この記事では「GMT」と「UTC」の違いについて踏み込んでいきます。どちらも世界共通の時間「標準時」を表しているが、実は定められた時期が違う。後者は現在も使われており、正確性を期すために細かい修正を加えたり、原子時計なるものを利用していたりするようです。グローバル社会において重要な役割を果たしているこの2つの時刻について、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。「時間のものさし」たるGMTとUTCの違いについて詳しく解説していく。

GMT:グリニッジ標準時

GMTは「グリニッジ標準時」のことです。英語のGreenwich Mean Timeの頭文字をとっており、グリニッジ平均時ともいいます。

かつて世界の国々は、その国が決めた経線を基準とする平均太陽時標準時として用いていました。中でも、ロンドンのグリニッジ天文台を通る「グリニッジ子午線」を経度0度(本初子午線)と定めた平均太陽時が、1972年まで世界標準時としても広く使われていたのです。なお、現在の世界標準時はセシウム原子時計を元に算出される「協定世界時(UTC)」となっています。

視太陽時と平均太陽時

太陽が真南にくる「南中」を基準にして定めた時刻を「視太陽時」視太陽時の定める1日を「視太陽日」といいます。

視太陽日は、ある日の南中から次の日の南中までの間の時間を1日とするものですが、実は長さが一定ではありません。地球の公転軌道が円ではなく楕円であること、地球の自転軸が公転面から約23.4度傾いていることから、季節により太陽が天空を動くスピードが変わり、結果的に1日の長さが変動してしまうのです。特に3月や9月の視太陽日は短く、6月や12月は長くなります。

より正確な時刻を求めるため考え出されたのが、太陽の代わりに一定のスピードで天空を動く天体「平均太陽」であり、その動きに基づいて定めた時刻が「平均太陽時」です。実際には、地球の公転の影響が小さい恒星の南中を観測し、そこから求められた恒星時から、平均太陽時を計算します。

グリニッジ天文台について

image by iStockphoto

グリニッジ天文台は1675年イングランド国王チャールズ2世がロンドン郊外グリニッジに設立した王立天文台です。何度か移転を繰り返しましたが、1998年もう1つの王立天文台であるエディンバラ天文台と統合され、閉鎖されました。現在は観測機器はなく、史跡として維持されています。

1851年、当時の台長ジョージ・ビドル・エアリーは、天体が子午線を通過するのを観測する装置「子午環」を、当時の天文台本館に設置しました。この子午環のある地点が、グリニッジ子午線の基準となったのです。

1884年、ワシントンD.Cで開催された国際子午線会議において、世界共通の経度の基準である本初子午線グリニッジ子午線が採用されました。

\次のページで「本初子午線とは」を解説!/

本初子午線とは

本初子午線経度0度0分0秒と定義された基準の子午線(経線)です。「本初」とは「最初」という意味で、本初子午線より東は東経、西は西経で表されます

緯度には赤道や北極南極など明確な基準がありますが、経度には存在しません。そのため、経度0度たる本初子午線を人為的に設ける必要があり、世界各国でさまざまな本初子午線が設定されてきました。中でも、多くの船舶が利用していたグリニッジ子午線が本初子午線に採用されたのです。

1980年代以降国際的に使用されているのは、地球の重力中心を通るように修正変更した「IERS基準子午線」で、エアリーの設定した子午線より東へ約100mほどずれています。また、反対側の経度180度を基準に決められたのが国際日付変更線です。

UTC:協定世界時

 UTCは「協定世界時」のことで、1982年1月1日よりGMTに代わり現在の世界基準となっている時刻です。

セシウム原子時計に基づく「国際原子時」がベースになっており、これにうるう秒を差し加えたり差し引いたりすることで、地球の自転運動の揺らぎ補正を加えた平均太陽時「世界時(UT1)」との差が常に0.9秒以内になるよう調整されています。

英語ではCoordinated Universal Timeです。しかし、フランス語ではTemps Universel Coordonné、イタリア語ではTempo Coordinato Universaleと言語ごとに頭文字が変わってしまうため、略称は「UTC」に統一されています。また、Zulu time(ズールータイム)と表すことも。

地球の自転速度は一定ではありません。地球の自転軸が移動することで相対的に極もずれてしまう極運動、月の引力による潮汐、海流や大気の循環、地球の核の流動など、地球の自転速度にゆらぎが生じる要因は数多くあります。マグニチュード9前後の巨大地震も要因の1つで、2011年3月11日の東日本大震災も自転速度に影響しました。

国際原子時(TAI)とGPS

国際原子時(TAI、International Atomic Timeは、国際度量衡局 (BIPM) に規定・管理される時刻です。世界各地に数百個ある原子時計の時刻を総合し、より正確な時刻が作成されています

TAIと深いかかわりがあるのが、GPS(Global Positioning System)です。複数のGPS衛星が電波を発信した時刻と、受信機がその電波を受信した時刻との差を計算することで衛星と受信機との距離を割り出し、受信機がいる場所がリアルタイムで分かるシステムですが、より正確な位置情報を得るためには、時刻データも正確でなくてはいけません。

そのため、GPS衛星は精度の高い原子時計を搭載しています。この原子時計の時刻と、各々遠く離れた場所にある原子時計の時刻を比較し、誤差を調整しているのです。

原子時計とは

Atomic Clock Resonator.jpg
Momotarou2012 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

