今回のテーマは「古事記」と「日本書紀」の違いについてです。『日本最古の歴史書』として歴史の授業で聞いたことはあっても、どのようなものか詳しいことは知らない者も多いかもしれませんね。詳しく学芸員ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。好奇心旺盛で、雑学好き。たくさん仕入れた雑学をわかりやすく伝えられるよう日々鍛錬している。

「古事記」と「日本書紀」の違い

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「古事記」と「日本書紀」はまとめて「記紀(きき)」と呼ばれることもある、日本で最も古い歴史書です。どちらも第40代天皇の天武(てんむ)天皇の命令によって8世紀始めに編纂(へんさん)が始められました。同時期に作られた歴史書である「古事記」と「日本書紀」では何が違うのでしょうか?これを読めばそれぞれの特徴がわかり理解が深まります。

1番の違いは「巻数」

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「古事記」と「日本書紀」の1番の違いは巻数。「古事記」は上・中・下巻の3巻からできているのに対し、「日本書紀」は30巻に及びます。巻数が大きく違うため、編纂にかけた時間も全く違うのがポイントです。編纂にかかった時間は「古事記」で約4ヶ月、日本書紀で約39年と言われています。

古事記は「物語調」、日本書紀は「編年体」

違いを比べる時に最も気になる点は、書かれている内容ですね。どちらも歴史が書かれているのは一緒ですが、描かれ方に大きな違いがあります。

まず古事記は小説のような物語調です。また和化漢文といって、日本語の音を漢字で表記した文字で書かれています。これは当時まだ日本に「ひらがな」や「カタカナ」が存在しないため、漢字で表していました。一方日本書紀は起こった出来事を年代順に記載している編年体で書かれています。また古代中国の文章である漢文で書かれているのが特徴です。

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「日本」の表記の違い

古事記と日本書紀では大半が日本の国について書かれていますが、その表記が異なります。古事記では昔の日本の呼び方「倭」や「大和」という表記です。一方日本書紀ではタイトル通り「日本」と書かれています。「日本」という言葉が登場したのは、日本書紀が初めてです。

古事記は国内向け、日本書紀は外国向けに作られた?

古事記は日本国内向けに、日本書紀は主に中国や東アジア圏の外国向けに書かれたものです。古事記では日本人に向けて天皇家の正当性をアピールしています。そのため、当時の日本語である和化漢文が使われているのです。

一方日本書紀は日本という国の成立を記しています。これは近隣諸国に日本を認めさせるための手段として歴史書を作った背景がありました。そのため中国語である漢文で書かれているのです。

神話時代が多く書かれた古事記

古事記では3巻中1巻、割合として全体の約33%が神話について書かれています。この神話は日本各地でそれぞれ伝えられてきた話がまとめられ、世界の始まりから日本の成り立ちまでが描かれているのです。神話時代から第33代推古天皇まで記載されています。

一方、日本書紀では神話時代は30巻中2巻、割合としては全体の約6%です。第41代持統天皇まで書かれ、朝鮮半島の出来事も多く書かれています。この持統天皇は、編成を命じた天武天皇のお妃様です。

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編纂したのは誰?

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約4ヶ月で作られた古事記に関わったのは稗田阿礼(ひえだのあれ)と太安万侶(おおのやすまろ)の2人。人数も少ないんですね。元々口伝えで広まっていた話を稗田阿礼が覚え、口承したものを太安万侶が書き留めていったとされています。稗田阿礼の記憶力は強靭ともいえ、一説では女性だったといわれているそうです。

一方日本書紀は川島皇子(かわしまのみこ)らが命じられ、途中天武天皇の死によって作業が一時中断しましたが、舎人親王(とねりしんのう)などによって完成しました。皇族・豪族・官吏の12人が編纂に携わったとされています。

完成した時期は?

古事記は西暦712年に完成しました。第43代元明(げんめい)天皇の時代です。この人は編纂を命じた天武天皇の息子、草壁皇子のお妃様。一方日本書紀はそれから8年後の720年に完成します。第44代元正(げんしょう)天皇の時代です。この人は元明天皇の娘。天武天皇から見て孫にあたります。

「古事記」は天皇家の意義を「日本書紀」は日本の正式な歴史について書かれた

古事記は2人がかりで約4ヶ月で作られました。神話の話が多く物語調で、天皇家の意義をアピールする内容になっています。一方日本書紀は外国に日本という国を認めさせるために書かれたもので、多くの人と時間を使って完成しました。そのため漢文で起こった出来事を年代順に記載しています。どちらも天武天皇によって編成が命じられましたが、それぞれ役割の違う歴史書であることがわかりました。

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3分で簡単にわかる!「古事記」と「日本書紀」の違いとは?内容や歴史も学芸員ライターがわかりやすく解説

今回のテーマは「古事記」と「日本書紀」の違いについてです。『日本最古の歴史書』として歴史の授業で聞いたことはあっても、どのようなものか詳しいことは知らない者も多いかもしれませんね。詳しく学芸員ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。好奇心旺盛で、雑学好き。たくさん仕入れた雑学をわかりやすく伝えられるよう日々鍛錬している。

「古事記」と「日本書紀」の違い

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「古事記」と「日本書紀」はまとめて「記紀(きき)」と呼ばれることもある、日本で最も古い歴史書です。どちらも第40代天皇の天武(てんむ)天皇の命令によって8世紀始めに編纂(へんさん)が始められました。同時期に作られた歴史書である「古事記」と「日本書紀」では何が違うのでしょうか?これを読めばそれぞれの特徴がわかり理解が深まります。

1番の違いは「巻数」

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「古事記」と「日本書紀」の1番の違いは巻数。「古事記」は上・中・下巻の3巻からできているのに対し、「日本書紀」は30巻に及びます。巻数が大きく違うため、編纂にかけた時間も全く違うのがポイントです。編纂にかかった時間は「古事記」で約4ヶ月、日本書紀で約39年と言われています。

古事記は「物語調」、日本書紀は「編年体」

違いを比べる時に最も気になる点は、書かれている内容ですね。どちらも歴史が書かれているのは一緒ですが、描かれ方に大きな違いがあります。

まず古事記は小説のような物語調です。また和化漢文といって、日本語の音を漢字で表記した文字で書かれています。これは当時まだ日本に「ひらがな」や「カタカナ」が存在しないため、漢字で表していました。一方日本書紀は起こった出来事を年代順に記載している編年体で書かれています。また古代中国の文章である漢文で書かれているのが特徴です。

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