この記事ではヒメジオンとハルジオンの違いについてみていきます。この2つの雑草では名前が似ているが、漢字表記が違っている。それぞれ「姫女苑」と「春紫苑」と表記される別物なんです。ハルジオンは春にしか咲かないというのが、ポイントらしいのです。今回はそんな「名前がよく似た雑草」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター・2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「似たような名前をもつ雑草」である、ヒメジオンとハルジオンの違いについてわかりやすく解説していく。

ヒメジョオンとハルジオンを大まかに比較

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まずはヒメジョオンとハルジオンが、どのような植物なのか大まかに解説していきます。じつは「ヒメジオン」や「ハルジョオン」という呼称は間違い。漢字表記を知っていれば、正しい呼称が覚えられます。両者を見分ける前に、基礎知識をつけておきましょう。

ムカシヨモギ属の多年草「ハルジオン/春紫苑」

「ハルジオン/春紫苑」は、キク科ムカシヨモギ属の多年草。関東を中心に日本全国の空き地に自生する雑草です。

じつはハルジオンは、北米原産の植物。日本には観賞用として移入されました。その後瞬く間に全国に広まり、今なお農作物の生育を妨げる「雑草」として悪名を轟かせています。その証拠に、ハルジオンは「要注意外来生物」と「侵略的外来種ワースト100」の2つを冠しているのです。

「ヒメジオン」ではなく「ヒメジョオン/姫女苑」

しばしばハルジオンと比較されるのは、同ムカシヨモギ属で似た花をつける一年草「ヒメジョオン」です。「ヒメジオン」と呼ぶのは間違い。こちらは漢字で「姫女苑」と書くからです。そんなヒメジョオンはハルジオン同様、北米原産の雑草。こちらも日本全国に広まった「要注意外来生物」として知られています。

この記事では「似たもの同士の雑草」ヒメジョオンとハルジオンの具体的な違いについて徹底解説。以下を読めば、両者の見分けがつくようになります。さらに「食べられる野草」でもあるヒメジョオン/ハルジオンの、採取と調理の方法についても紹介。よく見るキク科の雑草について、理解を深めていきましょう!

ヒメジョオンとハルジオンの見分け方

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ヒメジョオンとハルジオンを見分ける上で、注目したいのは4つの部位。両者では具体的に、花・つぼみ・葉・茎に違いが存在するのです。なかでも花を観察すれば、簡単に見分けがつきます。ハルジオン(春紫苑)は、名前通りの花をつけるというのがヒントです。以下みていきましょう!

\次のページで「その1.花の違い」を解説!/

その1.花の違い

花に注目すると、ヒメジョオンとハルジオンとを簡単に見分けられます。一番わかりやすいのは花の色の違い。ヒメジョオンの花びらは白一色ですが、ハルジオンの花びらは純白から薄紫までバリエーションがあるのです。両者では開花時期も違います。ハルジオンは、その名の通り春〜初夏に開花。対してヒメジョオンはハルジオンと入れ替わるように、初夏〜秋に開花するのです。

ヒメジョオン/ハルジオンの花びら1枚1枚は、正式には「舌状花」という花。複数の花が集まって、菊の花を形成しています。そんなヒメジョオン/ハルジオンの「舌状花」には、太さと数に相違が。ハルジオンのほうが、より細く・より多くの舌状花をもっているのです。ハルジオンの花は、「毛のような花びら」をびっしりと付けています。

その2.つぼみの違い

ヒメジョオン/ハルジオンとでは、つぼみの姿勢にも違いが。ヒメジョオンではつぼみが上向きなのに対して、ハルジオンではうつむいているのです。どちらも開花時には、上を向きます。花の見分けがつきにくい場合は、一緒についているつぼみを確認するとよいでしょう。

その3.葉の違い

ヒメジョオンとハルジオンは、花・つぼみがついていなくても見分けられます。葉のつくりが違うためです。ハルジオンは、付け根が広がった葉をもちます。葉の根元が茎を抱いているのが、特徴です。対してヒメジョオンの葉は、根元が細いため、茎を抱きません。

その4.茎の違い

ヒメジョオンとハルジオンとでは、茎の硬さや断面も違います。ヒメジョオンでは、茎の中に「白いスポンジ」状の髄(ずい)が詰まっているのが特徴。茎を指でつまむと硬さが感じられます。対してハルジオンの茎では中身が空洞。つまむとたやすく折れてしまいます。

ヒメジョオン/ハルジオンは食べられる野草

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ヒメジョオンとハルジオンは、ともに「食べられる野草」でもあります。採取・調理の方法は、どちらも一緒。野草を採ったことがないという人でも、簡単に調理までできてしまいます。どこにでも生えている雑草の食べ方を学んで、有事に備えておきましょう!