かつて「1秒」は1日の長さ、すなわち地球の自転を基準に設定されていました。しかし地球の自転速度は前述の通り一定ではなく、新たな基準として選ばれたのが原子だったのです。

原子や分子は、決まった周波数の電磁波を吸収・放射(共鳴)する性質があります。この性質を利用し、超高精度の水晶振動子によるクォーツ時計と組み合わせたのが「原子時計」です。高精度のものは10‐15(3000万年に1秒)程度、精度の低いものでも10‐11(3000年に1秒)程度の誤差しかありません。

セシウム同位体の中で唯一放射線を出さず、自然界で安定しているセシウム133原子を用いたセシウム原子時計が現在の主流です。国際単位系 (SI)においては「1秒=セシウム133原子が共鳴するマイクロ波の周期の9,192,631,770倍」と定義されています。

JST:日本標準時

Akashi-135-Hitomarumae-02.jpg
Asagiri Maiko - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

日本標準時(JST、Japan Standard Time)は、総務省所管の国立研究開発法人・情報通信研究機構の原子時計で供給されるUTCを、9時間(日本標準時子午線である東経135度分の時差)進めた時刻です。すなわち、JSTから9時間を引けばUTCになります。単に日本時間と呼ばれることも。

日本全国で使われており、NHKをはじめとする放送局やNTTの時報などに用いられています。

JSTで午前10時58分30秒の場合、「10:58:30(UTC+0900)」と表記されます。

東経135度が日本標準時子午線になった理由

なぜ日本標準時子午線が東経135度になったかを説明しましょう。地球1周分360度を1日24時間で割ると15度で、経度15度ごとに1時間の時差となります。日本の領土を通り、かつ本初子午線から経度15度の倍数にあたる経線は、東経135度東経150度の2つです。


東経135度兵庫県明石市をはじめ多くの市町村を通ります。一方、東経150度は日本の最東端である南鳥島付近ですが、南鳥島は本州から1800km離れている上、一般人は立ち入り禁止とされており、日本標準時子午線には適切ではなかったのです。

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GMTはかつての世界標準時、UTCは現在の世界標準時

GMTはグリニッジ子午線を基準にした平均太陽時でかつての世界標準時、UTCは精度の高い原子時計の時刻にうるう秒の補正を加えたもので、GMTに代わる現在の世界標準時であることを解説しました。

古来より、太陽の動きや水などを使って時の流れを把握しようとしていた人類。この「時を正確に知りたい」という強い思いが、原子の共鳴周波数を用いた超高精度の原子時計へとつながっていったのです。

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3分で簡単「GMT」と「UTC」の違い!どこの時間を表している?日本時間の計算についても工学系院卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では「GMT」と「UTC」の違いについて踏み込んでいきます。どちらも世界共通の時間「標準時」を表しているが、実は定められた時期が違う。後者は現在も使われており、正確性を期すために細かい修正を加えたり、原子時計なるものを利用していたりするようです。グローバル社会において重要な役割を果たしているこの2つの時刻について、工学系院卒ライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。「時間のものさし」たるGMTとUTCの違いについて詳しく解説していく。

GMT:グリニッジ標準時

GMTは「グリニッジ標準時」のことです。英語のGreenwich Mean Timeの頭文字をとっており、グリニッジ平均時ともいいます。

かつて世界の国々は、その国が決めた経線を基準とする平均太陽時標準時として用いていました。中でも、ロンドンのグリニッジ天文台を通る「グリニッジ子午線」を経度0度(本初子午線)と定めた平均太陽時が、1972年まで世界標準時としても広く使われていたのです。なお、現在の世界標準時はセシウム原子時計を元に算出される「協定世界時(UTC)」となっています。

視太陽時と平均太陽時

太陽が真南にくる「南中」を基準にして定めた時刻を「視太陽時」視太陽時の定める1日を「視太陽日」といいます。

視太陽日は、ある日の南中から次の日の南中までの間の時間を1日とするものですが、実は長さが一定ではありません。地球の公転軌道が円ではなく楕円であること、地球の自転軸が公転面から約23.4度傾いていることから、季節により太陽が天空を動くスピードが変わり、結果的に1日の長さが変動してしまうのです。特に3月や9月の視太陽日は短く、6月や12月は長くなります。

より正確な時刻を求めるため考え出されたのが、太陽の代わりに一定のスピードで天空を動く天体「平均太陽」であり、その動きに基づいて定めた時刻が「平均太陽時」です。実際には、地球の公転の影響が小さい恒星の南中を観測し、そこから求められた恒星時から、平均太陽時を計算します。

グリニッジ天文台について

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グリニッジ天文台は1675年イングランド国王チャールズ2世がロンドン郊外グリニッジに設立した王立天文台です。何度か移転を繰り返しましたが、1998年もう1つの王立天文台であるエディンバラ天文台と統合され、閉鎖されました。現在は観測機器はなく、史跡として維持されています。

1851年、当時の台長ジョージ・ビドル・エアリーは、天体が子午線を通過するのを観測する装置「子午環」を、当時の天文台本館に設置しました。この子午環のある地点が、グリニッジ子午線の基準となったのです。

1884年、ワシントンD.Cで開催された国際子午線会議において、世界共通の経度の基準である本初子午線グリニッジ子午線が採用されました。

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