり、そのほとんどが経営規模の小さい企業です。電炉業界売上高トップの大同特殊鋼でも高炉メーカー第3位の神戸製鋼所と比べ1/4の売上高。

工場設備や研究開発には多額の資金が必要なため、多くの電炉メーカーは高炉メーカーの傘下に入り資本面や技術面での協力を得ています。

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高炉メーカーと電炉メーカーとの競争

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かつて高炉製品は高い品質が求められた製品の材料、電炉は厳しい品質は求められない製品の材料という棲み分けがありました。

しかし電炉の技術向上により、近年ではその境界線が崩れつつある状況です。独立系電炉メーカーである東京製鐵は「鉄鋼業界の暴れん坊」とも呼ばれ、低価格を武器に、これまで日本製鉄やJFEスチールの得意分野へ進出してきました。これに対し高炉メーカー各社はコスト削減に努め、電炉メーカーのさらなるシェア拡大を阻止しています。

それぞれの課題

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いま高炉メーカー、電炉メーカーの各社は重大な課題を抱えています。それぞれ見てきましょう。

高炉メーカーが抱える課題

温室効果ガスである二酸化炭素削減が最重要課題です。

溶鉱炉では石炭原料のコークスを大量に燃焼させます。溶鉱炉は簡単に停止できないためコークス燃焼による二酸化炭素の排出は24時間365日止まりません。この結果、鉄鋼業からの二酸化炭素排出量は国内全排出量の12%も占めているので、大問題ですよね。

政府は2050年までに二酸化炭素ゼロを発表しており、各社はその対応に努めています。二酸化炭素ゼロへのゴールは「水素還元製鉄」の実用化。これはコークスの代わりに水素を用いる製鉄法のため二酸化炭素を全く発生させません。しかし技術的に高いハードルが多くあり、中継ぎ策として大型電炉を建設し溶鉱炉からのシフトを図る計画もあります。

電炉メーカーが抱える課題

大資本の高炉メーカーが電炉に進出することで、気運が高まりつつあるのは電炉業界の再編です。

電炉が得意とする建材などの鉄鋼製品は海外での需要が高く、少子高齢化による内需低下への打開策として、電炉業界では海外展開が取りざたされています。しかし電炉メーカーの多くは経営規模が小さく、海外展開どころか、社会変動に耐え切れず直近10年でも複数の企業が自主廃業している現状です。

国内鉄鋼生産量のうち電炉の占める割合は、米国69%EU44%と比べ日本は25%と低く、日本の電炉は世界的に産業構造上後れを取っています。経済産業省も電炉業界に対し再編を促した過去もあり、今後の業界再編は不可避と考えるエコノミストも増えてきました。

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高炉も電炉も「鉄」を作り、日本経済を支えている

海外へ輸出する工業製品のうち鉄鋼製品は、自動車、半導体電子部品に次ぐ第3位です。加えて世界的に鉄鋼需要は高まっています。2005年では10.5億トンだった世界の鉄鋼需要は、2021年には18.45億トンまで伸びている状況です。高炉と電炉にはそれぞれ課題を抱えていますが、各社が手を組み助け合うことで、鉄鋼業界ひいては日本経済は成長していきます。もしニュースで「高炉」や「電炉」という言葉を耳にすることがあれば、ぜひ注目してみてください。

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雑学

簡単でわかりやすい!高炉と電炉の違いとは?メーカーが抱える課題も元鉄鋼マンが詳しく解説

高炉も電炉も「鉄」を作り、日本経済を支えている

海外へ輸出する工業製品のうち鉄鋼製品は、自動車、半導体電子部品に次ぐ第3位です。加えて世界的に鉄鋼需要は高まっています。2005年では10.5億トンだった世界の鉄鋼需要は、2021年には18.45億トンまで伸びている状況です。高炉と電炉にはそれぞれ課題を抱えていますが、各社が手を組み助け合うことで、鉄鋼業界ひいては日本経済は成長していきます。もしニュースで「高炉」や「電炉」という言葉を耳にすることがあれば、ぜひ注目してみてください。

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