\次のページで「ヒメジョオン/ハルジオンの可食部」を解説!/

ヒメジョオン/ハルジオンの可食部

ヒメジョオン/ハルジオンは、どちらも「野草採り」の入門にうってつけ。空き地であればどこにでも自生していて、年中食べられる親しみやすい野草です。

採り方は簡単。花期以外は、地面に張り付いた葉(ロゼット葉)を根本から鎌で刈り取って食用とします。また花やつぼみも食用です。周辺の柔らかい葉・茎ごと摘み取ってしまいましょう。野草にありがちな「似ている毒草」や「強いアク」がないので、気軽に採取できますよ。

ヒメジョオン/ハルジオンの食べ方

ヒメジョオン/ハルジオンで、おすすめしたい食べ方は「天ぷら」です。調理法は簡単で、採取したロゼット葉や花・つぼみに小麦粉をまぶして170度で揚げるだけ。下処理要らずで、菊の香りと苦味が活きた天ぷらに仕上がります。とくに天ぷらに向くのは、香りと苦味が強いヒメジョオン。ぜひお試しください。

ほかにもヒメジョオン/ハルジオンは、和え物にも合います。用いるのは塩茹でして、水さらししたロゼット葉。味噌マヨ(味噌:マヨネーズ=1:3で混ぜたもの)に和えたり、胡麻和えにしたりすれば、野草の香りが楽しめますよ。

春に咲くのは「ハルジオン」のほう

ヒメジョオンとハルジオンは、ともにキク科ムカシヨモギ属の雑草で、似た名前をもっています。名前を漢字に直すと違いが明らかに。漢字で「春紫苑」と書くハルジオンは、春に開花します。名前通り「薄紫色の花」を咲かせる個体が一部存在するのも特徴です。対してヒメジョオン(姫女苑)は、ハルジオンのあとに開花。全ての個体が、純白の花を咲かせます。こちらを「ヒメジオン」とするのは間違いです。

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雑学

簡単でわかりやすい!ヒメジオンとハルジオンの違いとは?花や茎の違い・見分け方や食べ方も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではヒメジオンとハルジオンの違いについてみていきます。この2つの雑草では名前が似ているが、漢字表記が違っている。それぞれ「姫女苑」と「春紫苑」と表記される別物なんです。ハルジオンは春にしか咲かないというのが、ポイントらしいのです。今回はそんな「名前がよく似た雑草」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター・2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「似たような名前をもつ雑草」である、ヒメジオンとハルジオンの違いについてわかりやすく解説していく。

ヒメジョオンとハルジオンを大まかに比較

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まずはヒメジョオンとハルジオンが、どのような植物なのか大まかに解説していきます。じつは「ヒメジオン」や「ハルジョオン」という呼称は間違い。漢字表記を知っていれば、正しい呼称が覚えられます。両者を見分ける前に、基礎知識をつけておきましょう。

ムカシヨモギ属の多年草「ハルジオン/春紫苑」

「ハルジオン/春紫苑」は、キク科ムカシヨモギ属の多年草。関東を中心に日本全国の空き地に自生する雑草です。

じつはハルジオンは、北米原産の植物。日本には観賞用として移入されました。その後瞬く間に全国に広まり、今なお農作物の生育を妨げる「雑草」として悪名を轟かせています。その証拠に、ハルジオンは「要注意外来生物」と「侵略的外来種ワースト100」の2つを冠しているのです。

「ヒメジオン」ではなく「ヒメジョオン/姫女苑」

しばしばハルジオンと比較されるのは、同ムカシヨモギ属で似た花をつける一年草「ヒメジョオン」です。「ヒメジオン」と呼ぶのは間違い。こちらは漢字で「姫女苑」と書くからです。そんなヒメジョオンはハルジオン同様、北米原産の雑草。こちらも日本全国に広まった「要注意外来生物」として知られています。

この記事では「似たもの同士の雑草」ヒメジョオンとハルジオンの具体的な違いについて徹底解説。以下を読めば、両者の見分けがつくようになります。さらに「食べられる野草」でもあるヒメジョオン/ハルジオンの、採取と調理の方法についても紹介。よく見るキク科の雑草について、理解を深めていきましょう!

ヒメジョオンとハルジオンの見分け方

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ヒメジョオンとハルジオンを見分ける上で、注目したいのは4つの部位。両者では具体的に、花・つぼみ・葉・茎に違いが存在するのです。なかでも花を観察すれば、簡単に見分けがつきます。ハルジオン(春紫苑)は、名前通りの花をつけるというのがヒントです。以下みていきましょう!

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