この記事では山わさびとわさびの違いについてみていきます。2つとも「ペースト状の香辛料」というイメージがあるよな。じつは山わさびとわさびでは、分類や原産地が異なるんです。そのため見た目や風味が違うみたいです。今回はそんな「香味野菜」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「アブラナ科の香味野菜」である、山わさびとわさびの違いについてわかりやすく解説していく。

山わさびとわさびを大まかに比較

image by iStockphoto

海外生まれの「山わさび」は、わさびとは別種の植物。名前にわさびとついていますが、それは日本での別名に過ぎません。英語名のほうが、より有名でしょう。山わさびの正体は、ローストビーフに添えられる、あの香辛料です。まずは山わさびとわさびが、どんな植物なのか大まかにみていきましょう!

「山わさび」は海外原産

「山わさび」は「わさび大根」の異名をもつ、フィンランド原産の香味野菜。正式にはアブラナ科セイヨウワサビ属の「セイヨウワサビ」という植物です。海外では「ホースラディッシュ」や「レフォール」と呼ばれています。その主な産地は、アメリカ・イリノイ州。日本は北海道で、栽培が盛んです。そんな山わさびは、12月~3月に旬を迎えます。北欧同様の冷涼な気候で、辛味や香りが増すのです。

日本古来の「わさび」

「わさび」は日本固有種で、アブラナ科「ワサビ属」の植物。約400年前・江戸時代から栽培が続く、歴史ある日本の香味野菜です。そのため、海外でもローマ字で「wasabi」と呼ばれています。日本では、先ほどの山わさびと区別するために「本わさび」と呼ばれることも。そんなわさびは、長野県・静岡県・岩手県で盛んに栽培されています。こちらも11月〜2月に旬を迎える、冬の野菜です。

以下この記事では、山わさびとわさびの具体的な違いについて解説していきます。両者では原産地や分類が違うだけでなく、見た目や風味にも違いが。わたしたちが普段食べている「チューブわさび」の正体についても、みていきましょう!

山わさびとわさびの具体的な違いは3つ

image by iStockphoto

ここからは、山わさびとわさびの具体的な違いについて、3つ紹介します。じつはポピュラーな「チューブわさび」の原材料は、本わさびではありません。以下、食卓のわさびの正体を追っていきましょう!

\次のページで「違い1.根や葉の見た目」を解説!/

違い1.根や葉の見た目

分類が違う山わさびとわさびとでは、見た目に違いが現れます。特に根の部分をすりおろせば、違いは一目瞭然。日本のわさびが緑色なのに対して、山わさびは白色なのです。さらに両者では、葉の形状にも違いが。わさびは漢字で「山葵」と書くように、葵(徳川家の家紋)に似た、ハート型の葉をもちます。対して山わさびでは、大根に似た長い葉が特徴的です。

違い2.辛さや風味

山わさびとわさびは、どちらも「アリルイソチオシアネート」という辛味成分をもちます。しかし両者の辛さや風味は別物。単純な辛さでは、山わさびがわさびの1.5倍ほど勝ります。ですが風味に優れるのは、日本のわさび。わさびだけがもつ「ω-メチルチオアルキルイソチオシアネート」によって、鼻に抜ける爽やかな香りが楽しめますよ。

違い3.栽培にかかる手間

日本原産のわさび(本わさび)は、栽培に手間がかかる高級品。暑さにも寒さにも弱く、平均気温が12〜15度前後の地域でしか育ちません。さらに日差しに弱いので、栽培時に木陰を必要とします。そんな繊細なわさびのうち、「沢わさび/水わさび」はひときわ高級。数少ない清流がそそぐ水田で、3年もかけて栽培されるのです。

わたしたちが普段食べている「わさび」は、安価な山わさび。浸水しても根が出せて、改良されていない山の土でも育つ、手間のかからない作物なのです。市販の「チューブわさび/練りわさび」や「粉わさび」には、辛さを出すため山わさびの粉末が加えられています。チューブわさびの緑色は、着色料によるもの。本わさびを最低でも50%使用していれば、パッケージに「本わさび使用」と表示できます。

山わさび/わさびの食べ方について詳しく

image by iStockphoto

山わさびとわさびは、同じ辛味成分をもつ香味野菜。その辛味成分については、健康に良い影響を与えることがわかっています。以下では山わさび/わさびの、辛味や風味に着目。その効果や適した調理法についてみていきましょう!

山わさび/わさびの成分と効能

山わさびとわさびの辛味成分「アリルイソチオシアネート」には、体にうれしい効能があります。山わさび/わさびの辛味成分は、腸炎ビブリオやO-157に対する抗菌作用とアニサキスに対する抗虫作用をあわせもつのです。ほかには、消化促進の効果も。なかでも辛味成分を多く含む、おろしたての山わさび/わさびがおすすめです。

さらに「本わさび」は、アンチエイジングと血栓予防の作用をもちます。山わさびにはない、独自の成分を2つ含むためです。本わさび特有の香り成分「ω-メチルチオアルキルイソチオシアネート」には、血液の粘度を下げる効果があります。そして「わさびスルフォラファン/6-MSITC」は、抗酸化作用や発がん抑制作用を示すのです。

\次のページで「山わさび/わさびのおろし方」を解説!/

山わさび/わさびのおろし方

山わさび/わさびの根は、辛味と風味の成分を多く含んだ「皮」ごとすりおろしましょう。山わさび/わさびの辛味成分は、細胞内の配糖体と酵素とが反応して生まれるもの。個々の細胞をしっかり潰せる「鮫皮おろし」を使うと、香りがたちますよ。室温保管でも辛味が飛んでいく(揮発性)ので、すりおろした山わさび/わさびは密封容器に入れて冷蔵庫保管しましょう。

山わさびもわさびも、肉料理と魚料理にうってつけ。ローストビーフやステーキ、刺身、寿司のお供に欠かせません。とくにレアの肉や生魚に添えると、香り付けだけでなく殺菌までできてしまいます。すりおろした山わさびは、北海道名物「醤油漬け」にしてもよいでしょう。山わさびの醤油漬けは、そのままご飯のお供に、または納豆のトッピングとして活躍してくれますよ。

「チューブわさび」は山わさび

山わさびもわさびもアブラナ科の香味野菜で、根のペーストがおもな可食部です。ともに辛味成分「アリルイソチオシアネート」を含み、抗菌・抗虫作用をもちます。普段目にする「チューブわさび」の原材料は、栽培がより容易な山わさび。食卓で目にする「わさび色」は着色料によるものなのです。対して高級な「本わさび」は、爽やかな香りをもちます。ぜひ一度、おろしたての本わさびを食べてみてください。

" /> 簡単でわかりやすい!山わさびとわさびの違いとは?見た目や風味・成分も農学専攻ライターが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!山わさびとわさびの違いとは?見た目や風味・成分も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では山わさびとわさびの違いについてみていきます。2つとも「ペースト状の香辛料」というイメージがあるよな。じつは山わさびとわさびでは、分類や原産地が異なるんです。そのため見た目や風味が違うみたいです。今回はそんな「香味野菜」の違いを、見分け方も含めて、大学で農学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動。技術から生活までさまざまな知識を、科学の視点で解説する。この記事では「アブラナ科の香味野菜」である、山わさびとわさびの違いについてわかりやすく解説していく。

山わさびとわさびを大まかに比較

image by iStockphoto

海外生まれの「山わさび」は、わさびとは別種の植物。名前にわさびとついていますが、それは日本での別名に過ぎません。英語名のほうが、より有名でしょう。山わさびの正体は、ローストビーフに添えられる、あの香辛料です。まずは山わさびとわさびが、どんな植物なのか大まかにみていきましょう!

「山わさび」は海外原産

「山わさび」は「わさび大根」の異名をもつ、フィンランド原産の香味野菜。正式にはアブラナ科セイヨウワサビ属の「セイヨウワサビ」という植物です。海外では「ホースラディッシュ」や「レフォール」と呼ばれています。その主な産地は、アメリカ・イリノイ州。日本は北海道で、栽培が盛んです。そんな山わさびは、12月~3月に旬を迎えます。北欧同様の冷涼な気候で、辛味や香りが増すのです。

日本古来の「わさび」

「わさび」は日本固有種で、アブラナ科「ワサビ属」の植物。約400年前・江戸時代から栽培が続く、歴史ある日本の香味野菜です。そのため、海外でもローマ字で「wasabi」と呼ばれています。日本では、先ほどの山わさびと区別するために「本わさび」と呼ばれることも。そんなわさびは、長野県・静岡県・岩手県で盛んに栽培されています。こちらも11月〜2月に旬を迎える、冬の野菜です。

以下この記事では、山わさびとわさびの具体的な違いについて解説していきます。両者では原産地や分類が違うだけでなく、見た目や風味にも違いが。わたしたちが普段食べている「チューブわさび」の正体についても、みていきましょう!

山わさびとわさびの具体的な違いは3つ

image by iStockphoto

ここからは、山わさびとわさびの具体的な違いについて、3つ紹介します。じつはポピュラーな「チューブわさび」の原材料は、本わさびではありません。以下、食卓のわさびの正体を追っていきましょう!

\次のページで「違い1.根や葉の見た目」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: